あれから何日。いや何か月経ったのだろうか。
俺と相棒は、未だに魔界を彷徨っている。
発見はあった。やたらと辛い紫色の実を生やし、地表に根を露出させる植物の、群生地を見つけた。アージェならば正確な判断ができそうだが、どうにも紫の実からは、微かに魔力らしき物を感じ取れる。食事の調味料として使えるだろうと、いくつかありがたく頂戴した。
そして、いつの間にやら湧いてきた。魔界アリに絶賛囲まれている。
俺は相棒に騎乗し、相棒にアリを踏ませ。斧槍で振り上げて退治する。
色事に多少耐久力が異なるが、アシッドスライム程じゃない。ただ魔界アリの中でも、赤い個体は魔法を使う。
火球だ。
相棒が飛来する火球を、強靭な翼の盾で俺を守る。爆炎が翼を燃やすが、相棒は問題ないとばかりに、赤い魔界アリを前足で握り潰す。さすがだ。俺も負けてられねぇ。斧槍を振るい続け、血のように噴出し頬に付着した、魔界アリの緑色の体液をペロリと舐め、俺は思った。
こいつら、食べられるな。
一通り魔界アリを殲滅し終えた俺は、さっそく調理しようと。まずは基本種らしき紫色の魔界アリを斧槍で、食べやすくバラバラにする。緑色の体液が辺り一面に広がる
勿体なかったか?まぁ体液を生で飲むのは、今は止そう。
「とろ火フレア!」
相棒の口からとろ火を出してもらい、各部位を丁寧にじっくりと焼く。
さて、食べるか。
頭部。顎が邪魔だ。食べられねぇ。目玉はいける。
胸部。手足の関節が詰まっていて、筋ばかりで可食部がほとんどねぇ。スルー。
腹部。白い身が現れる。齧ると、ほのかな酸味が口に広がる。齧ると緑の体液が、口の中に引いてる感覚がするが、気になるほどじゃない。十分に食べられる。
相棒は殻ごと丸々食べていた。相も変わらず竜の牙は頑丈で、時折羨ましくなる。
次に俺は、黒い魔界アリを解体して焼いて食べるが、酸味が強いだけで紫色の魔界アリと大した差はなかった。
最後に赤い魔界アリを食べてみる。
「かれぇええ!?」
「ゴォガアア!?」
舌を刺激する、いやもう刺されたかのような痛みのある辛さだ。相棒は諦めたみたいだが、俺は気合で食べ進める。
水をゴクリゴクリとしながら、食べていると次第に舌が慣れたのか、麻痺したのか。寧ろどんどん食べたくなる。
癖になる味って奴だろう。ひーひー言いながら食べていると、俺に電流走る。
先ほどの紫色の辛い実だ。俺はさっそく実を細かく切り刻み、赤い魔界アリの実に振りかけ、かぶりつく。
瞬間体が火照る、いや燃えるに熱くなる。今の俺ならば口から、デスフレアが出せそうだ。
かれぇかれぇと身もだえていると、馬鹿なことをと言いたげに、相棒は鼻で笑うが、気にする余裕はなかった。
ぜぇぜぇと俺は荒い息をしながら、ソラスに食べさせたら面白い反応が見れそうだと空想し。
「あいつら元気にしてっかな」
急に頭が冷えたのか、物質界にいる友と仲間達を思い浮かべる。
魔界に侵入してからたぶん、数か月は経った。そろそろ魔界の調査に、物質界に何かしら動きがあってもいい頃合いだろう。
だが、そんな気配は全くない。
あいつらは、俺の事を忘れているのでは。
そんな疑問が過るが、俺は振り払う。
ありえねぇ。魔界に居すぎて心が弱くでもなかったか。少しでも友と仲間を疑ったのが、恥ずかしいくらいだ。
「あぁ……酒飲みてぇ」
ごまかす様に、そしてこの頃心の底から欲している物を呟きながら、俺は休息することにした。
――――――――――
アトナテスメモ
※魔界アリ
「紫と黒の魔界アリの身は酸味がある。辛い物好きには赤い魔界アリがおすすめだな。手足は油で揚げて塩を軽く振るうと酒のつまみになる。後日試してみたが、あいつらの体液にはやっぱり、滋養効果があるようだ。苦く喉越しが悪いのが難点だが、栄養は満点だ。ただこいつも、魔界に適応してない連中には合わないようだ。というか、見た目があれなせいか、あんまり飲んでもらえなかった。
案の定っていうべきか、赤い魔界アリは例の紫の辛い実を食べることで、あの火球の魔法を取得していたようだ。魔界料理人の嬢ちゃんに聞いてみたら、あの実は魔界ならどこでも生えるらしく。あれで、魔界料理の辛さを生むらしい。だが、あれを食べて火球を出せるようになるのは、魔界アリだけのようだな。アージェに見てもらった所、少なくとも、実に魔力がこもっているのは間違いないみてぇだ。魔界アリの女王は自身の子が魔法を撃ち出せるように、そう進化させたのだろうか。こればかりは、魔界アリの女王に聞いてみるしかないな」
相棒メモ
「ボォオオオ!」
『魔界アリ。見た目の割にはそれなりに耐久力があり尚且つ数が多い。多ブロックできるキャラだと、気が付けば数に押されていたということがないよう気をつけよう。他にも魔界アリは、行軍ルートが分かりにくいことが状況が多い。配置には十分注意するといい。最適解はやはり動かれる前に遠距離ですべて倒すことだ。つまりデスフレアだ』
冒険者J氏と冒険者O氏の対談
「魔界アリか……あまり思い出したくないな」
「あの時の僕とJは女王に操られていたとはいえ、王国の敵でしたからね」
「ただまぁ、あいつらも飯に関してはちゃんとしていなよな、O?」
「えぇ操られていた僕達に、ちゃんと食べられる物を用意していましたね」
「魔界アリが同族の死体運んでいる時を見たときは、これを食わされるのかと思ってヒヤっとしたぜ」
「食べたいとは、思えませんしね。あれ」