それが、いつの時代のものだったのか。いずこの大地を照らしたのか。そして、いかなる世界線のものであったのか。とある村に、いつもと変わらぬ朝日が昇った日の出来事であった。
──日の光に照らされた村の石畳は、徐々に
異変を感じ取った村人達は目を覚まし始め、自然とその輝きを囲んでいった。その明らかに非常な光景を前にして、人々は何故か不可思議な安堵を覚え、呆然として見とれた。
──輝きは広がり、ほのかな暖かさすら感じられる。眩しさに耐えながら目を凝らせば、その内部で石畳が砂状に崩れて宙を舞い、新たな「何か」を再構築していくのがわかる。
好奇心や警戒心、期待や畏れ、恍惚に感動、人々の感情が最高潮に達した次の瞬間、輝きは閃光となり、彼らのまぶたは無理矢理閉ざされた。
──光が、緩やかに、緩やかに弱まっていく。小さくなって別れた光一つ一つが、白銀の蛍となり、空へ昇って消えていく。
村人達は警戒しながら細目を開けたが、結局のところその目は大きく見開かれることとなる。
夢と疑う現象とともに、想像は軽々と超えられてしまった。広場の中心には、石造りの祭壇のようなものができあがっていたのだ。
祭壇の側面には見知らぬ文字列、壇上には魔法陣のようなものが刻まれていて、現象が自然的に起こったものではないことが窺えた。しかし、中でも村人達の目を引いたのは、壇上の中心であった。そこには重厚な雰囲気を纏った両手持ちの
沈黙を破ったのは誰かの感嘆の声。村人達は恐る恐る、一人、また一人と祭壇へ引き寄せられていった。凝視する、触れてみる、登ってみる、踏みしめてみる、各々が別々の興味を示し、祭壇に人だかりを作っていった。
その中に、「少年」はいた。
出遅れた少年は人だかりの後ろの方にいて、その周りをうろちょろしていた。その先にあるものをどうしてももう一度見たかったのだ。水面から顔を出して息継ぎをしようとするみたいに、必死に背伸びをしてみたり、ぴょんぴょんと跳んでみたりしたが、どうも水位が高くて見えない。とうとう痺れを切らした少年は、人だかりの中に潜っていった。ぎゅうぎゅうに押されながら少年は人をかき分けて進んだ。朝日が昇っているのに、周りは人で固められて真っ暗で、色んな臭いがしたのを覚えている。それでも進んだ。まだ小さい体で、必死に手を伸ばした。その手がとうとう祭壇の端を捕らえる。少年は指に力を込めて自分の体をグッと引き寄せた。
景色が開けて、透き通った空気が肺に流れ込んでくる。少年は初めて、空気はおいしくなるものだと知った。
息を整え、壇上を見据えた。目の前には、自分よりも背の高い剣が、その荘厳にして厳格な出で立ちを持って佇んでいた。村の力自慢が引き抜こうとしているが、微動だにしていない。
二度目の興奮が、今度は言い知れぬ歓喜を伴って湧き上がってきた。思わず笑みをこぼしてしまう。
──瞬間、剣を瞳に映し少年は直感した。言葉ではなく、肌で感じ取った。自分が生きるこの世界に、計り知ることなど到底に不可能なほどの希望が溢れていることを。