誕生日記念とかはやらない主義なのですが、流石にこの子はやらない訳にはいかない。
という訳でちょっとした小話を。短いけどこの子は他でも書きまくってるのでね。
午前7時、人によっては早朝とも言える涼しい時間帯。
制服を着て歩いていると、向かいから制服を着たお嬢様が歩いてきた。
「おはよう。つくし、偶然だな」
「おはよう。レンさん、こんな時間に会うなんて珍しいね」
「これも好き合ってる男女の運命なんだろうな。儚い……」
「もう、運命だなんて……」
・・・
「「……なーんて☆」」
そう言い合いながら2人で笑い合う。
当たり前だ。平日のこんなに朝早くに制服姿で学校の方面も違う2人が偶然会うことなんてある訳がない。
そう。今日の俺たちはわざわざ早起きして朝食や準備も早々に済ませて、この瞬間のためだけに集まったのだ。
「それで、こんな朝早くに集合なんて、何の用事?」
「どうせ分かってるくせに」
「そっちから言って欲しいの」
「まぁ、だよな。じゃあ気を取り直して」
上目遣いの小柄な美少女を真っ直ぐに見つめる。
付き合ってまだまだ短い関係だが、目を合わせるだけならそこまで緊張もしなくなった。
「お誕生日おめでとう」
「ありがとう。日付が変わった瞬間にも連絡くれたけど、やっぱり直接言ってもらえるのは嬉しいね。しかも直接祝ってくれたの、家族以外ならレンさんが最初だよ」
「当たり前だ。どうせ今日はモニカの連中とかほかの奴らとの予定でいっぱいなんだろ?その後だって家族と過ごすだろうし、放課後と夜が無理なら朝に祝うしかないだろ。だから集合時間がこんなことになったんだし」
「でも、朝からレンさんの制服姿が見られるなんて嬉しいな。こんな機会めったに無いし」
「確かに。つくしの制服姿も似合ってるよ。世界一可愛い」
「もう。レンさんったら……」
可愛い。
でも、いつまでもこうしてる訳にはいかない。
忘れちゃいけないが、俺もつくしも、この後は普通に学校だ。
「じゃあ、プレゼントも渡すか。大したものじゃないけど、はいコレ」
「……クッキー?」
「ほら、この前のお泊り会でさ、俺の手料理を食べてみたいって言ってたろ?だから料理ではないけど、お菓子作りに挑戦してみたんだ」
「じゃあこれ、手作り!?レンさんの!?」
「あぁ。姉さんに土下座して作り方を教えてもらって、数多くのダークマターを作り出して、そんな屍の山を築き上げた末に辿り着いた最高傑作だ」
「リサ先輩が付いてたのに失敗続きだったの?」
「姉さんには作り方聞いただけだよ。つくしに渡すものだから、どうしても自分の力だけで作りたかったんだ」
「……大変だったでしょ」
「うん。頑張った」
いや、もう、本来ならもうちょっと謙遜とかした方がいいんだろうけど、これに関してはマジで頑張った。
「ともかく渡せてよかったよ。バレンタインのお返しも出来てなかったからな」
「あぁ。ホワイトデーは作者さんの都合で終章が重なっちゃってたんだもんね」
「そうだな。しかもホワイトデーに投稿された話、結構キツめの話だったし、その翌日の話とか、俺、お前にビンタされてるし」
「あれはレンさんが情けなかったからでしょ」
「うん。そうやって厳しいこともしてくれるお前のそういうところが、本当に大好きだよ」
「……ばーか」
うん。やっぱり好きだなぁ。この子のこと。
「じゃあ、もう1個も渡すか」
「まだあるの?」
「恋人への誕生日プレゼントがクッキーだけってのは流石にな。ほら、目閉じろ」
「こう?」
俺の方へ顔を向けたつくしが目を閉じて待っている。
綺麗な顔立ち。
キス待ち顔にも見えるその表情に少しだけドキッとして、俺はそのままつくしの首の後ろへ手を回す。
「わっ!何!?」
「あっ、コラ。動くな」
「ごめん……」
その後、見えづらい場所から金具を留めるのに苦戦し、やっと上手くいった。
「レンさん、これ……」
「ネックレス。あんまり高価なやつじゃないけど」
「いや、すっごく嬉しいよ。クッキーだけでも嬉しかったのに」
「そりゃどうも。似合ってるよ」
「えへへ……」
似合ってる。綺麗だ。可愛い。そんな感想を本当は1時間ぐらいぶつけたいところだが、時間の余裕は無いままだ。
本当に忘れちゃいけないが、俺もつくしも、この後は普通に学校だ。
「そろそろ解散だな」
「……そうだね」
「よし、それじゃあ──」
「やっぱり待って!」
・・・
「ワガママ、言っていい?」
「……いいよ。今日はつくしの誕生日だからな」
「なら、途中まで、一緒に行きませんか?……手とか、繋いで」
気付けば俺は、目の前の少女の手に指を絡めていた。
デートの数も多くは無いが、お互いにちょっとは恋人つなぎに慣れてきたらしい。
「行こう」
「うん。ありがと」
ダメだな。
つくしの笑顔とワガママには、一生かかっても逆らえそうにない。
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仲睦まじく手を繋いだはいいが、別れはすぐに訪れた。
ここからもう少し先を行くと、月ノ森の生徒と出くわす可能性が出てくる。
それを悟って、どちらから言い出すでもなく、俺たちの手がゆっくりと離れた。
「ここまでだね」
「そうだな。じゃあ、行ってらっしゃい」
「変なの。さっきまで一緒に登校してたのに夫婦みたい」
「なんだよ。行ってらっしゃいのキスでもした方が良かったか?」
「…………」
「……」
あー、これは……。
「つくし」
「なに?」
「周り、まだ誰もいないよな?」
「いないけど」
「じゃあ遠慮なく」
chu-
「……!」
つくしの小さな体を抱き寄せ、そのままつくしの頭に手を添えて、無防備なおでこに唇を押し当てる。
当のつくしは不意打ちのせいで目をまんまるにしている。
「行ってらっしゃいのキス。満足した?」
「したけど不意打ちは卑怯でしょ……」
「悪かったって。じゃあ今度こそ行ってらっしゃい」
「むぅ……」
最後につくしは、そのままそっぽ向いて行ってしまった。
「(ちょっと寂しいなぁ……)」
なんて、思いながらつくしを見届けて、俺も学校に行こうかと考えた辺りで、つくしが方向を変えて、走ってこちらに戻ってきた。
「ごめんレンさん!そういえば1個言い忘れてた!」
「言い忘れ?」
そして近づいてもつくしは小走りをキープしたまま。
「おいつくし。そんなに慌てなくても──」
「隙あり!」
「へっ?」
chu-♡
「……!」
頬に、柔らかい感触が押し当てられた。
背伸びをして、俺の両肩に手を乗せて、俺に体重を預けたつくしの良い匂いが、俺の鼻腔をくすぐった。
そして、驚いて何かを言う前に、つくしはもう俺から離れていた。
「お兄ちゃん。今日は本当にありがと!大好きだよ!」
「……!」
「それじゃ、行ってきます!」
満面の笑顔でそんなことを一気に伝えて、つくしはそのまま走り去ってしまった。
「卑怯なのはどっちだよ……ばーか」
その場に残っていたのは、不意打ちで色々と持っていかれた男子高校生が、ただ恥ずかしそうに立ち尽くす姿だけだった。
その後に向かった学校は遅刻こそしなかったが、その日の授業はずっと集中できなかった。
せっかく熱が冷めて頭がスッキリしたばかりの時に、
『行ってきますのちゅー、どうでしたか?』
なんてメッセージが飛んできたせいで更に俺の集中は乱されることとなった。
この日の俺は、つくしのことしか考えられなかった。
彼らが明確にハグしたり唇へのキスをしなかった理由は、『それをやるとお互いに歯止めが効かなくなって離れたくなくなってしまう。外でお互いを求め合い過ぎてしまうのはマズい』という理性が働いていたからストップをかけてた。という感じです。
という訳でつくしちゃん、誕生日おめでとう。
この小説がここまで愛されるのは、君の影響が大きいように思うよ。
【ガルシチュこそこそ裏話】
作者が終章で一番好きな話は『終章10.黎明』。
想定外だったのは、癒し枠のつくしちゃんがカッコよくなり過ぎたこと。
そしてその話の感想でも『つくしちゃんカッコいい』のコメントが多かったこと。
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