深淵で飯を食す者アトナテス   作:青き男

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エピソード4 魔界アリ

 あれから何日。いや何か月経ったのだろうか。

 俺と相棒は、未だに魔界を彷徨っている。

 発見はあった。やたらと辛い紫色の実を生やし、地表に根を露出させる植物の、群生地を見つけた。アージェならば正確な判断ができそうだが、どうにも紫の実からは、微かに魔力らしき物を感じ取れる。食事の調味料として使えるだろうと、いくつかありがたく頂戴した。

 そして、いつの間にやら湧いてきた。魔界アリに絶賛囲まれている。

 

 俺は相棒に騎乗し、相棒にアリを踏ませ。斧槍で振り上げて退治する。

 色事に多少耐久力が異なるが、アシッドスライム程じゃない。ただ魔界アリの中でも、赤い個体は魔法を使う。

 火球だ。

 相棒が飛来する火球を、強靭な翼の盾で俺を守る。爆炎が翼を燃やすが、相棒は問題ないとばかりに、赤い魔界アリを前足で握り潰す。さすがだ。俺も負けてられねぇ。斧槍を振るい続け、血のように噴出し頬に付着した、魔界アリの緑色の体液をペロリと舐め、俺は思った。

 こいつら、食べられるな。

 一通り魔界アリを殲滅し終えた俺は、さっそく調理しようと。まずは基本種らしき紫色の魔界アリを斧槍で、食べやすくバラバラにする。緑色の体液が辺り一面に広がる

 勿体なかったか?まぁ体液を生で飲むのは、今は止そう。

 

 「とろ火フレア!」

 

 相棒の口からとろ火を出してもらい、各部位を丁寧にじっくりと焼く。

 さて、食べるか。

 頭部。顎が邪魔だ。食べられねぇ。目玉はいける。

 胸部。手足の関節が詰まっていて、筋ばかりで可食部がほとんどねぇ。スルー。

 腹部。白い身が現れる。齧ると、ほのかな酸味が口に広がる。齧ると緑の体液が、口の中に引いてる感覚がするが、気になるほどじゃない。十分に食べられる。

 相棒は殻ごと丸々食べていた。相も変わらず竜の牙は頑丈で、時折羨ましくなる。

 

 次に俺は、黒い魔界アリを解体して焼いて食べるが、酸味が強いだけで紫色の魔界アリと大した差はなかった。

 最後に赤い魔界アリを食べてみる。

 

 「かれぇええ!?」

 「ゴォガアア!?」

 

 舌を刺激する、いやもう刺されたかのような痛みのある辛さだ。相棒は諦めたみたいだが、俺は気合で食べ進める。

 水をゴクリゴクリとしながら、食べていると次第に舌が慣れたのか、麻痺したのか。寧ろどんどん食べたくなる。

 癖になる味って奴だろう。ひーひー言いながら食べていると、俺に電流走る。

 

 先ほどの紫色の辛い実だ。俺はさっそく実を細かく切り刻み、赤い魔界アリの実に振りかけ、かぶりつく。

 瞬間体が火照る、いや燃えるに熱くなる。今の俺ならば口から、デスフレアが出せそうだ。

 かれぇかれぇと身もだえていると、馬鹿なことをと言いたげに、相棒は鼻で笑うが、気にする余裕はなかった。

 ぜぇぜぇと俺は荒い息をしながら、ソラスに食べさせたら面白い反応が見れそうだと空想し。

 

 「あいつら元気にしてっかな」

 

 急に頭が冷えたのか、物質界にいる友と仲間達を思い浮かべる。

 魔界に侵入してからたぶん、数か月は経った。そろそろ魔界の調査に、物質界に何かしら動きがあってもいい頃合いだろう。

 だが、そんな気配は全くない。

 

 あいつらは、俺の事を忘れているのでは。

 

 そんな疑問が過るが、俺は振り払う。

 ありえねぇ。魔界に居すぎて心が弱くでもなかったか。少しでも友と仲間を疑ったのが、恥ずかしいくらいだ。

 

 「あぁ……酒飲みてぇ」

 

 ごまかす様に、そしてこの頃心の底から欲している物を呟きながら、俺は休息することにした。

 

 

 

 ――――――――――

 アトナテスメモ

 

 ※魔界アリ

 「紫と黒の魔界アリの身は酸味がある。辛い物好きには赤い魔界アリがおすすめだな。手足は油で揚げて塩を軽く振るうと酒のつまみになる。後日試してみたが、あいつらの体液にはやっぱり、滋養効果があるようだ。苦く喉越しが悪いのが難点だが、栄養は満点だ。ただこいつも、魔界に適応してない連中には合わないようだ。というか、見た目があれなせいか、あんまり飲んでもらえなかった。

 案の定っていうべきか、赤い魔界アリは例の紫の辛い実を食べることで、あの火球の魔法を取得していたようだ。魔界料理人の嬢ちゃんに聞いてみたら、あの実は魔界ならどこでも生えるらしく。あれで、魔界料理の辛さを生むらしい。だが、あれを食べて火球を出せるようになるのは、魔界アリだけのようだな。アージェに見てもらった所、少なくとも、実に魔力がこもっているのは間違いないみてぇだ。魔界アリの女王は自身の子が魔法を撃ち出せるように、そう進化させたのだろうか。こればかりは、魔界アリの女王に聞いてみるしかないな」

 

 

 

 相棒メモ

 「ボォオオオ!」

 『魔界アリ。見た目の割にはそれなりに耐久力があり尚且つ数が多い。多ブロックできるキャラだと、気が付けば数に押されていたということがないよう気をつけよう。他にも魔界アリは、行軍ルートが分かりにくいことが状況が多い。配置には十分注意するといい。最適解はやはり動かれる前に遠距離ですべて倒すことだ。つまりデスフレアだ』

 

 

 

 冒険者J氏と冒険者O氏の対談

 「魔界アリか……あまり思い出したくないな」

 「あの時の僕とJは女王に操られていたとはいえ、王国の敵でしたからね」

 「ただまぁ、あいつらも飯に関してはちゃんとしていなよな、O?」

 「えぇ操られていた僕達に、ちゃんと食べられる物を用意していましたね」

 「魔界アリが同族の死体運んでいる時を見たときは、これを食わされるのかと思ってヒヤっとしたぜ」

 「食べたいとは、思えませんしね。あれ」

 

 

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