《竜》の満ちる世界   作:UNKNOWNと戦いたい

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オバロ世界にモンハンを突っ込んだ小説、はっじまっるよー!


本編―――竜の満ちる世界
00―《龍》


 ―――竜帝による、世界の汚染。最悪のソレに呼応したのは、同じく最悪の存在だった。

 

「なんなんだよ!なんなんだよお前!?炎は完全に―――」

 

 砂漠が、築き上げられた都市が―――瞬く間に焼け落ち、形を喪っていく。巻き込まれた者たちが瞬く間に蒸発していく中、数名は直ぐ形を取り戻す。しかし、絶対の自信を持つ防御を貫かれた恐怖でか、その存在が呼び起こす恐怖でか。どちらにせよ、戦闘の意思はほぼほぼ潰えていた。

 

「い、嫌だ!死にたくない!死にたくっ」

 

 グシャリ、と。強靭な顎が戦意を喪った者を食い殺す。

 

「あ、あああああああ!!!」

 

 直ぐに蘇ったソレは我武者羅に叫び、使える限りの魔法をその体へと叩き込んでいく。明確な傷が刻まれたことで、恐怖に呑まれていた者たちは希望を見出し、表面上は威勢を取り戻し、無謀にも躍りかかる。

 

「死ね、クソドラゴンッ!」

 

 その手で握り締められた武器は、その甲殻を容易く斬り裂く、ことは無く。

 

「グルルゥゥ………ルァァァォッ!」

 

 ボディプレスにより、斬りかかった者が逆に下敷きになる。

 

「あづっ、あづいいいいいい!?なんっ、あああああああああッ!!!」

 

 奔るのは、喉が裂けんばかりの絶叫だ。

 

「あづいあづいあづいあづいいいいい!!!たすっ、たすけっ」

 

 その身に纏う鎧がドロドロに溶け、纏う者諸共、その指に収まる指輪諸共、絡み付くように黒龍の体躯を流れていく。何故か、男が蘇る事は無く、虚勢と共に挑みかかっていた者たちは一様に沈黙した。

 

「ルルゥ………ルァアアアアアアアアアッ!!!」

 

 或いは、信じたくなかったのだろう。苦労して得た蘇生アイテムが、全くの無意味などと。

 その数秒の硬直の間に、漆黒のドラゴンはこれまでの比ではない劫火を放つ。世界を焼き尽くすかにすら思える獄炎に呑まれた者たちは数秒でその形を喪い、その場で蘇生と死を繰り返す。音を伝えるモノすら失われた中で、苦痛と恐怖、絶望の断末魔を誰かに届けることなく、七人は空に浮かぶ居城と共に、その生涯に幕を閉じる事となった。

 

「ルルル………ッ」

 

 勝利者のその姿は、まさしくドラゴンだった。蛇を思わせる細い体躯、蝙蝠を思わせる翼に、体躯に不釣り合いとも言えるサイズの四肢。漆黒の鱗が織り成す甲殻を持つソレは、紛れもないドラゴンでありながら、この世界に住まうそれらより遥かに異様で、異質であった。

 

「………なんという………」

 

 のちの白金の竜王(プラチナム・ドラゴンロード)、若き日のツァインドルクス=ヴァイシオンは、遥か彼方より知覚した、世界を汚した悪鬼………後に、八欲王と称される八人の存在が迎えた惨状に、それを成し遂げた、たった一匹の龍に、恐怖を抱いた。大地を焼く業火に照らされ、鈍く、暗い光を放つ黒き龍の金色の瞳が、遥か彼方からその存在を探るこの世界の竜を知覚し、鋭く吼える。

 

「ルァゥ、グルァアアアアアアアアアアアッ!!!」

 

 心臓を鷲掴みにされたかのような、原始的且つ本能的な恐怖を呼び起こす、恐ろしくも雄々しいその咆哮を、生き残った竜王たちは決して忘れないだろう。数多の同胞を素材呼ばわりし、屠り続けた邪悪を、醜悪を一匹で滅ぼしてみせたその存在は、その夜を以て世界を()()()()()切っ掛けとなった。

 

 彼らは、彼の惨状を目の当たりにした者たちは、主犯たる龍を、後にこう呼称する。

 

 

 『伝説の黒龍』―――と。

 

 

 

 時は流れ―――異常な暴風雨の最中。

 

「急げッ!」

 

 鋭い怒号の中、人々が逃げ惑う。

 

「皆さん、落ち着いてこちらに!無闇に逃げては却って危険です!」

「お前たちは避難誘導に加われ!ガガーラン、もしもの時は()()を食い止めるぞ!」

 

 フード姿の少女吸血鬼(ヴァンパイア)が叫び、森の奥へと目を向ける。

 

「オレもいよいよ、お終いかねぇ………!」

「我々陽光聖典が援護する。最悪の場合、我々の召喚天使を囮にして逃げるぞ」

「それは、何とも有難い事だな………!」

 

 表情を引き締めた、鎧姿の戦士二人の背後で、衣服鎧の男がそう告げる。類似した装束の者たちが次々天使と思しき異形を召喚する中、前に出ている者たちは、森林をかき分け現れた『ソレ』を正常に知覚し、息を呑み、手中の武器を強く握り締める。

 

「ルル………」

 

 それは、龍だった。四肢を持ち、体躯に対し極端に大きなボロボロの翼を、その体躯相応に細くしなやかで、独特な形状の尻尾を、角を有するドラゴン………その全身は、鋼鉄の鱗とそれが織り成す屈強な外殻が覆い隠し、肉と呼べるような箇所は殆ど見えない。赤茶けた外殻の中で鋭く光る青の瞳で眼前の人間を捉えたソレは、有り余る苛立ちをぶつけるかのように前足で地面を蹴り、その体躯を持ち上げる。

 

「ギュルアアアアアアアア―――――ッ!!!」

 

 瞬間、身構えていた者たち諸共、()()()()()()()

 

「ぐ、《飛行(フライ)》ッ!」

 

 空で体勢を立て直したフードの吸血鬼は、眼下の惨状を、それを生んだ龍を、赤い瞳で睨む。

 

「《錆鋼龍(せいこうりゅう)》、クシャルダオラ………!」

 

 その身を錆に蝕まれたドラゴンは、自身に纏わりつく錆びた外殻の残滓を撒き散らし、巻き起こした暴風により体勢を崩された者たち目掛けて大地を蹴る。そうはさせまいと、フードの少女イビルアイは手をかざし、鋭く叫ぶ。

 

「《結晶散弾(シャード・バックショット)》ッ!」

 

 放たれた拳大の結晶による散弾は、しかしその身に纏う暴風を貫けず、そのまま反射。

 

「チィッ!魔法抵抗突破(ペネトレート)最強化(マキシマイズ・マジック)、《水晶騎士槍(クリスタル・ランス)》ッ!」

 

 魔法的貫通力、並びに威力を底上げした一撃は、確かに風を貫き―――砕けた。

 

「これでもダメか………!?」

 

 そして、その事実故に、クシャルダオラは小さなアンデッドを明確な『脅威』と見做した。

 

「ルォオオオオオッ!!!」

 

 翼を広げ、翔ぶ。明確な敵と見做した存在へと目掛け、極低温の風を纏い飛翔する龍と比べて、イビルアイの飛行能力はあまりにも拙い。だが、この世界の古き力を、竜帝の失策により広まった力を有するドラゴンではなく、異物の身から世界に定着した存在であり、あくまで異物であるが故の、ディスアドバンテージは確かに存在している。

 

「ぐ、《次元の移動(ディメンジョナル・ムーブ)》ッ!」

「ルゥッ!?」

 

 ごく短い距離の転移であるが、相手の速度に合わせれば確実な回避ができる。

 飛行能力に優れていたが故の欠点であり、それ故に生じた微かな隙だ。

 

「《重力反転(リヴァース・グラビティ)》!」

「ルゥッ、ギュルアアアアアアッ!!!」

 

 重力に干渉し、一時的に行動を阻害できたものの、即座に風による姿勢制御に移行した錆鋼龍は、仕返しとばかりに強烈な風を口元に収束させ、一気に解き放つ。その威力は、咆哮と共に生じた暴風の比ではなく、無策で受ければ文字通り即死だろう。

 

「っ、《転移(テレポーテーション)》ッ!」

 

 上位の転移魔法で大きく距離を取り、先と同じ水晶騎士槍(クリスタル・ランス)を叩き込む。

 

「感謝する、蒼薔薇の!」

 

 そして、その間に立て直したらしい地上から、無数の天使が飛来する。

 

「天使で動きを止め、《(ポイズン)》の魔法を叩き込め!奴は毒に弱い!」

 

 交戦経験は、そう多くは無い。しかし、鋼龍と、類似した骨格を持つある龍は、毒に弱い。厳密に言うならば、耐性を上回る毒に蝕まれた場合、その能力を十全に発揮できなくなると判明しているのだ。鋼龍の場合、風の鎧を形成することが出来なくなることが、記録として残されている。

 

「こりゃ、オレたちは見学だなぁ」

「地上に下ろせれば、我々でも戦えるものを………!」

 

 空でイビルアイが、炎の上位天使(アークエンジェル・フレイム)が果敢に挑みかかるも、天災の現身たる龍を相手に、明確な隙を作り出すことが出来ない。天使を使役する一団、陽光聖典が次々天使を呼び出すも、彼らにはクシャルダオラに毒を打ち込む役割も残っており、魔力の損耗は抑えねばならない。

 

 そう、長期戦は不利―――故に隊長、ニグン・グリッド・ルーインの決断は早かった。

 

「副隊長!最高位天使二体を解放する!古龍が相手だ、出し惜しみは出来ん!」

「ハッ!」

「俺たちに出来る事は?!」

「盾もないお前たちでは、防御も無理だ!次に備えておいてくれ!」

 

 焦燥からか、叫びによる応酬となるが、互いに不信や不快は見られない。

 

「ッ、天使を散開させろ!ウチのボスが構えてるぜ!」

 

 そして、その叫びだ。

 

「来たれ、威光の主天使(ドミニオン・オーソリティ)!」

 

 ニグンの、彼の副官たる副隊長の手中の水晶―――魔封じの水晶が砕け散り、秘められた魔法が効果を発揮。激烈な暴風雨の中、翼の集合たる異形でありながら、神々しさを放つ神秘的な存在が降臨する。

 陽光聖典が所属する国の切札天使―――その魔法火力()()であれば、文字通り最高峰だ。

 

「ルァアアアアアアアアォッ!!!」

「させるか!魔法最強化(マキシマイズ・マジック)、《水晶防壁(クリスタル・ウォール)》ッ!魔法最強化(マキシマイズ・マジック)、《水晶防壁(クリスタル・ウォール)》ッ!」

 

 転移魔法で回り込み、水晶による防壁を展開。一撃受ける度に何枚も纏めて砕け散るソレを、必死に短時間で連発し続けていけば、当然イビルアイの魔力はどんどん減っていき―――その僅かな時間の間に、多くの状況が整うのだ。

 

「超技―――『暗黒刃超弩級衝撃波(ダークブレードメガインパクト)』ォッ!」

「ギュルッ!?」

 

 莫大な魔力を注ぎ込んでの、強力な衝撃波がクシャルダオラを襲う。

 

「畳み掛けるぞ!《善なる極撃(ホーリー・スマイト)》を放てッ!」

 

 天使の手中にある錫杖が砕け、威力を底上げされた魔法が二発、叩き込まれる。立て続けにこれまでより格段に重い攻撃を受けた錆鋼龍は、大きく体勢を崩しふらつく。そして、その隙を逃すまいと、バラバラに待機している天使を足場に果敢に飛び掛かる男が。

 

「おおおおおおおおッ!!!」

 

 鎧姿の戦士、ガゼフ・ストロノーフが、雄々しい咆哮と共に飛ぶ。

 

「『閃光烈斬』ッ!」

 

 一撃―――しかしそれは、この辺境における最強の一角たる男が有する、最強の武技だ。

 そして、その手に握られる剣は【剃刀の刃(レイザーエッジ)】。魔法による強化を施した武具であろうと、軽々切り裂くことが可能な魔法の刃は、武技による一撃と共に強固な錆鋼の外殻を切り裂き、クシャルダオラに確実なダメージを与えた。

 

「ギュアアアアッ!?」

 

 それが最後の一押しとなり、クシャルダオラは墜落。

 

「今だ!《(ポイズン)》を叩き込め!ガガーラン殿は、終わり次第天使と共に!」

 

 大地にその巨躯を叩きつけた龍を目掛け、莫大な量の毒魔法が殺到。風の鎧の消失を確認次第、天使が、ガガーランと呼ばれた戦鎚使いが躍りかかる。天使が生み出した光の剣が、【鉄砕き(フェルアイアン)】の名を持つ戦鎚から放たれる武技『超級連続攻撃』の容赦の無い猛攻が、鋼鉄の龍を攻め立て―――

 

「ギュルアアアアアアアアアアアアッ!!!」

「ぐ、おおおおおお!?」

「ぬぐ、おあああああ!?」

 

 咆哮、それと共に生じた暴風により、纏めて吹き飛ばされた。

 確かにダメージはあるが、それだけ。致命傷に届かないどころか、眩暈を起こす事すら出来ていない。毒が通じると言っても、絶え間なく浴びせ続けなければやがて耐性が上がり、通じなくなる。何より、よく通じるからと言って、それだけで仕留められる程、古の龍は脆弱ではないのだ。

 

「ッ、逃げろおおおおおおおお!!!」

 

 イビルアイが叫ぶ中、彼女は疎か、反撃に転じるべく構えた炎の上位天使(アークエンジェル・フレイム)を、それを少しでも長持ちさせんと構える監視の権天使(プリンシパリティ・オブザベイション)を、次なる魔法を準備していた二体の威光の主天使(ドミニオン・オーソリティ)を、途方も無く巨大な、錆鋼混じりの竜巻が飲み込む。

 

 そして、その暴威は必死に勝算を探っていた陽光聖典を、ガガーランを、そこに加わらんと駆けてきたガゼフを飲み込まんと、大地を抉り突き進んでいく。アンデッドであり、肉体へのダメージを変換する術に長けたイビルアイでさえ、ギリギリで脱した頃には五体の大半を喪失するソレに、人間である彼らが耐え切れる筈がない。

 

(クソッ!アレに飲まれれば、間違いなく蘇生は出来ない!ああ、ああああああああ!!!)

 

 無力感に、絶望感に飲まれ、イビルアイが骨剥き出しの口を噛み締める。そして、竜巻が―――

 

魔法三重(トリプレット)最強化(マキシマイズ・マジック)、《現断(リアリティ・スラッシュ)》!」

 

 三つの斬撃に裂かれ、霧散。その斬撃が、そのまま錆鋼の龍へと深い傷を穿った。

 

「ギュアアアアアアアッ!?!?!」

「な………」

 

 片方を喪失した赤い瞳が、地上へと向く。続けて、硬い骨の感触と衝撃。

 

「がふっ!?」

「おっと、すまない。落下の衝撃を考えていなかった」

 

 余裕の感じられるその声に驚き、顔を上げる。

 

「『誰かが困っていたら、助けるのは当たり前』だからな」

 

 そこに居たのは、死を体現したかのような、不死者の王であった。




★設定

・??????

『伝説の黒龍』。八欲王を一夜で滅ぼし去り、世界を《竜》で満たした。
現在、大地に堕ち荒廃した『空中都市』を寝床としている。


・ユグドラシルのモンスター

生存競争に敗北し、高い知性を持つ亜人の類やアンデッド以外はほぼ絶滅。
アンデッド多発地帯の、とある平野はある竜の餌場とも。


・現地レベル
レベルによるステータス上昇が殆ど消えた反面、大半が素でレベル80~90程のステータスを有する。その為、戦士は職業に応じステータス補正を得て強くなる半面、魔法職は位階が中々上がらず。


・リ・エスティーゼ王国

原作通りの立地に在る、肥沃な土地を持つ国。その肥沃な土地故、非常に強力なモンスターが多発しており、冒険者頼りも出来ず、腐敗するだけの余裕がない。


・スレイン法国

人類の守護者(真)。今回、王国の異常気象の報を受け、陽光聖典を派遣。
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