雪ノ下雪乃が行く実力至上主義の教室   作:速水さん

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6話 ようこそ不良品の世界へ

5月最初の授業が始まって、茶柱先生が教室に入ってきたと思ったが、何やら、手にポスターの筒を持ってやってきた。その顔は、いつもよりも険しい顔をしていた。

 

「センセー! 生理でも止まったんですか?」

 

そして池君はデリカシーの無い言葉を口にする。あなたは、普段からモテたいと言っているけど、モテたいならそんな発言は今後しない方がいいわよ。

 

「これより朝のSHRを始める。が、その前に何か聞きたいことがあるはずだ。始める前に受け付けよう」

 

まるで質問があるのを確信している素振りだった。実際、半数以上の生徒がおずおずと手を挙げた。

 

「あの、今朝確認したらポイントが振り込まれてなかったんですけど。毎月一日に支給されるんじゃないんですか? ジュース買えなかったんで焦りましたよ」

 

「本堂、前に言ったようにポイントは毎月一日に振り込まれている。学校側で念のため確認しているが、こちらの不備は一切ない」

 

「えっ? で、でも振り込まれてないし……」

 

その先生の言葉でほとんどの生徒が同様したり、友人達と喋って「なんで?」とか「どういうこと?」などと口々に言っている。

 

なるほどね、大体は分かったわ。

 

「──お前らは本当に愚かだな」

 

すると茶柱先生は教師として明らかに失格である罵声を浴びせてくる。不気味な気配を携えた彼女にクラスメイトはただただ口を半開きにするしかなかった。

 

「座れ、本堂。2度は言わない」

 

「さ、佐枝ちゃん先生……?」

 

今まで聞いたことがない厳しい口調に呑まれた本堂君はしばらく呆然としていたが、本能が未来を予測したのか、数秒後にはズルッと席に収まった。

 

「もう一度だけ言おう。ポイントは確実に振り込まれた。それは間違いない。このクラスだけ忘れられた、などという幻想や可能性も皆無だ。分かったか?」

 

「わ、分かったかって言われましても……。な、なぁ?」

 

本堂は不満げな様子を見せ、クラスメイトに同意を求め、クラスメイトは頷く。

 

まだ分からないのね。

 

「ははは、なるほどねティーチャー。私は理解出来たよ、この謎解きがね」

 

すると金髪頭の高円寺君が声高に笑う。どうやら彼はポイントに関する謎を解いたようだ。そして今は授業ではないと認識したらしく、両足を机の上に乗せた。

 

「簡単なことさ、私たちDクラスには1ポイントも支給されなかった、ということだよ」

 

「はぁ? なんでだよ。毎月10万ポイント振り込まれるはずだろ」

 

そんなことを須藤君が言い始めた。

 

「私はそう聞いた覚えはないがね。私のほかにも、気づいている人はいたと思うけどね」

 

「誰だよ。そんな奴は」

 

須藤君は周りを見ながら、声を荒げていった。何人かの女子が怯えていた。

 

「これだけのヒントがありながら、気づいてものが数人しかいないとは嘆かわしいことだ」

 

「…先生腑に落ちない点があります」

 

平田君が、手を挙げて先生に質問をした。質問しなくてもこの一か月の皆の授業の態度とかを見ていたら、わかることなのに。

 

「振り込まれなかった、理由を教えてください。それでなければ僕たちも納得がいきません」

 

「そうだな。だが、それすらもわかっている奴がいるから、そいつに説明させようか」

 

茶柱先生がそう言って、周りの人たちは、キョロキョロし始めた。

 

「そうだろ?雪ノ下」

 

茶柱先生が急に私の名前を呼んだ。

 

「先生、何故私なのですか?まぁ、先生の指名とあれば言います。授業中に騒いでいたり、端末をいじっていたり、遅刻、休むなどの生活態度で私たちのポイントが引かれているのよ」

 

私がそういうと、心当たりがある人たちが下を向いていた。

 

「雪ノ下言う通りだ。遅刻欠席、合わせて94回。授業中の私語や携帯を触った回数395回。ひと月で随分とやらかしたもんだ。この学校ではクラスの成績がポイントに反映される。その結果お前たちは振り込まれるはずだった10万ポイント全て吐き出した。それだけのことだ。入学式の日に直接説明したはずだ。この学校は実力で生徒を測ると。そしてお前たちは今回、0という評価を受けた。それだけに過ぎない」

 

その言葉にクラスの大半は絶句した。恐らく自分達が悪いと理解出来なかったのでしょうね。しかしこの制度、真面目に授業を受けていた生徒たちからしたらとばっちり。

 

「それに高校1年に上がったばかりのお前らが、毎月10万も使わせてもらえると本気で思っていたのか?優秀な人材教育を目的とするこの学校で?ありえないだろ、常識で考えて。なぜ疑問を疑問のまま放置しておく」

 

「せめてポイントの増減の詳細を教えてください……」

 

「それはできない相談だ。詳細な査定の内容は、教えられないことになっている。しかし、そうだな……。一つだけいいことを教えてやろう」

 

そう言うと、先生はクラスを見渡した。

 

「遅刻や授業態度を改め、今月マイナスを0に抑えたとしても、ポイントは減らないが増えることもない。つまり来月も支給されるポイントは0ということだ。裏を返せば、どれだけ遅刻や欠席をしても関係ない、という話。どうだ、覚えておいて損はないぞ?」

 

「っ……」

 

平田君は理解したようだった。そんな事を言ったら私語や遅刻を改善する意識は削がれる。そう思っているとチャイムが鳴り、ホームルームの時間の終わりを告げるが、茶柱先生は止まらない。

 

「どうやら無駄話が過ぎたようだ。本題に移るぞ」

 

先生はそう言って手にしていた筒から白い大きめの紙を取り出し、黒板に張り付けた。そこには、AからDクラスの名前とその横に、数字が書かれていた。

 

私達Dクラスは0。わかってたけどこうして見せられるとため息が出てきてしまうわね。

 

他のクラスはCクラスが490。Bクラスが650。Aクラスは940だった。つまり椎名さんは4万9000ポイント、坂柳さんは9万4000ポイントも手に入るのね。

 

「お前たちはこの1か月、学校で好き勝手な生活をしてきた。学校側はそれを否定するつもりもない。ただ、それらが自分たちにツケが回って来るだけのこと。得たものをどう使おうがお前たちの自由だ。ポイントの使用に関してもそうだ。事実、その点に関しては制限をかけなかっただろう」

 

要するに自己責任ってことね。そして0ポイントに近い人たちが騒いでいた。というか、これを機にあなた達はちゃんと授業受けることをおススメします。

 

「なんで……ここまでクラスのポイントに差があるんですか」

 

平田君があまりに綺麗にポイント差が開いてることに気が付いたようだった。

 

「段々理解してきたか? お前たちがなぜDクラスに選ばれたか」

 

男子「そんなの適当じゃないんですか?」

 

女子「クラス分けってそんなもんだよね?」

 

「違う。この学校では、優秀な生徒たちの順にクラス分けがされるようになっている。最も優秀な生徒はAクラスへ。駄目な生徒はDクラスへ。つまりお前たちは、最悪の不良品だということだ」

 

そして茶柱先生は拍手をし始めた

 

「そして1か月ですべてのポイントを吐き出したのはお前達が初めてだ。逆に感心した、立派立派」

 

「このポイントが0である限り、僕たちはずっと0ポイントのままということですね?」

 

「ああ。だが安心しろ、ポイントがなくてもこの学校では生活できるようになっている」

 

それは知っているわ。食品や生活用品の中には無料のものがあるから。

 

しかしクラスメイトの大半は贅沢していたから、割り切れないと思う。加えて無料のご飯はあくまで腹を満たす為だけに存在していて正直不味い。

 

「俺たちはこれからずっと他のクラスの奴らに馬鹿にされるってことかよ!」

 

すると須藤君が机の脚を蹴る。物に当たるのはやめた方がいいのに。

 

「何だ、お前にも人の評価を気にする気があったんだな。なら、頑張って上のクラスに上がれるようするんだな」

 

「あ?」

 

「クラスのポイントは金と連動してるだけじゃない。このポイントの数値がそのままクラスのランクに反映されるということだ」

 

さて、もう一つお前たちには残念な知らせがある」

 

黒板に一枚の紙が追加される。そこにはDクラスの生徒全員の名前と、名前の横に数字が記載されている。

 

「この数字が何か、不良品のお前達でもわかるだろう。これは先日やった小テストの結果だ。お前たちは一体中学で何を勉強してきたんだ?」

 

言われて見てみると一部の上位を除き、殆どの生徒は60点前後の点数だった。30点以下の生徒も見受けられる。

 

ちなみに、私の点数は、5教科中4教科満点で一番上にいた。ちなみに1つは凡ミスで95点だった。

 

「よかったな、これが本番だったら7人は退学になっていたぞ」

 

「た、退学?どういうことですか!?」

 

「なんだ、説明していなかったか?この学校では中間テストと期末テストで1科目でも赤点を取ったら即退学だ」

 

茶柱先生の言葉によって私以外の赤点組は騒ぎ出す。

 

「ふざけんなよ!退学とか冗談じゃねえよ!!」

 

「私に言われても困る。この学校のルールだからな」

 

「ティーチャーの言うように、このクラスには愚か者が多いようだね」

 

爪を研ぎながら、足を机に乗せたままの高円寺君が偉そうに微笑む。

 

「何だと高円寺!お前だってどうせ赤点だろ!」

 

「フッ。どこに目がついてるのかねボーイ。よく見たまえよ」

 

高円寺の点数は96点で2位だった。

 

「絶対須藤と同じ馬鹿キャラだと思ってたのに……」

 

クラス中からそんな声が聞こえてくる。

 

「それからもう1つ付け加えておく。この学校は高い進学率と就職率を誇っている。恐らくお前達も、目標とする進学先や就職先を持っていることだろう」

 

そう。就職できれば私は、晴れて自由の身。

 

「だが世の中そんな上手い話はない。この学校の恩恵にあやかれるのは上位のクラスだけだ」

 

「つまりその恩恵を受けるにはCクラス以上に上がらないといけないということですか?」

 

「それは違うな平田。この学校に将来の望みを叶えて貰いたければ、Aクラスに上がるしかない」

 

それを聞いて、私は固まってしまった。何故ならこのクラスでAクラスに上がることはほとんど無理に近い。でも、まだ一年生だけどもしなれなかったらと考えると私は固まってしまってた。

 

「そ、そんな……聞いてないですよそんな話!無茶苦茶だ!」

 

すると平田君に続いて幸村君も騒ぐが先生は一切気にしない。そして高円寺君が幸村君をみっともないと言った。

 

そのあとの事は全く覚えていない。クラスの人達が騒いでいたけれどもそれを無視して、私は、絶望していた。

 

軽井沢さんから、ポイントを貸してほしいと頼まれたがいつもの私なら、断っていたが今は普通ではなかったから貸してしまった。あれは必ず帰ってくないやつだと授業中に後悔していた。

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