5Sぷらす2 【本編完結】   作:しろすけ

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原作だと着替えどうしたんでしょうね?
一応この話ではオリ主が一走りしてます

今回キリのいいとこまで詰め込んだので長いです


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「む」

「げ」

 

早朝バイトだけ終えて中野達の部屋に戻ってきたんだが、最初に顔を合わせたのは二乃だった

ちなみにオートロックは何故か三玖を探しに行くと飛び出していった四葉に開けてもらった

 

「あんたこんな早くにどこ行ってたのよ?」

「早朝のバイト」

 

やりとりしながら二乃の方、キッチンの方を見る

昨日の夕食同様(なんだかんだ俺たちの分も用意してくれた)朝食も二乃が作るらしい

 

「な、何よ」

 

袖捲りながらキッチンに入ったら警戒された

まあ当然の反応だろーな

だがまあ、危害加える気なんか当然無いわけで

 

「手伝う」

「は?」

「朝食作るんだろ?」

 

成り行きとはいえ泊めてもらった以上これくらいはするしバイトで厨房入ってる事を告げれば渋々ながら手伝うことを認めてくれた

 

「で、何が出来るの?」

「切る、混ぜる」

「じゃあ、マフィン切っといて」

 

作るメニューはエッグベネディクトだとか

流石洒落たもん作るなぁなんて密かに感心

 

「ねえ」

 

ん?

マフィンをナイフで切り分けてたら二乃が話しかけてくる

 

「それ、火傷…よね」

 

ああ、しまったな

ついくせで袖捲ってた

 

「すまん」

「別にあんたが謝ることじゃないでしょ…」

 

そうか?

見てて気分いいもんじゃないだろうと思ったんだが

 

「ガキの頃の古傷

 いちいち理由答えるの面倒だから長袖にしてるだけ」

 

左腕だけ袖を戻す

水回りの作業じゃないし問題ないだろ

 

「……ごめん」

 

か細い声に思わずそっちを向く

今まで見たことのない申し訳なさそうな二乃

 

「…………お前、謝れるんだな」

「あんた私のことなんだと思ってるわけ!?」

 

ほっ

よかった俺の知ってる二乃だ

このやりとりでいつもの調子を取り戻してくれたのかそこからは特に当たり障りのない会話をしながら調理ができた

よく考えたらこいつと差しで話すの初めてだけど、意外なほど自然に話せたな

途中、起きてきた五月がキッチンの俺に目を丸くした後突撃して来たり、同じく起きて来た一花が二乃と並んでるところをスマホで撮って二乃が爆発したりとそれなりの波乱はあったが…

 

「一花が休日のこんな時間に起きてるなんて珍しいですね」

「五人の中じゃドベだけどね

 三玖もいつの間にか私のベッドからいなくなってたし」

「三玖を捜しに行ったっきり四葉も帰ってこないわね」

 

姉妹の会話にわざわざ割り込む気もないので淡々と食事を進める

割と簡単に出来るメニューの割に食卓が華やかなのは二乃のセンスがいいからか

 

「上杉くんは?」

「まだ寝てるんじゃない」

 

五月の呟きに答える

昨夜、俺たちの寝床をどうするかって話に当然なる

俺たちはリビングのソファでも使わせてもらうと言ったんだが、お客様をソファに寝させられないということで三玖の部屋のベッドを使わせてもらうことになった

ベッド的に野郎二人でも余裕の大きさではあったが、俺の方は結局キリのいいとこまでと思いテスト勉強をリビングで続けてた

バイトの時間までリビングに居たわけだが一度だけ三玖がトイレに起きて来たみたいだが、それ以外部屋から出たやつはいなかったはずだ

三玖は俺がバイト中に外に出たのかもしれんが、風太郎の靴は玄関にあったのでまだ三玖のベッドの上なんだろ

 

「まさか本当に泊まるとはね

 ま、それも後少しの辛抱だわ」

 

事情知らなきゃテストが終わるまでの辛抱って捉えられるが、金輪際関わることなくなるって意味なんだよなぁ…

 

「二人も勉強参加すればいいのに

 案外楽しいよ」

 

お、一花にしては気の利いた発言

 

「お断り

 五月、あんたは絆されるんじゃないわよ」

 

俺の方をひと睨みの後二乃が五月に言う

変に気まずさを感じてくれてるよりかはマシだがすっかり元の調子…

 

「素直になればいいのに」

 

一花のその言葉に五月は俺の方を一瞬見てから口を開く

 

「彼とはどうも馬が合いません

 この前も諍いを起こしてしまいました

 些細なことでムキになってしまう自分がいます」

 

昨夜の一花じゃないが本当に似たもの同士なんだなと

 

「私は一花や三玖のようにはなれません」

 

お互い何かきっかけさえあれば割とすんなりわだかまりも解けると思うんだがなぁ…

 

「なれるよ」

「えっ」

 

一花が突然立ち上がると五月の髪に手をかけ

 

「三玖のできあがり!」

 

と、なんとも雑に髪型を三玖のそれに寄せてみせた

 

「私は真剣に言っているんですが!」

 

当然怒る五月

一花の方は俺の方を見てほら三玖だよーなんて楽しそう

 

「一花!」

 

お、二乃いいぞ

アホやってんなって言ってやって

 

「髪の分け目が逆よ

 もっと寝ぼけた目にして」

「いや違うそうじゃない…」

 

二乃まで五月の髪をいじり始めた

当の五月は遊ばないでくださいと機嫌が悪くなっていく

一花、触覚みたいな髪は取ってはいけない

何故か黒っぽい服装を好む暴君五月が降臨する気がした

 

「ちょうど三玖もいないし、これで騙せるか試してみようよ」

「え、マジ…?

 あいつに私たちの区別なんて出来るわけないでしょ」

 

それに関しては二乃に同意

髪の長さがあからさまに違う四葉に化けた三玖を見破れないくらいだし

なんだかんだ言いながら五月は風太郎が寝ている三玖の部屋へ

こっからじゃやり取りの会話は聞こえなさそうだが

 

「ごちそうさま

 皿はシンクでいいな?」

 

片付けくらいやろうかとキッチンに皿を持っていったが食洗機でまとめて洗うだとか

 

「もう結構です!」

 

そんでリビングに戻ったところで階上から五月の声

風太郎は階上で苦い顔

 

「お前、またかよ」

「優希…お前の方こそ昨夜どこ行ってたんだよ」

 

なんで俺の方にそんなじっとりした視線向けてくんのさ

徹夜でリビングにいたなんて言えばどんな反応が返ってくるか大体予想つくので言わないが

その後、なんやかんやで今日の勉強は気分を変えて図書館で勉強することに

リビングの二乃にも一緒に行くか声をかけたがやっぱり断られた…

五月の方はあれきり部屋にこもってしまって声をかけたが返事もなかった

 

「三玖はどこかなー」

 

図書館前で四葉とも合流

ぱっと見三玖の姿はないため四葉が背伸びしながらあたりを見渡している

風太郎の方は起きてからここまでずっと苦い顔のまま

なんだかんだ一度引き受けたことを投げ出すようなやつでないし、これだけ顔を合わせていたやつが苦しんでるのを見捨てることができるやつじゃない

 

「えー、コホン

 四葉、例えば…例えばだが

 この先五人の誰かが成績不良で進級できなかったとする

 その時お前はどうする?」

「私ももう一回二年生をやります」

 

風太郎の問いかけに四葉はノータイムで答える

 

「と言っても、私が一番可能性が高いんですけど

 あはは…

 でも、上杉さんがいればそんな心配いりませんね」

 

その答えで風太郎の表情が変わる

ようやく腹は決まったらしい

 

「風太郎」

 

あとは背中少し押してやるだけだろう

 

「悪いけど忘れもんした

 取って来てくれない?」

 

何を忘れたのか不思議そうにしてる四葉は一花が適当に誤魔化してくれてる

どうやら一花も俺と同じ考えみたいで助かる

 

「お前ほどうまく教えれないけど始めとくから

 頼むな」

「ーーああ、行ってくる」

 

そう答えた風太郎は図書館を出る

その背を見送ったところで

 

「ホントはユーキ君も行きたかったんじゃないの?」

 

こちらの顔を覗き込みながら一花が言う

相変わらず見透かしたような態度は少し気に入らないがこればっかは少し図星

 

「今回はあいつに任せる

 俺の方は…お前の言った通り根気強くいくとするよ」

 

そんな訳だから俺なりに厳しめにいくからな、なんで告げる

一花も四葉もお手柔らかになんて言ってるがやると決めた以上徹底的にいかせてもらおう

 

 

それから数日

現在テスト当日の朝

あれから風太郎と五月の間でどんなやりとりがあったのかは知らない

が、その次の日の勉強会からぎこちない様子ではあるものの五月も参加してくれた

俺との会話も前ほどではないが増えてきている

二乃の方は相変わらずだったが…

そんで、前日となる昨日

風太郎が効率度外視の泊まり込み一夜漬けを発案

当然、二乃が反発したが意外なことに五月からの助け舟で決行となった

ここまで来たら最後までってことで俺も参加

昨夜は随分と遅くまで追い込みをかけそのままリビングで全員、二乃を除いてだが雑魚寝状態となった

この一週間みんなよく頑張ったよホント

さて

キッチンからフライパンとお玉を拝借し

 

「オラ起きろーー!」

 

頭の上でガンガンと打ち鳴らす

 

「うおっ!?」

「わああっ!」

「な、なになに!?」

 

うむ、わかりやすい阿鼻叫喚

全員が全員文字通り飛び起きてくれた

現在時刻は7時を少し回ったところ

昨夜の就寝時間を考えてギリギリまで待ってみたが誰も起きる気配がないから、少々可哀想だが文字通り叩き起こさせてもらう

 

「ゆ、優希!?テストは!?100点は!?」

 

風太郎にしては随分と幸せな夢を見ていたようだ

 

「いいから着替えと準備

 洗面所は女子たちからな

 四葉さんは次女起こしてきて

 準備できたやつからテーブルの上のおにぎり食っといて」

 

矢継ぎ早に指示

学校の始まる時間は8時半

まだまだ余裕があるとはいえ早く登校して損はないだろう

よりによって今日遅刻なんてしたら目も当てられない訳だし

 

「お前…!まさかまた徹夜したんじゃ…」

 

おっと、流石に風太郎には気づかれたか

まあ、他のやつの勉強見ながら自分の勉強進めるなんて器用な真似俺にはできる訳ないので

無理矢理時間作ろうと思ったらこれしかないだろ

 

「わかってるなら、そのまま黙っといてくれると助かるかな」

 

そう言って釘を刺しておく

今回はこんな成り行きだがいつもならバイトプラステスト勉強で徹夜なんて今更なんだが、風太郎から見たらあまり気分の良いものでないらしい

そうこうしている内に全員が準備を終えてリビングへ戻ってくる

 

「これ、下川君が?」

「ん

 ご飯とキッチン勝手に使って悪かったけど」

 

後でその分のお金は払うからと続けたが用意してくれてありがたいからお金はいいとのこと

一番遅くにバッチリ化粧して降りてきた二乃には渋い顔されたが…

 

 

「この分だとだいぶ余裕持って学校に着けるな

 お前ら、直前までちゃんと確認はしておいてくれよ」

 

わざわざバラバラに登校する理由もないため全員で歩く

風太郎は最後の念押しを全員にしている

 

「あんた達、本気で赤点回避なんてできると思ってるの?」

 

他の姉妹に聞こえない声量で二乃が俺たちへ告げる

 

「言っとくけど、私はパパに真実をそのまま伝えるから」

 

うーん…

流石にあからさまな敵意とか嫌悪感はこの一週間で少しは薄れた気がしたんだがまだまだ味方をしてくれるまではいかないようだ

まあ、俺たちはともかく頑張ってる他の姉妹の姿を見てた訳だから少しは思う事もあるんだろう

 

「短い期間だったが俺たちにできることは全部やったつもりだ

 お前も頼んだぞ」

 

風太郎の言葉に二乃はただ目を逸らすだけ

果たしてどうなることやら

 

「!何そのガキンチョ」

 

前の四人が立ち止まっている

その前には泣いている子供の姿

 

「迷子みたい…」

「ママと逸れちゃったのかな〜?」

 

目線を合わせるためにしゃがみ込んだ三玖と一花が言う

 

「余裕がある訳じゃないんだ

 他の人に任せていくぞ」

「道に迷ってる、かわいそう…」

「鬼!」

 

風太郎の薄情な発言に当然非難轟々

 

「ボク〜、お姉さんたちにお話聞かせて?」

「……I wanna meet my mommy….」

 

oh…

鮮やかな金髪だからまさかなーと思ったらそのまさかである

まさかの展開に固まる中野姉妹

風太郎の方もさっきの発言通り協力する気はなし

となると

 

「Don't cry if you're a man.」

「「「「「は!?」」」」」

 

子供の目線に合わせる形でしゃがみ込んで言ってやる

子供は突然の英語に目を丸くし、中野達も何故か同様だが今は無視

子供と一言二言話せば、病院へ一緒に向かっていたそうだ

ここからなら大した距離じゃないし、母親の方が先に目的地に着いてるかもしれん

 

「俺が連れてくからお前らは先学校行ってて」

 

これが最適解だろ

子供一人連れてくのにゾロゾロ大人数で行く必要ないし病院から走っても俺なら始業時間に余裕で間に合わせられる

 

「いや、待て優希

 それで万が一お前が遅刻したら」

 

心配してくれるのはありがたい

が、俺たちがほっといたらこの子を目的地か交番に連れてくのは中野達だぞ?

 

「大丈夫だって

 先行ってろ」

 

風太郎にそう告げて子供を担いで走る

後ろの方でこっちを心配する声が上がってたみたいだが、風太郎はしっかり説き伏せて学校に向かってくれよ

 

 

「すいませーん

 遅れましたー」

 

我ながら投げやりに生徒玄関に立つ強面の男性、生徒指導の先生へ話しかける

結論から言うと数分だがギリギリ遅刻

あの後、子供の母親は無事見つかった

病院へは程なく着いて、ロータリーのところで立ち尽くす子供同様の金髪の女性を発見

子供の方が駆け寄って行き再会のハグをしたところを見届けた上で病院を後にした

お礼どうこうで捕まると今は少し面倒だ

思ったよりもロスが少なかったしこれは前を行く風太郎達と再合流もできるかもしれんなんで思ってたんだが…

なぜ今日に限って、通学途中でひったくりと通り魔と行き倒れに遭遇してしまったのか

前者二人はお話(物理)で解決ができて助かったが、行き倒れに関しては救急車を待つくらいなら直接病院に担ぎ込む方が絶対早いだろと判断し病院へトンボ帰り

えんじ色のスーツの痩せた男は担いでる耳元で「止まるんじゃねぇぞ…」ってうわごとのように繰り返してたけどこっちはアンタのおかげで止まるどころか引き返す羽目になったんだよお大事にな!

 

「……なんでよりによってこんな日に、お前は」

 

生徒指導の先生は頭を抱えている

まあ、たしかにこんなジャックポットを連発するような理由ではないが、残念ながら年数回は遅刻してたりする

その度にこの先生とは顔を合わせてる訳だが事情が事情ということで割と理解のある方だ

 

「決まりだから一応生徒指導室で一筆書いてもらうぞ」

「いや、毎回思いますけど割と対応甘くありません?

 俺の噂少しは耳にしてますよね?」

 

俺を伴って歩き出す先生に遅刻のやけくそで軽口を言えば少し呆れ顔

 

「実情が問題ないからこその奨学金だろう

 教師が噂話にとらわれて本質見失うようならお仕舞いだ」

 

……この先生顔と雰囲気で大分損してるけど良い先生だよなー

なんで独身なんだろ

 

「ところで、今日の遅刻者は?」

「こんな日に遅刻してくるやつなんてお前以外おらん」

 

溜息混じりにそう返された

そうか、アイツら全員間に合ったようで何よりだ

届くはずないし俺なんかのエールに意味なんてないかもしれないが

 

「頑張れよ」

 

前を歩く先生に聞こえない程度の声でつぶやいた

 

 

 

「よお、集まってもらって悪いな」

 

図書室に集まった中野姉妹五人に風太郎は言う

あれから数日

中間テストは予定通り終わり本日全教科分が返却された

成り行きとはいえここまで関わった以上結果を知る権利はある、と風太郎に引っ張ってこられた俺は6人から少し離れた席からその様子を伺っている

 

「どうしたの?改っちゃって」

「水臭いですよ」

「中間試験の報告

 間違えたところ、また教えてね」

 

一花、四葉、三玖の言葉にも風太郎は冷静を保とうとしてるのは伝わってくる

風太郎が答案用紙を見せてくれるよう頼むが

 

「見せたくありません」

 

五月がそれを遮った

 

「テストの点数なんて他人に教えるものではありません

 個人情報です

 断固拒否します」

 

目を伏せてそう言った五月に風太郎は長く息を吐き

 

「ありがとな

 だが覚悟はしてる

 教えてくれ」

 

真っ直ぐ全員を見据えて告げた

 

「ジャーン

 他の四教科はダメでしたが国語は山勘が当たってちょうど30点でした

 こんな点数初めてです!」

 

「社会は68点

 その他はギリギリ赤点

 悔しい」

 

「私は数学だけ

 今の私じゃこんなもんかな」

 

「国数理社が赤点よ

 言っとくけど、手は抜いてないから」

 

「社会と英語が…残念ながら」

 

…………そうか

結局、最初の小テストよりはマシだが合格基準を越えられなかったか

五月は二科目のみダメだが、他四人は合格した科目一つだけってのはなかなかに酷い

風太郎も同じ感想のようでそれを告げて二乃が反発してる

しかし、その光景も見納めか…

 

「三玖

 今回の難易度で68点は大したもんだ

 偏りはあるがな

 今後は姉妹に教えられる箇所は自信をもって教えてやってくれ」

「え?」

 

「四葉

 イージーミスが目立つぞ、もったいない

 焦らず慎重にな」

「了解です!」

 

「一花

 お前は一つの問題に拘らなさすぎだ

 最後まで諦めんなよ」

「はーい」

 

「二乃

 結局、最後まで言うことを聞かなかったな

 きっと俺達は他のバイトで今までのように来られなくなる

 俺達がいなくても油断すんなよ」

「ふん」

 

いい加減家庭教師の枠に当てはめられるのに物申したいがどうせ最後だ

黙って聞く

 

「フータロー?

 他のバイトってどう言うこと?

 来られないって…なんでそんなこと言うの?

 私…」

「三玖

 今は聞きましょう」

 

三玖の不安気な表情と声を五月が遮る

最初はずっと無表情な子だと思ってたけどこの2ヶ月弱で意外と表情が読み取れるもんだななんて今抱く感想じゃないんだろうけど…

 

「五月

 お前は本当にバカ不器用だな!」

「なっ!?」

「一問に時間かけすぎて最後まで解ききれてねぇじゃねぇか」

「反省点ではあります…」

「自分で理解してるならいい

 次からは気をつけろよ」

 

そう言ったタイミングで五月のスマホに着信

 

「父です」

 

こいつらの父親、雇い主からか

 

「上杉です

 ……つきませんよ、ただ…次からこいつらにはもっといい家庭教師をつけてやってください

 ……試験の結果は…え?」

 

風太郎が電話へ結果を答える前にその電話が横から奪われた

奪ったのは持ち主の五月でなく

 

「パパ、二乃だけど」

 

意外な人物、まさか二乃が割り込んでくるとは

 

「一つ聞いていい?

 なんでこんな条件出したの?

 ……私たちのためってことね

 ありがとうパパ…

 でも相応しいかなんて、数字だけじゃわからないわ」

 

二乃は他の姉妹全員を見る

こっちの席からその顔は見えないが

 

「……あっそ、じゃあ教えてあげる

 私たち五人で五科目全ての赤点を回避したわ」

 

なんで告げるのだった

どういう風の吹き回しだ?

風太郎の方も理解が追いついてないのか電話に割り込むことはしない

結局そのまま終話したようだが、これは風太郎の家庭教師は続投でいいのか?

 

「二乃…今のは…?」

「私は英語

 一花は数学

 四葉は国語

 三玖は社会

 理科も五月は合格

 五人で五科目クリア、嘘はついてないわ」

 

物は言いようだか流石にありなのかこれは?

風太郎も思わぬ展開に頭を抱えてる

 

「結果的にパパを騙すことになった

 多分二度と通用しない」

 

二乃は風太郎と俺の方を見据え

 

「次は実現させなさい」

 

なんて言う

 

「……やってやるよ」

 

風太郎の方もそう返すってことはやる気はあるようだ

 

「色んな意味でやられたな」

「優希…」

 

労いを込めて肩を叩いてやる

他の姉妹達も何事かあったのか問いただしてくる

三玖の方は安心したように胸を撫で下ろしてるし五月もなんだかんだ表情は柔らかい

 

「じゃあこのまま復習しちゃいましょー!」

 

四葉がいつもの元気の良さで宣言

二乃は嫌そうにしてるが一花に確保された

 

「そうだな、試験が返却された後の勉強が一番大切だ

 だが、直後じゃなくてもいいな」

 

ん?風太郎?

 

「ご褒美だっけ…?

 …パフェとか言ってたろ」

 

なんて絶対に普段口にしないようなことを言うもんだから

 

「ぷっあははは」

「なぜ笑う…!!」

「フータロー君がパフェって」

「超絶似合わないわ」

 

図書館では静かになーなんて今言うのは野暮か

奇妙な形だけど幼馴染の交友関係が広がるのは嬉しいもんだな

 

「じゃあ行こうか

 折角だからバイト先の売り上げに貢献してくれ」

「何だよ、今回はちゃんと参加すんのかよ」

 

風太郎が若干意地の悪い顔で言ってくる

 

「お前だってあの時あのまま帰ったんだろ?中野から聞いたぞ」

「どの中野だよ…いい加減恥ずかしがってないで名前くらい呼べよ」

 

うっせーわ

別に恥ずかしがってねーし!

 

「ちょっと、男二人でコソコソしてんじゃないわよ

 さっさと行くわよ」

 

二乃に急かされる

なんだ、嫌な顔の一つでもされるかと思ったが俺が行くことに関しても特に問題はないらしい

 

「ところで上杉さんは何点だったんですか?」

「うわっやめろっ見るな!」

「全部100点…」

「あーめっちゃ恥ずかしい!」

 

その流れ気に入ってんの?

 

「下川君」

 

ん?五月がみんなの輪から離れて俺の近くへ

 

「その、下川君の結果は…」

 

ああ…

 

「はい」

「……ぜ、全部90点越え!?」

 

厳密に言えば社会だけ89点だが

遅刻で持ち時間少なかったから見直しきれんかった

 

「じゃ、これで条件満たしたし

 明日からは前と同じで放課後よろしくな」

 

この数日で実は五月には事情を話した

成績優秀者の奨学金で授業料を払ってること

テストの結果は給付基準に直結してること

風太郎もそれのために俺がテスト期間だけは勉強に集中することを知ってて気を遣ってくれたこと

で、今回の試験で問題なく基準をクリアできるようならまた一緒に勉強しようって半ば一方的に条件をつけさせてもらった

 

「下川君は本当にそれでいいんですか?」

「友達と一緒に勉強するだけだから気楽にって言ったのは中野だろ?」

 

だから俺も気楽にやらせてもらう

そう告げれば

 

「はい

 これからもよろしくお願いしますね

 下川君!」

 

なんてずいぶん久しぶりな影のない表情を見せてくれた

風太郎の家庭教師を邪魔しないようにとは最初考えてたはずなんだが…

それでも、まだしばらくこの関係が続くのを楽しみにしてる自分がいた




詰め込みすぎた感少しありますわ

五月の結果に関しては早い段階で勉強見てくれる人がいたら少しは向上するかなと思い原作よりわずかばかり上方かけてます

オリ主の好きなおにぎりの具はシャケ

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