5Sぷらす2 【本編完結】   作:しろすけ

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原作でもなかったことにされたオリエンテーリングはこの物語でもなかったことになりました
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あ、ハイな読者は続きをどうぞ


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林間学校1日目

飯盒炊さんでのカレー作り

結果的に飛び入りの俺に与えられた役割なんかあるはずないはずだったんだが

 

「野菜切り終わったから」

「あ、ありがとう、下川君」

 

空いてそう、というか少しペースの遅かった野菜切りを手伝ってたらついほとんどやってしまった

と言うか俺が作業場に立った瞬間けっこうな勢いで周りから人が引いた

加えて野菜切ってる姿を見てヒソヒソと遠巻きに話す声がいつもより増えた

そんなに刃物持つ姿が物騒に見えたんだろうか…

 

「これもう使った?

 片付けておくね」

 

使い終わった道具の片付け等絶妙に楽な仕事を積極的に行う一花

相変わらず外面の取り繕いは完璧である

クラスの男子は美人で気が利いて完璧超人だの、自分の部屋も片付けてほしいだの視線が熱い

こいつらには是非本人のあの汚部屋を見て目を覚まして欲しいものだ

 

「ていっ!ーーーっつうぅ〜……!」

 

脚にわずかばかり衝撃を感じたと思ったら当の一花が自分の脚を押さえてうずくまっている

 

「あぁ、悪い

 ぶつかった?」

「……けっこう本気で蹴ったつもりなんだけどなぁ」

 

涙目で睨まれた

なんだただの自滅か

謝って損したわ返せ

 

「うぅ……すっかりいつもの調子に」

「そりゃお互い様でしょうが

 ってか、お前も野菜切る係じゃなかったっけ?」

 

クラスの話し合いなんて聞き流してたから自信はないが

 

「あはは

 ほら、手際のいい人がやってくれた方が効率いいかなって」

 

まさか切ったそばから新しい野菜手元に置いていったのこいつ?

ジト目で睨んだらそそくさとクラスの輪に戻っていく

あいつの扱いは今後もこんな感じでいい気がしてきた…

で、

 

「ってことで、中野さんに振られてフォークダンスの相手が見つからないままこの日を迎えちまった…」

 

やることないかとぶらぶらしてたら飯盒炊さんのかまどで前田に絡まれる風太郎というレアな状況に遭遇してしまった

いつの間に仲良くなったのお前ら?

 

「これのどこが仲良く見えるんだよ…

 一花たちとよく一緒にいるからって絡まれてるだけだ」

 

うんざりした様子で言う風太郎

前田もこっちに気付いたようで

 

「おう下川

 ちゃんと来れたみたいでよかったなコラ」

 

なんて言ってきた

こいつ見た目と話し方で損してるだけでいい奴なのでは?

 

「なんでご飯焦がしてんのよ!」

 

作業場に響く声

俺とも風太郎とも違うクラスの女子、たしか二乃とよく一緒にいる子達だが、同じクラスの男子と口論している

これは男子陣がやっちゃった感じかな?

 

「二乃、どうする?」

「じゃあ私たちだけでやってみるから

 カレーの様子見てて?」

 

ゴゴゴゴゴなんて地響きのようなBGMが聞こえるようだ

多分こっからは見えないけどすごくいい笑顔で言ってるような気がする

 

「あれは相当頭にきてんな」

「だな、周りに誰もいなくて相手が風太郎なら鉄拳制裁もんだ」

「否定はできん…」

 

風太郎とお互い苦笑い

前田はなんのことかわかってないようだ

置いてけぼりでごめんね

 

「それでだ…どうやったら彼女が作れるか…」

「まだ続いてた!」

 

お?なんだ風太郎にしては珍しい相談受けてたのか

 

「勘弁してくれ

 他人の世話焼いてる場合じゃないんだ

 俺たちは今夜の肝試しをやりくりしなきゃいけない…」

「昨日一人でやるとか言ってなかった?」

「お前どうせ係とかなんもやってなかっただろ?」

 

うん、知ってた

しかもこれはぐうの音も出ない

 

「上杉さん

 肝試しの道具運んじゃいますね」

 

唐突にかけられた声

四葉がいくつかの荷物を抱えてる

 

「四葉…

 お前確かキャンプファイヤーの係だったろ」

「はい!

 でも上杉さん一人じゃ無理だと思ってクラスの友達にも声かけました」

 

せっかく風太郎が来てくれたので全力でサポートするとのこと

お、これは俺もお役御免か

 

「下川さんも頑張りましょうね!」

 

きっちり退路を潰された…

女の子の笑顔も裏切れんよね

 

「よし前田

 俺の班の飯の世話もしててくれ」

「あ?命令してんじゃねーよ!

 つーか俺の話の続きは?」

 

前田もけっこうしつこく食い下がるな

 

「肝試しは自由参加だ

 クラスの女子でも誘って来てみろ

 ただし、こっちも本気でいくからびびんじゃねーぞ」

 

 

「このように!!」

 

暗がりからの金髪ピエロマスクの登場

前田とクラスの女子、松井かな?

二人揃って悲鳴を上げながら走り去って行った

俺が控えてる前の植え込みでの仕掛け、ピエロマスクの風太郎とミイラ?に扮した四葉の方は絶好調のようだ

あまりのみんなのビビりぶりに追い討ち係の俺はなんかかわいそうになって二の足踏んでる

 

「や、やってやらぁ!」

「食べちゃうぞー!!」

 

お?次の組来た

 

「フータロー」

「四葉もいるじゃん」

 

なんだ一花と三玖か

ネタがバレてるから二人とも対して驚いていない

ようやく出番か

そのまま雑談まで始めた一花たちの背後からそっと近づく

 

「あ、そういやユーキ君もいるって…

 うわああああ!!??」

「ーーーっっっ!!」

 

いいリアクションありがとう

ドッキリ番組が廃れない理由がなんとなくわかったよ

脅かすの意外と面白い

 

「ユーキ君!?ユーキ君だよね?

 え、なにそれ!え!?」

 

まあ、このマスクじゃ左目しか出てない上に白髪ウィッグだからそりゃ誰かわかんないよね

その出てる左目もカラコンで白目部分が真っ赤だったりする

 

「なんかよくわかんないけど渡されたから」

 

風太郎と四葉がウェーイとハイタッチを求めてくるのでそれに応えながら答える

どうでもいいけどこのマスクしてると親指で人差し指抑えてバキリと鳴らしたくなる

 

「あ、看板が出てるからわかると思うがこの先は崖で危ない

 ルート通りに進めよ

 ……三玖、聞いてるか?」

「えっ

 ……わかってる、行こう一花」

「え?うん」

 

三玖がどこか上の空の様子で一花を促して去って行ってしまった

 

「なんだ?やけに素っ気ないな」

「三玖はいつもあんな感じですよ?」

 

風太郎も普段と違う雰囲気は察しているようだ

キャンプファイヤー誘う件についてなのかそれ以外か

なんにせよ風太郎絡みだとは思うけども

 

「それより上杉さん

 脅かし方にまだ迷いがあります

 もっと凝った登場しないと!」

 

嫌な予感しかしないんだがそれは…

 

 

「わああああ!

 もう嫌ですぅぅぅぅ!!」

「五月、待ちなさい!」

 

最初の被害者はまさか身内とは…

あれから四葉が言うところの凝った演出、枝に風太郎扮する金髪ピエロを逆さにぶら下げてみたんだが

予想以上の効果だったようだ…

 

「本当に苦手だったのか…」

「あちゃー…やりすぎちゃいましたね…」

 

五月…苦手なのになぜ自由参加の肝試しに

 

「あれ…?あいつら…どっち行った?」

 

風太郎を下ろしてやるとなんとも不穏な一言

こっちも遠巻きに見てたからルート通りに走って行ったかは分からなかったが

って、どうする?って相談するまでもなく風太郎は二人を追いかけて行ってしまった

あいつ…いくらみんなが通るルートだからって女の子一人夜の森に置いてくってのはどうなのよ

 

「ごめんな

 あいつ、マジでテンションおかしいわ」

「あはは

 楽しんでそうでいいじゃないですか」

 

四葉が控えてる植え込みに近づき声をかける

苦笑いしてはいるもののこいつも楽しそうにしてるので何よりだ

 

「下川さん」

 

ん?

 

「私は大丈夫ですので

 五月たちをお願いできますか?

 上杉さん一人だと大変かもですし」

 

なんていい笑顔で言われてもなぁ

 

「さすがに一人で置いていくのは…」

「いえいえ!周りにクラスの子達もいますし

 それに、下川さんは五月のこと心配じゃないんですか?」

 

それを言われると弱い…

なんで五月だけ?って気にはなったが

 

「すまん

 すぐ戻るから」

「はい!よろしくお願いしますね!」

 

四葉のいい笑顔に見送られて森の奥に向かう

あとで何かしら埋め合わせしよう

 

 

とはいえ、流石にこの夜道を明かりもなしに探すのは骨折れそうだ

こういう時ばっかは携帯もっとけばと思うよ全く

 

「あぁああぁ」

 

と思ったが少し離れたところから声

自信はないがこれはどっちかの泣き声か?

まあ、他に当てもないしそっち向かおう

お化けかなんかでも多分話せば(物理)わかるだろ

 

「わあぁあぁ

 二乃ぉ…どこ行ったんですかぁ〜」

 

よかった早速見つけれた

何というか子供みたいに泣きじゃくる五月の姿に後で風太郎と四葉に軽くお仕置きしておこうと勝手に決意

 

「中野」

「!下川君!よかっ…」

 

声をかけて振り返ってくれたんだが何その顔?

五月は凍りついたように動きを止めてそして

 

「きゅ〜〜…」

 

目を回して気を失ってしまった

なんでさ?

…って

 

「外すの忘れてた…」

 

振り返れば眼帯マスクなんてのは流石に刺激が強すぎたらしい

これはマジでやらかした…どうしよう

 

 

「う…んん…」

 

背中から微かに声

どうやら起きてくれたみたいだ

 

「し、下川君!?」

「ん

 よかった気がついたんだ」

 

耳元で驚いた声をあげられたので少し耳が痛いけど、自業自得なので我慢

 

「あ、あの

 この状況は…」

「ああ

 流石にこんな森の中で寝かせとくわけにいかないから宿まで戻ろうと思って」

 

気絶してしまった理由に関してはできれば忘れて欲しいがあとでちゃんと謝ろう

 

「そういえば次女は?」

「あっ!五月!

 っと、下川?」

 

言ってるそばから横の茂みから二乃の声

どうやらそっちは何ともなかったようで安心した

 

「あんた、五月に何したわけ!?」

「に、二乃

 下川君は助けてくれたんですよ?」

 

うーん

今回ばっかは二乃が正解なのでマッチポンプ感が否めない

どう説明しよう…

 

「まあいいわ…

 もう帰るわよ」

 

二乃がそう言って踵を返し俺もそれに続く

 

「二乃はよく一人で平気でしたね」

「違うわ、私は…あれ?」

 

あたりを見渡して不思議そうにしたがすぐに柔らかな表情に戻る

そのまま宿に戻るまで何故か上機嫌だった

戻ったところで五月を背負ったままだった俺の姿にまたもよからぬ噂が広まった気がしたが…

 

 

「深刻な事態だ…」

 

肝試しも終わり宿に戻って風太郎と顔を合わせれば開口一番これ

今度は何をやらかしたのか聞いてみれば

 

・金髪のカツラを取らずに道に迷った二乃を見つける

・二乃は遭遇したのが風太郎の親戚と勘違い

 (以前昔の写真を見られた時に親戚の写真と誤魔化していた)

・何故か金髪風太郎は面食いである二乃にはドストライク

・二乃は金髪風太郎に最終日のキャンプファイヤーで一緒に踊ってくれないかとお誘い

 

なるほど分からん

 

「なんでその場ですぐカツラ取らなかったのさ?」

「……いや、なんか弱みを握られそうで

 とにかくだ、どうにか二乃の誤解を解かないとまずい」

 

まあ、勘違いされたままってのは良くないのは分かるけど

 

「この際大人しく踊っといたら?」

「それが一番まずいからこうして困ってるんだろうが!」

 

だろうな

キャンプファイヤーまでに誤解を解いてぶっ飛ばされるか、踊った後バレてぶっ飛ばされるか

 

「その結末だけは回避したいんだが…

 まあ…やっぱ正直に言うしかないよなぁ」

「何だよなんか気になることあんの?」

「いや、二乃のやつすげえご機嫌そうだったからさ…

 結果的に騙すことになって悪いことしたなって」

 

うーん…

ここ最近、正確には中野たちと関わるようになってから風太郎の人付き合いのスタンスがだいぶ変わってきたように感じる

というかこれはぶっきらぼうながら周りの人の気持ちを汲み取る昔の風太郎に戻りつつあるのでは?

 

「あ、ちょうどいいところに

 三玖!」

「フータロー?」

 

近くを通りかかった三玖を呼び止めた

声をかけてきたのが風太郎とわかった瞬間、なんとも複雑な表情

あれ?さっきの肝試しの時といいマジで風太郎相手によそよそしい

 

「二乃知らない?」

「知らない」

 

膨れっ面で去って行った

今のは風太郎がなー

ってかこの手の女性の気持ちを汲み取れってのも風太郎には難しいか…

 

「もしかして俺って思ったより好感度低い?」

「今更気がついたんですか」

 

風太郎の呟きに答えたのは何故か柱の影から顔を半分覗かせた五月

 

「忠告します

 今より下げたくなければこれ以上不審な真似はしないことです」

「心当たりがないんだが…」

 

風太郎の返答を聞くことなく引っ込む五月

 

「下川君もですよ?」

 

と思ったら再び顔を出して俺にもちくり

そういえば俺はこの子の誤解もどうにかしないといけないんだった…

加えてさっきの肝試しの件を正直に謝ったら微妙な反応された事も多分響いてる

 

「これは…」

「早急に手を打つ必要がありそうだ」

 

俺の呟きに風太郎が続く

どうしたもんか…

 

 

「これを運べばいいんだな」

「はい

 昨日の雪から一時的に避けていたらしいです」

 

四葉の説明に気合いを入れて俺に任せろ!と丸太に取り付く風太郎

気合い虚しくピクリとも動いてないのが悲しい…

結局、何故か外堀を埋める目的なのか、とっつき易いからなのか、四葉のキャンプファイヤー係を手伝って好感度を稼ぐことに

いくらなんでも遠回り過ぎないか?

とはいえここまできた以上何もやらんわけにはいかんし

風太郎は四葉に手伝ってもらって運んでいくが

 

「よっ」

 

うん

思ったより軽いな

 

「か、片手で一本ずつ!?」

「人間じゃない…」

 

周りからそんな声が上がる

悪目立ちは流石に本意じゃないな…

大人しく一本ずつ行こう

そうやって何回かキャンプファイヤーの会場まで丸太を運ぶ

風太郎はものの一回で息も絶え絶えになってるが

 

「おや?ユーキ君までいる」

 

何回目かの往復で運ぶペアを探していた一花と遭遇した

うーん

俺からしたらこいつの好感度気にする必要なんてまるでないんだが、風太郎をヨイショするくらいはしておいた方がいいんだろうか

 

「もしかしてフータロー君みたいにみんなの好感度とか気にしてる?」

 

既に風太郎の方からネタは上がっていたらしい

観念してこいつには話しとくか…

というわけで、かくかくしかじか

 

「あぁ〜

 五月ちゃんがユーキ君にまでよそよそしかったのってそれが原因か〜」

「そういうこと

 誤解解きたいからなんとか五月さんに取り次いでくれよ」

 

この際だから体面なんて気にしてる場合じゃない

 

「俺とお前は別に何でもないんだって」

「……何でもない…か」

「事実そうだろ、う」

 

が、と続けるはずだったが言葉が詰まる

 

「あれ…なんでだろ…違うの、ごめん…」

 

…………そんな顔で涙まで流されて違うも何もないだろ

柄でもないが慰めの言葉なんて考えてたところで

 

「よーし、全部運んだわね」

 

なんて他の係の声にとっさに死角へ隠れる俺と一花

 

「はは…前にもこんなことあったね

 っていうか隠れる必要ある?」

 

いやまあ確かにそうかもしれんが

 

「わぶっ

 え?」

 

上着を頭から被せる

 

「そんな顔で出ていけないだろ?」

 

我ながらもう少し言葉を選べとは思う…

落ち着くまで少し待った方が良さそうだが

 

「ガシャン…」

「ガチャ…」

 

おい、まさか…

慌てて扉に近づく

案の定、扉は開かない

 

「あはは

 これは一本取られたね…」

 

なんつーベタな展開

しゃーない

 

「ユーキ君?」

「ぶち破る

 少し下がってて」

「あー待って!

 あれ、防犯センサーじゃないかな

 ドアを壊したら警備員が飛んでくる系のやつ」

 

この際そっちの方が都合がいい気がする

こいつは俺が巻き込んだことにしておけばそれほどお咎めはないだろうし

 

「そんなことになったら林間学校が台無しだよ

 それに…こんなこと五月ちゃんに知られたら…」

「五月さんがなんだって?」

「う、ううん

 なんでもない…」

 

最後はよく聞こえなかったが、確かに騒ぎを起こすのは良くないか

しゃあない大人しく誰かが気付くのを待とう

観念して扉の前に座り込む

 

「くしゅっ!

 あ、ごめん…上着借りっぱなしなのに」

 

うーん

俺は別にいいんだが、元々けっこう薄着だった一花はこのままじゃ風邪でもひきかねん

どうしたもんかとポケットをなんとなしに探ってみて

 

「ラッキーだったな」

「そうだね

 飯盒炊さんの時のマッチ持ってたなんて」

 

小さな火を焚き暖を取る

倉庫内の端材を拝借して薪がわりにしてるが有事なので勘弁してほしい

それからは取り留めのない会話が続く

姉妹とのことやクラスでのことが多いが、不思議と仕事、女優業に関しての話は出てこない

あんまり詮索することもないだろうと思っていたが

 

「私学校辞めるかも」

 

突然のその言葉に思考が停止してしまった

なんでも新しい仕事が少しずつ増えてくる中で、休む機会が増えていること

他の同世代の俳優が留年覚悟で休んだり融通の利く学校に転校したりしていることでかなり揺らいでいるようだ

 

「私は知っての通り学業は絶望的だからさ

 高校に未練はないかなーって…」

 

そう言う表情は作り笑いだが迷いを隠しきれていない

こいつが真剣に仕事に向き合ってるのは知ってるつもりだから本当なら後押しするなり何か気の利いた慰めでも言うべきなんだろうけど

 

「そうなると、寂しくなるな」

 

なんて、自分でも思わぬ言葉が自然と口から出ていた

一花もその言葉に目を丸くしている

 

「今の…」

「気の迷いだ忘れてくれ」

「あはは、無理無理

 そっか〜、ユーキ君はお姉さんがいなくなると寂しいか〜」

 

一瞬惚けたと思ったらもうこの調子だ…

こうなることなんて予想できたはずなのになんであんなこと口走ってしまったのか…

 

「あーでも…

 フータロー君には悪いかなぁ」

「そうだな…

 まあ、あいつの場合給料がどうなるのかって真っ先に心配しそうだが」

「そうだね

 それとすごく怒りそう

 人間失格ゥ!なんて」

「違いない」

 

楽しそうな声と裏腹に表情からは不安そうな気持ちが浮かんでる

俺が力になれることなんてそう多くはないが

 

「お前が真剣なのは分かってるつもりだから

 まあ、風太郎の方は上手く言っておくよ」

 

せめてこれくらいはしてやりたい

風太郎の給料のことだけを考えるならせめて卒業まではって一花を説得するべきなんだろう

だがどうにも、夢を追うってその姿勢に俺は弱いらしい

なんとなく一花の顔は恥ずかしくて見れんが

 

「そういえばさ」

 

唐突に一花が立ち上がりこちらに手を伸ばす

 

「キャンプファイヤー

 折角だから今踊らない?」

「は?」

「ほら、人目が無ければ恥ずかくないでしょ?

 今夜は二人だけのキャンプファイヤーだよ」

 

焚き火の小さな灯りに照らされるその笑顔は心底楽しそうだ

何が折角なのか分からんがそれで気が晴れるんならまあ安いもんだろ

立ち上がり一花に近づく

 

「言っとくけど別に恥ずかしがってるわけじゃないから」

「ふーん、そっかそっか」

 

こいつ…信じてねえな

 

「あんな伝説なんてあるから、その気がなくてもそう見られるでしょうが」

 

これでも気を使って、俺なんかと踊るなんて状況回避させたかったんだけどな

しかし一花の方は今度は不思議そうな顔

 

「その伝説って…」

 

なんだ、意外にもこいつは知らなかったのか

 

「うちの学校の伝説

 キャンプファイヤーで踊った二人は生涯結ばれるとか」

 

よくあるやつだ、と続けたがそれを聞いた一花の表情は曇っていく

 

「そ…それ

 三玖は…五月ちゃんは知ってるの?」

「?四葉が話してたくらいだから多分知ってると思うけど」

「そ、そんな…私…」

 

一体どうした急に

顔色まであまり良くないし、後ろに少しよろめくように下がる

って

 

「一花!」

 

足が当たったのか、立てかけた丸太が倒れてくる

咄嗟に駆け寄り一花の体を抱き寄せる

間一髪、結構な音を立てたものの丸太は一花に当たることなく倒れた

 

「ドジ」

 

こんな時でもつい憎まれ口が付いて出るのはなんでだろうな

一花の方は指摘が恥ずかしいのかどんどん顔が赤くなっていく

って放してって暴れられても今放したら二人ともひっくり返るだろうが

ってかさっきからこの警告音もしかしてヤバい?

 

「うおっ!?」

「スプリンクラー…!?火を消さなきゃ」

 

火気に反応したのかスプリンクラーまで起動した

 

「とりあえず警報も止めないと」

「でも、鍵がないと…」

「鍵ならここにありますよ」

 

その言葉とともに開かれる扉

助かった

ようやく誰かが気づいてくれたみたいだ

 

「一花」

 

……その誰かってのがまさかよりによって

 

「二人してこんなところで何してたんですか?」

 

明らかに怒気を孕んだ声を出した五月がこちらを睨みつけていた




姉妹の葛藤は原作とベクトルが若干違ってます
幕間の形で書くべきですかね?
よければコメントどうぞ

オリ主の身長は風太郎より少し低いくらい
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