5Sぷらす2 【本編完結】   作:しろすけ

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菊のエピソードはスルーです
無かったことになったわけではないので後々チラッと言及あります


18

「……なあ、風太郎」

「なんだ」

「お前って勉強できるのに馬鹿だよな」

「……無駄口叩いてるくらいなら手動かせ」

「……らいはのカレーに釣られた俺も大概か」

 

 

なんてやりとりを家のリビングでしていたのが昨夜

つーか今朝まで

現在土曜の午前

風太郎はいつもの家庭教師の日

なので

 

「あ、はーい」

 

チャイムを鳴らせば中からは五月の声

程なくドアが開かれる

 

「下川君、上杉君

 いらっしゃ……ーーっ!?」

 

ドアを開けた瞬間声にならない悲鳴をあげる五月

うん

担いでる風太郎は相変わらず目見開いたままぐったりしてるけど

 

「心配ない

 ギリ生きてる」

「ギリなんですか!?」

 

だから慣れない徹夜はやめろって言ったんだ

 

 

「やってしまった…

 勉強に集中しすぎて気付いたら朝だった…」

「ほら

 朝勉は効果的って言うし」

「朝まで勉強することを朝勉とは言いません」

 

ごもっともです

あの後すぐ目を覚ました風太郎とともにみんなが待っているというリビングへ向かう

 

「みんな待ってますのでこちらへ」

「お、おう

 試験まであと一週間だ

 そこで…

 これを用意した!」

 

リュックから取り出された紙の束

試験範囲をカバーした想定問題集だが五人分とはいえ辞書みたいな分厚さになってる

五月はまたも声にならない悲鳴を上げてる

 

「これを一通りこなせば勝機はあるはずだ」

「や、やっぱ今日の約束はなしで!

 お引き取りください!」

「逃げんな!お前がこれをお引き取るんだよ!」

 

すったもんだの末押し切る形で問題集を押しつけられる五月

 

「…呆れました

 まさかこれが原因で徹夜したんですか?」

 

俺まで巻き込んでな

なんて言うのはここでは野暮か

 

「お前たちだけやらせてもフェアじゃない

 俺たちがお手本になんなきゃな」

「お手本…って」

 

何か思うことがあるのか五月は少し呆けた顔

あと俺は別に手本になる必要ないよな?

 

「つーか誰か逃げ出さないうちに行こうぜ」

「そうですね」

「…………あの、俺は風太郎届けたからもうお役御免では?」

 

何で二人揃って俺の腕がっちりホールドしてんの?

何でこんな時だけ息ぴったりなの?

抵抗虚しくドナドナされた…

 

 

「三玖

 この手をどけなさい!」

「二乃こそ諦めて」

「はあ?あんたが諦めなさい!」

「諦めない」

 

リビングに入ってみればこれである

 

「今やってるバラエティにお気にの俳優が出てるんだから!」

「ダメ

 この時間はドキュメンタリー

 今日の特集は見逃せない」

 

わかりやすいチャンネル争い

五つ子なら好みもそっくりであってくれ…

 

「勉強中は消しまーす」

 

風太郎が強制的に電源を落として争いは終了

と思ったけどまだ言い争いしてる

 

「前から思ってたが、あの二人仲が悪いのか?」

「んー

 どうだろう

 犬猿の仲ってやつ?」

 

風太郎の疑問に一花が答える

 

「特に二乃

 あんな風に見えてあの子が一番繊細だから

 衝突も多いんだよね」

 

まあ、あの攻撃的な性格はそういうのの裏返しなんだろうな

それにしても、さすが長女

本当によく見てる

 

「はーい

 そろそろ始めるよー」

 

一花の声に全員勉強道具を手にテーブルへ集まってくる

 

「それじゃ、フータロー君にユーキ君

 これから一週間

 私たちのことをお願いします」

「ああ

 リベンジマッチだ」

 

気合い入れてるとこ悪いけどサラッと俺も巻き込んでくれるのに物申したいんだが

風太郎

暑苦しいから肩まで組まないで

やっぱり逃げ出すのは無理らしい…

 

 

リビングで姉妹全員そろって勉強

中間テストの時と比べれば状況は好転してるように見える

見えるのだが……

 

「それ私の消しゴム!

 返しなさい!」

「借りただけ」

 

「あ

 それ私のジュース」

「借りるだけよ」

 

二乃と三玖はこんな感じ…

借りるだけのジュースは口に合わなかったそうで吹き出してるが

仲違いが深刻になってくるとテスト勉強に影響が出てきそうだな

風太郎の方も同じ考えに至ってるらしいが

 

「アイディア募集中」

 

具体的な解決策は思いつかないらしい…

 

「はーい

 こんな作戦はどうですか?」

 

四葉発案『みんな仲良し作戦』

なんでも二人は慣れない勉強でカリカリしてるのでいい気分に乗せてあげたら喧嘩も収まるはずとのこと

 

「はっはっは

 いやーいいねぇ

 素晴らしい!」

 

風太郎……

いくらなんでも不自然すぎる

しかも褒めて気分を良くするつもりらしいが後に言葉が繋がってない

勉強できるのにこういう人付き合いはとことんポンコツなのが泣けてくる

 

「どうしたのフータロー?」

「気持ち悪いわね」

「……気持ち悪くはないから」

「本当のことを言っただけよ」

 

また言い合いになってる

これはどうしようもない

風太郎、アイコンタクトで助けてって送られても何もできんぞ

 

「失敗だな」

「こんなのはどーかな」

 

一花発案『第3の勢力作戦』

あえて厳しく当たることでヘイトが向き、共通の敵を前に結束力を高める狙いらしい

 

「うーん…」

 

あれ?この作戦は乗り気じゃない?

 

「一応それなりに頑張ってるあいつらに強く言うのは心が痛む…」

「あなたにも人の心があったのですね」

 

五月の風太郎の評価ってどうなってるのさ…

ってか、ヘイト集めるなら俺のが適任では?

 

「ユーキ君にお願いすると…」

「どう考えても相手を完膚なきまでに言い負かすな」

 

一花と風太郎が俺のことどう思ってるか良くわかった

ってか、ある意味自業自得の評価だわ

 

結局また風太郎が実行することに

 

「おいおい!

 まだそれだけしか課題終わってねーのかよ!」

 

「と言っても

 半人前のお前らは課題を終わらせるだけじゃ足りないけどな!

 あ!違った!

 半人前じゃなくて五分の一人前か!」

 

高笑いまで加えてめちゃくちゃ生き生きしてる

 

「言われずとももうおわるところよ

 ほら!」

 

なんと

二乃にしては珍しく課題は順調だったらしい

 

「……ん?

 そこテスト範囲じゃないぞ」

「あれぇ!?

 やば…」

 

しっかりオチがついたか

まったくやろうとしなかった中間の時からしたらけっこうな進歩だとは思うけどこれはクるだろうな…

 

「二乃

 やるなら真面目にやって」

「……っ」

 

三玖の喧嘩腰もどうにかならないもんかな

二乃の顔が羞恥だか怒りだかでどんどん赤くなってるんだが…

 

「こんな退屈なこと真面目にやってられないわ!

 部屋でやるからほっといて!」

「お、おい!」

 

そっぽを向いて部屋に戻ろうとしてしまう

 

「くっ…

 ワンセット無駄になっちまった」

「弱気にならないでください」

 

風太郎の言葉を拾ったのは意外にも五月

 

「お手本になるんでしょう?

 頼りにしてますから」

 

その言葉に風太郎も改めて二乃を説得すべく動くようだ

 

「待てよ二乃

 まだ始まったばかりだ

 もう少し残れよ」

 

風太郎の声に足を止める二乃

 

「ただでさえお前は遅れてるんだ

 四人にしっかり追いつこうぜ」

 

しかし次の言葉を聞いた二乃の表情は今まで見せたことのない表情で

 

「うるさいわね

 何も知らないくせに

 とやかく言われる筋合いはないわ

 あんたなんかただの雇われ家庭教師

 部外者よ」

 

いつものように荒げた声でない分、かえって感情が剥き出しな気がするな

しかしこれ以上お互い余計なこと言い合う前にここらで仲裁に

 

…………俺が風太郎だけでなく二乃まで庇おうとしてる?

 

「これ

 フータローたちが私たちのために作ってくれた

 受け取って」

 

一瞬過った疑問に初動が遅れた

三玖が問題集を手に二乃に詰め寄ってる

 

「問題集作ったくらいだなんだっていうのよ

 そんなの…いらないわ」

 

振り払った手に当たり問題集が三玖の手からこぼれる

が、二乃の顔は少しバツが悪そうに曇る

 

「二乃

 拾って」

 

三玖の方は表情こそいつも通りだけど今まで見たことないくらい声に怒りがこもってる

 

「こんな紙切れに騙されてんじゃないわよ

 こんなもの渡して…」

 

三玖の反発にある程度いつもの調子に戻ったのか二乃はまた不機嫌そうな声

 

「いい加減なのよ!

 それで教えてるつもりなら大間違いだわ!」

 

そんな言葉とともに破り捨てられる問題集

 

……流石にそれは看過できんな

 

「ユーキ君!?

 ストップ!」

 

一花の静止が入るがこればっかりは聞き入れられない

二乃に近づこうとして

 

頬を叩く乾いた音に足が止まった

 

「二乃」

 

いつの間にか、俺よりも早く二乃に駆け寄ったのは五月

叩かれた二乃はもちろん全員が全員あまりにも意外な展開に唖然としている

 

「謝ってください」

 

五月のその言葉にいち早く動いたのは二乃

反射的なんだろうか

五月の頬を張り返した

 

「五月…

 急に何を…」

「この問題集は上杉君たちが私たちのために作ってくれたものです

 決して粗末に扱っていいものではありません」

 

「彼らに謝罪を」

 

叩き返されたというのに五月は怯むことなく二乃を見据える

 

「あんた…

 いつの間にこいつらの味方になったのよ…」

 

苦々しい表情の二乃

 

「まんまとこいつの口車に乗せられたってわけね

 そんな紙切れに熱くなっちゃって」

「ただの紙切れじゃない」

 

よく見て、と三玖が二乃へ問題集を突きつける

 

「待て

 二乃の言う通りだ

 俺が甘かった」

「あなたは黙っててください」

 

風太郎が口を挟む暇すらない

かと言って俺の方も今更口出しできる状況でない

 

「上杉君は

 おそらく下川君もでしょう

 プリンターもコピー機も持っていません

 本当に呆れました」

 

「全部手書きなんです」

 

二乃の表情が変わる

変わるのだが…

それでも納得がいかない様子

 

「私たちも真剣に取り組むべきです

 彼らに負けないように」

 

「私だって……」

 

二乃が五月から視線を逸らす

他の姉妹、一花も四葉も二人を心配そうに見つめていて、三玖の方は相変わらず咎めるような視線

 

「わかったわ…

 あんたたちは私よりこいつらを選ぶってわけね」

 

二乃は怒りなのか悲しみななのか、色々な感情が混ざり合った表情で

 

「いいわ

 こんな家出てってやる」

 

なんてことを言い放つのだった

 

「二乃!

 冷静になれ」

「前から考えてたことよ

 この家は私を腐らせる」

 

どう言っても聞き入れられる気配がない…

 

「に、二乃っ

 こんなのお母さんが悲しみます

 やめましょう!」

 

さっきまで明確に敵意を向けていた五月まで慌てている

それでも二乃の気は収まる様子はないようで

 

「未練がましく母親の代わりを演じるのはやめなさいよ」

 

なんて言われた言葉に五月の表情が凍りついてしまう

どうにも…あまり触れるべきでないとこだったみたいだな

 

「次女

 くだらないこと考える前にまず言いたいことこの場で言っちまえ」

 

今更口出しするのもどうかとは思う

が、言わなきゃよかったとかもっとああ言うべきだったなんて後悔をこいつらがするのは見たくないわけで

 

「無理に冷静にならなくても、感情的でも

 とにかくまずは話をだな」

 

だが

 

「あんたが一番訳わかんないのよ!

 家庭教師じゃない、巻き込まれただけとか言うくらいならさっさと出てけばいいじゃない!

 邪魔なのよ!」

 

おっと

相変わらず鋭い切り返し

しかもこればっかりは的を射ているため言い返せん

…………って

 

「五月!待て!」

 

またも二乃に詰め寄ろうとする五月の腕を咄嗟に掴む

こいつまで急に感情的になるなよ!

 

「二乃!

 取り消してください!」

「落ち着け

 今はそんなこと問題じゃないだろ」

 

迂闊に話に割り込んだ浅はかさを呪うよまったく…

 

結局、その場は表面上は一度は治ったかのように見えた

だが

五月と二乃が本当に家を出ていった、なんて連絡を翌日にもらう羽目になった

 

 

翌日の夕方

我が家のリビングにはなんとも言えない微妙な空気が流れている

 

朝から風太郎に五月と二乃が家を出ていった、なんて連絡を受け町中を一日中走り回っていた

一花と四葉はそれぞれ外せない用事があるらしく、中野側で捜索に加わってたのは三玖だけ

しかし、風太郎と三玖の体力なしコンビは早々にペースダウン

こっちは時間の限り探そうと思って町中を駆けずり回った結果

 

「……〜〜っ!」

 

目の前でお腹を鳴らすお嬢様、五月を発見したわけだ

帰るよう説得してみるも意固地になって拒否されるし、どこに泊まっているのかと聞けば気まずそうな顔でだんまり

しつこく聞けば財布を忘れてしまったとか

つまり食事すらまともに取ってないと

行くあてもなければ帰るつもりもなし

流石に放っておけずやむなく家に来てもらうことに

しかし、昨日から丸一日食事抜きって…

さて、何があったか

 

「あの、下川君

 なにを?」

「座ってていいよ

 男の手料理で悪いけどなんか作るから」

 

立ち上がろうとした五月を制して冷蔵庫を開ける

 

「そ、そんな

 そこまでしてもらうわけには……

 〜〜っ」

 

またもお腹の音

五月は顔を赤くして座り込む

結果として大人しくなってくれて何より

卵に、ネギに、ベーコンの残りはあるし

ご飯も冷凍してたのが残ってたな

さっさと作ってしまおう

 

 

「ごちそうさまでした」

「……お粗末様」

 

舐めてた

この子の食いっぷり舐めてた

たしかに好きなだけ食べていいよとは言ったけども

けっこう多めに作ったはずの食事は少し席を立ってる間に見事に平らげられていた

 

「あの…

 もしかして全部食べてはダメでしたか?」

「いや、大丈夫

 気にしないで」

 

幸せそうな顔から一転、不安げな顔になりかけた五月

機嫌がいいうちになんとか家に帰るよう説得したいが…

 

「……電話の相手は一花たちですか?」

 

流石に席を立ってた理由は察してるようだ

 

「いや、風太郎

 あいつも一日中お前ら探してたから」

「そう…ですか…」

 

電話をしてみれば、風太郎たちは二乃がどこぞの高級ホテルに泊まっているところを発見したらしい

が、結局まともに話すこともできず追い出されてしまったとか

こっちも五月を発見、保護してる旨を伝えて今後どうするか少し話し込んだが打開策は特に決まらず…

とりあえず他の姉妹たちに心配はない旨だけ伝えてもらうようお願いして電話を終えた

 

「もう一度聞くけど帰るつもりは?」

「それはできません

 …………あの、もう少しだけいさせてくれませんか?

 なんでもお手伝いしますので」

 

流石にこんな切羽詰まってる子を放り出すわけにはいかんが…

というかここで放り出したら次に頼るのは風太郎のところになってしまうのでは

らいはがいる分ここよりマシなのでは?と一瞬頭をよぎったがあの家に負担をかけるのは本意でないし

……折れるしかないか

 

「あっ

 下川君、これは?」

「家の鍵と寝室の鍵

 寝室は二階上がって突き当たりな」

 

鍵を目の前に置いてやる

父さんたちの寝室なら鍵もかかるからそっちを使ってもらおう

あとは、風呂場とか諸々の説明をしてやって

 

「こんなとこかな

 じゃあ、戸締りだけはよろしくね」

「え?出かけるんですか?」

「バイト」

 

出かける準備をし始めた俺に五月が不思議そうにしてたが短く告げて勝手口へ向かう

気まずいってのもあるし、友達とはいえ同級生の男と一つ屋根の下で二人きりなんてよく思わないだろ

とりあえず今晩はバイト先で一晩過ごすか

 

「あの!」

 

五月に家を出ようとしたところで呼び止められる

何事かと振り返れば

 

「ありがとうございます

 その…

 いってらっしゃい」

 

深々と頭を下げて礼を言ったかと思えば、そう続けた

 

「ん

 行ってくる」

 

思わず目を逸らして答え家を出た

 

「は」

 

少し歩いて乾いた笑いが口から溢れる

もう何年もこんなふうに送り出されることなんか当然無かった

それだけのことを嬉しく思うなんて

 

「バカか…何を今更」

 

ふと湧いた感情に蓋をする

ここ最近ペース乱されまくりで少し弛みすぎだ

今はバイトに集中しよう

中野たちの問題とかテストのこととか考えるのはその後だ

 

 

なんて、決意したはずだったんだが…

俺の事情を知っているバイト先の人たちは俺がまた朝方まで店にいさせてほしいという俺の要望に対して特に疑問を持ってなかった

そう、俺がポロッと帰りづらい理由を漏らしてしまわなければ

詳しくは当然説明できるわけないが、家出少女がいるなんて知ったバイト先の人たちは口を揃えて一人にしてやるななんて言ってくる

とうとう店長の耳にも入った結果、思惑とは違い通常通りの時間でバイトは強制終了

家に帰る羽目になった

『女の子の扱いは紳士的にな』なんていい笑顔で言ってきた先輩には壁にめり込んでもらった

で、帰ってみれば

 

「あ

 おかえりなさい」

「……起きてたんだ」

 

五月はリビングでしまい忘れた俺の教科書を読んでいた

勝手に教科書を読んだことへの謝罪と、母さんの服を借りたことについての礼を言われるが別に迷惑でないので適当に返す

明日からまた学校だし俺は早朝もバイトがあるからもう寝ようかと思ったんだが

 

「実は私あなたに…

 話さないといけないことが」

 

なんて声をかけられ

 

「今日は月が綺麗に見えます

 少し歩きませんか?」

 

 

深夜

といっても日付が変わるまではまだ大分あるわけだが、未成年が出歩くような時間帯ではないだろう

そんな時間の公園を五月と並んで歩く

 

「少し曇ってしまいましたね

 せっかく今日は月が綺麗に見えていたのに」

 

空を見上げて残念そうな五月

 

「で

 話さないといけないことって?」

 

まだるっこしいのは性に合わないからこっちから切り出す

五月は少し顔を伏せた後

 

「こんなことに…私たち家族の問題に巻き込んでしまってすみません」

 

まあ、そんなことだろうな

 

「今更そこはいい

 けど、中野みたいなのがうちに泊まるなんて耐えられないと思うけど?」

 

あんなマンションに住むようなお嬢様だし

暗に早めに元の家に帰った方がいいんじゃない?と言ったんだが

 

「私たちも数年前まで負けず劣らずの生活を送っていましたから」

 

意外な切り返し方をされてしまった

 

「今の父と再婚するまでの私たちは極貧生活でした

 当然です

 五人の子供を同時に育てていたんですから」

 

「その頃の私たちはまさに五つ子

 見た目も性格もほとんど同じだったんですよ」

 

「けれども女手一つで育ててくれた母は体調を崩し入院してしまって……」

 

病院で俺の母さんの話をした時の反応はこれが原因か

嫌なこと思い出させちまったか

 

「だから私は母の代わりとなって

 みんなを導くと決めたんです」

 

「決めたはずなのに…

 うまくいかない現状です…」

 

あの時

二乃に対しての行動はそういうことが原因でもあるわけか

けど

 

「家族の代わりなんて誰も求めてないだろ」

「え?」

 

五月から目を逸らして告げる

この子の家族を守りたい気持ちはわかる

それでもそれは誰かを真似てするべきことじゃないはずだ

 

「きっかけはどうあれ、家族のためにって決めて行動してきたのは中野自身で、あいつらに何かしてやれるのも中野だけだろ?

 だから、ちゃんと向き合って話すべきだ

 お前の言葉で」

 

我ながら酷い言い分だ

気を遣ってるように見せかけて自分の意見を押し付けてるだけ

ともすればこいつが今まで母親代わりとして頑張ってきたことを否定してるようなもんだ

なのに

 

「そう…ですね

 そうかもしれません」

 

当の五月の方は柔らかく微笑んで

 

「私なりのやりかたをもっと考えてみたいと思います」

 

そんな風に告げた

自分の言葉を卑下してたのが少し情けなくなるな…

自分なりのやり方ね

俺の方もできる限りはやろう

風太郎には悪いが、試験どうこうより今はこいつらがまた笑い合えるようになるのが優先だ

 

「あ、ほら見てください

 雲が晴れましたよ」

 

「本当に今日は綺麗な満月ですよ」

 

「……中野はもう少し国語勉強しようか」

 

「な、なんでですか!」




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バレなきゃイカサマじゃないんd(ry

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