《竜》の満ちる世界   作:UNKNOWNと戦いたい

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まさかのミツネ亜種&克服ナズチ………毒に弱い古龍sは克服できるのかどうか


AFT.14―『外』へと踏み出すために

 調査船団の帰還後―――――

 

「それでは、早速で申し訳ありませんが、今回の成果と、今後の方針を確認しましょう」

 

 帝都アーウィンタールに集まった、各国の重鎮たち。

 その手元には、調査船団が得た成果をびっしり書き込んだ、分厚い冊子が置かれている。

 

「いや、改めて可視化されると、凄いボリュームだな………」

「正直に言いますが、これ程の収穫があったこと自体、予想外でしたからね」

「本当に、その通りだ。我が国の立地も、別の意味で考え物だな」

 

 肩を竦めたザナックの言葉に籠る妙な実感に、王国の豊かな土地を知る者たちが真顔になる。

 が、その程度で会議が止まることは無く、漆黒聖典の隊長が粛々と音頭を取る。

 

「今回、皆様から送られた報告を精査した情報は、配布した資料の通りとなります」

 

 国家の枠組みを超え協力する者たちは、既に自国で暗唱できる程に読み通した情報を睨む。

 東方の現状、そして南方での新発見………それらについて、把握できている全てを、だ。

 

「まず、エイヴァーシャー南方の………『死の森』」

「エルフ王、破滅の遠因だね」

 

 ツアーの補足に、納得したように頷く者たち。

 

「やはり、スレインは把握していたか」

「隠匿していたのは、その異常性から、でしょうか?」

「………それと、ヴァイシオン様の仰った件の存在故、ですね」

「エルフ王、といいますと………あの」

「ええ、辿異種棘竜の暴走の原因と考えられる存在です」

 

 空気が冷え切る中、隊長は語らねばならない、として、重い口を開く。

 

「当時のエルフ国の王、デケム・ホウガンが我が国に対する報復として、『死の森』へと何かしらの干渉をしたのでしょう。詳細は不明ですが、当時より行っている監視の結果、あの日を境に瘴気の領域が北上し、ほぼ同時期に辿異種棘竜による暴走が発生しています」

「………成程。原因不明であるのなら、不用意に触れぬ方がよいな。元より、モモンガ殿らが現れるまで、踏み入ることすら出来ていなかったのだ、知ろうが知るまいがそう変わらんだろう」

 

 好意的、というより自棄気味な言葉を零せば、周囲から苦笑が浮かぶ。特にその色が強いのは、アベリオンの代表であるカルカだ。知らなくてよかった、という精神的な負荷が無かったことへの安堵と、知ったことによる『もしかしたら』という危惧が同時に押し寄せるのだ、その心労は察して余りあるもので、特に原因が正確に判明していないことが、最も痛いところだろう。

 

 いつ爆発するかも判らない爆弾が、枕元にあるも同然なのだから。

 

「アンデッドを喰らう霧、アンデッドモンスターの多発地帯………故に死の森、か」

「………アンデッドが喰われる、というのが、一番の驚きだよね」

 

 ツアーの強張った声を皮切りに、自然と話題がそちらに流れる。

 

「そもそも、何故アンデッドが生じる?普通、そうなる前に喰われるだろ」

「現地の視察に向かったシャルティアたちによると、奇妙なモノが付着していたとか」

「瘴気とやらの影響だろうな。だが、その正体はなんだ?」

「カッツェ平野の霧………は、違うのでしたね。しかし、そうなると一体?」

「生きている、放ったアンデッドが喰われ、乗っ取られた………古龍に由来する物か?」

「可能性としては、高いかと。彼の竜は古龍に並ぶ存在である以上、それが警戒するというということは、古龍かそれに比肩する存在となります。そこまで可能性を絞り込んだうえで、広範囲に影響を及ぼす存在、となりますと、それくらいしか考えられないでしょう」

 

 わかりやすい危険地帯。しかし、手を出した場合のリスクも重大である以上、何をするにも慎重を期す必要があるのだ。特に、万一の際に猛威を振るう存在である『禁忌の邪毒』たる棘竜の長老が有する毒も、その肉体に秘めた膂力も、古龍にとってすら恐るべきモノ。過去の惨劇の原因がそこに在る以上、迂闊な真似はそのまま我が身を滅ぼす結果に繋がってしまう。

 

 一方で、手をこまねいている訳にもいかない理由が、確かに存在しているのだが。

 

「しかし、そこを超えなければ、新天地に到達できないわけだ」

「東方は新天地こそありませんでしたが、生存圏を広げるなら今のうちでしょう」

「今後の遠征の中継地という意味でも、嬉しい立地だろう。問題は、龍の進路か」

 

 外界への進出の足掛かりが欲しいというのは、是が非でも欲しいもの。飛行船という移動拠点の積載量や、乗員の精神衛生、転移魔法の中継地という意味でも、どこかしらに新たな拠点を作成する必要が出てくるのだ。そうなった場合、現状最も事を運びやすいのが東方で、非常に困難なのが、大砂漠方面。死の森については、現状では除外している。

 

「ニグレド殿の観測によると、こちらに来る気配はない、とのことですが?」

「希望的観測も出来んだろう。第一、それの立ち去った跡地は綺麗に抉れていたというぞ?」

「接近を早急に把握できる観測網と、対空防御能力が必要………他とあまり変わらないな」

「いえ、接近されること自体が危険なのですから、他より空への備えを充実せねばなりませんよ」

 

 結果、最も手を伸ばしやすい、東方の森に白羽の矢が立ち、議論がそちらに流れていく。

 

「そうなると、次は中継拠点建設地の選定か………早急に事を運ぶ必要があるな」

「全面的に同意だな。モンスターが現れてからでは、苦労することになる」

「そうなると、知見に優れた者と、一定の人員を同行させるべきか?」

「いえ、人員の輸送は転移魔法で行いましょう。そこまで大勢手配する時間はありません」

「知見が欲しいなら、お抱えのを出せばいいからな。その点では、楽なもんだ」

 

 どの国も、土地を切り拓き、都市を作り上げてきた実績があり、そこに至った知見がしっかりと残されている。無論、それを学び、実際に都市や開拓村の建設地の選定に携わる者も存在しており、移動都市の形を取る竜王国、アベリオン丘陵内でやり繰りしている聖獣連合以外であれば、人材も育っている。

 

「では、当面は東方の中継拠点建設に注力、という形でよろしいですね?」

 

 大まかな方針を定めるのは、円滑な物資運用のため。

 隊長の音頭により、諸国代表の見解が一致したことで、本格的な議論に移っていく。

 

「立地上、管理は我が国が主導する形で構わないな?」

「それでいいだろう。我々からは、物資の提供を主としよう」

「あとは、人員か。ウチの重鎮たちに特別手当を出さなくてはな」

 

 最も近い帝国が管理を主導することに異は無く、話は続く。

 

「護衛の為、アダマンタイト級冒険者に依頼を出しましょう」

「今回ばかりは、高ランクの冒険者や腕の立つワーカー、精鋭兵を出すべきでしょうね」

(ウチからは………建設関係だとデミウルゴス、パンドラ、戦力的にはシャルティアか?いっそ、マーレの魔法で森を吹っ飛ばすって手もあるけど、それは流石に手荒か………アウラにも仕事をあげたいし、持ち帰るべきだな)

 

 モモンガも思考を回すが、本人たちの希望を優先することを決める。

 

「………この場で打ち合わせるより、一度国に戻るべきだろう。急を要するとはいえ、ここで決定できることはそう多くない以上、初動に必要なのがどのような人材であるかが判ったのだからな」

 

 私もこの場で決定できることは多くないし、と内心で零すモモンガだが、それは皆同様。

 堅苦しい話は終わりの空気となり、皆が一様に肩の力を抜いた。

 

「はぁー………古龍がポンポン現れるというのも、考え物だな」

「こっちに来ないらしいのは有難いんだがな」

「私としては、『死の森』とやらに早急に対処したいところ、なのですが………」

「詳細が分かりませんし、我々からはなんとも………排除したいのは、同意ですが」

 

 話題が流れる中、モモンガは一人『死の森』について思索していた。

 

「………棘竜が抵抗できるということは、霧は炎、或いは毒に弱いのか?となると」

 

 彼にあって現地に無いものに、医学的、生物学的な知識がある。

 病気がバッドステータスの一種で、魔法により治癒可能な世界故に、そういった方面が発展していないことで、医学の発展が起きていない。加えて、モンスターの存在に対する研究もまた、この辺境ではあまり進んでおらず、分類も特徴や骨格からの大雑把なものとなっている。

 

 だが、ナザリックには、それらに深い造詣を持つ者が多く、また彼らの遺した書物もある。

 

「………炎に弱いアンデッド、或いは毒が有効な生物?駄目だ、情報が足りないな」

(………両方に該当するのは、植物系くらいだけど………ちょっと調べてみるか)

 

 アイテムボックスから、最古図書館から引っ張り出したままだった本を出し、開く。

 

『かつて存在した生態系では、生産者と消費者に、分解者があり、植物は生産者に―――』

(分解者………分解?)

 

 引っ掛かりを覚え、分解者について触れている頁を探し出す。

 

『分解者とは、自然界における動植物の死骸等の有機物を分解し、無機物に―――』

(死骸………けど、アンデッドは設定上、厳密には違う筈だ)

 

 ユグドラシルの設定上だと、アンデッドは負のエネルギーで活動する生命体だ。

 負属性のエネルギーで守られている為、腐敗しない、という設定まで練られている程だ。

 

(いや、けど腐敗も分解の一種だっけ?誰かが言ってたな………とりあえず、調べてみよう)

「………主な分解者は、小さな虫などの他に、細菌類、菌類、カビ………んん?!」

 

 そこにある、一枚の写真に目が留まる。

 

(確かアウラたち、ふわふわしたものがー、って言ってたけど………まさか、これか!?)

 

 古い時代のものであるが、確かなカビの写真。それを目にして、大いに驚いた。

 同時に、納得も出来た。勝手に植物系と判断しているが、その弱点として理解できたからだ。

 

「………これが正体だとすると………分解されている、ってことか………」

 

 アンデッドが喰われた、と判断されたものが、この腐敗と同様の分解現象であるとするなら。

 

「………」

「モモンガ、随分と驚いていたようだが………それは?」

「ああ、いや。死の森、とやらについて、考えていたんだ。それで、これは仮定に過ぎないが」

 

 本を流し読み、組み立てた仮説の軽い見直しをして、静かに息を吐く。

 

(………アンデッドの防護を貫通している訳だもんな。それだけの力があるってコトは、恐らく)

「死の森とやらは、アンデッド以外であろうと容赦なく食われる可能性がある」

 

 恐ろしくも、納得のいく可能性だった。それならば、領域拡大を忌み、激怒することも当然だ。

 

「………恐ろしい話ですね。ですが、どうやってその結論に?」

「あー………ユグドラシルの時の知識のお陰、だな」

「なんと、そのような知識があったのですね」

 

 あくまで仮定に過ぎない、と念押しするモモンガだが、霧の正体に迫りつつある中で、新たなる疑問もまた芽生える。その霧を古龍が操っているとして、如何な手段で制御しているのかという点と、何故アンデッドが存在できているのか。それ自体は、実に簡単に結論が出る。

 

「そう考えると、森の主は………死霊系の魔法使い、ネクロマンサーの可能性があるか」

 

 そうなると、実のところモモンガにも大いに可能性が出てくる。

 

(………エクリプスは無くなったけど、まだほぼ全職死霊系だし。ワンチャン、アンデッドの支配を奪えるか?けど、下手な干渉が危険な時点で実験の類は控えておきたいからな。やるにしても、ぶっつけ本番か………あー、ヤダヤダ)

 

 情報を集め、対策に対策を重ねるモモンガからすれば、泣きたくなる状況だ。

 

 が、手の施しようがある分、まだマシな部類か。アンデッドの支配を奪えるのであれば、敵から手数を奪うことに繋がり、最悪辿異種棘竜に丸投げも出来るのだ。元凶となる存在さえ打倒出来れば、最悪紅蓮を投入し、丸ごと焼き払うことも出来る。古龍相手には心許ないとはいえ、紅蓮自身が溶岩同然の超高温の奈落(アビサル)スライムである為、霧の正体がカビであれ微生物であれ、まず干渉できないだろうからだ。

 

(ま、今は東方に注力だ。急いては………失敗する、的なことも言うし)

 

 決定を覆す程のものではない、として、モモンガは思考を切り替える。

 

 現状、最も安全に進めることが可能と思われるプロジェクトだが、重要性は非常に高い。

 というのも、主目的が飛行船による外部遠征の中継基地である上、今後モンスターが再度根付くことが予想される森林の中に建設するのだ。完成後の維持は従来の都市より数段難しいだろうことは想像に難くなく、これまでと異なる形となることだろう。

 

 それ故に、パンドラかデミウルゴスを送り出したい、というのが偽らざる本音だ。

 

(今度、ボーナスでも出すか………どれくらいがいいんだ?経営学の本あったっけかな)

 

 そんなことを考えながらも、有益なものを探し、モモンガは雑談に耳を傾けた。






・『死の森』の主

状況証拠&リアル由来の知識で能力の片鱗がバレた龍。


実のところ、ワールドアイテムを持たせた紅蓮とモモンガの二人だけで完封も可能。
このモンスター自身が炎に弱いことと、ワールドアイテムで瘴気侵蝕、超高温の体で瘴気攻撃を無効化可能な紅蓮なら、高い耐性を持つ物理攻撃で殴る以外の有効打を奪える為。モモンガが必要なのは、アンデッドの支配権を奪い、属性攻撃手段を完全に封じる為と、適宜回復アイテム等で支援する為。

一方、この組み合わせを含まない面々が相手では、かなりの強敵となる。
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