この辺のラストらへんは原作もアニメもほんと好き
と言いながら冒頭からオリジナル要素
夕方のキッチン
包丁がまな板を叩く音と、鍋で食材を煮込む音が響く
「下川
醤油とって」
「はい」
相変わらず見事な手際で料理を仕上げていく二乃
「……五月
もうちょいで出来るから」
「て、手伝いますよ、私も」
「……一応聞くけど何を?」
「味見を!」
首根っこ引っ掴んでリビングに放り投げる
ものすごい悲しそうな声をあげてたが無視
テーブルの準備してる姉たちに慰めてもらって
「下川さん
お風呂掃除終わりました!」
「じゃあ皿とか出してくれる?」
「お任せください!」
この子は単純作業だとよく動いてくれて助かる
ちょうど米も炊けたし後はテーブルに並べるだけ
リビングのやつらにも声をかけ、準備は完了
さて
「「「「「いただきまーす」」」」」
「……何で俺ん家で?」
見慣れた我が家のリビングで我が物顔で食事を始める中野たちにいい加減ツッコミたい
というか、俺もなぜここまで流していた…
「あんたん家のキッチンのが使いやすいのよ」
もっともらしい理由
「大勢で食べた方が楽しいじゃないですか」
君ら十分大勢じゃん
「でもユーキは一人になっちゃう」
…………それを言ってくるのはずるい
いつぞやここで醜態を晒してから涙腺が緩んでる自覚はあるのでそういう不意打ちはやめてほしい
「それにお料理は一度にたくさん作ると美味しくなりますし」
「……」
「光熱費も節約できるし」
「……五月と一花はデザート抜き」
「なんでですか!?」
「なんで!?」
少し感動しかけたのを現実に戻してくれたからだよ
五月は本気で泣きそうになってるけど知らん
テストまでもう二週間を切った
先日オフを挟んで、更に全員家庭教師案も上手く機能しているので学力の上がり方は目に見えて良くなってきている
それでも目先を少し変えて効率を上げていこう、ということで勉強する場所を変えてみることに
そんなこんなで図書館を使ったりしてたんだが、誰が言い出したか俺の家に来ることに
まあ、風太郎はガキの頃から出入りしてるから今更だが中野たちが全員で押しかけてくるのは流石に違和感がすごい
五月があまりにも家の間取りを把握しすぎていて他の姉妹に怪訝な顔されたのを誤魔化すのには苦労したが
そんなわけで勉強会の会場に我が家がめでたく追加されたんだがまさか飯まで食っていくとは思わなかった
風太郎は今日はカレーの日なのでさっさと帰宅したが、これはまた上杉家全員で押しかけてきそう…
そんな一幕もありながら、試験に向けて勉強の日々は続く
「いよいよ来週からだね〜」
「ええ
よくここまで頑張れたと思います」
テーブルに突っ伏した四葉がつぶやけば五月はこれまでの日々を思い出してか、感慨深そうに言う
この週末が明ければもう期末試験だ
「全く
赤点なんて低い基準にここまで苦しめられるとは思わなかったぜ」
風太郎の方も憎まれ口をききながらもやはり思うものはあるらしく表情は柔らかい
この二ヶ月
中野たちにとってはそれまでの一生分以上に勉強したんじゃないんだろうか
今も夕飯までのわずかな時間で今日の勉強会の復習に勤しんでいる
あれだけ勉強から逃げていたこの子たちがこれだけやる気になってくれるってのはこちらも頑張った甲斐があるというもの
ただ…
「夕飯出来たわよ
準備手伝いなさい」
「……いやだから君らいくらなんでも馴染みすぎだろ」
当然のように俺の家である
いや、食材は向こう持ちだし準備は主に二乃がしてくれるから楽ではあるんだが
「固いこと言うなよ
あ、麦茶のパック切れかけてたから買い足し頼むな」
遠慮なしはいつも通りだが、今このタイミングでそれは喧嘩売ってるとしか思えんのだが?
「はいはい
漫才はご飯の後にしなさい」
風太郎睨んでたら後頭部の衝撃で強制的にクールダウン
お盆を持った二乃が呆れていた
最近は二乃がこんな感じで絶妙に毒気を抜いてくる
二学期期末の時は騒ぎの一因だった子に諌められるようになるとは世の中わからんものである
全員で夕飯
今日は風太郎もこっちで食ってくらしい
単語帳片手に食事して二乃と五月に怒られてるのは相変わらずだが
「一花、大丈夫?」
一花の方は最近いつも以上にぼんやりしてるというか
聞けば仕事の合間や帰ってからも遅くまで勉強してるらしいから疲れが溜まってるのかと思うが
「あーうん
大丈夫大丈夫
あ、二乃
これまた新しい味付け?」
誰かが気付いて心配すればこんな感じ
疲れもそうだがなんか考え込んでるという雰囲気
加えてオフの時はそうでもなかったが、最近また目を合わせてくれないので、なんとなくこっちから話しかけづらい
来週のテストを無事にクリアしてゆっくり休んで欲しいものである
「お前の方は大丈夫なのか?」
夕飯もその片付けも終わり
中野たちをアパートまで送っていく帰り道
少し離れて歩く俺の隣で風太郎が聞いてくる
「正直ギリかな
まあ、この後最後の追い込みでどうにかするさ」
また徹夜コースだな
風太郎も今回ばっかは徹夜に関して特に言及する気はないようだ
表情は不満気ではあるが
「そういうお前は?」
こいつも流石にいつも通りの準備とはいってないかと思うが
「そうだな
俺も今回は危ないだろうな」
勉強に関して弱気な発言なんていつぶりだ
とはいえ、こいつの危ないってのは満点がってことなんだろうが
「正直、お前がいなかったら自分の勉強には全く手が回らなかった」
助かったぜ、なんて笑う幼馴染は前を歩きながら談笑する中野たちへ視線をやる
「なあ、優希
あいつらちゃんと出来るよな?」
不安、というよりは確かめるようにそう漏らす
「……信じろよ
これまでとは全然違うだろ?」
これまで、二学期の中間や期末とは比べものにならないくらいの時間を過ごしてきたはずだ
その分壁にぶつかることも多かったがそれも乗り越えてきた
なら後は信じるしかないだろ
「……ったく
熱血バカの根拠のない自信はこれだから」
「卑屈な根暗よりはマシだろ?」
センチになるなんてやっぱ俺たちらしくない
こうやって罵倒みたいな会話で笑ってる方が遥かに楽だ
「上杉さーん!
下川さーん!
置いてっちゃいますよー!」
夜中の住宅街だから大声は止めような四葉
風太郎も苦笑いを浮かべながら中野たちの後を追う
それぞれ思うことはあるが
いよいよ、期末試験が始まる
試験は四日間で行われた
二ヶ月も前から準備してきたがいざ始まってしまえばあっという間だ
学年末のテストで作る先生に気合いが入ってたのか、それとも風太郎に満点取られすぎていい加減ヤケクソになったのか一部教科の難易度がそこそこ高かった気がするが
そして、今日で全教科結果が出た
同じクラスの一花以外の結果はまだわからないから、気にはなるが俺から連絡取る手段がないのでソワソワする
「まだ帰ってなかったんだ」
職員室に呼ばれてからの下校だからもう学校には部活で残ってるやつしかいない
と思ってたら生徒玄関には一花がいた
「あーうん
フータロー君からケーキ屋に集合だから連れてきてって」
スマホを片手に苦笑いする一花
なるほど
わざわざそれだけに待たせてたのはなんか悪いな
「いい加減スマホ買ったら?」
最近一花と風太郎は事あるごとにこの話
たしかに今までの経済的事情がーって言い訳使えんし、非公式とはいえ家庭教師の仕事を引き受けてる以上、連絡取るのに不便ってのがある
「あー…
そのうち買いに行く」
のらりくらりと毎回こんなかわし方をしてるがそろそろ限界かね
テストも終わって家庭教師もひと段落だろうし買いに行くか
それはそれとして
「テスト
とうとうやったな」
「ん
ありがとう」
少し前、授業が終わった後に結果は聞いたが改めて確認するように言う
一花の方もほっとしたような表情
さっき聞いた合計得点は255点
最初の中間の時の四教科赤点からは考えられないくらいの進歩だ
姉妹の中では点数がちょうど真ん中だった一花がこれなら全員結果は期待できそうだ
そうこうしてるうちにもうケーキ屋
「あ
一花と下川さんも来たよ
二乃はまだかな?」
他の姉妹たちと風太郎は当然もういる
四葉の言う通り二乃だけまだのようだが
で、そのまま四葉から他の姉妹の結果を聞く
この場にいる四葉、三玖、五月も見事赤点回避
中でも三玖は結構いい点数だったらしく風太郎も見違えたと絶賛
「フータロー…
私…」
「よかったー
一花も赤点無かったんだ
合計何点だったの?」
「えーっとね…255点」
ん?
三玖が風太郎に何かを言いかけたが一花の言葉、というより点数か?
それを聞いて言葉を詰まらせた
「ってことは!」
「一花が一番じゃないですか」
マジか
点数の上がり方はすごいと思ったがまさか一花がトップとは
「あ
そうなんだ」
一花の表情はこっちからは見えないが
「やった」
小さくそう呟くのは聞こえた
「本当に…
お仕事もあるのに凄いです
私はてっきり三玖が一番かと」
五月の言葉に一花がハッとしたように三玖に向き合う
「三玖…私…
そんなつもりじゃなくて…」
三玖の方はいつも通りの無表情だが、何故か一花の方は気まずそう
「一花おめでとう
私もまだまだだね」
一転して三玖はにこやかにそう一花に告げる
それを聞いても一花の表情は曇ったまま
どうしちまったんだ…
らしくないにも程がある
後ろでは風太郎の点数がどうだったのかといつものやりとりをしてるが
「マジで何かあった?」
一花の方へ声をかける
しかし
「何もないよ
今のところみんな赤点回避できてるし
言う事ないじゃん」
随分久しぶりに見る作り笑いでそう返された
話すつもりは無しと
少し前なら干渉しすぎる理由も無いからって気にもしなかったんだろうが
今後のことも考えると悩みは解決してやりたい
俺に話す気無いようなら風太郎とか妹たちに頼ってほしいもんだ
「試験突破おめでとう
今日はお祝いだ
上杉君と向かいの糞パン屋の彼の給料から引いておくから好きなだけ食べていいよ」
「もー店長ったら冗談ばっかり」
この人ならマジでやりかねないあたり恐ろしい
うちのバイト先に請求来たらどうしよう…
「ありがとうございます」
「でも、まだ一人来てないんです」
「二つ結びの子なら君たちより先にここに来てこれを置いてったけど」
そう言って店長さんは何やら紙を取り出す
試験結果の用紙か?
「それと後で伝えようと思ってたが彼女から君たちに伝言」
曰く
『おめでとう
あんたらは用済みよ』
なんとも二乃らしい
そんなことを伝えてくるってことはつまり
「やったー!」
「見事全員、赤点回避を成し遂げましたね!」
そういうことだろうな
中野たちははしゃいでいるが、こっちとしてはようやく一山越えたかと安堵の方が大きい
「あれ?
どこに行くんですか?」
店を出ようとした風太郎に四葉の当然の疑問
「祝賀会は全員強制参加だ
二乃を連れてくる」
風太郎にしては気が利いてるな
そりゃここで一人だけいないってのは素直に祝えないだろう
「もうすぐバイトの時間だ
これ使っていいよ」
「どうも」
店長さんから投げ渡されたものを持って風太郎は店を出る
そういえば少し前に無理して免許取ったって話してたな
「君たちはこちらのテーブルへどうぞ
あー、そこの君は突っ立ってるくらいなら手伝いくらいしてくれよ」
態度の落差…
まあ、お客さん扱いなんて慣れてないから手伝いますけども
そうして、席に案内されて何を食べるか中野たちが談笑してるうちに店の扉が開く音
「上杉さーん
二乃を連れてきてくれたんですね
こっちですよ」
風太郎は二乃を連れて店に戻ってきた
多分中野先生のとこ行ってだと思ったんだが、案の定風太郎は何やらくたびれた様子
しかし、その後ろの二乃が何やら様子がおかしい
またなんかやらかしたんじゃないだろうな…
「期末試験突破!お疲れ様!
かんぱ〜い!」
中野たちがそれぞれグラスを掲げる
こっちはコーヒーカップだから軽くあげるだけにしといたら、ノリ悪いとか言われた
まあ、それでも楽しそうだから何よりだが
ちなみに風太郎はキッチンのヘルプで席にはいない
少し前ならアウェー感すごかったんだが、最近我が家に入り浸ってくれてるので今更五人の中に一人放り込まれても違和感なし
しっかり毒されてる気がする…
「それにしても
私たちの注文する商品はやはりバラバラですね」
まったくな
ケーキどころか飲み物までそれぞれ違うとは
苦手な科目も全然違うからこの二ヶ月苦労させられたよホント
「はい四葉」
「えっ何これ?」
三玖が自分のケーキを一口四葉に差し出してる
なんでも現文の問題が四葉の予想ドンピシャだったとかで
それならということで、他の姉妹からも一口ずつもらうことになり四葉は嬉しそうに笑う
俺の方はケーキ注文してないから分けられなくてごめんね
「あ、でも
私もみんなに助けてもらったからお返ししないと」
「それを言ったら私たちも…」
「では少しずつシェアしましょう
きっとこの試験もそうやって突破できたのですから」
そうだな
こういうところは五人バラバラでもいいところなのかもしれない
「しかもいろんな味が楽しめてお得です!」
台無しだよ
一花も本当はそれが目当てではと苦笑い
「はい一花」
三玖にケーキを差し出された一花は何故か気まずげ
「まさか一花が一番とはね
意外…と言ったら失礼かもだけどどこにそんな力隠してたのよ」
全くもって同意見
女優業の台本はすぐ覚えてるらしいからそれがうまく活かされたのかね?
当の一花は運が良かっただけなんて謙遜してるが
「次は負けない」
「…うん」
何やら三玖から不穏な言葉が聞こえたような気がしたが
「皆に話しておきたいことがあるのですが」
それからしばらく雑談が続いていくなかで五月が話を切り出してくる
「私、学校の先生になりたいんです」
いつぞや聞いたこの子の目標
姉妹の前で正式に伝えようと決意したらしい
「も、もちろん過ぎた夢ではありますが…」
「いいと思う!
五月の授業わかりやすかったもん
ぴったりだよ!」
四葉のこういう裏表ない言葉ってのは素直に嬉しいもんだよな
当然他の姉妹も応援してくれるみたいで何よりだ
「いよいよ三年生になるって感じね」
「あ、進級と言えばお父さんに連絡しないと」
「あー大丈夫よ
さっき私が直接話してきたから」
やっぱそうだったか
何でも、改めて元のマンションに戻るようにという言葉を拒否して今の生活を続けたいと伝えたらしい
当然いい反応は貰えなかった
「今はまだ甘えさせてもらってるけど、いつかけじめをつけないといけない日が来るはずだわ」
二乃の方は腹は決まってるらしい
中野先生には苦労かけるけど、どうにか折り合いがつけばと思うよ
「でもマンションに行ったにしては帰ってくるの早かった」
「それが聞いてよ
笑っちゃったんだから」
いつか出るだろうなとは思ったが風太郎のバイクの話題に
全員それぞれ想像できないだの、イメージと違うだの予想通りの反応
一人小声でかっこいいとこぼしてた子もいたが…
「本当似合わなかったのよ
調子狂うわ
だから…あんなこと言っちゃったのよ」
最後は小声すぎて聞き取れなかったが、やっぱバイクで言い合いでもしたのかね?
さて
「食べ終わったならそろそろ片付けようか」
いくら好意とはいえ、長時間居座り続けるのも良くないだろう
「店長さんにお礼言ってこないと」
まとめた皿を持って、二乃が厨房の方へ向かう
全員で行く必要もないだろう
こっちはテーブルの片付けでもするとしよう
テーブルの片付けも終わり、厨房の方へ礼だけ言おうと奥に進めば
「しても…いいのかな…」
手洗いの前で何やらつぶやいてる一花がいた
「っ!ユーキ君」
しまった
結果的に立ち聞きする形になった
「聞いてた?」
「いや、全部は聞こえてない」
何やらするかしないかで悩んでるようだったが、あまり深く詮索するのも悪い気がする
「店長さんと風太郎に礼言いに来ただけだから
先に戻ってな」
さっさと目的済ませて退散しよう
「あの、ユーキ君」
厨房の手前で一花に呼び止められる
俯いてるので表情は見えない
「私…その…」
「あんたを好きって言ったのよ」
…………はい?
一花が何か言おうとしたところで聞こえてきた言葉
この声は二乃だよな
「は…?え?何?」
風太郎の困惑した声も聞こえてくる
「返事なんて求めてないわ
ほんとムカつく」
「対象外なら無理にでも意識させてやるわ」
「あんたみたいな男でも好きになる女子が地球上に一人くらいいるって言ったわよね」
「それが私よ
残念だったわね」
待て待て待て
いくらなんでも急展開すぎる
「……知ってた?」
同じようにフリーズしてる一花に小声で聞くが反応は予想通り
首を横に振ってる
と、とりあえずこれ以上立ち聞きはまずい
二人に気づかれる前にこの場を離れないと
「ーーっ!」
一花と一緒にそっとその場を離れようとしたところで背後から息を呑む気配
顔を真っ赤にした二乃がいた
あ、これ俺ヤられるパターンや
こればっかはしゃあないけどせめて一花は許してあげて
「……そういうわけよ」
しかし意外にも、何故か一花に向けてそう言い放った二乃はそのままその場を去る
一難さってまた一難なんて言うがまさかこんな方向の試練をぶっ込んでくるあたり神様は多分性格相当悪いに違いない…
結果的に色々勝手に事情を知ってしまった風太郎と二乃にこれからどう接すればいいんだ…
というわけでオリ主の心労の種がまた増えたよヤッタネ
テストも終わってくれたので風太郎共々ラブコメってもらいます
なお、五つ子の成績は序盤の中間同様若干上方かかっており、風太郎の成績も原作ほど落ち込んでません
オリ主もバイクの運転はできます(なお免許…)