最近、よく雨とか降るよねってことで3000字ちょいの軽めのやつを一筆。
今回はリクエストの香澄ちゃん。
ここ最近、雨がよく降る。今日の朝も登校中にいきなり大雨が降り出したのだ。
季節の変わり目だということもあり、気温も気圧も不安定なようだ。
「暇だなぁ……」
そして、そんな気温と気圧の変化に対応しきれなかったのか、俺の前に座っている筈の親友はダウンして休んだ。
なーにが『ごめん風邪ひいた』だよ。退屈させやがって。
「おっはよー!」
そして、暇を持て余していた矢先に、雨でどんよりした空気を吹き飛ばすかのような掛け声と共に、A組の元気印こと戸山香澄が明るい笑顔で現れた。
……すっごいずぶ濡れで。
「ちょい香澄。ストップ」
「あ、レン君おはよ。どうしたの?」
「どうしたのじゃねえよ。ずぶ濡れのまま教室入ろうとしてんじゃねえ。まだ冷房ついてるから風邪ひくぞ」
「ホントだ。言われてみれば寒いかも?」
コイツ、風の子にも程がある。
しかもブルブルと体を振って、髪を荒ぶらせて水滴を飛ばす姿なんて大型犬のそれだ。
「こら。水滴飛ばすな。犬かお前は。ほら、拭いてやるからじっとしてろ」
「でもこのタオル、いいの?」
「まだ使ってないから気にすんな。ほれほれ」
「うぅ~ん」
教室の扉の前で香澄の髪をワシャワシャしてやると、香澄は気持ち良さそうに目を閉じている。
犬だ。ケモ耳みたいな髪型が雨でも崩れずにキープされてることも加わって完全に犬だ。
「しっかし、全身ずぶ濡れじゃないか。傘持ってなかったのか?」
「家出た時は降ってなかったし……」
「天気予報見とけよちゃんと。そんで、有咲はどうしたんだよ?お前ら行きはいつも一緒だろ」
「風邪だって。仮病じゃないよ」
「マジかよ。有咲もか」
「ってことは」
「美咲もダウン」
あいつら、ツッコミのくせに休んでんじゃねえよ。俺がボケられないだろうが。
「というかレン君、いつまでワシャワシャするの?」
「もうちょっと水気とってから」
「長い~」
「こーら動くな。もうちょっとで終わるから」
まぁでも、こんなものだろうか。
風呂上がりの女子の髪とかも、このぐらいだった気がするし、後は時間に任せるしかないか。
「はい。じゃあこれ、俺のジャージ。今日中は返さなくていいから」
「いいの?レン君のジャージ濡れちゃうと思うけど」
「お前に体調崩される方が困るんだよ。お前ら女子は体冷やすとすぐ体調崩すんだから」
「だからってここまでは悪いよ」
「あと、あんまり言いたくないけど、下着透けてて目のやり場に困るからさっさと着ろ」
「……えっち」
ちょっと恥ずかしそうにはしてるが、香澄は俺がパスしたジャージをしっかりとキャッチして着こんでくれた。
助かった。ただでさえ夏服は薄手だし、香澄も胸はそこそこ大きいから服が張り付くと目立つ。
香澄が白いブラジャーを着けていたことは、早いこと忘れてやろう。
香澄の背中側の水色の生地に、うっすらと白いラインが見えて、清純さと色気がいい塩梅で混在していたことなど、俺は覚えていない。
「ジャージ、今日中は返さなくていいからな。タオルも」
「……いいの?」
「いいの。そんじゃあ後は自分の席で大人しく授業の準備でもしてろ。俺、温かい飲み物でも買ってきてやるから」
「待ってレン君!もうホームルーム始ま──」
「分かってる。何か聞かれたら『女の子ナンパしに行った』とか適当に言っといてくれ。そんじゃあな」
「ちょっと!……行っちゃった」
成績悪いからホントはホームルーム抜け出して評価が下がる可能性は避けたくはあるが。
なぁに、ホームルームを抜け出した程度で落ちる成績なら元より無いも同じだ。
ぶかぶかのジャージを着た香澄を振り切って、俺は学園内の自販機に向かって走り出した。
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香澄のやつ、マジで『ナンパしに行きました』って言いやがるとは。
お陰で担任から説教の嵐だ。外の大雨なんかよりずっとキツかったぞ。
誤解は解けて一段落はしたが、そのまま時が経って昼休みになってもなお、俺の調子は上がらないままだった。
雨でテンションは上がらないし、美咲は居ないし、退屈だ。そのせいで食欲も失せた。
「レン君!お昼食べよ!」
「なんでだよ。ポピパの連中は……って、そっか。今日の天気じゃ中庭は無理か。有咲もいないし」
「うん。だからたまにはレン君と食べたいなって。いい?」
「ダメじゃないけど、今は食欲無いんだよ」
「えぇ~!いいじゃんたまには~!」
「はいはい。後でな」
弁当を持ってくっついてくる香澄の頭を撫でながら、適当に香澄をいなす。
『もぉ~』とか言って可愛いことしてるが知らない。
でも、しばらく香澄の頭を撫でていると、ちょっと不自然なことに気付く。
「あれ?香澄、ちょっと髪、荒れてないか?」
「そうかな?確かに今日は湿気凄かったからね。朝にびしょ濡れになってからは自然乾燥だし、クセっ毛だからダメージ大きいのかも」
「まったく。こだわりのツノ以外にも気を回せっての。ほら、櫛あるなら貸せ。髪やってやるから」
「……えっ、出来るの?」
「たまに姉さんが頼んでくるからな。そこらの男子よりは心得があるつもりだ。イヤならやらないけど」
「やって欲しい!」
「じゃあ美咲の席で飯でも食ってろ。俺は後ろで勝手に触るから」
香澄を前の美咲の席に座らせ、俺は自分の机に座る。
うん。丁度いい高低差だ。
香澄の髪も梳きやすい。まぁでも、普段の香澄の髪はもっとサラサラなのだが……。
「やっぱり引っ掛かるな。ほとんど乾いてるとは言え、ちょっと傷んじゃってる」
「も~。気にしなくていいのに」
「ばーか。女の子ならちょっとは気を配れっての。せっかく綺麗な髪なんだから」
卵焼きを口に運ぶのに忙しい香澄をよそ目に、俺は香澄の髪を梳いていく。
でも、こうやってるだけでちゃんと持ち直してくるあたり、日頃のケアは怠っていないらしい。
「今日のレン君、なんかお姉ちゃんみたいだね」
「……お兄ちゃん、ではなく?」
「うん。お姉ちゃん。濡れてるって分かった途端にタオルとジャージまで貸してくれて、髪まで梳いてお世話してくれるなんて、理想のお姉ちゃんだよ」
「え~。せめて『お兄ちゃん』じゃダメか?女扱いとかいい気しないんだけど」
「うん。今こうして声だけを聴いてるだけでもそんな感じするよ。レン君って声も中性的だし、なんか、宇津美エリ〇とかセイウンスカ〇の演技してる時の鬼頭明〇さんの声を、一段階低くした感じの雰囲気してるでしょ?クールで穏やかで優しい感じのお姉さん」
「微妙に分からない例えやめろ。雰囲気だけの話だとしても、俺の声はそこまで女性寄りじゃない。そこからあともう3段階は低い筈だ。俺はそう信じたい。ていうか、その手の姉力だったらそれこそ、うちの姉さんの方が『お姉ちゃん』って感じがするんじゃないか?」
「リサ先輩かぁ。確かに姉力は強いけど、リサ先輩は、『リサ先輩』って感じだから、お姉ちゃんとは違うかな」
「……そう?」
香澄の基準は、たまによく分からない。
まぁいい。香澄の髪もこれで充分整っただろう。
「はい。終わったよ」
「うん。ありがとね。あれ?仕上げのなでなでは?」
「はいはい。よしよし」
自分で整えたばかりの髪を自分でワシャワシャするのは抵抗があったが、まぁ、本人が構わないならいいか。
「うし。せっかくだし、やっぱ俺も弁当にするかな。食欲出てきたし」
「いいじゃん!一緒に食べよう!まだ唐揚げ残してるから交換しようよ!」
「えっ、マジ!?いいの?」
こういう時に人に唐揚げを譲れるあたり、俺はこいつの方が姉っぽい気がするのだが、それを言うと香澄はが調子に乗りそうなのでやめておこう。
「レン君」
「んー?」
「有咲や美咲ちゃんには悪いけど、たまには2人きりもいいね」
「それ間違っても本人たちに言うなよ。絶対話ややこしくなるから」
「わかってるよ~」
大雨が窓を打ち付ける教室の中。
お互いに無二の親友が居なくて退屈なだけの2人ではあったが、なんだかんだ仲良く話し合って、昼休みから放課後までをいつも通りのテンションで過ごしていったのだった。
ただ普通に過ごしただけの日常ではあったが、それでも居心地は良かった。
以上、これがとある雨の日の、友人との日常でありましたとさ。
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ちなみにあの後、雨は嘘のように上がり、帰りに傘は必要なくなった。
放課後は香澄と一緒に帰るという手もあったが、今回は有咲と美咲がダウンしたこともあったので、放課後は二手に分かれて、香澄はポピパの連中と有咲の家へお見舞い、俺は美咲の家へお見舞いに向かった。
「ねぇ、レン。あたしのことなんかいい。あたしはもう大丈夫。だから妹の相手させてよ……」
「だーめ。ちゃんと温かくして寝ろっての。妹ちゃんに風邪うつしたらどうすんだよ。気温差なんかにやられやがって」
「……ごめん。じゃあ、暇つぶしに妹に作ってる羊毛フェルトの続きを──」
「寝ろっつったろうが!」
「うぅ……」
「(こいつも大概、姉の鑑みたいな奴だよな……)」
ちなみに美咲の世話を焼きまくっていると、美咲はすぐ眠りについた。
そして家の中でそうこうしてるうちに、奥沢家の妹ともちょっとだけ仲良くなったのは、また別のお話。
今回のリクエストは『シチュはお任せ、とにかくレン君と香澄ちゃんの絡みが見たい』でした。
『通りすがりの幻想』さん。対戦ありがとうございました。
今回のリクエストはキャラのみのシングルバインドだったので書きやすかったですね。
今回は季節の変わり目でよく雨が降るねってことでこんな感じの書きましたけど、読者の皆様も体調の方、お気をつけくださいね。
【ガルシチュこそこそ裏話】
この手の日常回は好きだけど、刺激が少なくて盛り上がりが無いから書き終わってから毎回のように不安になる。
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