〈二十九〉アルマル宅・明朝
アルス、エクスからもらった赤い花で作った「押し花
× × ×
アルビオ宅
エクス、防具を腕に装着させ、
【ハエタタキ改】を背の鞘に収める。
× × ×
アルス、母がかつて身に纏っていた黄金装飾の黒ローブに袖を通す。
× × ×
エクス、玄関のノブに手をかけると、力を込めて外へ。
× × ×
台に飾られたペンダントに祈りを捧げているアルス、祈りを終えるとペンダントを首にかけ、玄関へ。
〈三十〉草原の墓場
エクス両親や、村長をはじめとした村の老年組達に見守られながら、
アルス「じゃあママ、行ってきます」
とアルス、真剣な表情のエクスの隣で、微笑んで言葉をかける。
二輪の花が添えられたアイデンの墓石。十年分の年季が入っている。
立ち上がるエクスとアルス、そこへ近づく村長。姿勢の良さは変わらないが、背が縮んだ印象。顔の皺はぐっと増えている。
村長「アルス、エクス……」
村長、エクスとアルスをそれぞれ見やると感嘆のため息をつく。
村長「いやはや、主らの成長ぶりときたら幻と
と、エクスをまじまじと見つめる村長。
エクス、誇らしげ。
村長「もはや心配はしておらん。が、くれぐれも気をつけろ。この十年で村の外は完全に未知の領域へと変貌してしまった。何が消え、何が残り、何が新たに生まれているのか
エクス「はい!」アルス「あい!」
村長、二人の返事に優しく
村長「良き旅であることを祈り続けておる」
エクス・アルス「ありがとうございます!」
村長「うむ」
村人達、エクスとアルスに歩み寄る。
「いってらっしゃいアルス。気を付けてね」
「エクス、がんばれよ」
「これ持ってけ。家でつくってる干し肉」
「アルスに怪我させたらぶっ殺すからな」
と、二人を鼓舞する。
村長「アルス、これを渡しておく」
村長、
アルス、受け取る。
アルス「お手紙ですか?」
村長「むぅ…私にも何が記されているのかはわからぬ。それは生前のアルマル殿が私に託されたものだ」
アルス、登場した母の名に反応する。
村長「もし帝都に行くことがあれば、もしくは帝都の者がこの村を訪れることがあれば、この文書を渡してほしいとな」
アルスと村長、墓の方を見やる。
アルス「ママが…」
村長「結局その機会はなかった。私よりも旅立つ主が持っていたほうがよっぽど良い。帝都には向かうのだろう?」
アルス、村人達と会話しているエクスをチラ見する。
アルス「行くと思います」
村長「うむ。未だ健在であれば、どうにかヘルエスタ皇帝のもとへ届けてほしい」
アルス「こ、皇帝…!わかりました!」
そよぐ風に、大木の
〈三十一〉村の外れ、結界の終わり手前
そよぐ風に道ばたの花が体を揺らし、その横をエクス達の足が通り過ぎる。
歩むエクス、アルス、エクス両親。先頭のエクスとアルス、何かを見つけてアガる。
村の若者達、年はとってもまだまだ衰えてはいないといった者達が集合している。男共のほとんどが鉄製の武具を
セポネ「来た!」
村人達、エクスとアルスの到着を迎える。
特にアルスのもとに駆け寄り、別れを惜しむ村娘達。
パウロ、こちらをしかと
エクスとパウロ、お互いに歩み寄り固く
坊主頭など、他の男共とも抱擁や握手を交わすエクス。
一通り終えると、ふと気になったようにパウロ達の持つ武具に目を向ける。
エクス「なんか、なんでみんなそんな戦う気満々なの?」
パウロ、拍子抜けする。
パウロ「お前な~」
と、あきれ果てる。
パウロ「村の家族の、」
エクスの肩に手を置くパウロ。
パウロ「大切な友の旅立ちだ。道くらい作ってやんなきゃな」
パウロの後ろで勇む村人達。
パウロ「ま、村のことは任せろ。お前とアルスちゃんがいなくても、俺たちがいる。だからお前はさ、お前の冒険ってやつをとことん楽しんでくればいいよ」
そこへ、
坊主頭「先生!!」
と、坊主頭の気合いのこもった呼びかけが聞こえてくる。
アルスの前に、坊主頭を中心とした屈強な野郎どもが整列している。
坊主頭「ここまで鍛え上げていただきありがとうございました!いってらっしゃいませ!!」
屈強共「いってらっしゃいませ!!!」
アルス「だから先生やめろって!」
と、赤面し
その様子に膝を叩いて爆笑するエクス、苦笑いするパウロ。
× × ×
村人達に見守られながら先頭に立つエクスとアルス、二人が近づいたことで目の前に結界の壁が姿を現す。
エクス両親、二人の
エクスとアルス、エクス両親に向き合う。
エクス「それじゃあ、いってきます」
アルス「いってきます!」
頷くエクス父と、不安げなエクス母。
エクス母、思わずとエクスとアルスを抱き寄せる。
エクス母「絶対に無茶だけはしないこと。とにかく生きてて。お願いだから」
そして二人を一度解放すると、今度はエクスを指さして、
エクス母「特にあんた、好奇心だけで危険なところとかに行っちゃだめだからね?」
次にアルス。
エクス母「アルスも魔法があるからって油断しないこと!ちゃんと二人で支え合って、助け合って旅をすること!あとは…」
エクス母、涙ぐみながらも、柔らかい微笑みを浮かべる。
エクス母「……疲れた時は、いつでも帰ってくること」
そう言うと、気が気でないとため息をつく。
エクス母「あぁもう…心配…」
アルス、エクス母の手を取る。
アルス「おばさん、それにおじさんも、今まで本当にありがとう。僕のこと、家族同然に育ててくれて。村のみんなもそうだけど…すっごくあったかくって、感謝してもしきれません」
手を離して一歩下がると、ぺこりとお辞儀を一つ。
アルス「ちょっとだけ冒険いってきます。あ、こいつのことは見張っとくから!」
と、後ろに立っているエクスを親指で指す。
エクス母、感極まって涙がぼろぼろ零れ出す。
エクス母「あぅ~~~」
と、アルスのほっぺをむにむにする。
アルス「ちょ、ひゃめてよ~」
エクス母「このほっぺともお別れさせて~」
みんなその光景につられて笑う。
そんな中、結界の外から獣の
エクス、即座に注意を向ける。
結界の外、ぞろぞろと群がってくる怪物達。
こちらをさぞ恨めしそうに睨みつける。
村男1「お出ましだな」
みんな、怪物達をにらみ返す。
エクス「とっちゃん」
エクス、怪物が
エクス「まださ、誰も見たことないすげえ景色、ちゃんと残ってるかな」
エクス父からの答えに耳を澄ます。
エクス父「わからん!」
思いがけずと、視線を向けるエクス。
エクス父と目が合う。
エクス父「だからお前が確かめてこい。満足いくまで全部探してこい。そんで、どれほどすげえものがあったのか…俺に教えてくれ」
エクス、言葉を受け、表情に勇気が宿る。
アルスの方を見る。
アルス、気がつく。
目を合わせる二人、同時に頷き、
同時に一歩を進める。
その一歩が結界の外へと踏み込まれる。
エクスとアルス、淡く煌めく結界を通り抜けていく。
完全に外の世界に立つ二人。
怪物達、じりじりとエクス、アルスに詰め寄っていく。
エクスとアルス、臨戦態勢に入る。
エクス「師匠、ヴォッッゴボゴにしてやりましょう」
アルス「ボゴボゴだぁーー!!」
と、雄叫びをあげるアルス。
怪物達、殺意高く一斉に二人に襲いかかってくる。
迎え撃つエクスとアルス、物ともせず蹴散らしていく。
パウロ「門出だぁー!二人に道をーー!!」
と、号令をかけるパウロ、槍を携えて結界の外に飛び出す。
それに続く、武具持ちの村人達。
エクス父、エクス母から剣と盾を受け取り、パウロ父と共に
村人達、勇猛に立ち向かい、
怪物達を返り討ちにしていく。
【ハエタタキ改】を使うことも無く拳で怪物を殴り飛ばすエクス、その背後から別の怪物が飛びかかってくる。
余裕で反応するエクス、涼しい表情のまま身構える。
怪物、エクスに届く前にパウロの
笑みを交わすエクスとパウロ、付近で響く突然の豪音に目を向ける。
アルス、豪快な水魔法で怪物達を一掃している。
村の男の子三人組、結界の内側から、エクス達の戦いを見て驚嘆している。
その
セポネ「よく見ていて。今はまだ、私たちは守られてるだけだけど、いつかはあんな風に戦うときがくるから」
エクス父や村男1、坊主頭など、怪物に立ち向かう屈強な村人達。
セポネ「あんな奴らに、絶対何も奪わせちゃダメ」
アルスの、
そしてパウロと背中合わせに戦うエクスの勇姿。
× × ×
一つ、心臓の鼓動音が響く。
村の祭壇で息づく「聖剣」、
× × ×
打ちのめされて消滅する、またはその様子を受けて敗走していく怪物達。
エクス、一息
エクスの隣にやってくるアルス。
目を合わせ、自然と微笑む二人、一緒に後ろを振り返る。
村人達、こちらを暖かく見守っている。
村娘達、
村男1や坊主頭、
エクス母、
エクス父、
パウロ、
そしてセポネ、頬を赤く染めて涙を溢れさせながら、名一杯に息を吸い込むと、
セポネ「ありがとーー!!いってらっしゃーーい!!」
と、全力で叫ぶ。
他の村人達、次々に手を振り、門出を祝う言葉を贈る。
エクスとアルス、自然と湧き上がる笑顔、精一杯手を振り返す。
ふと、エクスの頬に運ばれてきた白銀の【
エクスの目が見開かる。
エクス、一瞬心を奪われる。
アルス「どしたの?」
と、アルスの問いかけで我に返るエクス。
アルス、不思議そうにこちらを見上げている。
エクス「いや…いきましょうか!師匠!」
アルス「うん!!」
と、勢いよく頷くアルス。
頷き返すエクス、そして「ある方向」に目を向ける。
エクス(ありがとう……)
自分の頬に触れるエクス。
エクス(おかげで強くなれた…もっと強くなれる…)
アルスと一緒に、先に広がる世界へ歩みだす。
エクス(そこから見ててくれ!!)
とある村の少年は、年月を経て一人の勇士に―…。魔法使いの娘と共に、まだ見ぬ
時を同じく、
男は異次元より
女王は錬金術師と魔女を従える。
幼き
騎士と神秘と奴隷の王、未知の材を掘り起こす。
、魔の真実を辿る時、
物語が加速する。歯車達を引き寄せて――
「まずどこ行くー?」
「それはもう100パー帝都ですね!」
「あ、おっけい。ちょうどよかったわー」
「ちょうどいい?」
「うん、村長に頼まれごとされててさ…」
続