《竜》の満ちる世界   作:UNKNOWNと戦いたい

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アンケは明日正午辺りに締め切りたいと思います。


33―来たる龍とは

―――対よ、対よ―――

 

 空舞う龍は歓喜する。その歓喜のままに地を薙ぎ、巻き上げた命を喰らっていく。

 その理由は、逃げ惑う餌たちを追う最中で知覚した、西方の強大な力。

 

―――対よ、対よ―――

 

 対なる龍、風神と雷神は歓喜を分かち合い、雷轟と狂飆を以て迫る二体の敵を吹き飛ばす。

 

「オオオオオオオオオッ!!!」

 

 龍殺しの赤雷を竜巻に乗せ、風と雷を纏う神龍は新天地へと明確な目的を以て移動を開始する。

 より強大な糧を目指し、対なる古龍は舞う。次代の、その更に先の子孫の為にと目指す彼らは、これまでより格段に速く飛翔している。そして、風と磁場で浮かぶ古龍たちがその力を強めることで、空は一層荒れ狂い、大地は裂けていく。そして、逃げ惑うモンスターたちはより明確に西へと流れていくのだ。

 

「キシャアアアアアアアアッ!!!」

「グルォオオオオオオオオッ!!!」

 

 そこに黒蝕龍が、怨虎竜が飛来し、道を阻んだ敵へ、至高なる美食へと牙を剥く。あくまで個人的な意図に基づく攻撃行動であるが、双方とも確かな実力を有しているが故に、確実な遅延としても働いているのだ。本心はどうあれ、無辜の民に助力する形となるのは、運命のいたずらというべきか、何と言うべきか………

 

「………ゥゥゥ」

 

 そして、龍の歓喜による力の余波が、辺境の猛者たちを目覚めさせる。竜たちの足止めが、結果として彼らの備えを盤石にする猶予を作り出す。その目的が生物として当然のものであろうとも、古龍の中でも上位に位置する種である対なる龍のそれは、決して座して見過ごすことのできるものではないのだ。

 

「ルァァ………ッ!」

 

 南西の大森林、エイヴァーシャーの最強が目覚める。毒々しく、また禍々しい紫の極絶角四本を有する飛竜は、不快だとばかりに紫棘に包まれた緑の巨躯を揺らす。種として、一部を除く古龍に匹敵する力を有する『棘竜』が、歳月と共により強大な存在へと至った………『異を辿りし者』は、迫る脅威を前に過去最大の警戒を抱く。

 邪な欲をかいた王の国を亡ぼし、アベリオン丘陵の亜人たちの多くを余波で殺戮してみせた死毒を宿す竜は、静かに立ち上がる。気質自体は温厚なモンスターであるが、一度激昂すれば古龍を凌ぐ力を持って暴れ狂う、災害級の力を見せつける存在でもある。

 

 そして、秘めたるは絶死の劇毒。南方の強者にさえ北上を躊躇わせる程のそれは、彼自身が体内で、中和剤たる『抗毒液』を生成しなければ命が危うい程の劇物であり、スレインの有する毒無効の力、即ちユグドラシルの毒無効では軽減で精一杯という代物。単独で戦う分には兎に角として、戦線に乱入されてはたまらない。

 

 そして、それは他の超越者たちにも言えること。

 

「ルゥゥ………」

「ギュァァァ………ッ!」

 

 グランセル氷原北部。平時、対立関係にある二体の古龍は、揃って南東を睨み、唸っている。

 異を辿りし『司銀龍』と、大陸南方にて鍛え抜かれた『冰龍』………この領域を形作る元凶たる始種『凍王龍』にこそ劣れど、紛れもない怪物たちは、同じ存在を脅威と見做している。それ故にか、敵の敵は味方として一時休戦とし、共に英気を養っているのだ。それこそ、単独であれば彼らの一方でも容易く屠れるのだが、それが二体に加え、不確定要素も感じ取っているからこそ、万全を期す必要がある事を、年月と共に力と知性を高めた龍は理解している。

 

「グルアアアアアアアアアアアアッ!!!」

 

 そして、そんな災厄に挑まんとする超越者は、ローブルにも在る。

 旧プラートに聳え立つ巨山の西部にて、黒き火竜は燃え盛る極絶翼を広げ咆哮。そこに住まう竜たちは、もう一人の王たる黒き火竜を見上げ、思い思いの感情を乗せた咆哮を以て呼応する。期待、信頼、義憤―――――それこそ、覇種と称される域の、歴戦中の歴戦王の、同じく異を辿りし存在でもなければ、対等に立ち並ぶことすら叶わぬ絶対者へと、西方の脅威を感じ取った全てのモンスターが、今だけは肩を並べ嘆願していた。

 

 自分たちでは勝てないからこそ、力及ばないからこそのソレに、番の龍もまた呼応する。

 

「グルルルル………ッ」

「ルルゥゥ………ッ」

 

 煉獄の主、炎国の王妃。黒炎王共々、この旧プラートの巨大火山に住まう支配者。

 紅炎、蒼炎を纏う番が姿を現せば、本来逃げ出す筈の竜たちが視線を上げる。燃え盛る炎に呼応するように火山活動が激化する中、炎帝は『この世の終わり』とばかりに抱き合い、ガタガタと小さくなって震える異形二人を視界の端に捉えるも、欠片も気にすることなく翼を広げる。

 

「ルルル………」

 

 目障り、とばかりに唸るも、それだけ。

 ヒトが生き延びる可能性を手にするならば、それでよし。牙を剥くのであれば、己が力を以て、その全てを焼き尽くすまでのこと。強者たる古龍である以前に、超越者たる覇種の域に至りし古龍は、対等の領域にある者たち以外を、それこそローブルに集う竜たちすらも、等しく下に見ているのだ。

 

 そして、そんな傍観者たちの振る舞い一つで判ることは、今更言うまでもないだろう。

 

 

 その頃、迎撃拠点では。

 

「魔法で祓えず、時間経過で消失する………これは一体、なんなんだ?」

 

 徐々に砂色を取り戻す亡骸を睨み、モモンガは独り言ちる。

 ここは、モンスターの亡骸の保管場。中でも、《保存(プリザベイション)》を用いた場合に除染されない可能性がある、狂竜化モンスターの亡骸を保存する為、わざわざ冷気属性のフィールドエフェクトを発動可能なアイテムを配置した専用の地下室だ。普通の人間は立ち入り厳禁、レベルに気温が低いその場所も、冷気無効の名残で大幅減衰される彼には無関係。

 

「ツアーは古龍の力って言ってたけど………狂わせたとして、何の意味があるんだ?」

 

 モモンガには、生物にまつわる専門知識などない。だが、大自然をこよなく愛する仲間の蘊蓄のお陰で、専門的でなくとも搔い摘んだ知識はある。なんなら、ナザリックの最古図書館(アッシュールバニパル)を漁れば、専門知識を書き連ねた書物も見つけられる筈だ。それくらい、彼………ブループラネットは、大自然というものを、その中にあったとされる営みを愛していた。

 

(いや、リアルの生物を基準に考えるのも可笑しいか?………いやいや、先入観に捕らわれるな)

 

 思考を打ち止めかけるも、彼が心に留めるえげつないさん(ぷにっと萌え)の言葉を思い返し、自身の先入観を無視して思考を続ける。参考資料も無く、うろ覚えの会話でこそあるが、ブループラネット以外にも、住居最悪(恐怖公)の作者を始め、生き物に詳しいプレイヤーも相応数が居た為、記憶をひっくり返せばそれなりの情報が出てくる。

 

「んー………」

 

 生物の進化の法則云々、環境への適応云々と、次々話題が浮かび上がり、それらを整理し続け

 

『餓食狐蟲王の元ネタはですね~』

 

 改めて思うと、仲間たちに深刻な精神的ダメージを刻みかねない会話の始まりを思い出し。

 

『やめやめ!体が痒くなるから!ていうか、寄生虫はカマキリの動画見て以来ダメなんだよ!』

 

 幸いなことに、その時のモモンガは、その詳細を知る事無く終わった。その後、自分から調べてしまい、暫く体が痒くなる羽目になったのだが………その会話の先を思い出した時、ふと思考が冴え渡るように感じた。

 

『ああ、ハリガネムシですか。寄生虫って面白くて、生殖の為に宿主を操ったり―――』

『やーめーろーよー!』

「宿主を、操る………待てよ、そういえば」

 

 医療関係者だった仲間の雑学を聞いていた事を思い出し、必死に記憶を漁る。

 

『この薬はアレと併用すると副作用が―――』

(違う)

『そうそう、この病原体の発見のきっかけはですね?』

(違う)

『この時期に猛烈に流行ってあっさり収束したこの病気なんですけど、感染力が強すぎると却って大流行し難いんですよね。病原体が広まり切る前に宿主が死んじゃうと、それ以上増えることが出来なくなりますし、病原体単体では外部で長生きできませんし』

「………ってことは、病気としてはイマイチなのか?いや待て、これが病気じゃないとすれば」

 

 セバスの回復スキルが作用したのが、龍の力に対してではなく、肉体に対してであれば?

 魔法の効果が薄いのが、病に対してのものだからであり、相手の本質が違う可能性は?

 

「………寄生虫となると、それをばら撒く古龍ってことになるのか………」

 

 ふと、どんなものなのかをイメージしてしまい………

 

「キモッ!?」

 

 思わず、吐き気を催した。吐くもなにも、胃の内容物どころか胃そのものがないというのに。

 

「うわー、うわぁああああああ………いや、この世界にそんなキモい奴もいないだろ、多分」

 

 などと現実逃避気味に楽観視し、一度肩の力を抜く。

 尚、『生殖目的』という点は強ち間違いでも無いのだが、別に寄生虫ということはない。

 

「敵情視察………いや、前にやらかしたし、ここは慎重に」

(剛種のクシャルダオラは反撃も逆探知も無かった辺り、誰も彼もが出来る訳じゃない。となると考えられるのは、あのモンスターが例外的なのか、ワールドエネミー級に強いか。恐らく後者だと考えると、ワールドエネミー級でなければ反撃は出来ないか?………となると、俺一人になれる場所で試すのはアリか)

 

 そしてモモンガ自身、知恵比べとなると多くの者に後れを取るが、頭の回転が悪い訳ではない。寧ろ早い部類であり、だからこそ冷静に情報を整理する時間と、一人静かに思考を回せる環境とがあれば、十分に優秀な男だ。

 

 問題なのは、一度死んだことで死への抵抗が薄れ、自爆まがいの真似を考えていることか。

 

「ワールドエネミー級なら、俺の方から説明して………ナザリックの総力戦だな」

 

 最悪、オーレオールに『あれら』とルベドを指揮させることも視野に入れている。

 そうなれば、現地人の大半は巻き添えを食わないよう、退避して貰うこととなる。

 

「となると、場所は………」

 

 熟考の末、一番被害が少ないと思われる宝物殿の、入口広間へと転移。ユグドラシルの一般入手アイテムの中で五指に入る超強力品により保護された領域で、モモンガは『遠隔視の鏡(ミラー・オブ・リモートビューイング)』を起動。続けて、情報対策系の巻物(スクロール)を使い、前回と同レベルの情報防御、前回と異なり各攻撃への対策を施してから、マーレと共に構築した防壁の、更に先を観察していく。

 

 その手元には、しっかりこの辺境で知られるモンスターのリストも用意されている。

 

「えーっと………よし、まずは森から」

 

 新たにノートを用意して、鏡に映し出される影を一匹たりとも逃すまいと注視。

 

「火竜、雌火竜、斬竜、蛮顎竜―――げっ、あの虫の緑のが………ッ!」

 

 そこで、見た。

 狂える黒狼鳥へと躍りかかり、首を噛み砕き仕留める牙竜の姿を。これまでの狂竜化モンスターとは明らかに異なる体色の変化に加えて、それらがオーラの如く溢れ出す始末………それだけならばまだしも、そのモンスターの姿が問題だった。

 

「あの時の………!」

 

 即座にその存在をノートに書き記し、より注意深く周辺を探る。その結果判ったのは、あまりに多くのモンスターが喰い殺されているというコト。その中には、ヌシと呼ぶべき威容を放っていた、あの紅兜のアオアシラまでもが含まれており、対峙した経験とが、そのモンスターの危険性を強く訴える。

 

「不味いなこれ………っ、竜巻!てことは、この先に―――ッ!」

 

 そして、モモンガは目撃する。

 

 荒れ狂う竜巻を、それを生み出す禍つ風神を。その対なる雷神を、相対する黒き竜を。

 

「おいおい………!」

 

 信じたくはない。だが、目を背けることも許されない。

 

 荒れ狂う暴風の中を確かに翔ぶ黒き竜が四肢と翼を持つことを確認し、余計に憂鬱になろうと、古龍三体の来襲という現実は変わらないし、その内の似通った二体………逆さに浮かぶ、どことなく不気味な容姿の古龍たちが、木々を大地から引き抜くほどの竜巻を起こし、大地そのものを何らかの力で引き裂き、浮かべ、攻撃に転用している事実が覆る訳でもない。

 

「………いや、いや!前向きに考えろ!少なくとも、こいつらが黒いのの媒介者じゃない事は判明した訳だから、元凶はこっちの黒いのだな!それと、この二体とは対立関係にあるから、そこを上手く利用できれば………」

 

 尻すぼみになる声が消え、暫くしてから眉間を指で揉む………揉む肉も無いが。

 

「で、反撃が無い、序でにこっちに気付いてないってことは、強くても剛種級、と思おう」

 

 最低限の、しかし確かな安心があった。事実、種としての格は鋼龍以上であるが、レベルに換算してしまえば100にギリギリ届かない程度。それと相対している黒蝕竜こそ、()()()()()あの時の鋼龍に並び得る力を有しているが、実のところその気質を除けば、争う理由は無い。

 

「………一端、休もう」

 

 モモンガが得た情報を他に共有したのは、そう口にしてから三時間後のことだった。




☆裏話
亡国ルートの場合

1.エ・ランテル近郊壊滅
2.リ・ボウロロール壊滅・多数の難民発生
3.襲撃者は倒れるが、帝国も亡びる




EX.ナザリックが『悪』として動いた場合、『禁忌』or『極み』が来襲する
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