5Sぷらす2 【本編完結】   作:しろすけ

29 / 58
29

「えー、我々も三年生になったということで」

 

HRに学級長となった風太郎が教壇に立っている

いるのだが

 

「すみませーん

 上杉学級長、声が小さくて何を言ってるのか聞き取れません

 もう少し大きくお願いします

 ね?」

 

武田の言うとおりめんどくさそうな感がものすごく伝わってくるので聞き取りづらい

しかし、この間のトイレの時といい何かと風太郎に突っかかっていくなあいつ

 

「一学期のメインと言っていいあのイベントについて話し合いたいと思います!」

 

そうかもうすぐだったな

 

「いよいよ始まります…

 全国実力模試が!」

「修学旅行ですね!

 皆さん全力で楽しみましょー」

「えー、そっちか…」

 

むしろ模試をイベントとして捉えてたことにビックリだよ

なんだかんだ、四葉とはお互いフォローしあっていてなかなかいいコンビに見えるので心配はいらなさそうだ

 

「二乃、放課後バイト?」

「ええ、今日が初日だわ」

 

ふと、隣から二乃と三玖の会話が聞こえてくる

聞き耳立ててたわけではないが内容は聞こえてしまった

風太郎の誕生日プレゼントのことを探っておいてほしいらしい

 

「私が?いいの?」

「うん

 私も今日からバイト」

 

そういえばそうだったな

 

「誕生日に喜んでもらえるように頑張るんだ」

 

何とも健気な

しかし、二乃の気持ちも真剣なのは伝わってくるので風太郎の苦労はこれから絶えなさそうだ

 

「下川」

 

ん?

唐突にこちらに話しかけてくる二乃

 

「あんたも今日バイトでしょ?

 この子のことちゃんと見てなさいよ」

 

恋敵とはいえ妹は妹か

身内に対して甘いのは相変わらずらしい

 

「初日から犠牲者出したら洒落にならないわ

 よく監視してなさい」

「二乃…」

 

そっちかよ…

三玖と揃ってジト目で二乃を見るが涼しい顔で流された

仲良くしろよ

って、いつも通りのやりとりだから変に険悪になったりはしてないのか

 

 

「よ、よろしくお願いします」

「ん」

 

放課後、予定通り三玖は今日からパン屋でのバイト

でも、挨拶は俺じゃなくて店長とかにしような

ひとまず店長さん他スタッフの人と顔合わせ

友達ってことも知られてたので俺が指導員になってしまった

まあ、予想はしてた

ので、とりあえずまずは店の掃除とか一通り雑用をまずは教える

面接の時に『パンを作りたい』と希望してた三玖は不満そうではあったが

 

「つ、疲れた…」

 

ぐったりと机に突っ伏す三玖

風太郎同様体力無いこの子にはなかなかキツイだろ

 

「慣れるまでの辛抱だよ」

「パン作りたいのに…」

 

初日からバイトの子に作らせてくれるってのはなかなか無いと思うぞ

しかしこの子がそこまでこだわるってのはもしかして

 

「風太郎のため?」

「〜〜!!」

 

顔を伏せてしまった

わずかばかり見える耳が真っ赤なので図星らしい

しかし、パンか

 

「いいんじゃない

 風太郎、パンには思い入れあるだろうし」

「え?」

 

不思議そうな表情で三玖は顔を上げる

 

「今度聞いてみなよ

 どんなパンが好きかとかさ」

「う、うん」

 

やる気になってくれるような話題を提供出来たようで何よりだ

我ながらこの子に肩入れしすぎかとも思うが、これくらいは許してほしいもんだ

協力しろと言ってきた当の二乃からもこいつ見てろと言われてるので問題はないはず

 

店長に三玖のパン作り相談してみるかね

 

 

「下川さん!

 上杉さんに何をプレゼントしたらいいでしょうか?」

「いやまだ決めてなかったんかい」

 

この間から何をあげればいいのかでこの子たちが頭悩ませてるのは見てたがまだ全員決まってないのか

あんな中途半端な情報で何を用意しろと、と数週間前の自分にツッコミたくはなったが

 

「クラスのみんなに聞いてみたんですけど、みんな何が欲しいか分からないらしく」

「そりゃ風太郎と話してるやつまだ居ないもんな」

 

武田が一方的に突っかかるか中野たちへの取次以外でクラスのやつと話してるの見たことないな

休み時間は自主勉してるか俺と話してるし

 

「あいつももっとクラスのやつと仲良くしてくれてたらなぁ」

 

なんだったら既に何人か上杉?誰だっけ?状態だったりする

 

「それはそれで下川さんも寂しいのでは?」

「ないから」

「あー!リボン引っ張らないでください!」

 

したり顔で言ってくる四葉のリボンを引っ掴む

風太郎がよくやってるけど絶妙に掴みやすいなコレ

 

「はいはい

 照れ隠しは分かったから、少しは手加減しなさい」

「二乃!」

 

乱入者、二乃が後頭部を小突いてきたのでリボンをはなす

一部クラスのやつらは何故か戦慄した顔で固まってるので、やはり俺は狂犬扱いされている…

 

「そういえば、二乃はバイトの時に風太郎になんか聞けなかったの?」

「ええ

 そういうのは話せなかったわ」

 

そういう割に何故か嬉しそうだな

まさかなにやら進展でもあった?

四葉が言うには朝からこんな感じだとか

三玖もそうだけどこの子も最近分かりやすくなってきたな…

しかし、風太郎の欲しがりそうなものか

探り入れるだけ入れてみるか

 

 

「中野さん

 6.9」

 

体育の授業

今日は各種体力測定

四葉は流石の走り

何だったら男子よりも速い

隣の三玖が死にそうな顔で走り切ったのを見てると本当に五つ子か疑わしく思えるが…

 

「くっ…不毛だ…

 50mのタイムなんて計っても何の役にも立たないというのに…」

 

隣で座り込んでる幼馴染も死にかけてる

 

「もう少し体力付けた方がいいんじゃない?」

「脳筋め…」

 

忌々しげに呟く風太郎の視線はスルー

ってか別に俺はなんでも力尽くで解決するほど単純じゃないぞ

 

「ツッコむ気力も無ぇ…」

「ん?そう言いつつどうした?」

 

フラフラと立ち上がりながら今日使った器材の方へ歩き出す風太郎

 

「体育委員が休みだから学級長が片づけなんだよ」

 

なるほど

四葉の方もいつの間にか近くまで来ている

 

「さあ、一緒に運びま…

 べ、別々の方が持ちやすいかもしれませんね」

「え?そうか」

 

あれ?

何やら四葉の様子がおかしいような気が

 

「それじゃあ俺が…このでかいやつ運ぶから…

 細かいのは…頼む…」

 

おお

珍しく風太郎が男らしい

気合い虚しくピクリとも動いていないのが悲しくなってくるが

結局、四つ葉と二人でカゴを抱えて倉庫へ歩いていく

思ったよりキツそうだな

手伝い行くか

 

「ほらやっぱり〜」

「絶対何かあるよね」

 

風太郎たちの方へ歩き出そうとしたところで、クラスの女子が話している会話が耳に入る

この手の会話なんてなるべく聞きたくなかったが聞こえてしまった

なんでも、四葉と風太郎が付き合ってるという噂が流れてるようだ

あー…うん

家庭教師なんて事情も知らない上に、あんな形で学級長に推薦なんてしたら勘繰られるよね

噂なんかわざわざ気にしたことなかったが、この内容は流石に今後に影響出てしまうのでは…

どうにか噂とか無かったことにしたいがどうしたもんか

 

「あー、下川

 この後職員室に来れるか」

 

考え事してたら横から先生に声をかけられる

そういやこの人進路関係も担当してたっけ?

昼休みにでも伺う旨を伝えて会話は終わったが、気づけば風太郎たちの片づけも終わったみたいだ

 

「あの、下川君

 今のは…」

 

先生とのやりとりを見てたのだろうか

五月が心配そうに話しかけてきた

 

「進路の関係

 ちょっと相談乗ってもらってんの」

「あ、そうなんですね」

 

ホッとしたように胸を撫で下ろす五月

まさかこいつにまで問題起こすやつとして見られてる?

だとしたら割とショックなんだが…

 

「でも下川君ならどこの大学でも大丈夫ですよ」

 

……我ながら単純な

五月の裏表無さそうな笑顔に毒気を抜かれる

相談の内容まではあんま言いたくないので、五月からこれ以上の追求が無いのはありがたい

 

しかし、進路のことはともかく

風太郎と四葉の噂はどうしたもんか

本人たちの耳に入って、本人たちから否定してくれれば一番楽なんだがな

 

 

「ここで集まって勉強するのも久しぶり」

「最近は皆バイトだものね」

 

放課後、中野姉妹のアパート

三玖の言う通り、随分久しぶりの勉強会

この場にいるのは風太郎と俺に

 

「一花は今日も仕事だけど

 試写会私も行きたかったなー」

 

一花を除く四人

意外と学校では話す機会少なかったが、女優業の方は順調のようで何よりだ

 

「…ところで

 五月はバイト…」

「ギクリ!」

 

ふと思い出して聞いてみれば五月は気まずげに目を逸らす

ってか口で言っちゃうかそれ

 

「あんたまだ見つけてなかったの?」

「もう少し考える時間をください…」

 

うーん…

一花が言ってたようにあと一歩が踏み出せないようだが

早く決断しないとマンションに強制退去って話ちゃんと覚えてんだろうな

 

「お前ら口より手を動かせ!」

 

風太郎の方は月末の全国模試に向けて気合十分な様子

まあ、卒業に直接関係ある試験でないにしてもあまり悪い結果ではこいつらの父親にいい印象は与えられないだろうからな

 

「一通り埋めたわ

 はい、答え合わせよろしく」

 

意外にも一番早く終わらせたのは二乃

そのまま風太郎にすすっと近寄り答案を渡している

耳元で何か囁いたのか風太郎の顔が微かに赤い

 

「私も終わってる」

 

三玖がわざわざ二乃と風太郎の間に答案を差し込んで言う

こっちも譲る気無しと

そのまま取っ組み合いの喧嘩まで始めてしまったのでとりあえず仲裁

じゃれあいの延長とはいえあまり大きくないアパートで暴れるのは止めような

 

「模擬試験、結構難しかったねー」

「そうですね

 しかし、それほど不安でもないというか…」

「だよね!」

「…うん

 学年末試験を乗り越えたんだもん」

「一度越えた壁だもの

 余裕だわ」

「こうなるといよいよ卒業も見えてきましたね!

 上杉さん!下川さん!」

 

中野たちは楽観的だが俺としては少し不安

確かに試験の難易度はそうそう変わらないとは思うが、試験を受けるやつの学力は別モンだろ

やればやれだけ力になるってことは、やらなけりゃ衰えないとしても進歩はないわけで

 

「嘘だろ…

 ほとんど赤点じゃねーか…」

 

まあ、こうなるだろ

まさかこんなにも早く不安が的中するとは思わなかったが

 

「ふざけんなお前ら…

 あれか?

 学年が上がると脳がリセットされる仕組みなのか…?」

「なるほど!どうりで!」

 

いやいやそんなことあってたまるか

 

「最近バイトバイトだったけど自習とかは?」

 

沈黙

風太郎は絶句

二乃たちは気まずそうに目を逸らしている

 

「はぁ…

 最近勉強会あんまりやってなかった俺たちの落ち度でもあるな」

「ぐっ…それもそうだが」

 

溜息混じりの俺の呟きに風太郎が苦々しそうな顔

 

「じゃあ、間違えた箇所を順番に確認していくぞ」

 

だが、少しは前向きに切り替えられるあたり風太郎も成長してるようだ

 

「よろしくお願いします!」

 

中野たちも同様に勉強には前向き

さっきな不安なんて思ったけど杞憂だったかな

月末の全国模試もそうだが、定期試験までもまだ余裕はある

焦らずじっくり行くとしようか

 

 

なんて気合いを入れ直して勉強会を再開したわけだが

 

「!

 はーい」

 

チャイムが鳴らされ、五月が席を立つ

来客か?珍しいな

 

「え!?」

「失礼するよ」

 

まさかこの人が

いや、別に父親が娘のとこに来るのなんておかしくはないんだろうが

 

「中野先生…」

「お父さん!?」

 

あまりにもこの場に居るのが違和感ある人物、中野先生が部屋に入ってきた

一瞬こちらに視線をやったがすぐ逸らされた

やっぱ避けられてる?

 

「どうしたのよ急に…

 というかこの家…」

「もうすぐ全国模試と聞いてね

 彼を紹介しに来たんだ

 入りたまえ」

 

そう促され入ってきたのは

 

「お邪魔します

 申し訳ない

 突然押しかける形になっちゃって」

 

クラスメイト、武田だった

しかしまたなんで武田が中野先生と?

当然中野たちも困惑してる

 

「今日からこの武田君が君たちの新しい家庭教師だ」

「はあ!?」

 

なるほどね

そういうことか、と一人で納得してるが当然中野たちは反発している

 

「上杉君

 先の試験での君の功績は大きい

 成績不良で手を焼いていた娘たちだが

 優秀な同級生に教わるということで一定の効果を生むと君は教えてくれた」

「それならフータローを代える必要なんてない」

「あ…」

 

中野先生が淡々と告げ三玖が反論するが二乃の方は何か心当たりがある様子

 

「それは彼が未だ優秀ならの話だ」

 

「残念だが上杉君はどの科目も点数を落とし

 順位も落としている」

 

「そして新たに学年一位の座に就いたのが彼だ」

 

「ならば家庭教師に相応しいのは彼だろう」

 

まあ、そういうことだろうな

風太郎は前回、学年末試験でずいぶん久しぶりに全教科満点を逃している

それでも学年上位ではあったが、学年一位の方がより相応しいってのはなんともこの人らしい

 

「ふっ

 ふっふっふ」

 

と何故か武田が笑い出す

なんだ?急に

 

「ヤッター!

 勝った!勝ったぞー!」

 

えぇ…

突然全身で喜びを表現しだす武田に中野たちは引いてる

中野先生が相変わらずの無表情なのはもはやホラーだが

 

「上杉君!

 長きにわたる僕らのライバル関係も今日で終止符が打たれた!

 ついに僕は君を越えた!

 この家庭教師も僕がやってあげよう!」

 

武田ってこんなやつだったっけ?

いやクラス同じってだけで交流あったわけじゃないけども

 

「始まりは二年前…学年トップを目指して…」

「いやお前誰だよ」

 

えぇ…

ある意味予想通りの幼馴染の反応に思わず頭を抱える

 

「えっ…ほら…

 ずっと二位で君に迫っていた武田祐輔…」

「あんなに突っかかってきたのはそういうわけか

 ずっとわからなかったんだ

 今まで満点しか取ってなかったから

 二位以下なんて優希以外気にしたことなかったわ」

「二位以下…!!!」

 

何故か武田の背後に雷が落ちたのが見えた気がした

ショックを受けてたようだが風太郎がいらんこと言ってくれたおかげで何故か睨まれた

 

「わかりました」

 

ここにきて五月が割り込んでくる

 

「学年で一番優秀な生徒が家庭教師に相応しいというのなら構いません

 恐らくそれだけが理由なのではないでしょうが

 しかし、それなら私にも考えがあります」

 

「私が三年生で一番の成績を取ります!」

 

はい!?

 

「ふむ

 いいだろう」

「待て待て待て」

 

流石にそこは待とうか!五月!

意気込みは買うが、いくらなんでもそれは突飛すぎる

 

「お父さんに何言われても関係ない

 フータローたちは私たちが雇ってるんだもん」

「そうよ!

 ずっとほったらかしにしてたくせに今になって…」

「いい加減気づいてくれ」

 

三玖と二乃が中野先生に詰め寄ろうとしたところを今度は武田が割り込む

 

「上杉君が家庭教師を辞めるということ

 それは他ならぬ上杉君のためだ」

 

「君たちのせいだ

 君たちが上杉君を凡人にした」

 

「は?急に現れて言いたいことはそれだけか?」

 

流石に聞き流せなくなってきたので敵意剥き出しで武田を睨む

勉強できてりゃ優秀かもしれんが、それを決めるのはお前じゃないんだよ

 

「よせ優希」

 

後頭部の衝撃とともに風太郎の声

散々言われっぱなしでいいのか?と風太郎の方を睨むが

 

「そいつの言う通りだろうな」

 

「お前が俺を過剰に評価してんのはわかった

 お前が言ってることも間違いではない」

 

「だが去年の夏までは…

 あるいはこの仕事を受けていなかったら…

 俺は凡人にもなれていなかっただろうよ」

 

風太郎の表情には迷いは無い

真っ直ぐ中野先生たちを見据えている

 

「教科書を最初から最後まで覚えただけで俺は知った気になってた」

 

「知らなかったんだ

 世の中にこんな馬鹿共がいるってことを」

 

「俺がこんなに馬鹿だったことも」

 

「こいつらが望む限り、俺たちは付き合いますよ

 解放なんてしてもらわなくても結構」

 

……余計なお世話だったか

こいつはもうブレることはなさそうだ

 

「そこまでする義理はないだろう」

 

中野先生から再度の言葉

 

「義理はありません…ですが

 この仕事は俺たちにしかできない自負がある!!」

 

風太郎はそう言い切る

ここまでの覚悟までは予想してなかったのか武田の方は困惑してるようだ

 

「こいつらの成績を二度と落とすことはしません

 俺の成績が落ちてしまった事に関してはご心配おかけしました」

 

「俺はなってみせます

 そいつに勝ち学年一位に…

 全国模試一位に!」

 

こいつの渾身の言ってやったぜ顔久しぶりに見たな

これはある意味のってる時の顔だわ

だが、中野たちにはそれが突飛な事に聞こえたようで

 

「う、上杉さん!?」

「なんだよ!」

「全国は無茶ですって!」

「フータロー

 もう少し現実的に…」

 

これ以上余計なこと言わせまいと四人がかりで抑えられてる

 

「あんたも!

 なんか言ってやりなさいよ!」

 

静観してたら二乃が噛み付いてきた

いや、でも

 

「別に風太郎なら出来るでしょ?」

 

昔ならいざ知らず、今のこいつならそれくらいやってのけると勝手に信じてる

二乃たちの方はそれでもやっぱ不安みたいだが

 

「では下川君

 君はどうなんだい?」

 

おっと

とうとうこっちにも矛先向いたか

 

「複数人体制はもともとこちらからも一度提案している

 上杉君をサポートするにしても、より優秀な彼の方が適任のはずだ」

 

それはごもっとも

そもそも、風太郎と違って俺はもともと正式に雇われてたわけじゃない

全くの第三者がここまで関わってくるのは親として不満なのは当然か

 

「そう!

 彼の隣に君は相応しくない!」

 

武田の方もさっきは風太郎の宣言に気圧されたが少し勢いを取り戻したようだ

その発言で何故か五月からの怒気が膨れ上がったが

 

「君は先の試験、危うく奨学金の支給基準を下回りかけたね?」

「え…」

 

中野先生の言葉に一転困惑した様子

何で第三者の中野先生が俺のその辺の事情まで知ってんのか突っ込みたくはなったが

 

「それでも問題なく基準はクリアしましたよ」

「それが次も出来るとでも?」

 

言外に退学がかかってる中でこんなことをしている余裕があるのかと言われてる気がする

 

「いい加減、君は

 自分のために生きてはどうなんだい」

 

一瞬、ほんの僅かではあるが、初めて中野先生の表情が揺らいだように見えた

いや、それを言うなら、母さんの葬儀の時この人が人知れず涙を流していたところを見てしまってはいたが

つまりこの人が俺に向けている感情ってのは…

 

しかしそれでも

 

「悪いですけど

 俺もこれは譲るつもりありませんから」

 

風太郎ほど俺じゃなきゃ、なんて自負はない

こっちが勝手に恩義を感じてるだけだ

そういうわけなので

 

「俺もこいつより結果が上なら何も問題ないって事ですよね?」

「下川君!?」

 

武田を指差して言ってやる

五月たちが早まるな!なんて言ってくるが今はスルー

 

「君は…君たちは何を言っているのか分かっているのかい?」

 

武田の方はそう言いつつも俺たちの本気は伝わっているのか、表情は固い

 

「わかったよ

 もしこの全国模試で君たちがそれぞれノルマをクリアできたのなら

 改めて君たちが娘たちに相応しいと認めよう」

 

結局、いつもの無表情に戻った中野先生がそう告げる

何やら妙な事になってしまったが、遅かれ早かれこの人とは折り合いつけないといけないと思ってたところだ

せいぜい足掻いてやるさ




この後、二乃たちの猛抗議で風太郎の目標は原作通り十位以内となってます
果たしてオリ主は武田君を越えられるのか!?

なお、オリ主の50m測定は先生が死んだ目で「お前合格でいいよ」と告げています(タイムは無し)

オリ主は朝食は米派

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。