《竜》の満ちる世界   作:UNKNOWNと戦いたい

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王域三公………絶対面白いやつじゃんそれ
ウチでもそういうの盛り込めばよかったかな?


43―邪棘降り立つ防衛線

 爆炎が舞い、砕けた大地が舞い、鮮血と肉片が舞う。

 

「ク、ソがあああああああッ!」

「熱くなるな!待っ」

 

 狂える竜が、獣が、命を喰い散らかす。

 

 その中でも一際異彩を放つのが、山岳が如き巨躯を誇る獣竜。

 

「ギェエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエッ!!!!!!!!」

「並んで、狙って………撃ってッ!」

 

 槌が如き発達した尾、山の如き苔むした巨躯。悍ましい漆黒に包まれたソレを目掛け、数多の爆炎が、鋼鉄の矢が飛来する。その堅殻が焼け爛れ、貫かれる中、しかしその巨躯の持ち主、尾槌竜は動じない。その巨体故、生中な攻撃では決定的なダメージを与えるに至れないのだ。

 

「冗談でしょう………!」

 

 そして、その巨体が暴れれば、それだけで立派な武器となるのだ。多くの者が接近すらままならぬ中で、幾つかの影が颯爽と駆け抜ける。直撃すれば即死、或いは致命傷は免れないであろう巨大質量を掻い潜る彼らは、精鋭中の最精鋭。現地において、最上位の実力者たちだ。

 

「ふんッ!」

「はあああああッ!」

 

 ガゼフが、レメディオスが剣を振り抜き、強固な外殻を割り、肉を切り裂く。

 

「グォオオオオッ!!!!!」

「何か来ます!」

 

 叫び、一斉に散開。大きく強固に発達した尻尾を使い、高速で回転する姿は滑稽ながら、それに巻き込まれ、甲殻ごと骨肉を挽き潰される竜たちを目の当たりにすれば、恐怖の方が遥かに勝る。そして、その回転による加速を存分に駆使し、巨大獣竜が行うのは………跳躍。

 

「っ、全力で逃げなさいッ!死にますよ!」

 

 漆黒聖典隊長の叫びを受け、逃げれられる者は全速力で逃げる。足の遅い重装の者は、陽光聖典が召喚した天使たちにより運ばれるが、特大質量の落下と、それによる衝撃、破壊がどれほどの規模になるかは、誰でも想像がつく。

 

「総員、衝撃に備えてください!」

 

 その怒号の中、ただ一人動かない者が

 

「アレが一番の武器、となりゃ………」

 

 巨塊が迫る。人間は疎か、竜の命すら容易く奪えるだろう、戦槌が振り下ろされ―――

 

「―――――ふッ!」

 

 大地を砕くことなく、宙を舞った。

 

「ギアアアアアアアアアアッ!?!?!?!」

「やるじゃん、アングラウス!」

 

 地面スレスレの前傾姿勢で全力疾走する『疾風走破』が、宙を舞う尾甲を足場に跳び、巨竜の背を蹴る。狙うのは、憤怒に呼応するかのように蒸気を噴出する、巨大なコブ。『急所感知』で探ろうにも、それが可能な距離ではそもそも視界に入ってくれないソレを、彼女は見逃していなかった。

 

「ソコが、一番脆いんだろッ!」

 

 六大神の遺産である双刃が閃き、分厚い皮の下に蓄えられた脂肪の塊を切り裂く。激痛、そして本能的危機感から尾槌竜がその身を揺らす中、彼女は主力武器とは別に愛用しているスティレットを腰から引き抜き、逆手に構え深々と突き刺す。そして、《火球(ファイヤーボール)》の魔法を発動。弱点を内側から破壊した。

 

「ギアアアアアアアアアッ!?!?!?!?!」

「っし!」

「我々も、敗けてはいられんな!」

 

 ガゼフ・ストロノーフが。リ・エスティーゼ王国が誇る最強が、力強く剣を握る。

 

「その通りだな。このまま、ただ突っ立っているだけの木偶の坊扱いはごめん被る」

 

 レメディオス・カストディオが、聖剣を構える。その目に、燃え盛る闘志を宿して。

 

「ギェアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!」

 

 怒り狂う巨竜が吼え叫ぶ。それを魔法で、或いは武技でいなし、二人は巨竜へと果敢に挑む。その巨体が撒き散らす破壊を、その鍛え抜かれた武芸を以て凌ぎ、確かな手傷を刻んでいく。

 

「背中を狙って撃ってッ!」

 

 ビーストテイマー、アウラの指示に従い、彼女が従えるユグドラシルモンスターが攻撃を放つ。背中に集中した攻撃が傷を抉り、下への注意を空へと向けさせる。出し惜しみなしの高レベルモンスターたちだが、相手の多くは生物としてのリミッターが外れ、肉体を限界以上に酷使する狂竜たち。与えた手傷と動作への影響がちぐはぐで、更に真っ向勝負となれば危うい。

 

「ギシャアアアアアアアアッ!!!!!」

 

 狂える電竜が翼を広げ、空のテイミングモンスターたちへと襲い掛かる。

 

「グルァアアアアアアアアッ!!!!」

 

 それを阻むのは、ヌシたる蒼きリオレウス。猛毒を宿す爪を突き立て、業火を叩き込んだ蒼火竜が漆黒の飛竜を大地に叩き落せば、灼熱の刃がその身を深々と切り裂き、吹き飛ばす。倒れ伏すその身を踏み躙り、狂える竜たちが大地を駆ければ、それを阻まんと空の狂竜に侵されていないモンスターたちが、テイミングモンスターと共に、アウラの指示に従い大地を撃つ。

 それが利害の一致によるものか、ただ敵の敵故味方と見ているのかは、誰にも分らない。

 

「少しだけ、動きを止めます………!」

 

 マーレの魔法により、大地から草花が芽吹く。それらはただ綺麗なだけではなく、意志有るモノであるかの如く形を変え、モンスターたちの足へ、体へ、翼へと絡みつく。その僅かな間に大地を割れば、それだけで十分過ぎる足止めになる。そこに、更なる指示が飛来する。

 

「紅蓮が復活しました!皆様、一度退避を!」

 

 瞬間、召喚天使たちが総出で戦士の避難を行い、危険を察知した正常なモンスターたちもそれに続く。難色を示す顔もあったが、それらは指揮官格の人物たちに黙殺され、パンドラの転移魔法による穴が、空へと穿たれる。そこから奔流として流れ出すのは、溶岩同然の性質を持つ巨大奈落(アビサル)スライム、紅蓮。

 その灼熱に、大質量に飲まれ、中型以下の飛行できないモンスターは外部の堀まで押し出され、飛行できるモンスターであろうと、飛んだところを遠距離攻撃に晒される。致命傷には及ばないながら、墜落によるダメージが入るモンスターたちに、紅蓮に飲まれ窒息、或いは焼死するモンスターたち、更には堀が復活したことによる陸路の妨害が加わり、ドラウディロンの攻撃により逃げたモンスターたちの存在と併せ、大分勢力は抑え込めるだろう。

 

「―――――ッ、何か来るでござる!前からも、後ろからも!」

 

 微かに緩んだ空気をぶち壊す、森の賢王の叫びが響く。

 

「総員、体勢を整えなさい!クアイエッセ、索敵を!」

「もうやっています―――ああ、なんてことだ!」

 

 空を見上げ、クアイエッセが叫ぶ。

「全員、全力で逃げなさい!」

 

 続けて、低く響く咆哮。

 

「ォォォォオオオオオオオオオオオオオオオ―――――ッ!!!!!」

 

 空を見上げれば、大きな翼を広げ滑空する、飛竜の姿。そして、地上へと落下するナニカ。

 

「ばっ」

「爆鱗竜だと!?」

 

 丸みを帯びたフォルムに対し、下部に見える異様な凹凸。『爆鱗竜』の名を与えられた飛竜は、その名の由来である体液由来の、赤熱した爆鱗をばらまきながら、禍々しい赤い輝きを纏う巨躯と共に飛来する。地に落ちた爆鱗は即座に爆発し、モンスターの強固な外殻を粉砕し、肉を抉り、更には一目で危険と判る漆黒の粉塵をその場に残す。それは尾槌竜も例外ではなく、あれほどの威容を誇った巨躯は爆撃に包まれた末、見るも無残な屍となり地に沈む。

 

 その規模は、まさしく絨毯爆撃。陽光聖典が召喚天使を空爆からの盾に使うが、それでも完全に防ぐことは到底不可能。軽装戦士は疎か、重装戦士ですら一瞬で跡形もなく消し飛ばす程の破壊の嵐をばら撒きながら、爆鱗竜の体は絶え間なく爆鱗を再生成、投下し続け、決戦の地を焦土へと変えていく。

 無差別、無軌道な爆撃から全員が逃れることは出来ず、陽光聖典の奮戦も虚しく一人、また一人と爆発に飲まれ、蘇生に不可欠な肉体を残すことすら許されず、この世から消し去られる。大地を蹂躙する気高き非道は、その狂気に染まった瞳で、空に浮かぶ『餌』たちを捉えている。

 

「っ、逃げて!」

 

 アウラの悲鳴染みた叫びの中、極限化した『爆鱗竜』バゼルギウスがテイミングモンスターへと喰らい付き、地に引きずり落とす。墜落と同時に爆鱗の爆発に飲まれたモンスターは、見るも無残な姿へと変り果て、爆発によりぐちゃぐちゃになった肉を貪り喰われる。ショック以上の怒りが沸き起こる中、彼女が感情任せに指示を下すより早く、デミウルゴスが口を開く。

 

「アウラはモンスターを退かせなさい!マーレは奴の捕縛を!」

「ッ、復唱します!アウラ様はモンスターの退避を、マーレ様は乱入者の捕縛を!」

 

 純粋な指揮官であるオーレオールが復唱すれば、それはスキルを乗せた指示として、彼女たちの行動にプラスの補正を加える。二重の指示が二人に冷静さを取り戻させる中、大地に降り立つ強力な飛竜を前に、戦士たちは隠し切れぬ恐怖を滲ませている。

 

「マジ、かよ………!」

「ここに、更に西方から何かが来てるとは―――ッ」

「爆鱗竜から離れなさい!早くッ!」

 

 しかし、それだけでは終わらない。

 

「グルォアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!!!」

 

 飛来したのは、瑞々しさと、それ以上の毒々しさを併せ持つ緑。悍ましく発達した禍々しい紫の極絶角が爆鱗竜を貫いたかと思えば、全ての爆鱗が一斉に炸裂。その衝撃で周囲の者たちが吹き飛ばされ、焼け焦げた大地を転がる中、悍ましい漆黒の煙を突き破り、元の色彩へと戻った爆鱗竜の亡骸が放り出される。

 

 その理由を知る聖典部隊は、一斉に顔面を蒼白に変える。

 

「嘘だろおい………!撤収!戦士は全員撤収しろ!」

「待て、クレマンティーヌ!勝手な指示は」

「アレと肩並べろってのか?!何人無駄死させる気だよ!」

 

 不死者以外一切を絶命せしめる、血の一滴までもが致死毒と化した怪物。

 荊棘を纏う邪毒の飛竜は、鮮血に塗れた角を振り払い、大地へと踏み出す。その発達した極絶角から滲む毒素だけでも、空間を満たしていた狂竜ウィルスが急速に力を失い、汚染されていた紫の血は赤く変わる。他ならぬ棘竜自身が独自の抗体を体内で生成しなければ、生命維持すらままならぬほどの劇毒は、古龍の力であろうと完全に死滅せしめていた。

 そう、完全に死滅しているのだ。それ故に、狂竜ウィルスはその肉体を侵すことが無い。強大な竜すらも蝕む病魔だが、流れる鮮血の一滴までもが邪毒である棘竜の身を侵すには、あまりに脆弱。直に体内へと侵入したところで、数秒と保てば奇跡だろう程に、その毒素は激烈であった。

 

「グルルッ、ルァアアアアアアアッ!!!!」

 

 毒血が激しく巡り、血管の痕跡が厚緑殻に禍々しく浮かび上がる。一際激しく毒血が巡る胸部、そして翼膜の根本がより濃い紫色に染まる中、その口からは吸い込まずとも即死できるだけの超高濃度の毒素が漏れ出し、鋭い眼光が狂える竜たちを射抜く。

 

「前線組にゃ悪いけど、ここは一旦完全退避した方が賢明ね」

「………そういうことです。申し訳ありませんが、ここは一時放棄するべきかと」

「しかし、それでは………!」

「なんとか、この高台にでも残れないのか?!」

 

 そんな指揮官格たちの喧騒を置き去りに、邪毒の飛竜は大地を踏み抜き、派手に破砕し疾駆。命の危機を本能的に察知した紅蓮が身を引けば、文字通り致死毒を宿す飛竜は森へと駆け抜け、狂竜たちの蹂躙を開始。幸いにも、その毒の被害は最低限以下に収まったが、迂闊に降りることが出来ないことに違いはない。

 苦しむ間もなく即死する程に凶悪な毒素故、ナザリックの者の一部が降りようとするのを、法国の精鋭たちが必死に静止している。皆が基本として毒無効のマジックアイテムを有しているが、相手はユグドラシルにおける毒無効を容易く貫き、アンデッド以外を問答無用で死に至らしめる邪毒。幸い、全貌を説明する前にデミウルゴスとパンドラが制止してくれたが、この認識の齟齬を改めねば、と隊長たちは心を一つにしたという。

 

「そもそも、あの爆鱗竜とやらの状態は、モモンガ様とアルベドを瀕死に追いやった竜と同じものでした。それを一方的に叩き伏せるどころか、あの数秒で完全に絶命させた毒が、我々の常識の範疇に在ると考える方が早計でしょう」

「いや、本当に。あんな一瞬で色が戻るとか、ワールドアイテムか何かなんじゃないですか?」

 

 竜たちの世界においてすら、辿異種となった棘竜、或いはまだ知られぬ竜が体内で生成する特殊な抗体以外に治癒手段が存在しないもの。そう、治癒すらままならない程に凶悪な毒なのだ。それこそ、自身の体内で抗体を生成しなければ、生命維持もままならない程に。

 それだけの毒を、主要生成器官にして最大の武器である極絶角から、直に撃ち込まれた以上は、並の生物ならば普通に即死。どころか、歴戦王や辿異種の古龍であろうと、致命傷どころでは済まないほどの痛手となる。禁忌の域に在る存在以外では、まず受けたくない一撃だ。

 

「詳細は省きますが、本当に危険な存在です………怒らせた場合、ですが」

 

 あんな凶悪無比、危険の塊のようなモンスターだが、隊長が言う通り普段は温厚なのだ。

 何せ、平時はスレインが有するいかなる武器でも傷を穿てぬほど強固な外殻と、全身を覆う紅毒棘、そこから滲む劇毒と、わざわざ攻撃するまでもない程に、理不尽染みた存在なのだ。言い換えれば、それが自らの意思で立ち上がる今回の事態と、そんな温厚な竜を激昂させたかつてのエルフ王の愚かしさが、どれだけ頭抜けているのかがわかる。

 

「モモンガ様、大丈夫でしょうか………」

「今は、前の事に専念しますよ。ここを守り抜けねば、モモンガ様の頑張りも水の泡です」

 

 響く悲鳴と咆哮をBGMに、臨戦態勢を崩さない戦士たち。

 その遥か彼方では、空が漆黒に染まっていた。

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