にじさんじ▶︎パラライブ   作:大羽ひつじ

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オリキャラ、オリ設定注意。小説というよりシナリオです。


第三章
3-1, 滅びの気配


〈一〉

 

猛火の鳴動音(めいどうおん)が聞こえてくる。

やがて浮かび上がる景色。はびこり蠢く暗紅(あんこう)怪火(かいか)。互いを呑み込んでは熾烈(しれつ)を増す。

その地獄絵図の奥地へと、変わらぬ景色の中を突き進む。すると見えてくる。怪火にまみれて幽閉されし一体の影。

不動を貫いていた影が、にわかにそのをかっぴらき、嘆き声を響かせる――…。

 

〈二〉

 

アルマル宅横の草原。流れる汗もそのままに、アイデンに向っていくエクス。アルスが作った聖剣ハエタタキを肩からかけている。

殴打に足蹴(あしげ)、がむしゃらに飛び交うエクスの攻撃。

アイデンはそれらの動きをただ見つめ、流水の如く避ける。いなす。端から見ればエクスが遊ばれているよう。

跳び蹴りをかますエクス。

アイデンは受け止め、瞬く間にその勢いを利用してエクスを投げ飛ばす。

エクスは転倒するも、踏ん張って体勢を立て直す。

息を切らしながら、アイデンに狙いを定める。

エクスに対峙し、流麗(りゅうれい)な仕草で構えを整えるアイデン。エクスを洞察(どうさつ)する。

エクスは再びアイデンに向っていく。

 

それをはじめとし、日々が移り変わっていく。

 

アルマル宅前で腕立て伏せをするエクス。歯を食いしばり、腕を振るわせて体をあげている。その横の花壇では、(つぼみ)の状態の花にアルスとアイデンが向き合っている。アルスは片手に本を広げ、もう片方の手は蕾にかざした状態。つぼみはか細くも鮮やかな光を(まと)っている。

小難しい表情のアルス。

すると、蕾が確かに微笑みだす。

表情が晴れ渡り、アイデンの方を見上げるアルス。

アルスの頭に手を添え、微笑み頷くアイデン。アイデンはエクスの方にも顔を向け、なにやら声をかける。

仰向けでへばっているエクスは、跳ね起きてランニングを開始する。

 

とにかく筋トレ。ハエタタキで素振り。アイデンと並び、構えの演練。エクスは己を鍛え上げる。

アイデンと共に台所に立ち、お料理練習中のアルス。大小様々に切り刻んだ食材を、首をかしげながら鍋に突っ込むアイデンを不安げに見上げる。

 

村道(そんどう)をはしゃいで進むエクスや村の子供達。後ろから着いて行くアルス。

村の女の子達はアルスの手を引き、背中を押して、共に進む。

ちょっぴり驚いて、はにかむアルス。

村人達と立ち話をしていたアイデンは、その様子に気づき、アルスを見守る。

 

木剣や六尺棒を用いて、武器術の稽古をするエクスとアイデン。

棒術、槍術、剣術、回数を重ねるごとにエクスの所作が冴えていく。

稽古途中、アイデンは咳き込んで(ひざまず)く。エクスとアルスは駆け寄り、アイデンの体を気遣わしく支える。

 

本を展開するアルス。風がそよぎ、幾つかの木片が宙を舞う。

木片は、構えをとって静止するエクスの周囲を飛び交う。

寸胴状の丸太に腰掛け、その様子を見守るアイデン。どこか頬は()けて、小皺(こじわ)が見え隠れする。

木片が一つ、方向を変え、エクスに向って加速する。

それを見向きもせずに討ち取るエクス。

続けて第二波、第三波と、木片がエクスにぶつかっていく。

エクスはそれらを的確に避け、防ぎつつ、一つまた一つと尖鋭打(せんえいだ)を打ち込んでいく。

地面に全ての木片が散らばる。

息を(はず)ませ、エクスは構えを整える。

目を()き、息をのむアイデン。

興奮気味にアイデンを見やるエクス。

アイデンの口角が高ぶる。

 

〈三〉

 

暮夜(ぼや)。横並びになって(またた)く灯火たちが見える。弦楽器を中心とした、雄大な旋律が聞こえてくる。

アルマル宅横の草原。鉄製のジョッキが四、五個かち合う。

木のテーブルの中心に置かれたランタンの灯が、テーブルを囲んで談笑する男達の酔顔(すいがん)(あら)わにする。

間隔を開けて無造作に並べられた、ランタン付きのテーブル席。各テーブルには大体三、四人が席を囲んでおり、それぞれテーブルに置かれた料理だのお菓子だの酒だのをたまに口に運んでは、話しに花を咲かせている。その中を縫うように走り回る子供も見える。中には、第一章より村の外から訪れた者達もおり、村の雰囲気に馴染んだその姿は他の村人達と遜色ない。

掘り返して草を取り除いた場所に()かれた火が、旋律と共に踊る。

それを囲んで村の演奏隊が楽器を奏でている。更にその周りでは、旋律と歌にあわせ舞踊を披露したり、それを観覧したりする村人達。

……それとはまた別の場所で、一つのテーブルを中心に人が集まっている。若年層が多い。

 

エクス「くっぐぐぐ!!」

青年「んぬぁあああ!!」

 

エクスと、エクスよりも明かに年が上であろう青年が、テーブルの上で接戦の腕相撲を繰り広げている。踏ん張る両者の顔は紅潮し、組んだ腕は痙攣(けいれん)している。周りからは野次が飛んでいる。

 

エクス「ぐぐ、ぐ、がぁああああ!」

 

気合いを入れ直すエクス。

組んだ腕が傾きを見せる。エクス優勢だ。

場がどっと盛り上がる。その中にはパウロやハエタタキを持ったアルスの姿も。

 

青年「う、おおおお!」

 

気合いを入れ直す青年。体を自分優勢側へともっていく。しかし、エクスの優勢は変わらない。

パウロが手拍子を始める。まもなく周りもつられて、最後には全員が手拍子を打つ。

両者額に青筋が立ち、汗がにじみ出る。青年の手の甲は、牛歩ながらではあるがテーブル面に近づいていく。

 

青年「おお!?うっそだろおいいい!!」

 

エクスの勝ちまであともう一押し。

手拍子が早まり、場の熱気が高まる。

 

エクス「うぉぁらっ!!」

 

手の甲とテーブルの衝突音が響く。

歓声が湧く。

意気消沈する青年と一息つくエクス。周りには、エクスの勝利に興奮を隠せないギャラリーが大半と、青年を励ます人達が少数。

 

パウロ「お前やっべえな!」

 

エクスを称賛するパウロ。

 

青年「ち、ちくしょう…」

村男1「エクスの奴、魔法使い様にどんなしごかれ方されてんだ」

 

青年を励ましている側の村男1がそう言う。

そんな中、エクスは、浮かない顔で自分の手の平を見つめる。

 

パウロ「どうしたんだよ?」

エクス「…全力でやって、やっと勝てた」

パウロ「すげぇじゃん」

エクス「……」

パウロ「だから、どうしたんだよ?」

エクス「いや…もっと強くなんなきゃダメだなって」

パウロ「はあ!?」

 

パウロは呆れて笑う。

その(かたわ)ら、アルスもエクスの言葉を聞いている。

 

パウロ「お前、そんなに強くなってどうすんだよ?」

エクス「いや、わかんない…」

パウロ「??」

エクス「わかんないけど、」

 

握り拳を作るエクス。

 

エクス「いつか世界を見に行きたい…。その為には、多分もっと強くならなきゃダメな気がする」

パウロ「ふーん」

 

そんなエクスを、アルスは見つめる。

エクスは席を立つ。その背丈は聖剣を少し越すほどに成長している。

 

エクス「師匠。ありがとうございます」

アルス「あ、うん」

 

エクスは、アルスからハエタタキを返してもらう。

演奏隊が、軽快なメロディーを奏でだす。

はしゃぐ村娘達。

 

女の子「ヘルエッカだー!」

 

エクスらのテーブルから娘達が演奏隊の方に向っていく。

 

女の子「アルスちゃんも踊りに行こー?」

 

アルスの手を引く女の子。

 

アルス「え、でも、僕踊れない…」

女の子「教えてあげるー!」

子供女「簡単だよ!」

アルス「うぇ、あ、ちょ!」

 

女の子達に連行されていくアルス。

エクスはその姿を可笑しそうに見届ける。

 

「おおい!」

 

声の方に顔を向けるエクス。

村男2がやってくる。

 

村男2「カリオスさん告白するってよ!!」

青年「マジかよ!!ラウラに!?」

村男2「ラウラに!」

 

村男2を先頭に、賑わう方へと我先に向う青年達。

エクスやパウロは特にそれを追う様子もなく傍観する。

彼らが向う先では、一人の村娘と、花束を携えた剣士がギャラリーを集めている。熱っぽい雰囲気。

 

パウロ「まだまだだなぁカリオスさん」

エクス「そうなの?」

パウロ「プレゼントはでっっけえ猪肉が一番なんだぜ?とーちゃんはそれでかーちゃんと結婚できたって言ってたからな」

村男1「お前んちと一緒にすんな」

パウロ「はあ?なんでだよ!」

村男1「あんな?女ってのは基本的に花が好きな生き物なんだよ!お前の母ちゃんは特別!」

パウロ「ふーん…」

エクス「……」

パウロ「……」

村男1「……」

パウロ「ホイさんは行かないの?」

 

指さすパウロ。

 

村男1「…行かない」

エクス「なんで?」

村男1「……」

 

村男1は血涙を流す。

 

村男1「ずぎな女どられるとこなんざ見だがねえ」

 

そう言って賑わう方をガン見している。

 

パウロ「あ、そ、そう…」

 

花を捧げる剣士。村娘は頬を染めてそれを受け取り、周りからは祝福の声が上がる。

エクスはふと手に持ったハエタタキに目を向ける。

抱擁(ほうよう)する剣士と村娘。

アルマル宅真横のテーブル席。テーブルに並べられた料理を小皿に移す女性の手。

小皿を隣に座るエクス父に渡すエクス母。

 

エクス母「魔法使い様、食後のお菓子でもいりますか?」

 

反対隣に腰掛けているアイデンに話しかける。

 

アイデン「いえ、結構です。この頃は特に、すぐお腹も満たされるもので」

 

答えるアイデン。頬はすっかり痩け、小皺が目立ち、その瞳はすっかり(かす)んでいる。

 

エクス母「そうですか…」

 

表情に不安がよぎるエクス母。

 

アイデン「それよりもシフルさん、“魔法使い様”はもうおやめください」

エクス母「あ…」

 

と、口に手を添える。

 

エクス母「アハハ、ごめんなさい、なかなか取れなくて、息子がお世話になってると思うとなおさら…」

エクス父「しかしもう、随分経ちましたなあ…。日に日にたくましくなって家に帰ってくるもんだから…なんと言えばいいか…頼もしさってのを感じますよ。本当に、息子のわがままを聞いてくれてありがとうございます」

 

アイデンに会釈するエクス父。

 

アイデン「とんでもございません。私の方こそ、彼の成長は見ていて面白い」

エクス父「ならいいんですが…」

 

茶の入ったカップを口に運ぶアイデン。

 

エクス父「どうです?あいつ、結構やりますか?」

 

ふと手が止まるアイデン。

 

アイデン「…気になりますか?」

 

そう言った後に、茶を一口喉に通す。

 

エクス父「そりゃあもちろん」

 

アイデンはカップを戻し、一息間を置いて喋り出す。

 

アイデン「結構、なんてもんじゃありませんよ。めちゃくちゃです」

エクス父「めちゃくちゃ?」

アイデン「はい。純粋な力比べとなればともかく、こと闘技においては、もはやこの村で彼の右に出るものはいないでしょう」

 

きょとんとするエクス父。

 

エクス父「ハ…ハッハッハ!そいつぁ我が子ながら恐ろしいですなぁ!」

 

アイデンはその霞んだ瞳をエクス父に合わせる。

 

アイデン「ええ…」

 

表情は至極真面目に。

 

アイデン「まったくです」

 

それを見て、エクス父も何かを察する。

 

エクス父「…マジなんですかい?」

 

アイデンの口角が(ほの)かに上がる。

 

村長「おお、アルマル殿!」

 

近くのテーブル席に座っていた村長が、演奏隊の方を指して、アイデンに声をかける。

 

村長「娘さんが踊っておられますぞ。ハハハ」

 

その方向を見るアイデン。瞼を閉じる。

その様子に気づくエクス母。

 

エクス母「?」

 

演奏隊の横で、たき火を囲んで踊る村娘達。

その中でアルスも、和気藹々(わきあいあい)と友達に教わりながら、おぼつかない足取りで踊っている。漂う「キラキラ」と共に。

アイデンは瞼を開ける。

 

アイデン「本当だ」

 

そう言って目を細くする。

村長は席を立ち、アイデンの元に近づく。

 

村長「アルマル殿…お体の調子はいかがですかな?」

アイデン「…今は安定していますよ」

 

頷く村長。

 

村長「どうか、ご無理はなさらず」

アイデン「ありがとうございます」

 

アルスの方を見つめるアイデン…

 

アイデン「村長殿、それにお二人も」

 

村長とエクスの両親はアイデンに顔を向ける。

 

村長「なんですかな?」

アイデン「一つ、お頼みしたいことが……」

 

踊りに慣れてくるアルス。笑顔を友達に向ける。

 

〈四〉

 

森林の終わり。獣の(うな)り声の後、衝撃音と共に、蒼銀(そうぎん)の結界が空中に姿を現す。

結界に捕らわれ、電撃をくらっている怪物。そのまま地面に倒れ落ち、暗赤(あんせき)の煙となって消滅する。

それにたじろぎ、結界から距離を置く他の怪物達。

結界はフェードアウトし、再び視認できなくなる。

威嚇するのみの怪物達。

その背後の地面。地中から暗赤の怪火が()き立つ。地面が怪火を纏いつつ、じわじわと隆起する。

その地面に生えていた草花は、干からびて崩壊していく。

隆起した先端部分がうねり、そのまま大蛇の如く、結界のもとへと体を伸ばしていく「それ」。

「それ」に道を空ける怪物達。

結界が姿を現し、近づく「それ」を待ち構える。

「それ」が加速する。結界に衝突する。散る火花、電撃。鍔迫(つばぜ)り合いを繰り広げる「それ」と結界。

「それ」は文字通り身を削らされながらではあるが、結界に詰め寄っていく。

 

村の広場。祭壇の上に佇む聖剣が、その身から淡い光を放つ。

 

結界の電撃が激しさを増す。もろにくらい、押し返されていく「それ」。執拗に粘るも、体が電撃に破壊されていく。

傍観していた怪物達が、「それ」の体に飛びつく。怪物達は怪火となり、「それ」の内部へと吸収されていく。

拮抗しだす「それ」と結界。

 

強まる聖剣の光。

 

しかし、「それ」は再び結界に詰め寄りだす。

 

聖剣は光を弱めない。

 

電撃を浴びる中、「それ」の先端部分が裂け、口と呼べるものができる。

口から放たれた金切り声。結界の表面に、ごく僅か、亀裂が――

 

〈五〉

 

アイデン「――!」

 

アルマル宅真横のテーブル席。宴の最中。反応を示すアイデン。

アイデンは自身の席の後方、森林の方に顔を向ける。

黙ったままの木々達。

目を凝らすアイデン。森林の更に奥へと、視線を向ける。

 

アルス「何見てるの?」

 

我に返るアイデン。自分の横で、お肉を頬張りながら一緒に森林を見つめているアルス。

 

アイデン「いや…」

 

アイデンは視線を外す。

 

アイデン「なんでもないよ」

 

アルスの頭を撫でる。

 

〈六〉

 

森林の終わり。割れた窓ガラスのような、大穴の開いた結界。徐々にではあるが、自然修復を進めている。

結界の内側の地面。干からびきった草花が、風にそよがれ崩壊していく――…。

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