にじさんじ▶︎パラライブ   作:大羽ひつじ

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オリキャラ、オリ設定注意。小説というよりシナリオです。


3-3, 邂逅と決別

〈十三〉

 

太陽がその身を落とし、夕日へと姿を変える。

切り立った崖の途中地点、自然によって作られたであろう段差に、土まみれの手がかかる。

一畳分程もあるその段差に、よじ登って腰を下ろすエクス。

手の土をはらい、上がった呼吸を整える。

その後エクスは、段差の端に手を伸ばす。

何かを手に取り、それを満足気に見た後、(ふところ)にしまう。

エクスは立ちあがり、服の汚れをはらうと、そこから見える景色を一望する。

 

エクス「よし。…ん?」

 

ふと、眼下の森林に目を凝らすエクス。

森林の中、アルスが幼女と手を繋いで歩いているのが見える。

 

エクス「…師匠?」

 

〈十四〉

 

アルマル宅前。集まっていた村人達が、家の中から外に出て行く。

宅内。ベッド横の引き出しに手をかけるアイデン。

 

アイデン「村長殿」

村長「なんですかな」

 

引き出しを開け、中からたたんで封をされた手紙を取り出し、それを村長に差し出すアイデン。

 

アイデン「これをお渡ししておきます」

 

受け取る村長。

 

村長「これは?」

 

アイデンは答えようとするも、玄関外の騒がしさに気が取られる。村長もまた、玄関外の方を見やる。

玄関の外では、女の子達が、外に出た村人達に何かを訴えている。

 

女の子「もう夜になるのに、二人ともどこにもいなくて!多分ね、森の中に入っていっちゃったと思うんだけど!」

 

女の子はそう言って、両手に握りしめたものを村人達に必死に見せつける。

踏み潰されたようにくたびれきった花束を。

 

〈十五〉

 

暮色蒼然(ぼしょくそうぜん)とした森林。

手をつないだアルスと幼女が、おぼつかない足取りで歩みを進める。

二人とも心ここにあらず、(うつ)ろな目をしている。

不意に、アルスが片手にぶら下げた本が微光(びこう)を発し、「キラキラ」を(ただよ)わせる。

それがアルスに触れる。

すると正気になり、立ち止まるアルス。

戸惑って辺りをキョロキョロし、しばらく棒立つ。

構わずに奥へ進んでいく幼女の背が見える。

アルスは駆け寄り、幼女の前へ回り込む。

 

アルス「ねえ!もう帰らないと皆心配しちゃうよ?」

 

アルスを無視して進む幼女。

もう一度回り込んで、今度は肩をゆするアルス。

 

アルス「ちょっと!セポネちゃん!」

 

アルスの本が再び微光を発する。

光が干渉し、正気になる幼女。

 

幼女「アルス…ちゃん?…ここは?」

 

キョロキョロする幼女。

アルスは胸をなで下ろす。

 

アルス「わかんない。だけど早く帰らないと――」

 

咀嚼音(そしゃくおん)。アルスの頬に赤黒い飛沫(ひまつ)が散る。アルスは顔をしかめ、指で頬を拭く。

指先に付着したその液体は、まもなく干からびてアルスの指にこびりつく。

 

アルス「…え?」

 

突然、隣で幼女が声にならない悲鳴をあげる。幼女に目を向けるアルス。

飛沫が飛んできた方を見てこわばっている幼女。

……アルスも、幼女が向く方へと、首を動かす。

アルスの目が愕然(がくぜん)()かれる。

 

夜が来る。

 

(うな)るような音を立てて呼吸をする「それ」。二人の目の前に、山なりにそびえ立つ、瘴気(しょうき)を漂わせた土砂岩石(どしゃがんせき)の塊。ここかしこに血のしみがこびりついた体表面中を蠕動(ぜんどう)させ、その最中(さなか)、体のあちこちにできた隙間からは暗赤色(あんせきしょく)怪火(かいか)が漏れ出ている。たじろぐ二人の背中。

「それ」の体表が一部隆起すると、そこから巨大な魔手が土砂の皮膚を突き破り飛びでてくる。

怪火を垂れ流し、百足(むかで)のようにうねる魔手。

瘴気につられて「それ」に近づいた、虚ろな目の動物たちがいる。そのうちの狼を一匹、魔手がわしづかみにし、「それ」の方へと持っていく。

狼は完全に脱力し、魔手に身を委ねている。魔手が触れている部分から、目に見えて水分が消失していく。毛並みが荒れ、皮膚が粉になってこぼれ落ち、干からびていく。

「それ」の天辺(てっぺん)が盛り上がり、変形する。

怪火が(したた)る横並びの空洞が二つに、大小の岩石を無理に噛み合わせた歪な歯並び。顔と呼べるものが完成する。

――岩土(がんど)巨怪(きょかい)

その鰐口(わにくち)を天に向ってかっぴらき、狼だったものを向かい入れる。

アルスと幼女はおののき、ただ見ているだけ。

繊維が引きちぎられる音。二人の前に転がり落ちる乾いた肉のかけら。

 

幼女「ひっ――」

 

そして、絶叫する幼女。

アルスはとっさに幼女の口を押さえつける。幼女は体を震わせ、涙目になりながら口籠(くちご)もる。

息が上がるアルス。ふと、巨怪の方を確認する。

……目が合う。二つの空洞が、アルスと幼女を見つめている。

引きつるアルス。幼女を抑えている手が震えだす。

巨怪は地面を巻き込んで、二人を(おお)うようににじり寄る。

半歩退(しりぞ)くアルス。幼女共々、足まで震えている。

唸り、瘴気を吐き、二人ににじり寄る巨怪。魔手が伸びてくる。

恐怖しこわばる二人の頭上を魔手が覆う。

突如、蒼き電流が巨怪の体を走る。巨怪は顔を歪め、一瞬ひるむ。

 

アルス「っ…!」

 

幼女の手を引き、逃走するアルス。

掴みかかる魔手。二人には一歩届かず、地面を(えぐ)りとる。

息せき切って、巨怪から離れる二人。

恨めしげに唸る巨怪。

巨怪は体を反らし、天に向って金切り声をあげる。

煮え湯のように凹凸する全身。体のいたるところから、体表を突き破って、岩石製のかぎ爪、節足(せっそく)(ひづめ)などが生える。

巨怪は体を横に倒し、それらの手足で体重を支える。土けむりが舞う。

それぞれの手足が、ペースまばらに土をひた()く。

急加速し、猪突(ちょとつ)する巨怪。

後方を見やるアルス。

巨怪が迫り来る。

 

アルス「ひぃっ!」

 

アルスは幼女の手を引っ張り、横に方向転換する。

巨怪も方向転換するが、体に走った電流に痺れ、そのまま横転する。

それによってまき散らされた土塊(つちくれ)が、アルスと幼女の背後にぶつかり、二人はつまずく。

アルスはすぐさま立ち上がり、(ひざまず)いた幼女の手を引っぱりあげる。

巨怪は電流に身動きを奪われながらも、咆哮(ほうこう)と共に、その場から魔手を繰り出す。

アルスと幼女に迫り伸びる魔手。

足がすくむ幼女の体を支え起こし、アルスは巨怪に注意を向ける。

 

アルス「!」

 

見開いていくアルスの目。その瞳いっぱいに、魔の手が広がっていく――その横。(わず)かに映り込む少年の影。

魔手に体当たりを決め、アルスと幼女から間一髪方向をずらすエクス。

 

エクス「師匠!」

 

幼女を脇に抱え、アルスの手を掴んで逃走するエクス。魔手は再び掴みかかるも、三人を逃す。

物陰に身を隠す三人。

巨怪は電流を振り払い、その巨体を起こしだす。

その様子をげに恐る恐る凝視(ぎょうし)するエクス。息も僅かながら荒い。

 

エクス「師匠あれ、怪物…ですよね?」

 

うずくまって必死に(うなず)くアルス。その隣では、身を縮こまらせた幼女が、声を殺してしゃくり泣いている。

 

アルス「あいつに近づいたキラキラさん達、みんな消えていってる…」

 

息を荒げた巨怪の側を通る数個の「キラキラ」。

巨怪の体表から漏れ出た怪火に触れられ、「キラキラ」達はその(きら)めきと共に焼失する。

 

アルス「前の奴らと…おんなじ……」

 

膝を抱えたアルスの手は震えている。

我慢が決壊(けっかい)し、泣き声をあげる幼女。

反応するエクス。

止まぬ幼女の泣き声にエクスの顔は一瞬曇るが、それはまもなく決心めいたものへと変わる。

幼女の前に跪くエクス。

 

エクス「セポネ」

 

顔をくしゃくしゃにした幼女はエクスと目を合わす。

 

エクス「大丈夫」

 

そう言って、エクスは幼女の手を握る。そのまま幼女の目を見据(みす)え、

 

エクス「ぜっったいに守るから。だからあとちょっとだけ頑張って。ちゃんと一緒に帰ろう」

 

幼女の手を、より確かに握り直す。

 

エクス「一緒に」

 

エクスは幼女の手を握ったまま、アルスの方を向く。

 

エクス「ね、師匠」

 

反応を示すアルス。

アルスに向けられる、まっすぐとした白群色(びゃくぐんいろ)の瞳……

それを見つめ、アルスもまた、手の震えをそのままに、どこか覚悟を決めた表情を見せる。

 

アルス「……うん!」

 

頷きを返すエクス。再び幼女と目を合わせる。

くしゃくしゃな顔のまま、ギュッと口をつぐみ、涙をこらえて、幼女はしかと頷く。

エクスもまた、微笑み頷く。

 

エクス「あ、そうだ師匠」

 

幼女の手を離し、懐に手を入れるエクス。

 

アルス「何?」

エクス「はいこれ」

 

そう言ってエクスは、朱色(しゅいろ)の花弁と黄色の花蕊(かずい)(おしべ、めしべの総称)が特徴の色鮮やかな花を一輪、アルスに差し出す。

 

アルス「あ…りがと?」

 

困惑しつつ受け取るアルス。

 

アルス「……え?何コレ?」

 

エクスは肩に掛けたハエタタキを目で指す。

 

エクス「ハエタタキのお礼です」

 

一瞬停止するアルス。

 

アルス「え、今!!??」

エクス・幼女「しーっ!しーっ!」

 

口に人差し指をくっつけ詰め寄るエクスと幼女。

 

アルス「ごめんなさいごめんなさい!」

 

慌てて口を押さえるアルス。

そして大げさにため息をつく。

 

アルス「(ヒソヒソと)なんで今なんだよ!」

エクス「すみません遅くなって」

アルス「いいけど…」

 

アルスは花を見やる。

辺りの暗闇に負けじと色を放つ一輪、そしてそれを柔らかく包み持つちっちゃな両手……震えはない。

頬が色づき、アルスに笑顔が(とも)る。

 

アルス「……ありがと」

エクス「はい!」

 

ニカッとするエクス。

 

エクス「さて、」

 

巨怪の様子を(うかが)いに戻るエクス。

 

エクス「とりあえず、なんとか逃げないとですね」

アルス「うん!」

 

アルスの隣にいる幼女も頷く。

 

――巨怪の、金切った咆哮が轟く。

 

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