《竜》の満ちる世界 作:UNKNOWNと戦いたい
エ・ランテルが復興に取り掛かる中。
「―――武器の封印?それはまた何故………」
竜王国での『依頼』の品のやり取りを始めんとした、丁度その時だった。
「あれは
そう、強すぎる………分不相応、と感じる程に、武器が強いのだ。
あくまで攻撃性能に特化しているものの、その一点だけでも、過剰な程に。
「それでは、そちらの意見を尊重しましょう。ですが、封印の件は竜王国とも話し合わなければ」
「あくまで、女王陛下の厚意で借り受けただけだからな。とはいえ、あちらも理解してくれる筈だ」
イビルアイが言い終えると共に、タイミングを見計らい、ユリ・アルファが入室。
「失礼します。パナソレイ都市長様より、この度の防衛戦の謝礼についてです」
曰く、暫くは復興に取り掛かる事となる為、金銭的の支払いは待って欲しいということ。凶暴竜の亡骸の処遇は、蒼の薔薇とナザリック両者に任せる、という判断とのことが告げられる。後者を告げられるや否や、ラキュースたちは互いに顔を見合わせ、ある申し出を行った。
*
「ぅぁ………と、とんでもないことになっていたようだな。ご苦労だった、パンドラよ」
「お褒めに預かり、光栄でございますッ!………そちらも、苦労されていたようで」
迎撃拠点が完成して、早数日。
エ・ランテルの襲撃事件からは、更に長い時間が経ったバハルス帝国東部の城塞と、来たる襲撃へと備えた者たちが拠点とするそこを訪れているのは、パンドラズ・アクター。これまでの出来事を簡潔に纏めた報告書と共に赴いた彼と異なり、モモンガの纏う空気は渋い。
「やはり、武具の問題か?」
「恐らくは。私たちに無い『経験』と『知識』を正しく運用できるのですから、相応の武具があれば討伐効率も上がりましょう。とはいえ、デミウルゴス様が大きく関与され、『蒼の薔薇』が規格外品を用いた防衛戦や、我々の持てる戦力を総動員したこれまでが例外に近いのかと」
原因は、これまでの戦績。あくまで拠点作成が中心であったこと、属性攻撃の要であるモモンガも知識ばかりで経験を伴わない為、多種多様なモンスターが入り乱れた混戦との相性が悪すぎたこともある。討伐より撃退に重きを置いていた事も重なり、討伐成功例はかなり少ない。
「ですが、《
「それが最善だろうな。その方向で頼もう」
「ハッ!」
『
それらのリストを受け取ったかと思えば、パンドラは新たに幾つかをテーブルに置く。
「随分と武骨な………これらは一体?」
パンドラは紅の武骨な塊を開く。すると、それは砲と見紛う姿に変わる。
「竜王国よりお借りしました、弩岩竜の素材を用いた武器でございます」
『彼ら』の世界の呼称を用いるなら『ヘビィボウガン』が正しいのだが、ユグドラシルの者には銃の一種とも見える。名を『弩岩獄重弩【
「こちらですが、ユグドラシルの弾丸が使えません」
「………いや、それでどう戦うんだ?」
ご尤もな疑問であるが、パンドラはその回答も用意している。
「森の木の実や、アウラ様が育てた魚を用います」
「はい?」
「いえ、実はですね?」
パンドラが取り出したのは、螺旋状の溝を持つ『ツラヌキの実』と、爆発成分を内包した特殊な『ハレツアロワナ』の鱗、それと中身のない文字通りの『カラの実』の二つの計四つ。それぞれをカラの実に詰め、少しばかり手を加えると、驚くべきことに綺麗に形が変わり、ツラヌキの実を用いた物に至っては、弾丸型となったそれが三つも出来上がっているのだ。
「はい!?」
「こうなるんですよ。しかもこれ、ぴったりとこの銃と合いまして」
と、パンドラが見せる通り、完成した『LV1貫通弾』は弩岩獄重弩の規格と合致し、すんなり装填することが出来てしまった。弾丸を作成するその過程も然ることながら、一発しか作成していない筈が三発に増える、などの現象も併さりモモンガに抑制が発動。少しして無事平静となってから、可能な限り冷静に勤め、パンドラに問うていく。
「ええっと、これ、適切な職業持ちならば使えるのか?」
「はい。シズ様、アウラ様に試して頂いたところ、問題無く」
これは竜王国から借りている為、使えませんが、とパンドラは軽く笑い、別のものを取り出す。
「こちらは、黒狼鳥の残り素材を用いたモノとなりますね。シズ様に運用試験をしていただく予定となっております。とはいえ、弾薬については未知が多く、手探りの面が強く出てしまうかと思いますが」
取り出したのは、『カホウ【狼】』。イャンガルルガの素材を用いた重弩だ。
「………あまり言いたくは無いが、やはり不安は拭えんな」
部下たちの思いにこそ、理解を示すモモンガ。だが、NPCたち、中でもこの世界基準では戦力としても非常に厳しいプレアデスの中で、最も低レベルのシズということもあり、武器を渡し戦闘力の補強を図るのは判るが、それでもレベル制度の概念が強く残るモモンガとしては、難色を示さざるを得ない。装備の質で多少のレベル差は覆せても、多少以上のレベル差はどうにもならないのだから。
「私も同じです。が、かといって前面に出れぬ仕事ばかり回し続ける訳にもいかないのです。彼女たちの精神衛生を考慮すれば、尚更………これはデミウルゴス様も同意見ですな」
「判ってはいるのだがな………」
そっと額に手を当て、嘆息。悪く言えば社畜思考なNPCたちは、それこそ自らの命を投げうってでもナザリックに貢献したい、という思想の持ち主であり、これまで裏方仕事以外回せていないことに、やはり少なからず不満やストレスが溜まっている。そして、与えられた役割にそのような悪感情を抱く自身への嫌悪、と悪循環に至ってしまうのだ。非常に難しい問題である。
「まあ、仕方ないか………では、こちらに保管しているモンスターたちの加工は」
「それならッ!持ち出せる物は持ち出しているので大丈夫です!」
「そ、そうか」
準備の良さに驚くやら、いきなりテンションが上がったパンドラに呆れるやら。
「いやあ、モンスターの武具なんですが、形がある程度決まっているらしく。こちらから手を加えるのは難しいのですが、その分秀逸なデザインの数々を目の当たりにできるので、どうしてもテンションが上がってしまうのですよね………」
「え、マジで?」
「マジです。これらも、加工していくうちに勝手にこの形になっていったんですよね」
さらりと口にしたパンドラは立ち上がり、帽子をかぶり直す。
「では、保管場所まで案内を―――ッ!」
腰を上げたモモンガは、不意に響いた警報の鐘に反応し、椅子を蹴倒す。
「このタイミングでか!?」
「襲撃という事ですか………!」
パンドラと共に迎撃地点へと向かえば、気光の奔流が門を貫く瞬間を目の当たりにすることに。
「『金獅子』か!」
「間違いありません。モモンガ様は」
「いいや、私が前に出る。電気耐性は私が一番高いからな」
アルベドが下がるよう進言するも聞かず、モモンガは空から超攻撃的生物の気を引くべく、即座に飛翔。金色に染まった鬣を振り乱し、激情のままに暴れ狂うその牙獣の異変に気付くと共に、即座に魔法攻撃へと移行。
「
単発最高威力の魔法を最強化し放てば、流石の古龍級生物はそれを感知、回避。
「《
その着地点へと放たれる冷気属性魔法の直撃が、金獅子に浅くない傷を穿つ。
「ギュアオオオオオオオオッ!!!」
それに激昂し、鬣が逆立つと共に咆哮。その変化以前から体毛が金色となっていた事と併せて、モモンガはその状態が明らかに異常であると気付く。よりよく目を凝らせば、その尻尾に損傷、欠落がある事に気付き、不確定要素が増えたことに舌打ちしながら叫ぶ。
「明らかに異常な状態だ!アルベド、セバスは前に出て侵攻阻害に専念!コキュートス、俺が隙を作るから、そこに冷気攻撃を叩き込め!他の奴らは、後続への警戒と撤退支援の準備だ!出てきたら確実に死ぬと思え!」
鋭く叫び、大地を割り砕いた塊を持ち上げる『金獅子』………生命維持の為のリミッターが壊れてしまった個体『激昂したラージャン』とでも呼ぶべき災禍は、その巨塊をモモンガ目掛け投擲。視界そのものを塞ぐそれを忌々しく思うと共に、ラージャン自身の姿が見えない現状に危機感を抱いたモモンガは、即座に一つの手を打つ。
「
静かに告げ、三つの魔法を遅延発動設定にしたかと思えば、続けて魔法により転移。
巨大な岩塊が魔法により破砕されると共に、その中心を目掛け気光ブレスが放たれ、モモンガが居た場所を貫通。しかし、そこに既に彼の姿は無く、とっくにラージャンの真上へと移動している。知恵が回るのか、と警戒レベルを跳ね上げた彼は、早急に仕留めるべく、MPを惜しむことなく攻撃する。
「
真上からの三連斬撃が、綺麗に背中に傷を穿つ。極めて高い攻撃性と攻撃能力と比べ、その防御能力は高くないラージャンには痛手であり、鮮血が噴き出し、その傷の深さを物語る。大きく怯んだそこに、更にコキュートスから氷柱の攻撃が放たれ、更なる傷となる。激昂と共に気光ブレスを放つも、防衛に専念しているアルベドのスキル防御で防がれ、空のモモンガからの攻撃を許してしまう。
「ギュアアアアアアッ!?」
「タイプとしては弐式炎雷さんのビルドが近いんだろうが………あの人よりマシだな」
紙装甲の高速高火力アタッカーを思い出し、しかし彼の忍者ムーヴを知るモモンガは、金獅子をそう評する………この世界に存在する『魔法』の存在は、適切に運用出来れば、超攻撃的生物をここまで一方的に抑え込むことも、不可能ではないという事か。
それとも、長期的な戦闘による肉体的、精神的疲労とダメージの累積がプラスに働いたのか。
(追い詰めている、ように思えなくも無いが………ッ!?)
「ぬぉっ!?《
飛来する岩塊による物理殴打ダメージを魔法効果で強引に無効化し、続く気光を回避。防御面が比較的脆弱であることに違いは無いが、反比例するように攻撃能力は極めて高い。殴打ダメージに弱いモモンガや、種族特性から防御能力が低めのコキュートスでは、攻撃されないよう立ち回るのが最善手なのだ。
結果、余裕に見えて、モモンガはコキュートスに接近させないよう攻撃を続け、アルベドが容易に防ぐことが出来る遠距離攻撃以外をさせないよう引き付ける。アルベドとセバスが加わらないのは、連日の襲撃で相手の手の内が読めつつあることに加え、ラージャンの攻撃力の高さから、あまり直撃リスクと隣り合わせの環境に置きたくない、ということもあった。
「チィ………ッ!」
そして、如何に身を護る術に乏しいとはいえ、生命力は脅威の一言。不用意に近付けば、如何にリ・エスティーゼ近郊のモンスターに比べ生育具合が良くないとはいえ、充分に発達した膂力の餌食となるのは、日の目を見るよりも明らか。そしてそれは現在、肉体のリミッターが外れたことで、更に凶悪に変貌を遂げている。
「本当に、神経をすり減らすような戦いだな………!」
アンデッドの、異形の精神でなければ、耐えられなかったかもしれない極度の緊張。空中に居る分危険は少ないとはいえ、地上に引きずり降ろされれば、最悪その剛腕により、成す術もなく嬲り殺しにされるだろう。殴打に弱いスケルトンである分、尚更だ。
「ぬぁっ!?」
そして、その危惧を実現するべく、ラージャンは強靭な脚力で跳躍。回避行動も間に合わない、かと思われたその巨躯の肉薄へと、二つの攻撃が突き刺さる。一方は灼熱の炎が形を成した矢であり、もう一方は高質で無機質な弾丸。
「間に合いましたね」
「これ、反動が強い………!」
バードマンの姿へと変貌を遂げたパンドラの隣には、地上にしゃがみ込んだ状態で重弩を構えるシズ・デルタの姿。大きく踏ん張るその姿から、反動の強さがよくわかる。とはいえ、これは知識不足から来るものであり、しっかりと準備が出来れば、幾らでも軽減は出来る。
「ギュォォォ………ッ!」
「私は空に移動します。貴女も気を付けて」
「………わかった」
立ち上がったシズは、静かに遥か格上の金獅子を睨む。
新たなアタッカーの参加と共に、対金獅子の防衛戦は次の段階へと進んでいく。
★設定
・弩岩竜武器
正式な所有権は竜王国に。
強すぎる力に依存する危険性から、封印されることに。
有事に必要となるだろうことに違いは無いが、平時から用いられることは無いだろう。
・迎撃拠点
特筆するべき設備は無し。
・ボウガン
モンハン世界でお馴染みの遠距離武器。現状、ライトボウガンは生産されていない。
ユグドラシル規格の弾丸が使えない反面、単純な物理火力は高めの水準。
ただし現状、防具普及の問題などから、モノによっては使い勝手が最悪となる。
・〇〇弾
ガンナー諸氏お馴染みの弾丸。
現状、調合する以外の制作手段が無いが、時折失敗したり、増えたりする。
どれとどれを組み合わせればいいのか、現在ナザリック留守番組が手探り中。
・調合
実は、森の賢王が既にそれなりのレシピと『錬金術』を知っていた。
ただし、当然ながら弾丸などの知識は殆ど無い。殆ど無いが、『ビン』を持っている。