〈三十〉
日中、森の中。
開けた場所に、寸胴状の丸太を転がしてくるエクス。
丸太を台にしてその上に立ち、両手で本を掲げ、念じるアルス。
風がそよいで、光の流れ、「キラキラ」が空気中から集まってきてアルスの体中にくっつく。もこもこの光まみれになるアルス。
エクスは目を凝らすが、風にそよぐアルスしか見えない。
首をかしげる二人。
朝昼夕、石を動かしたり葉にためた水を動かしたり試行錯誤するエクスと、それを見守ったり他の本を読んだりして暇を潰すアルス。大した成果はない。
日中。
小川の水面から魚が一匹跳ね出て、矢に射られる。
弓を持って得意げなエクスと、興奮気味に拍手するアルス。
〈三十一〉
アルマル宅横。
エクス「だはぁ~できね~」
大げさなため息をついて草原に身を投げ出すエクス。口元には食べかすがついている。
アルス「頑張って何回も練習するしかないよ」
食べかけの串刺し焼き魚を頬張るアルス。
アルス「ふぁふぁもふぉういってふぁ」
エクス「……」
エクスは両手を頭の後ろで組み、空を見る。
流れに身を任せる雲が見える。
エクスは寝ぼけ眼でその内の細長い雲に手を伸ばす。
そのまま雲を掴むと、雲は徐々に鋭くなり、硬度を増し、その刃から輝きを放つ。
エクスの口元がわずかに動く。
ふと反応するアルス。見るとエクスは寝息を立てている。
アルスは反対方向にある、家に立てかけられた蠅たたきに視線をよこす。
聖剣を振り払い、怪物を一掃するエクス。
両親、村長、パウロ、村人達に
高く飛ぶほど、聖剣の刃が太陽の光を反射し、エクスはまぶしげに
すると聖剣は細長い雲に変わる。
エクスは寝転がったまま雲を見ている。
上半身を起こし、横を見る。
アルスがうねる木の棒を持っている。
木の棒はうねり続けた後、一つの形に完成する。
エクス「うおお!かっこいい!それ、聖剣ですか!?」
飛び起きて近寄るエクス。
アルス「うん。寝言で言ってたから作ってみた。はい」
アルスは木でできた聖剣を差し出す。
エクス「え!?くれるんですか!?」
アルス「あげる。僕別に使わないし」
エクス「やったあ!」
満面の笑みで受け取るエクス。
エクス「マジでありがとうございます!うわ~」
剣に見惚れるエクス。
エクス「名前どうしようかなあ!聖剣アルビオーン、聖剣エックスソード…」
アルス「ハエタタキだね」
エクス「はい?」
アルス「それ、蠅たたきで作ったから、聖剣ハエタタキ。ぷぷ」
笑いを口で押えるアルス。
エクス「だっさ!」
吹き出すアルス。笑いが止まらない。
なんだか、エクスもつられる。
ひとしきり笑い合う二人。
その後に、エクスは目を輝かせて聖剣ハエタタキを構える。
アルス「そんなにあの剣が欲しいの?」
エクス「めっちゃ欲しいですよ!え?知りません?聖剣の伝説」
アルス「しらなーい」
エクス「マジで言ってます!?」
エクスは大げさに唖然とする。
エクス「いやこれ知らないのはかなりヤバいですよ!」
アルス「そ、そんなに?」
エクス「そうですね、ここが帝都だったらミンチにされて火あぶりくらったあとに公開処刑されるレベル」
アルス「う、うそぉ!?」
アルスは驚愕し、涙目になる。
エクス「そうですね、さすがにバカみたいに言い過ぎました」
アルス「お前ふざけんな!」
涙目のままエクスをゲシゲシするアルス。
エクス「すみませんすみません落ち着いて落ち着いて!!」
アルス「このやろぉ!」
鼻息荒げながらもアルスは一旦落ち着く。
エクスはハエタタキで頭をかばって警戒しながら、
エクス「で、でもものすごい有名なのは本当です!」
アルス「…ふーん」
アルスは地面に腰掛ける。
アルス「どんなお話しなの?」
笑みを浮かべるエクス。
エクス「はい!」
警戒をとき、続けて興奮げに語りだす。
エクス「すっっごい昔の話しなんですけど!…どこから話したらいいんだろう……なんか世界が終わろうとしてたんですよ!」
アルス「……」
エクス「……」
アルス「……ど、どういうこと?」
アルスの眉間に皺が寄る。
エクス「なんていうか、怪物とか、猛毒の嵐とか、あと魔物とか…あれ怪物と魔物一緒か?」
首をかしげるエクス。
アルス「??どういうことぉ???」
更に皺が寄って困惑するアルス。
エクス「えっ…とですね、とりあえず!めちゃめちゃ世界に災いが降りかかってきてたんですよ」
アルス「うんうん」
エクス「それを、聖剣を手に入れた黄金の勇士が、ぜんっぶブォッコボコにして世界を救ったっていう話しです!!」
アルス「ぶぉっこぼこ…」
エクス「そうですそうです!そんな感じの話です!」
アルス「ほえぇ~」
と、ぽかぁ~っと口を開くアルス。
エクス「そう!で、村に刺さってるあの剣こそが!この物語に出てきた聖剣なんです!!」
そう言ってエクスは村の祭壇の方を指さす。
アルス「ほえぇ~!」
わかったようなわかってないような顔でパチパチと拍手するアルス。それにエクスは満足気。
エクスはハエタタキを見つめる。
エクス「剣を抜いた者が、次の黄金の勇士になれるんです…」
そう言って、目を輝かせてハエタタキを掲げる。
エクス「だから、俺はいつか絶対…に……」
しかし、エクスはふと止まる。
エクス「……」
目を落とし、顔とハエタタキを下ろす。
アルス「どうしたの?」
エクスは少し黙るが、どこか切り替えるようにすぐ口を開く。
エクス「そういえば師匠。師匠達ってどこから来たんですか?」
アルス「え?うん。ここからそんなに遠くないよ。前のところも怪物に襲われて、ママと一緒に逃げてきたんだ」
エクス「あ、そうなんですね」
アルス「うん。桜がね、ずーっと咲いててすごい綺麗なところだよ」
天を
エクス「桜ってなんですか?」
アルス「桜見たことないの!?ピンクの花がブワーってなってる木!」
エクス「木に花咲いてるんですか!?」
アルス「そうそう」
エクス「ええ!やっばぁ!めちゃくちゃ面白いですねそれ!」
アルス「うん……」
アルスは顔を落とす。
アルス「そこにもおうちがあってね。また行きたいなぁ……」
エクスはアルスに近づき、目の前に立つ。
エクス「行きましょうよ!」
アルス「え?」
エクス「いつか絶対もう一回行きましょう!その時僕も連れていってくださいよ!僕も桜見たいです!」
アルス「…うん!」
どこか満足げに笑うアルス。
エクス「そうだ。他にはどんな場所に行ったんですか?」
アルス「僕、そことこの村しか行ったことないよ?」
エクス「ええ?もったいないですよ!」
詰め寄るエクス。
身を引くアルス。
アルス「も、もったいない?」
〈三十二〉
アルビオ宅二階。エクスの部屋。
床に本を広げるエクス。
本にはファンタジックな絵が描かれている。
エクス「いいですか。世界にはすごいところがめっちゃくちゃあるんです。生きてるうちに全部行くの無理じゃねってくらい。例えばこの北の最果てってところはめっちゃ寒いところなんですけど、できる氷が全部宝石になります」
アルス「すごい!」
次のページを開くエクス。
エクス「あとはこの天空の塔ってのがあって、これ登ってくと一番上に村があるんですよ。ドラゴンとかペガサスとか妖精とか空飛ぶ獣たちは大体ここに住んでます」
アルス「マジで!?」
エクス「マジです!しかもそこの獣全員喋れます!」
アルス「すごぉい!」
しばし沈黙する二人。
エクス「まあ行ったことないんですけどね」
遠くを見るエクス。
アルス「うん。だってこれ絵本だもんね」
エクス「いや違うんですよ師匠!」
せわしなく
絵本をどかして広げる。大雑把な地図が描かれている。
エクス「これ、とっちゃんが帝都行ったときのお土産です」
アルス「これなあに?」
エクス「世界地図です!」
エクスは地図の中で、比較的細やかに描かれている部分を指さす。
エクス「ここが帝都で、ここら辺に僕らの村があります」
アルス「へええ!こんなに広いんだ!」
エクス「しかもこの地図完成してなくって、」
地図の右下を指すエクス。地形以外特に描かれてなく、『?』のマークがある。
エクス「ここら辺とかはまだよくわかってないんですよ!この周りの海を越えた先だってまだ誰も知らないんです」
立ち上がり、熱く唱えるエクス。
エクス「だから本気で、ほんっきで探したら、北の最果てとか天空の塔とか見つけれると思うんですよ!」
輝くエクスの目を見て、目が輝いていくアルス。
アルス「うん!!」
〈三十三〉
暮時。
階段を下り、玄関に向かうエクスとアルス。
アルスは向き直り
アルス「あ、あの、おじゃましました」
部屋奥の台所から顔を出すエクス母。
エクス母「あら!もう帰っちゃうの?もうすぐでお菓子できるんだけど」
アルス「え、あ、でもママも心配するので」
玄関前に来るエクス母。
エクス母「そうねえ。じゃあエクス、あんたお菓子できたら持っていきなさい」
エクス「わかった!」
アルス「あの、ありがとうございます!」
しゃがんでアルスと目線を合わせるエクス母。
エクス母「こちらこそ、いつも息子がお世話になってます。お師匠様」
アルス「い、いえ」
赤面してもじもじ目を伏せるアルス。
エクス母「はう!かわいいーー!」
アルスを抱き上げるエクス母。
アルス「うにゅぅ!!」
抱きしめられほっぺがつぶれるアルス。
〈三十四〉
アルマル宅。
元気よく帰ってくるアルス。
アルス「ただいまぁ!あ、」
村長とアイデンがテーブルを挟んで向かい合って座っている。
縮こまるアルス。
村長「ホッホ!これはこれは、元気のよい娘さんだ。こんにちは」
アルス「こ、こんにちは」
村長「それでは私はこれで」
席を立つ村長。
アイデン「はい。ありがとうございました……」
アイデンは複雑な表情を浮かべてテーブルをただ見つめる。
村長「魔法使い様。事情は計りかねますが、少なくとも私たちは、あなた様がどれほどこの村にいようと歓迎させていただきます」
アイデンに会釈する村長。玄関に向かう。
アイデン「ありがとうございます」
村長「それじゃあねお嬢さん」
村長はアルスの頭を撫で、帰っていく。
心配そうにアイデンを見るアルス。
アルス「ママ?」
アイデンは笑顔を見せる。
アイデン「おかえり。アルス。楽しかったかい?」
アルス「うん!!」
アルスは駆け寄り、アイデンの膝に手をつく。
アルス「あのね!あいつの家に行ってきた!」
アイデン「こら!あいつって呼ばない」
アルス「ん……じゃあ、金髪?」
アイデン「き、金髪って……。せめて先輩と呼びなさい」
アルス「わかった」
アイデン「よろしい。それで?」
アイデンはアルスの頭に手を添えて撫でる。
アルス「先輩の家で本を見せてもらったんだよ!絵本とか世界地図とか!」
アイデン「世界地図!」
アルス「そうそう!それで先輩面白くってね、世界はめちゃくちゃ広いから、絶対誰も知らない不思議なこととかすごいことがたっくさんあるって!」
アイデン「ははは 彼もなかなかいいことを言うね」
アルス「うん!ねえねえ、ママの体が元気になったらさ、色んなとこ一緒に行こう?」
アイデンは僅かに目を見開くと、視線を落として黙ってしまう。
アルス「あ、まずは前のおうちのところ行こう?先輩も一緒に。桜見たいって!」
アイデン「アルス……」
アルスから手を離すアイデン。
アルス「なに?」
アイデン「…………」
アルス「ママ?」
アイデン「すまない…それは、できないんだ……」
アイデンはぽつぽつと喋り出す。
アルス「……なんで?」
アイデン「…ママ、もう体が弱くって……もう、長くは……生きられないと思う」
アルスは固まる。
アイデン「だから、一緒には、行けないかもしれない……」
アルス「……なんで?」
かすれ声のアルス。
アイデンはハッとし、アルスを見る。
絶望し、後ずさるアルス。
アルス「なんでそんなこと言うの?やだ!」
アイデン「アルス、その……」
アルス「いやだ!やだ!そんなのやだ!」
アイデン「アルス……」
アイデンの手が差し伸べられるが、アルスはそれを振り払って走る。
涙を浮かべ、家から飛び出す。
バスケットを持って扉前に来ていたエクスにぶつかるが、構わず走る。
エクス「うお!」
バスケットが地面に落ちて、中の菓子が一部地面に転がる。
アイデン「アルス!」
続いて家から飛び出すアイデン。
エクス「師匠ぉー!」
森へ逃げるアルス。
しかし、アイデンはアルスを追いかけることをやめ、立ち尽くす。
アルスは森の中に消えていく。
エクス「魔法使い様?」
アイデン「すまない……親子喧嘩だよ」
地面に転がるバスケットと菓子を黙々と拾うアイデン。
エクスも手伝う。
エクス「追いかけなくて、」
アイデン「……今追いかけても、僕は、」
黙るアイデン。
エクスも黙る。
アイデンはバスケットをエクスに手渡す。
アイデン「……少年、少し話をしないか?」
〈三十五〉
森の中。
エクスが置いた丸太椅子に座ってすすり泣くアルス。
アイデン「アルス?」
声に振り向くと、息を切らしたアイデンがいる。
アイデン「見つけた」
そう言ってアイデンはアルスに笑顔を向ける。
アルスは逃げ出す。
アイデン「待って!」
追いかけるアイデン。
アルス「来ないで!」
追いかけ続けるアイデン
徐々に差が開く二人。アイデンはバテていく。
そしてとうとうへたり込む。
アルス「ママ!」
引き返して心配そうに駆け寄るアルス。
アルス「ママ?」
寄り添うアルス。
アイデン「かかったな?」
目を光らせるアイデン。
アルスに飛びつく。
アルス「うにゃああ!」
逃げようとするアルスを拘束して、くすぐるアイデン。無理矢理笑わされるアルス。楽しげなアイデンに負けずとアルスもやり返し、二人は大笑いする。
疲れ果て、大の字で並んで横たわる親子。
アイデンは横を向く。
アルスと目が合う。アルスはプイッと背を向ける。
抱き寄せられるアルス。一瞬反応するが、もう抵抗はしない。
アルスはぼそっと、
アルス「死んじゃいやだ」
アイデン「うん……」
アルス「やだ……」
アイデン「うん……」
アルスは向き直り、切なげにアイデンにひっつく。大泣きする。
日は落ちて、その身を隠す。
空に数え切れない星々が顔を出す。
抱き合ったままの二人。
アイデン「アルス……最後まで、よく聞いて欲しい」
ぽつぽつと言葉を紡いでいくアイデン。
アイデン「ママも死にたくない。ずっと、アルスと一緒にいたい……。大好きだから……。アルスが笑ってる顔をずっと見ていたい。だけど、……ママはどうしても体が弱くって、」
声がかすれるアイデン。
ジッと聞くアルス。
アイデン「ずっと一緒にいたいけど、それはとっても難しいことで……ママにもどうしようもできないんだ」
かすれる声を抑え、もう一度言葉を紡ぐ。
アイデン「でも、それでも、あきらめたくないことがある。アルスが大きくなって、たくさん笑ってる未来だけは、絶対にあきらめたくないんだ。だからママは、……どれくらいかわからないけれど、残りの時間を全部アルスにぶつける。アルスに知っていてほしいこと、ずっと忘れないでほしいこと、楽しく強く生きる方法、…もっと面白い魔法、…ママも下手くそだけど、ご飯の作り方とか、あと……」
すでにアイデンの声は涙をにじませている。言葉が続かない。
嗚咽をこらえて、つっかえながら紡ぐ。
アイデン「……ごめん。何を言ってるのか、わからないかもしれないけれど……」
アイデンは、小さい体に頭を抱き寄せられる。
「わかった」
目を見開くアイデン。その目から涙が溢れて流れだす。アイデンは大声をあげて泣く。泣いて泣いて、アルスにしがみつき、顔をうずめる。
〈三十六〉
朝日が昇り、村を照らし出す。
アルビオ宅。ベッドから勢いよく起き上がるエクス。目はギンギン。
昨日の魔法使い様との話しをよぎらせる。
…………
暮時。丘の上。
草原に座っているアイデン。
アイデン「ありがとう少年。おかげで決心がついた」
そう言って立ち上がる。
…………
エクス父と母の部屋。
扉をブチ開けるエクス。
エクス「おはよおお!」
エクス母・エクス父「おわああ!」
飛び起きる二人。
一階食卓。
飯をかっこむエクスと眠たそうに朝食をとる父と母。
昨日の会話がよぎる。
…………
アイデン「明日もくるのか?」
エクス「はい。行きます!」
…………
エクス「行ってきまーす!」
人気の少ない村道へ飛び出すエクス。
目を輝かせ村道を全力疾走。
…………
アイデン「わかった。僕もそれまでにもう一度答えを出しておこう」
そう言って森へ駆けていくアイデン。
…………
アルマル宅前。
項垂れるほど息を切らすエクス。
エクス「うっ…」
吐き気を押さえて、玄関に近づく。
家の横にできている隆起した土の列に水をやるアルスが見える。
エクス「師匠!おはようございます!」
エクスの方を向くアルス。
アルス「ええ!早くない!?」
するとドアをぶち開けてアイデンが出てくる。
アイデン「よくきた少年!」
エクス「は!はい!」
アイデン「うむ!アルスご飯だ。少年も入りたまえ。その様子だと、朝食もまだだろう?」
エクス「はい!」
返事は返すが呆然とするエクス。
エクス「え?」
〈三十七〉
アルマル宅。
空の皿。
顔を真っ青にし吐き気を押さえるエクス。
アイデン「さて。二人にはこれからについて話しがある。まずはアルス。まあその、うん、昨日言ったとおりだ。まずは魔法の修行を本格的に再開しよう」
アルス「あい!」
アイデン「次に少年。答えを聞かせよう」
エクス「はい!!」
緊張気味に姿勢を正すエクス。
アイデンは口を開く。
アイデン「最初に断っておくが、やはり君に魔法を教えることはできない」
エクスは言葉を失う。
アイデン「少年、魔法を行使できるかどうか、これは簡単に言ってしまえば生まれつきで決まるものなんだ。君の場合だと、どうしてもそれができない。やり方を教えたとしても、正常に魔法を発現させることができないんだ」
エクスの表情が険しいものになる。
アイデン「しかし、気は落とすな。君には代わりに戦い方を教えてやる」
しばし沈黙。
エクスぽかん。アルスきょとん。
エクス「戦い方、ですか」
アイデン「そうだ」
ニッとするアイデン。
エクス「魔法使い様がですか?」
アイデン「そうだ……なんだ不満か?」
エクス「いや、そんなことないですけど…」
ピンときていない様子のエクス。
アイデン「ふむ。よし、表へ出ろ」
〈三十八〉
アルマル宅前。距離をとって向かい合うエクスとアイデン。それを
アイデン「本気で来い」
エクス「ほんとに言ってますか!?」
アイデン「なんだ気づかってくれているのか?なら僕から行くぞ?」
エクス「そ、それでもいいですよ」
アイデン「ほう?」
心配そうなアルス。
アルス「ママ…」
構えを取り、深呼吸するアイデン。
アルス「あ…」
一瞬、アイデンの周囲に「キラキラ」が満ちる。風に服がそよぎ、アイデンの首元の肌に刻まれた光る文字列がちらつく。
アイデン「構えろ」
エクス「え――」
次の瞬間エクスの腹にアイデンの
吹っ飛ぶエクス。
アイデン「力が弱そうだから。杖をついているから。女だから。暴力なんて振るったことなさそうだから。自分の方が強そうだから」
一歩一歩エクスに近づくアイデン。
アイデン「
エクスに手を差し伸べるアイデン。
アイデン「もう一度言うぞ?戦い方を教えてやる」
エクス「お」
エクス吐く。
エクス「おろろろろ」
〈三十九〉
日陰で涼むエクス。あおぐアルス。
アイデン「す、すまない。やりすぎた」
頬をかくアイデン。
エクス「いえ、骨身に染みました…」
アイデン「それでどうする?僕に教わるのはやめておくかい?」
エクス「いいえ!」
立ち上がりアイデンの前に出るエクス。
エクス「これからよろしくお願いします!魔法使い様!」
アイデン「…ああ」
応えるアイデン。
アイデン「そういえば少年、名前を聞いていなかったな。なんというんだ?」
エクス「エクスです。エクス・アルビオっていいます!」
一瞬驚きをちらつかせ、微笑むアイデン。
アイデン「そうか…いい名だ。だが今の君をそう呼ぶのは少々
エクス「え?」
アイデン「よし、苗字も一緒に略してエビオだ」
エクス「ええ!?」
アルス「ブフッ!」
吹き出すアルス。
エクス「師匠!?(その後アイデンに向って)なんですかその変な名前!」
アイデン「別に変ではないぞ?僕らが前にいた国でよく食べられる魚介にその国の男性の称を付け加えたものだ」
エクス「絶対嘘です!なんかこの人大爆笑してるんですけど!」
アルス「エビオ!エビオ!ひぃ~!」
笑い転げるアルス。
抗議するエクス。
いたずらな顔をするアイデン。
そんな三人を、天空が見守っている。
それはいつの時代だったのか。いずこの大地の上であったのか。そして、いかなる世界線であったのか。とある村の少年と魔法使いの親子が出会った。
歯車が合わさる。物語が回り出す。
続