退路が絶たれたオリ主の明日はどっちだ!?
22
ドーモ、人でなし下川です
色々あって幼馴染と一緒に同級生で五つ子の女の子たちの家庭教師をすることになりました
……何を言ってるかわからないだろう
俺自身どうしてこうなったのかさっぱりわからん
「もうこんな生活うんざり!」
朝っぱらから響く声
あんましっかりした建物でないからその声で心なしか揺れてる気がするんだが
「なんで私の布団に潜り込んでくんのよ!」
「さ、寒くって」
「あんたの髪がくすぐったいのよ
さっぱり切っちゃいなさい!」
「あー!
自分が切ったからってずるいです!」
生徒、中野たちのアパートに授業に来てみれば
新生活が始まって早々これか…
五人それぞれに個室と立派なベッドが備え付けられてたあのマンションに比べたらそりゃあキツいだろうが
隣で風太郎も溜息をついてる
「これだけの騒ぎの中ぐっすり寝てる一花を見習え!」
「逆だ逆
こいつだけは見習わすな」
布団一枚分のパーソナルスペースが既に汚部屋化しつつあるでしょうが
どうしたらたった数日でこんなになる
さて、ぐっすりのとこ悪いがそろそろ起こさんとな
「おら起きろ
汚姉ちゃん」
「何故かものすごく可哀想な呼ばれ方されてる気がするわ…」
さすが二乃は察しがいい
女子だから遠慮してるけど本来なら文字通り叩き起こしてやりたいんだがな
「……むにゃ」
流石に起きたか
……って
「あ、ユーキ君おっはー」
そういやこいつ寝る時は裸とか言ってたなー
「一花!」
「フータローも見ちゃだめ!」
あっという間にパニックである
こっちは初めて部屋に行った時もこんな感じだったなー、なんて思い出しながら現実逃避
「っていうか
仮にも乙女の寝室に勝手に入ってくんな!」
風太郎共々寝室から叩き出される
我ながらもっと早く気づけよと反省
わかっちゃいたけど前途多難らしい…
ドタバタの末、ようやく勉強会を始めれそうだ
始めれそうなんだが
「……一花」
「あっごめん」
あれだけ爆睡しといてまだ眠いというのか
一花は始まる前から船を漕いでる
「先程はお見苦しいものをお見せして申し訳ない
それともご褒美だったかな?」
はっ
10年早えわ
「むぅ…」
鼻で笑ったら睨まれた
謝るつもりなんてないけど
「あはは…
相変わらずですね」
「お互い楽しんでるからいいんじゃない?」
いやいやいや
「「それは無い」」
また被った
何故か一花除く中野たちからの視線は生暖かいし
「いいからさっさと始めるぞ」
風太郎が割って入ったおかげでようやく勉強会が始まる
三学期の期末こそ全員で合格して風太郎と俺を父親に認めさせようと気合い十分
俺としてはもとから正式に雇われてたわけでないので少し複雑ではあるが…
「フータロー
ここわかんないんだけど」
「どれ」
「!」
三玖の質問を受けた風太郎がノートを覗き込む
問題を確認しながら解き方の説明をしているが、当の三玖は間近に来た風太郎に顔を赤くしてる
相変わらずの初々しい反応は見てて微笑ましい
って、それをジッと見てる視線
んん??
その視線の主は意外にも二乃
三玖もその視線に気付き何かと聞くが特に答えることなく視線を逸らした
これは…まさかなのか?
って
「おい一花
起きろ」
油断したらこれか
落ちかけてた一花の肩を揺らす
「いやーごめん…」
「寝て…ない」
「よお…」
そういうベタなのいいから
風太郎もすごい顔で睨んでるぞ
「少しは寝かせてあげなさい」
は?
二乃が言葉を挟んでくる
なんでも、さっき勉強のために仕事をセーブしてると言ってはいたものの本当は前より仕事を増やしているらしい
聞いてはいたけど、生活費は全部一花持ちってのはそりゃあ負担になるわな
風太郎と俺が家庭教師をやれるのもコイツのおかげなのはわかるが…
「あの」
どうしたもんかと思案してたら五月が声を上げる
「私たちも働きませんか?」
姉妹に向けてそんな提案をする
勉強の邪魔にならない程度で一花の負担を減らせればとのことだが
「いい考えですね!
なんたって私達にはバイトマスターの下川さんもついています」
なんだその称号は
そんな二つ名呼ばれたことも名乗ったこともないわ
「勉強と両立できるのか?
赤点回避に必死なお前たちが」
風太郎は当然不満気
うーん…
俺としては生活費一人に任せっきりなんて状況よろしくないと思うからバイト自体は賛成なんだが
風太郎の言う通り両立させられるかは心配だな
ところで何かやってみたいバイトとかあんの?
「私も下川君たちのように家庭教師をします!」
そうきたかー
真面目な子だからその点に関しては向いてそうだが…
「教えながら学ぶ!
これなら自分の学力も向上し一石二鳥です」
「お前に教えられる生徒がかわいそうだ」
風太郎はも少しオブラートに包もうな
「それならスーパーの店員はどうでしょう?
近所にあるのですぐ出勤できますよ」
「即クビだな…っが!」
だから言い過ぎだって
思ったよりいい音がしたので幼馴染は悶絶しだしたが自業自得なので無視
「私…
メイド喫茶やってみたい」
えぇ…
それは自己主張のベクトル間違えてないか?
「二乃はやっぱ女王様?」
「やっぱって何!」
それは最早バイトではない…
やたらハマり役だなーなんて思ったのは内緒だ
「二乃はお料理関係だよね」
「ふん
やるとしたらね」
「だって二乃は自分の店を出すのが夢だもん」
ほう
たしかに中野家の食事だったりでその腕前は見たことあるがたしかにアレは大したもんだと思う
本人は子供の頃の戯言とか否定的だけど
「私、美味しいケーキ屋さんを知ってますよ」
五月の言葉に二乃は少し考え込んだ後何故か悲鳴をあげてたがいったい何を想像したのやら…
「ユーキはどんなバイトしてるの?」
まあ、当然の質問ではあるな
家庭教師を本格的に手伝うってなって少し整理はしたが
「色々やってたからなぁ
新聞配達、喫茶店、ファミレス、居酒屋、パン屋、輸入雑貨業者の事務
日雇いなら引越し業者とかビルの清掃員に土木工事」
と、ここまで話して全員ドン引きしてるのに気づく
「節操なさすぎだろお前…」
風太郎からもこの評価
お前だって手広くバイトやってたじゃん?
しかも賄い目的の飲食店ばっか
「とにかく
向き不向きがあるからバイトの話は追い追いな
今は少しでも期末対策に時間割こう」
多少強引だが話を打ち切らせてもらう
そんな焦って新生活にバイトまで持ち込まなくてもいいだろ
新生活と勉強の習慣化が落ち着いてからまた考えればいい
一花には少し負担かもしれんが、あまり無理はしてほしくない……って何故脱ぐ!?
「下川君!見ちゃダメです!」
「見んな変態!」
俺のせいみたいな言い方!?
風太郎には悪いが引き受けたこといきなり後悔したくなる滑り出しだった…
「おやおや
向かいの糞パン屋の刺客が何の用かな?」
酷い言われようである
バイト先の向かい、風太郎がバイトしてるケーキ屋を訪ねてみれば店長さんは俺の顔を見るなりこれ
というか刺客ってなんすか…
「商店街の回覧板です」
「あーその辺に適当に置いておいて
用事が済んだならすぐに帰ってくれるかな」
一連のやり取りで分かる通り、俺はこの店長さんにめちゃ嫌われている
何故かうちのバイト先の店長と折り合いが悪い、というか一方的に目の敵にしているようで、バイトである俺までこんな感じ
ついでに、前髪切った後は目の隈がキャラ被ってるとかで余計嫌われた
キャラ作りで隈作ってるわけじゃないですから…
「先上がりまーす
って優希か
どうした?」
「回覧板
お前の方こそもう上りか?」
せっかくの休日なのに半日だけなんて珍しいなと思って聞いてみれば
なんでも午後から映画の撮影に店を貸し出すのだとか
風太郎は出演女優に一ミリも興味無しだからさっさと帰って中野たちの勉強を見にいくだとか
「失礼します
今日はよろしくお願いします」
おっと
そんな話し込んでたつもりはなかったが、もう映画の一団が来たようだ
スタッフの方に続いて出演する女優の人たちも店内に入ってくる
邪魔にならないように俺もさっさと退散しようかなーなんて出入り口に向かったところで
「よろしくお願いしまーすぅ…」
よーく知ってる女優の人と遭遇した
店内では何人ものスタッフがカメラなどの機器のチェックやら、女優の人のメイクなどで慌ただしく動いている
その中に知ってる顔、一花の姿があるのはなんとも不思議だ
さっき顔を合わせた時は一瞬顔真っ赤にして驚いてたが、見なかったことにでもしたのかすぐに撮影の準備に取り掛かっていった
ケーキ屋の店長が時折恨めしそうにこちらを見てくるがどうも気になったので邪魔にならないよう隅っこで見学させてもらってる
風太郎はさっさと帰っていったけど
準備も整い、いよいよ撮影が始まるようだ
本格的な映画撮影なんて当然初めて見るが雰囲気に圧倒されそうだ
「ここのケーキ屋さん
一度来てみたかったのです〜」
普段の一花からは想像もつかない話し方
さっき聞いた話だとホラー映画のはずだが…
「う〜ん
タマコには難しくてよくわからないのです〜」
「それよりケーキをたべるのです〜」
しかし、そういえばこいつの演技を見るのって初めてだったな
「どうだい?間近で見る彼女の演技は」
不意に横からかけられる声
いつぞやの社長さんが隣に立っていた
「どうも
娘さんはお元気?」
少し前に娘さんを預かって以来だな
あん時はおままごとの相手をすることになり、俺は娘さん、菊のボーイフレンド役をすることに
一花がこの人だけはやめた方がいいよとネガキャンかましてくれてたが…
社長さん曰く、一花は幅広い役を演じられるとのことで
まあ、確かに向いてるのかなんて考えてたら撮影が中断してたらしく
「なに?」
何故か一花に店の裏に連れてこられまたしても壁ドンである
「ユーキ君
恥ずかしいから見ないでくれるかな?」
顔真っ赤にして睨んできた
けども
「なんで?」
「なんでって…」
「真剣にやってるんなら堂々としてればいいじゃん」
「〜〜っ!」
より顔赤くして俯いてしまった
自分の演技がまだ拙いと思ってて見られたくないのかもしれないけど
「いや正直すごいと思ったよ
映画なんて最近見てないけどそんな恥ずかしがるような演技じゃなかったと思うけど」
「わ、わかったから!
もういいから!ストップ!」
怒らせた?
そりゃあ素人の俺が知った口で話すのはおかしいかもだが
一花はそっぽを向いて何やらぶつぶつ言ってる
そうこうしてるうちにスタッフの人が呼びにきて撮影に戻る一花
頑張れよ、と声をかけたら足早に撮影に戻って行った
俺ってもしかしてやっちゃった?
「う〜ん
おいしいのです〜」
撮影が再開される
完全部外者ではあるけど店長さんに無理言って少し見学させてもらってる
ものすごく嫌そうな顔されたけど…
で、撮影はというと
一花演じるタマコちゃんがケーキを食べるシーンを何度も撮り直してる
「う〜ん
おいしいのです〜」
一際いい笑顔
スタッフさんも最高と太鼓判
怒らせてしまったので演技に影響ないか心配してたが
どうやら杞憂のようだ
休憩に入ったようでキリもいいので今度こそ退散しよう
ってこれ一花の台本か?
私物ならともかくこれの扱い雑ってのはまずいだろ…
スタッフの人に一花がどこで休憩してるか聞いてみてそちらにいってみれば
「問五、間違えてる」
わざわざ持ち込んだのだろうノートでテスト勉強をしていたようだ
「あ…はは
見られちゃった」
当の一花は恥ずかし気に笑った
「隙間時間有効に使うのはいいけど
休む時はちゃんと休めば?」
「それユーキ君が言っちゃう?」
ぐうの音もでない反論
というか俺がよくバイト先で言われるやつだったわ
「てか台本はいいの?」
「うん
そっちは最後まで覚えたから」
そのやる気を勉強にも生かしてほしいもんである
なんでも序盤で呪い殺される役だとかで出番少ないとか
結局見にいく機会なかったけど、例のオーディションで出演した映画も途中で死ぬ役だったらしいしまだまだ売れっ子は遠いってことなのかね
「そういえば
さっきは悪かった」
「え?」
キョトン顔でこちらを見上げる一花
「いや、なんか怒らせたみたいだったし」
「ああ…別に怒ってないからいいよ」
苦笑いしながらそう返してくる一花にホッとする
「けど
あんまり面と向かってああいうこと言うのはやめてほしいかなー」
「……了解」
素人は余計な口きかないように気をつけますよっと
まだ道半ばだから軽はずみに褒めるななんて夢に対してはストイックなんだなこいつは
けどまぁ、着実に一歩ずつ夢を叶えるために進んでいくってのはやっぱ
「すごいな
一花は」
思わず口にしてしまいハッとする
つい今しがた面と向かってそういうの言うなって言われたばっかなのに…って寝てる?
聞かれてなかったか?
それならありがたいんだが
前のめりに倒れるのはよろしくないだろう
隣に座って体を起こしてやるとこちらの肩に頭を預けてくる
やれやれ
休憩時間が後どれくらいかは知らないが少しくらい休ませてやるか
「お疲れ
一花」
バイトからの帰り道
いつも通るコーヒーチェーン店
「中野先生?」
そこから出てくる中野先生と出会った
「先日はありがとうございました」
会うのは母さんの葬儀以来だ
あの時はまともに挨拶も出来なかったから申し訳なかったな
「いや、いい
……ところで」
「下川君?」
中野先生が口を開こうとしたところで追って店から出て来たのは
「五月?」
後ろには四葉の姿もある
「はい
やはり、父と知り合いだったのですね」
…………はい?
いや、確かに中野さんではあるけど
いや、ええ??
「娘が世話になっているようだね」
マジらしい…
この人の家族についてなんて聞く機会なかったが、いくらなんでもこんな偶然あり得るのか?
って、この人が父親ってことはもしかして勝手に家を出たこと咎められてたのか?
気にはなるが、こいつらがそんなことしでかした原因が俺や風太郎である以上なんの弁解もできん
「要件は既に五月君に伝えてある
下川君も励みたまえ」
そう言い残し中野先生は去って行った
要件?今すぐ戻ってこいとかそう言う話じゃないのか?
「行ったか」
「うわっ!」
「見てたのですか?」
風太郎と二乃まで
手に持った荷物から夕飯の買い物と荷物持ちか?
で、要件っていうのがやはり元の家に帰るようにということ
家族の問題である以上風太郎も俺も関係はないはずだが、五月の方はせめて次のテストまで自分たちで頑張りたいと伝えた
それを聞いた中野先生からは、俺たちの立ち入り禁止を解除し家庭教師を続ける、しかし、プロの家庭教師との三人体制で俺たちはサポートに回る
これでダメなら知り合いが理事を務める高校に転校
なんとも厳しいが、親の立場としてはやっぱ心配なんだろうな…
しかし五月も四葉も俺を含めた七人で成し遂げると啖呵きったと
「私たちがここまで成長できたのはパパのおかげ
当然感謝してるわ」
二乃はそう言うが
「…けど
あの人は正しさしか見てないんだわ」
思うところはあるようだ
俺としては正しい間違ってるってのは若干耳が痛い話だが…
「しかし転校なんて話まで出てくるとは
責任重大じゃねぇか」
「我が家の事情で振り回してしまって申し訳ありません」
風太郎が呟き五月が謝罪する
四葉たちも転校には当然抵抗があるようだ
「だが、どうでもいい」
しかし風太郎の声に迷いはない
「お前らの事情も、家の事情も
前の学校も、転校の条件も
どうでもいいね」
「俺たちはやりたいようにやる
お前たちを進級させる
この手で」
「全員揃って笑顔で卒業!
それだけしか眼中にねぇ!」
本当にこいつは強くなったよまったく
しゃあねぇ
あの人に恩はあるけど、こればっかりはコイツらの味方をさせてもらうとしよう
前途多難ではあるが、やれるだけはやらしてもらう
オリ主の特技は徹夜(最高 七徹)
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