《竜》の満ちる世界   作:UNKNOWNと戦いたい

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Riseの代わりのXXタノシイ………タノシイ………
鏖魔の狂暴走移行がマジで大好きなんですけど、わかってくれる人います???


12―過酷な世界

 ツァインドルクスの脳裏に、かつての惨劇が昨日のことのように鮮明に浮かぶ。

 

「本当に、()の出現は突然だったよ。突然空が暗くなって、奴が………『黒龍』が現れた」

 

 そこから彼は、記憶のままに語る。

 現在で言う難易度300前後の竜王たちを滅ぼした八人のプレイヤーは、それまでに多くの黒龍たちの同胞、現在この世界に満ちているモンスターたちを虐殺していたというコト。当時は彼らの勢力圏も広くなく、強力な個体も表に出ることが無かった、と前置きしてから、それが過去の惨劇の引き金になったのだと。

 

「傲慢だった彼らの街は、あっという間に火の海さ。が、彼らは退かず、挑み………皆、死んだ」

「それほどまでに強いのか」

「強い、なんてものじゃない。彼らの武具ですら、深い傷は一つとして刻めていない」

 

 そして、あの瞬間から世界の理が歪んだ、と彼は静かに告げる。

 ユグドラシルの、この世界のルールであった『完全耐性』………それが消失したのだ、と。

 

「彼らは焼かれ、喰われ、殺され続けた。一人が武具諸共体温で焼け死んで、他は消し炭さ」

 

 黒龍の放った劫火はそのまま、大地を、空中都市を焼き払い、一人と残さず滅ぼした、と。

 

「く、空中都市だと?!待て、拠点には、相応のNPCがいた筈だ!」

「誰一人として、生きていなかったよ」

 

 ゾッ、とモモンガを強烈な寒気が襲う。

 

「そ、蘇生は!?蘇生はしなかったのか!?」

「数秒で焼け死んで、蘇生してもまた数秒で死んで、さ」

 

 数秒………どんなビルドであれ、レベル100プレイヤーのHPを削り切るには、あまりに少ない時間である。それこそ、炎ダメージ倍という特大の弱点を持つモモンガですら、炎属性特化、対悪特化のワールドエネミー級でも無ければ、そこまでの瞬殺はされない。そんな手段で不特定多数を瞬殺するとなれば、それこそ馬鹿げた基礎ダメージ量が必要となる。

 

 そこまで考え、自身がユグドラシルの尺度で考えていた事に気付く。

 

「そう言えば、先程の口振りからして………」

「ああ。この世界を満たしているモンスターは、元々この世界に居た存在ではない。君たちと同様に、僕の父である竜帝が招いた存在………なのだけど、その中にまさか、始原の魔法やゆぐどらしるのわーるどあいてむに並ぶ力を持つ存在が数多居たとは思わないよ」

「ホント、八欲王共はどれだけ恨んでも怒りが収まらんわ。死んでるのが、尚更腹立つ」

 

 ドラウディロンが激情を露わにするが、当然だろう。

 彼らが愚を犯さなければ、今頃竜王国は砂漠とはなっていない筈なのだから。

 

「………ええと、その黒龍は、今どこに?」

「エリュエンティウ、と呼ばれていた空中都市の残骸に居る筈だ。流石に踏み込めないから、もしかしたらこちらが目を離した隙にどこかに移動しているのかもしれないし、新たなナニカが住み着いている可能性もあるけどね」

 

 溜息混じりにそう零し、彼らの最警戒の理由について追及。

 

「君たちに求めるのは二つ。この辺境、或いは竜王の監視下を離れない事と、モンスターを不用意に多数殺傷するような真似は控える事だ。この世界には、南の大地を耕した大蛇と、大地を喰らう巨竜、他にも僕たち竜王どころではない脅威がまだまだ潜んでいるんだ。不用意にそれらの活動の引き金となられては、最悪――」

「世界が滅ぶ、と………ああ、わかったさ、わかったとも。私も自殺願望は無いからな」

 

 そう口にするモモンガには、これまで以上に生気が見られない。

 それほどまでに、この世界の『上』は桁外れだった。ギルド拠点ごと壊滅させる攻撃、無効不可の属性攻撃に加えて、空中都市のギルドメンバー………恐らく、レベル100にフル神器級(ゴッズ)とまではいかなくても、それに近しい高水準装備とガチビルドだった筈の者たちに加えて、拠点NPC作成可能レベルの3000をフルに使ったであろう30人のレベル100NPCが、抵抗できずに滅ぼされるような馬鹿げた火力の持ち主。

 

 それに比肩する存在まで居るとなれば、冒険どころの話ではない。

 

「あああああああ………」

 

 それはもう、アンデッドですら出せない程に生気の欠片も無い、酷い呻き声だった。

 

「なあ、なんかすっごいショック受けとるんだが………」

「も、モモンガ様!?」

「そ、ソリュシャン、どうしよう!?」

 

 モモンガもまた、ユグドラシルという『未知の探求』を主題とした世界に魅せられた一人。未知という存在がゴロゴロ転がる世界を冒険したい、という欲求は確かにあるのだが、自身の命とギルドの安全どころか、世界の命運すら揺るがしかねないとなれば、そんなことが不可能である、と堂々と突きつけられたようなものだ。すぐ目の前に最高の娯楽があるのに、世界の命運という壁がそれを阻むのは、中々に辛いものがある。

 

 とはいえ、ギルドという重荷が無ければ、そして転移場所が違えば、彼はごく普通の旅人となれていただろう。そうであれば、潤沢な人員と設備、資材という強みは失われるものの、それらと引き換えに確かな自由が保障される………果たして、どちらが幸せだったのか。

 

「………ちなみに、この辺境に居れば安全なのか?」

「いや………北の氷原だけでもかなりの強者がいるし、南も熔山帯、大森林は特に危険な領域だ」

「うげぇ」

「北の凍王龍は温厚だけど、この世界に数多の寒冷地帯を作り出した存在でもある。司銀龍は縄張りを侵した存在を許さず、400年前から冰龍が現れるまで、延々と評議国に襲撃を仕掛けていた。外敵を増やしたくないのなら、あそこに立ち入ることは勧めないよ」

 

 実感の籠った忠告を聞き、改めて世界の過酷さを知らしめられる。

 

「あー、胃が痛い………」

「いや、君胃どころか骨以外無いよね?」

 

 全力で落ち込んでいたかと思えば、今度は空っぽの腹をさするモモンガに、ツァインドルクスも流石に呆れた様子を見せる。とはいえ、その狼狽えように過去の知己を思い出したのか、少しばかり態度が軟化した様子を見せる。

 

「まあ、言い換えれば、その二体を除けば、温厚な者が多いということだ。最悪、危険地帯三カ所さえ避ければ、この辺境でも行ける場所は多い。特に、アゼルリシアの地底の主なんかは温厚だし、何よりあそこは煌びやかで綺麗だ。過剰に荒らすようなことをしなければ、彼女も許してくれる筈だ」

 

 と、過去の仲間の出生地、そして強大なる龍に守護された地の情報を齎す。

 

「アゼルリシアの地底には、ドワーフの国があるんだけどね」

「そういえば、そんな話も小耳に挟んだな」

「そこに200年前襲来した魔神を瞬殺したのが、今のあそこの地底の主なんだ」

 

 六大神の従属神の堕落、並びにその暴走により数多の強者が来襲する事態となった『竜魔事変』に大きく関与していた彼から語られるのは、200年前にこの辺境で認知されることとなった強力なモンスターたちの存在。

 

「まず、北の『冰龍』イヴェルカーナ。瞬時に凍結する水を扱い、評議国全域に及ぶ寒冷化を引き起こした古龍だ。キーノ曰く、その身に纏う輝きから歴戦王と呼ばれる最上位強者の一角らしい」

「………嘘だろ」

「幸いなのは、縄張りを侵さなければまだマシということだね。僕の鎧一つで済んだのもだけど、上手い具合に凶暴な『司銀龍』と縄張りが重なってくれたお陰で、評議国への被害は抑えられている」

 

 寒冷化のダメージは重いけどね、と苦笑するツァインドルクスだが、看過できない情報もある。

 

「その、司銀龍とは?」

「『司銀龍』ハルドメルグ。400年前の調査団を壊滅させて以来、彼らを送り込んだ評議国への襲撃を続けている古龍だよ。名の通り、銀色の流体金属を自在に操ることが出来る古龍で、縄張り意識が強い上、知性も高い。中でも厄介なのが縄張り意識の強さで、君が万一踏み入ろうものなら、君たちの拠点まで攻め入る事も辞さないだろう」

「………ッ」

 

 拠点に、攻め入る。考え得る中で最悪の事態であり、何が何でも避けるべき事態でもある。

 

「忠告、感謝する。その忠告が無ければ、最悪の事態を招く可能性もあった」

 

 ソリュシャン、エントマ共に、震えて声も出ない様子。自分たちが手も足も出ないような怪物がナザリックに、となれば、自分たちより更に弱い者たちでは太刀打ちすら出来ない。鏖殺される同胞を想像してしまったが為に、破壊される栄えある地下大墳墓を蹂躙される様を幻視してしまったが為に、その身を襲う恐怖は格別のものとなっていた。

 

「それは何より。八欲王の暴挙を見た身としては何とも言えないけど、君たちがリクのような善きゆぐどらしるの者たちであることを願うよ。そうでなければ、最悪の事態になりかねないからね」

「………善処させて貰おう」

 

 煮え切らない答えであるが、それを咎めることをせず、ツァインドルクスは続ける。

 

「それで、他に君たちに必要な情報は………」

「では、山脈の主とやらについて」

 

 身近な脅威という意味でも、好奇心という意味でも、欲しい情報だ。

 

「『爛輝龍』マム・タロトと呼ばれている歴戦王古龍なんだけど」

「またか?!この辺境は地獄なのか!?」

「………ああ、うん。まあ、そうなるよね」

「ぶっちゃけ、弩岩竜のお陰で今じゃ一番平和まであるからな、ここ」

 

 ドラウディロンが苦笑する中、モモンガは頭痛を堪えるように頭を抱えている。

 

「まあ、こちらはかなり温厚な部類だ。敵対しなければ………と言いたいところだけど」

 

 ツァインドルクスが三人の装備に目を向け、真剣に告げる。

 

「君たちがそのまま会いに行くことは、絶対にやめておくべきだ」

「なに?」

「彼女の能力は二つあってね。その一つが、『金属を引き寄せる』………君たちの装備は?」

「………あっ」

 

 そう、そうなのだ。

 ユグドラシルにおける、装備作成の工程は二つ。使用素材のランクに応じた器を作成、そのランクの上下に応じ付与されるスロットにデータクリスタルをセット………そして、問題なのは器の作成。ここでランクを上げる際、必ず相応量の()()()()()()()()()()

 

 ランクが高ければ高い程、希少金属の要求量は増大。それが、万一その能力に反応すれば?

 

「………想像したくも無いな」

 

 彼の言葉からして、被害者が居たのだろう。二重の意味でそう零し、モモンガは身を震わす。

 

「幸い、彼女はある程度意図的に制御できるようだけど………うん」

「いや、絶対この装備は着ていかない。絶対にだ」

 

 この装備の完全再現など、二度と不可能。その上、思い出の塊でもあるのだ。失いかねない環境が存在しているとわかれば、わざわざこれを装備していこうとは思わない。実利の面で見ても、現状プレイヤーメイド最高峰の神器級(ゴッズ)ですら太刀打ちが厳しい相手もいるというのに、それをわざわざ手放すなど、リスク以外の何者でもない。

 

「とはいえ、その能力で形成された地下空間は壮観の一言だ。ドワーフの聖域でもあるから、立ち入りは兎に角、それ以上のことは難しいかもしれないけど………そこは、今回の会議に来るドワーフたちと相談してくれ」

「気になるが、それ以上に恐ろしくてなぁ………なんなんだよ、この世界」

「まあ、両国を焼いた刻竜、ローブルを火山に変えた熔山龍と比べれば、まだマシじゃないかな」

「比較対象ッ!?」

 

 長年生きている彼らにしてみれば、温厚であるというだけでも儲けもの。対し、一カ月も滞在していないモモンガたちにしてみれば、ユグドラシルのレベル100ボスも真っ青な怪物が相応数蔓延る世界、というだけでも恐ろしいのに、それが近隣に集まっているとなれば、クソゲーと叫びたくもなる。

 

「悉くが物騒過ぎるだろ………」

「それには同意させて貰うよ。君たちぷれいやーが脅威となっていた過去に対し、今では君たちですら、最悪成す術無く滅ぼされるような存在が数多居るんだ。僕たち竜王も、過去に同族が一人やらかしたせいで監視されていてね………正直なところ、結構気が滅入る」

 

 事実、強力な『始種』に加えて、『辿異種』『歴戦王』まで集まる地が間近にあるのだ。明確な敵意と共に攻撃してくるのは辿異種のみとはいえ、何時その牙が剥くか判らないというのは、精神に強烈な負荷をかけていた。それは、『辿異種』という極秘事項抜きにしても、評議国の民にも同じことが言える。

 

 大陸で最も多くの竜王が集う国故、その対応も強ち間違いとは言い切れないのだが………

 

「………苦労、しているんだな」

 

 モモンガの同情に、ツァインドルクスは大きく肩を落とし、本音を口にする。

 

「本当にね。なまじ、彼らが起こした変化を目の当たりにしているからこそ、余計にだよ」

 

 最も多くを識る竜王は、多くを見てしまったが故の重圧に耐えかね、深く溜息を吐いた。




★設定

・『黒龍』

劫火を以て、八欲王と彼らの拠点の守護者を鏖殺した邪龍。
強靭な外殻の他、武具が熔ける程高い体温を有する事が判明している。

朽ちた元空中都市に座しているようだが………?


・『アゼルリシアの地底の主』

『歴戦王』の『爛輝龍』マム・タロトのこと。
200年前、ドワーフの王都へと来襲した魔神を滅ぼし、彼らの信仰を得た。
その住処たる空間は、ドワーフたちに聖域指定されている。

実は、アゼルリシアへと居を移す以前に、ユグドラシルプレイヤーと対峙している。


・『冰龍』イヴェルカーナ
・『司銀龍』ハルドメルグ

グランセル氷原中部~北部に縄張りを持つ古龍たち。
双方縄張り意識が強く、その激突は200年前から日常の如く行われている。
この縄張り争いが生じない、つまりイヴェルカーナが氷原を離れている間、評議国はハルドメルグによる襲撃の危険が生じる。この為、ツァインドルクス=ヴァイシオン含む竜王たちが自由に動けるのは、イヴェルカーナが氷原に滞在している間のみ。

イヴェルカーナは歴戦王に類する個体であり、ハルドメルグは辿異種に当たる個体である。





・モモンガ

亡国√の場合、ある程度穏やかに過ごしていれば普通に冒険できるように。
その場合、もれなくナザリックの滅亡が確定する。
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