今日も今日とて、俺は物質界へ帰る為にも魔界を彷徨う。
その最中、人型デーモンの住処らしき岩みたいな樹木見つけ、俺と相棒で襲撃することを決めた。
放っておけば。いずれこのデーモン達は物質界を乱す先兵になる。見逃す訳にはいかなかった。
デーモン達は、上位者たる。魔王ガリウスやら魔神といった者達がいなければ、どいつもこいつも自分勝手だ。
隣で同じデーモン種が殺されても、殺気が自分に向かなければ我、関せず。それどころか面白半分で見物してやがる。
奴らにとっては肉体はただの器だ。だからこそ、どれだけ仲間が殺されても知った事ではないのだろう。
ふざけやがって。
こんな奴らが、こんな奴らのせいで物質界は一度。国を、知識を、技術を、未来を紡ぐ人々の願いを滅ぼされかけたんだ。
時間が経てば復活するのだろうが、関係ねぇ。何度でも滅ぼしてやる。
「うらぁああ!」
「ゴォァアア!」
俺と相棒、一人と一匹で一騎となり駆ける。
デーモンの方が圧倒的に多数だが、所詮将兵なき雑兵。
個と個が相対した時、俺と相棒がたかだかデーモン如きに遅れはとらねぇ。
デーモンの首を刎ね、相棒のデスフレアで焼き。腕を叩き落とし、相棒の突進を食らわせ。まとめて薙ぎ払い、まとめて焼き払う。斬って、焼き、斬って、焼く。
肩で息をする頃には、デーモン達を全滅させた。どんなもんだい。
さて、俺はデーモン達の住処にしていた樹木をくまなく探す。やってることは相手がデーモンな点を除けば、強盗と変わらないが、そこは勘弁してほしい。千年戦争の折、魔界に取り残された者達。または戦いの中で戦死して、何か個人名が分かるものが残されてるかもしれない。せっかく魔界にいるんだ。やれることはやっておくべきだ。
ただ、生存者がいなければ、認識票一つもありはしなかった。そううまくはいくまい。
だが収穫はあった。住処としていた樹木から、甘みのある樹液が取れたのだ。デーモンでも甘味を食べたい時でもあるのだろうか。なんにせよ、塩に続き糖を手に入れるとは、俺も運がいい。
アシッドスライムの膜で、樹液を貯めておく。何かに使えるだろう。
ぺろぺろと樹液を名残惜しそうに舐める相棒を引きずり、俺達は住処から離れようとしたが。戦いの中で忘れていた感覚を一つ思い出す。
腹が減った。
干しておいたワーラット肉を、俺と相棒で分け合うが、一人と一匹で一騎の俺達には足りない。
何か食べられるものはないかと、俺と相棒で探す。
ちなみに人型のデーモンは、アトナテス的にNGだ。同様の理由で、ドラゴンを時折見かけたが、相棒的にNGだったので。人型とドラゴンだけは何があっても食べないという、俺と相棒で固い誓いを立てている。
よってデーモンはとっくに一つにまとめて、相棒のデスフレアで焼き終えている。
俺達がきょろきょろとしていると、ふよふよと浮かぶ三つの紫の球体達がやってきた。
そして、ぼわっと音が鳴ったと思ったら、黒い球が投げ込まれる。
俺と相棒は難なく回避し。投げ込まれた球が弾け、発生する闇のエネルギーの奔流が起きるのを見て確信する。
これは、ダークエレメンタルだ。
俺は斧槍を握りしめ、ダークエレメンタルの黒い球を掻い潜り。ダークエレメンタルが攻撃を終えた瞬間。
コアを真っ二つに両断する。
ダークエレメンタルは、アクアエレメンタルと違い。三つコアがあるように見えるが、そうではない。
悪戯好きの子供のように、ただ見せかけのコアを二つ増やしているだけだ。
攻撃を終えたあと、一度コアが一つになる瞬間があるのを見れば、自ずと理解できるだろう。
エネルギーの具象化するエレメンタルの中で、コアが唯一複数個あるのは。三種のコアが力を合わせ、一つの光となる。ライトエレメンタルただ一つのみだ。理由は俺には知らない。エネルギー関係なら、サナラなら知っているかもしれんが。
何はともあれ、俺と相棒はダークエレメンタルを次々とコアを破壊していったが、斧槍で斬る感触でふと思った。
こいつら、食べれるのでは。
思い立ったがなんとやらだ。
戦いの最中ではあるが、両断したコアを拾い上げて俺は噛みつく。
「かてぇ!」
コアの硬さに、さすがの俺に目尻に涙が浮かびそうになる。
おかしいな。斧槍で斬った感触は、これほどの硬さではないはずだ。
つまり、斬った後ではいけないのだ。
「よっ」
俺はダークエレメンタルの攻撃後の隙を狙い、闇のエネルギーを纏ったコアを鷲掴みにする。
そして、そのまま口の中へ。
無論、アクアエレメンタルと同じ失敗はすまい。よく、咀嚼する。
おぉ。これはグミだな。アシッドスライム膜と違い、程よい硬さでほんのりと塩味がする。
美味い。ただ、何かが足りない。そしてなにより、やはりエレメンタルの生食いは危険だ。
コアから黒い球を放たれる寸前に、俺はコアを投げ飛ばす。
そして、食ったダークエレメンタルを観察してみると、あることに気が付く。
ダークエレメンタルのコアは、周囲の闇のエネルギーを吸収して、元の大きさに戻ろうとはしているようだが、遅い。
つまりは、だ。
俺は再度ダークエレメンタルのコアを、今度は斧槍で叩きつける。二度三度と、死なない程度に叩きつけ、弱ったダークエレメンタルのコアを、先ほどの樹液を詰めた、アシッドスライム膜の中へ入れ、入り口をきつく締める。
さぁどうだ。
俺は相棒に騎乗し、コアの様子を観察し。数分後成功を確信する。
「相棒!樹液をかき集めろ!」
「グルゥオオオ!」
俺がダークエレメンタルのコアを弱らせ、相棒が樹液を詰めたアシッドスライム膜にコアを突っ込む。これを幾度か繰り返し、調理もとい戦闘が終わった。二度の戦闘に俺と相棒の体は、食を欲している。
樹液に漬けたダークエレメンタルコア、俺と相棒は口に放り込む。
久方ぶりに食べる甘味に、俺の口は蕩けたような気がした。
樹液の甘さ、そして時折顔を出す、ダークエレメンタルの塩味が良い感じに調和している。
噛み応えがあるのもいい。腹持ちもよさそうだ。
トラムに出せば喜びそうだ。亜神らしくと、つんけんしているが。目新しい甘い物には、あいつは目がないからな。
口角が上がったのは、俺の気のせいではないだろう。
ソラス曰く。甘味は星詠みを狂わせ、地脈操る者を乱し、亜神様を女の子にする物。だそうだ。
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アトナテスメモ
※ダークエレメンタル
「魔界を彷徨っていた時の唯一の甘味だったな。俺は特に甘い物が好きって訳じゃないが、あれは甘くて美味かったよ。美味しく食べるなら、ダークエレメンタルのコアは、大きい奴よりも、小さい奴の方が柔らかくて食べやすい。コアを棒でよく叩いたあと、すぐに蜂蜜の瓶詰にして、すぐには食べず。五日ぐらい待つのが、良い感じに死にかけになっていて、反撃されないからおすすめだ。それ以上漬けるとコアが死んで、硬くなっちまうから注意しな。
同じエレメンタルでも、大中小大きさが違うのを見て、前から不思議に思っていたが、どうにもな。エレメンタルは大きくなりにつれたコアが硬くなるみたいだ。触ってみればすぐに分かるが、小さいコアは柔らかい。んでコアが柔らかいから、大きくなり余地があるってことだろうな。
あと、周囲のエネルギーの具象化と、言われるエレメンタルだけあって。周囲に何かあるってのはエレメンタルにとっては死活問題みてぇだ。コア周囲に何かあるって状況を生み出すと、エレメンタルはそれ以上大きくならず、必ず弱体化しちまう。呼吸を封じられていると思えば。ま、自明の理だな」
相棒メモ
「ウォオオン!」
『攻撃手段に非常に親近感を感じるダークエレメンタル。何を隠そう、私のスキルと同じく防御力と魔法耐性無視する、遠距離範囲攻撃。つまり、密集した状態であったり、低HPユニットばかり配置している最中に襲われたら、甚大な被害が出るだろう強力な攻撃だ。対処としては、やはり。遠距離攻撃で攻撃される前に倒す。これに尽きる』
闇霊使いC氏の弁明
「仕方ないわね……そんなに悪戯が嫌なら、ダークエレメンタルの弱点を教えてあげる。だから手を下ろして。ね、ね?ケイティさん?……ふぅ。じゃぁ教えてあげる。ダークエレメンタルはね。蜂蜜を近づけると、ぴゅーって逃げい――ひえぇーーんっ!ホントのこと教えたのにぃーー!」