メルクストーリア 【動物の国another ~牛睡の冀望と偶想のおねえちゃん~】   作:ひょうたんふくろう

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第8話 お昼寝広場の激突

 それは、全身に湿った泥を纏わせたモンスターであり、そして何より巨大であった。

 

 ちょっとした物置小屋なら体当たりで簡単に壊してしまえそうなくらいにはデカい。その背中は広くて大きく、大人を五、六人乗せたとしてもなお余ってお釣りがくるだろう。泥に混じって根っこや葉っぱや枝だのがあるために、まるで巨大な土塊のようだ──というのが、ユウの第一印象であった。

 

 次に目に付くのが、その長い鼻である。長い鼻のモンスターと言えば真っ先にラーファンを思いつく人間が大半であろうが、しかしこいつはそんなにかわいいものではない。なるほど確かに、大きな耳こそないものの、その鼻の形状はラーファンのそれに似ていると言えるが、規模が規模だ。それはそこらの丸太よりも太く、ぶおんと風を切るほどのしなり……柔軟性がある。

 

 鼻と言うよりかは、鼻の機能もある筋肉で出来た腕と言うべきだろう。それを軽く一振りするだけで、大の大人が三人は軽く吹っ飛ばされるはずだ。

 

 最後に……そいつの背中には、明らかに噛み合っていない樹が生えている。泥に混じった不純物ではなく、しっかりとそいつに根付いたものであるらしい。妙に生命力があふれているのが見て取れて、それがよりいっそう、不気味な印象を与えている。

 

 なにより、それを起点に触手状の根っこがうねうねと蠢いている。これを見て、警戒心を抱かない生物はいないだろう。

 

 結論。

 

 とにかくデカい、背中に化樹を生やした泥まみれの凶暴な耳のないラーファン。それが、このモンスターを誰かに説明する際に一番適した表現であった。

 

「ルォォォォッ!!」

 

「っ!?」

 

 お昼寝広場に突っ込んできたそいつが長い雄叫びをあげ、ユウはハッと気持ちを切り替える。これ以上の観察を行ったところで、事態が好転する可能性は限りなく低い。最低限必要な情報は得られたのだから、次に行うべきは。

 

「──やぁッ!」

 

 襲い掛かってきた背中の根っこを撃墜したのは、霧を吹き払うほどの威力を持った鋭い一撃。いつのまにか弓を装備したフィネットが、先ほどまでの穏やかな団欒のひと時とはまるで別人のように真剣な表情で、こちらに駆けてきている。

 

「ユウくん、癒術!」

 

 後退し、フィネットと入れ替わるように動きながら、ユウはそいつに向かって癒術を試みる。

 

 ──心を鎮め、開いて広げて。

 

 ──相手の心を包んで重ね、響き合わせて語り掛ける。

 

「……まだダメです! 興奮していて、とても癒術をかけられる状態じゃない!」

 

 凍った氷が解けるように。あるいは、花のつぼみが咲き開くように。癒術師によってそのイメージは様々だが、ともかく癒され、落ち着くはずのモンスターの心は、ユウの癒術を拒絶するように昂っている。心を響き合わせて語り掛ける以前に、猛り狂っているために癒術そのものが届かない状態だ。

 

「深く語り掛けるので、足止めお願いします! それと……!」

 

「落ち着かせてほしい、よね? うん、おねえさんに任せて」

 

 後ろに控える癒術師と、それを護る護衛。旅の癒術師一行の編成として最もメジャーでオーソドックスな隊列。ユウとフィネットの判断とその行動は、決して間違ったものではない。

 

 ただし、状況が悪かった。

 

「ルォォォォッ!!」

 

「くっ……!」

 

 そのモンスターの背中から伸びてくる根っこ。触手のように変幻自在に動くそれに絡め取られたら、人間なんてひとたまりもないだろう。目視で数は八本ほどだろうか。フィネットの弓の一撃でなんとか撃退することはできているが、数が多いことには変わらない。

 

「せぇいっ!」

 

 一射、二射、三射。

 

 右から、左から、上から、前から──あちこちから飛来してくる触手を、フィネットは細かく位置を変えながら撃退していく。撃ち落とされた触手は一瞬ひるんで引っ込むが、元が植物のそれと変わらないからか、呼吸を三回するうちには復活して再び襲い掛かってくる。

 

「……っ!」

 

 数多の触手を相手取ってなお、フィネットは一歩たりとも後退していない。弓使いと言う、本来ならば真正面からやりあうような戦闘スタイルでないのにそれを成し得ているのは、流石と称賛されるべき行いである。

 

 しかし実際問題として、わずかに少しずつ、押されてきているのも事実であった。

 

「ルゥゥウゥウッ!!」

 

「む!」

 

 いつまで経っても倒せない獲物に苛立ったのだろう。特徴的な呼吸音と共に、鼻の先から白い霧が勢いよく噴き出す。

 

 触手を撃ち落としていたはずのフィネットであったが、しかしその予備動作を見逃すはずがない。そいつがふぉん、と後方に鼻を振り、振りかぶった段階で位置取りを修正して。

 

「ふッ!」

 

「ルォッ!?」

 

 鼻による渾身の薙ぎ払い。それをフィネットは、大きくジャンプすることで見事に避けて見せた。

 

「さ、さすが……!」

 

 もし少しでもジャンプのタイミングがずれていたら。もし少しでもその鼻先が足を掠めていたら。きっとフィネットは盛大に吹っ飛ばされ、このモンスターが勝鬨を上げていただろう……そう思わせるほどの威力の一撃。

 

「ふふふ、舐めてもらっちゃ困る……わ!?」

 

 フィネットの誤算はただ一つ。

 

 鼻の一撃を躱したからと言って、触手による攻撃が止まる理由にはならないというその事実だ。

 

「きゃ……!?」

 

 フィネットが空中に逃げた。つまり、ほんの一瞬とはいえそのモンスターの前に立ちふさがる障害はいなくなった。そして、このモンスターは巨体でありつつ、遠距離からの攻撃手段──触手状の根っこを有している。

 

 そんな触手が、恐怖に引きつり逃げ遅れた──無防備な子供たちに向かったのも、ある意味では当然のことだったのかもしれない。

 

 運が良いのか悪いのか、その子に一番近い位置にいるのは……ゾランだった。

 

「ゾラン! その子を頼む!」

 

 ユウは声を張り上げる。位置取り的に、自分が走ったところでもうどう頑張っても間に合いそうにない。出来ることと言えば、成功することを信じて癒術をかけ続けることくらいだ。

 

「う、あ……!」

 

「ゾラン!?」

 

 ゾランの様子がおかしい。大剣を構えてはいるのに、その切っ先ははっきりと見てわかるほどに震えている。どうやらユウの声も聞こえていないようで、そもそもとして悪い意味でモンスターに釘付けになってしまっている。おそらく、周りの様子もろくに見えていないことだろう。

 

 改めて思えば、最初からユウもフィネットも、ゾランのことを気にかけておくべきであった。まず第一に、ゾランはあくまで年少組で本来ならば護る対象であること。第二に、見習いとはいえ村守と自負している彼が……大剣使いの前衛であるはずの彼が、戦闘が始まったにもかかわらず前に出てきていなかったこと。なし崩し的に始まった戦闘であったとはいえ、この二点を見逃してしまったのはユウとフィネットの、大きな過失であったと言える。

 

 本来ならば、前衛が敵と切り結んで前線を構築し、後衛が後ろから大きなダメージを与える……と言うのが多くの護衛たちの間で取られる定石(セオリー)となっている。それはかつて人とモンスターが争っていた時代から引き継がれている、常識のようなものだ。もちろん、熟練の村守や護衛であれば定石にとらわれない隊列を組むこともあるが、しかしそれはあくまで特殊例であり、見習いがやるようなものじゃない。

 

 後衛であり、本来はダメージソースであるフィネットだけが前線を支えているという事実そのものが異常であったのだ。やりづらいと感じるのも無理はないというか、それで当たり前、なんとかなっていることそのものが奇跡に近いことだったのである。

 

「くっ……!」

 

 癒術の手を止め、ユウはゾランとその近くにいる子供に向かって走り出す。頭の中では間に合わないと解っていたものの、体が勝手に動いたというそれだけの話であった。

 

「え、えいっ!」

 

「ルォォォ!?」

 

 バシュ、と特徴的な機械音。

 

 気づけば、今まさにゾランの元に伸びていた触手に太く短い矢──ボルトが突き刺さっていた。

 

「こ、子供たちには指一本たりとも触れさせないんだから!」

 

「ユディさん! 来てくれたんですね!」

 

「う、うん! ごめん、遅れちゃって~……!」

 

 お昼寝広場の端の方。村の外から全力で走ってきたのだろう。息をぜえぜえと切らしたユディが、愛用のクロスボウを構えている。話しながらも第二射の準備……ボルトの装填を行っており、意識そのものはモンスターから外していない。

 

「ユウくん、癒術ってやつでなんとかならないの?」

 

「それが……あのモンスター、癒術が効かないほどに興奮しているんです。足止めして、心を落ち着かせないと……!」

 

「う……が、頑張る……ひゃっ!?」

 

「ルァァァァァ!」

 

 モンスターの動きが戻った。せっかく獲物を捕らえられそうだったのに邪魔されて、純粋に腹が立ったのだろう。先ほどまでより明らかに攻撃の勢いは増しており、ユディと言う攻撃手が増えてなお、事態は好転しない。

 

 フィネットとユディ。二人が必死に触手を避けて、危険な一撃と思われるそれを必死に撃ち落とす。薄氷の上でタップダンスを踊るかのような、一歩間違えればあっという間に何もかも終わってしまうギリギリの状況。

 

「……」

 

 もう少し手数が欲しい、とユウは思った。前衛なんて贅沢なことは言わないから、銃使いか、あるいは魔法使いか。複数の敵を相手取るのを得意とする、そんな職種のエキスパートが今この場にいてほしい。

 

 結局のところ、弓使いという職種はあくまで強大な相手に強烈な一撃を与えるプロであり、複数の敵をまとめて攻撃したり、あるいは迫りくる敵の大軍を押し返したりすること……前線の維持には向いていないのだ。

 

「く、くそ! オレだって……!」

 

「やめろゾラン! 今はフィネットさんたちに任せるべきだ!」

 

「なんだよにーちゃん! オレじゃ頼りないってか!?」

 

「違う! あんな触手と矢が飛び交ってる状況で、迂闊に近づけないって言ってるんだ! 今はただ、守りに専念して……俺を守ってくれ!」

 

「う……!」

 

 大剣を構えて突っ込もうとするゾランを、ユウは必死に制止する。下手に状況を動かしたら、フィネットとユディの邪魔になりかねない。触手を避けて、射って、位置を変えて……フィネット達が紡ぐこの戦闘のリズムとも取れるそれが崩れたら、一体どれだけ恐ろしいことが起こるのか、ユウには判断ができなかったのだ。

 

「っ!」

 

「うわわ!?」

 

 一瞬。ほんの一瞬だけユウたちの注意が自分から逸れたのを、そのモンスターは見逃さなかった。

 

 フィネットとユディ、二人に触手による攻撃を行いつつ、振り回すような鼻の一撃。空気を切り裂く重い音ともに振るわれたそれは、まっすぐユウとゾランの元へ向かってくる。

 

 ゾランが大剣を構える。が、ユウでさえわかるほどに腰が引けている。いくらゾランの力が強いとはいえ、これじゃ普通に吹っ飛ばされるだろう。

 

 そう判断したユウは、咄嗟にゾランの肩を掴み、自身も倒れるようにして思いっきり引き倒そう……として。

 

「でぇぇぇい!」

 

「ルァ!?」

 

 裂帛の気合と共に響く、空気を切り裂く鋭い音。目で追うのもやっとな速度で放たれたそれがそのモンスターの鼻を強かに打ち付ける。さすがにこれには参ったのか、そのモンスターは大きく怯み、悶絶の雄たけびを上げた。

 

「ごめん、遅れて!」

 

「ローフィ!」

 

 手首をしゃなりとしならせ、ローフィは自身の武器──鞭の先端をきゅっと手繰り寄せた。間髪入れずに腕を大きく振るって、次の一撃を繰り出す。手首のスナップが十分に効いたその一撃は、まるで生きた蛇の如く変幻自在の動きを伴い、襲い来る触手や鼻の一撃を的確に撃墜していく。

 

 もしゾランがもっとよくローフィのことを観察できていれば、腕の振りと手首のしなりを上手く組み合わせ、攻撃中に鞭の軌道を的確に操っていたことに気づけただろう。

 

 そして、弓とは違い鞭には攻撃の隙間(・・)がない。一振りの間に複数の対象に攻撃を当てられるし、返し(・・)のときもまた攻撃となる。

 

 奇しくも、ローフィはユウが求めていた複数相手を得意とするエキスパートに他ならなかった。

 

「おにいちゃん、癒術!」

 

「まだ、もうちょっとかかりそうだ! なんかこう、あと一発……大きな一押しがほしい!」

 

「それなら大丈夫! だって……!」

 

 確かな経験と実力を持つフィネットとユディ。手数と相性の面で圧倒的に有利なローフィ。戦える人間が三人もいれば、今この瞬間においてこのモンスターを封じ込めることに確かに成功している。あとは、封じ込めるの先の段階……落ち着かせて、癒術によって癒すだけ。

 

「子供たちの避難は、もう終わったから!」

 

 ──ここでひとつ、振り返ってみよう。

 

 そもそもどうして、最初にモンスターが襲ってきたとき、それに対応したのがフィネットだけだったのか。元々村の外にいたユディや足の竦んでいたゾランはともかくとして、曲がりなりにも癒術師の護衛としてそれなりの経験のあるローフィは何をしていたのか。

 

 答えは単純。

 

 お昼寝広場にいた子供たちを、できるだけ安全な場所に避難させていたのだ。

 

 そして、子供たちを避難させていたのはローフィだけではない。

 

「んふふ……! みんな、待たせたね……!」

 

 三、四、五、六。後方から飛来した光は、おそらく六つ。ユウの動体視力で捉えられたのは奇跡と言っていい。何をどうやったのかはわからないが、凄まじい勢いで投げられたナイフがモンスターの触手に突き刺さっている。

 

「シャルフィさん……!」

 

「みんな、良く持ちこたえてくれた! あとはおねえちゃんたちに任せるがいい!」

 

 右手に三本、左手にも三本。都合六本のナイフを構えたシャルフィが、曲芸じみた動きでそれを投擲する。日の光を反射して煌めくナイフは、一条の光となってまっすぐ、吸い込まれるようにして触手に突き刺さっていく。

 

「ルァァァァ!?」

 

「怯んだ!」

 

「よぅし、今だ! 頼むぞ、もう一人の私!」

 

「ええ! みんなが避難した今なら気兼ねなくいけるわ(・・・・)!」

 

 シャルフィの後ろからひょっこりと顔をのぞかせたシロフィ。彼女はその白衣の中に手を突っ込み──六つのフラスコを取り出した。いったいどうしてあの白衣の中に六つもフラスコが入っていたのかはわからないが、ともかくその中には、明らかに飲んじゃいけない感じの虹色に輝く液体が入っている。

 

「行きますッ!」

 

 そんなフラスコが、六つ同時に放たれる。中の液体をこぼすことなく、綺麗な放物線を描いてモンスターの面前まで。

 

 意外と強い肩をしているんだな、自分にも半分でいいからその強い肩を分けてほしいな……なんて、ユウが場違いにもそんな思いを抱いた瞬間。

 

「ルァァァァァアァァァ!?」

 

「わっぷ!?」

 

 大きな破裂音が、立て続きに六回ほど。一つ一つはそこまで大きくないのだろうが、しかし軽く衝撃が伝わってくる程度には威力があるらしい。そんなものが面前で六回も連続で爆発したとあっては、流石の巨体であっても堪らない。

 

「ルゥゥ……」

 

「ユウくんっ!」

 

「はい!」

 

 その声が、どのフィネットの物だったのかはわからない。しかしユウは、この千載一遇のチャンス……モンスターが爆発の衝撃で目を回しているという絶好の機会を逃すほど、癒術師として未熟なわけではなかった。

 

「頼む──!」

 

 ──心を鎮め、開いて広げて。

 

 ──相手の心を包んで重ね、響き合わせて語り掛ける。

 

 いつもと同じ、心と心で相手に語り掛ける感覚。モンスターという対話ができない存在に対し、その架け橋を作るようなこの技術。『それなら癒術じゃなくて話術とか、心術って名前のほうがいいんじゃないか』──なんて聞かれるのは癒術師としてはよくあることだが、実際使ってみれば、この感覚は確かに癒していることにほかならない……癒術師だけが体験できる、言葉にできない不思議な感覚。

 

 結果として無防備な心。怒りと言う燃え上がる鎧が消失した、何の障害も無い状態。足も止まって動き出す気配はなく、ここまでくればまず間違いなく成功する。

 

 そのはず、だったのに。

 

 

「──え」

 

 

 ユウが、ゆっくりと目を開いた。信じられないとばかりに、意識が朦朧としているはずのそのモンスターを見つめる。

 

「どしたんだよ、にーちゃん……?」

 

「こいつ……癒術が届かない……!?」

 

「……まだ、足りないってこと? じゃあ、オレが最後の一押しをしてくる!」

 

「あっ!?」

 

 大剣を構えたゾランが、そのモンスターへと突っ込んでいく。すっとそれを横に倒し、大剣の腹を叩きつけるような構えだ。意識を落としてしまえば問題ないと踏んだのか、あるいは最後に一つ良い恰好でも見せようと思ったのか。

 

 あともう少しだけ早く、手を伸ばせていたら。ユウが嘆いても、もう遅い。

 

「ルァァ……!」

 

「え──」

 

 ぴたりと止まっていたはずの触手。それが、いつの間にか持ち上がっている。

 

 反撃なんて想像だにしていなかったゾランに、それを防ぐ術はない。

 

「ルォォォォォッ!」

 

「うわああああ……あ?」

 

 何度も何度も聞いた風切音。何かがドシン、とぶつかってきた衝撃はあった。

 

 が、思っていたより全然大したことはない。それどころか、柔らかくってふわふわで、心地よいくらいだ。不思議なことに、ゾランはその柔らかい衝撃をかつて何度も食らったことがあって、ここ最近は逆にそれができなくてちょっぴり寂しい思いを抱いていたりする。

 

 つまり、この覚えのある衝撃と、優しく甘い、心地の良い匂いが意味するのは。自分が今、柔らかくて暖かいものに抱きしめられている理由とは。

 

 

「もう……ダメじゃない」

 

「え……ねえ、ちゃん?」

 

「おねえちゃんたちに、まかせとけって……いった、で、しょう……?」

 

 

 ゾランを押し倒すように突き飛ばしたフィネット。

 

「ケガは、ないわ、ね……?」

 

「え……あ……ねえちゃん、そのせなか……」

 

 村守として子供を見事に守った彼女は、苦痛に呻きながらも柔らかくふわりとほほ笑んだ。

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