5Sぷらす2 【本編完結】   作:しろすけ

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みんな大好きあのシーンが


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あんな啖呵を切ってしまった手前時間は無駄にできない

いつもの通学路を参考書片手に歩く

道ゆく人が俺の顔を見るたびに小さく悲鳴をあげてる気がする

我ながらヤバい顔をしてる自覚はあるが

 

「ユーキ君

 前見ないと危ないよ」

 

そんな声に参考書から顔を上げれば

 

「おっはー」

 

いつの間にかいつものコーヒーチェーン店の前

一花がカップを片手に立っている

 

「おはよ

 相変わらず、わざわざそれ買いにきてんの?」

「えっ、あ〜

 そうそうこれハマっちゃって

 君に会えたのは偶然も偶然!

 あははは!」

 

何故急にそんな早口?

 

「そだ

 こっちはユーキ君に差し入れだよ」

「会えたの偶然とか言ったそばから?」

 

まあ貰えるもんは貰うけど

一花からカップを受け取り口にして

 

「甘っっっっっま!!」

 

あまりの甘さに思わず悲鳴じみた声が出た

 

「えっ!?嘘、そんなに?」

 

あまりのリアクションに流石の一花も慌てている

我ながらよく噴き出さなかったと思う

 

「ご、ごめん

 あんまり甘くないの選んだつもりだったんだけど…」

「いや、大丈夫…」

「む、無理して飲まなくても」

 

流石に捨てるのは勿体無いし

甘いものは頭の回転助けるからと自分に言い聞かせ、ちびちびと飲みながら学校へ歩き出す

一花も気まずそうに後に続く

別に悪気があったわけではないのは分かるので、いつもの調子に戻ってもらいたいんだが

 

「そういや何で今日は眼鏡?」

 

差し入れどうこうで聞く機会逃してた話題

何故か一花は見慣れない眼鏡をしている

 

「え?あーこれね

 一応、変装なんだ」

 

変装?

 

「ほら、昨日私が出た映画の完成試写会があって…

 そこそこテレビとかで取り上げられたみたいだしさ…」

 

もしかしてケーキ屋で撮影してたあれか

 

「お…覚えてる…?

 あの時の映画なんだけど…!」

 

ん?てことは…

 

「ふはっ…

 それで変装って

 一端の女優様ってことか」

「もー!

 恥ずかしいから言わないで!」

 

思わず吹き出してしまった

一花の方は顔を手で覆ってるが、指の隙間から赤くなってるの見えてるから

そういうの気にしないとか言うと思ってたら意外と自意識は高かったらしい

 

「それにしても変装するなら他の姉妹に化ける方がよくない?」

「あ〜たしかに

 実はこういう時のために常備してるんだよね」

 

ごそごそとカバンを漁る一花

確かにチラッと見えたがヘッドホンやらリボンやら変装のキーアイテムっぽいのが見える

 

「四葉に、今なら二乃もすぐ出来るかな

 五月ちゃんのも…」

 

何故か星形のヘアピン、五月のトレードマークを手に言葉を詰まらす一花

五月との間で何かあったか?

 

「あはは

 そんなことしたらユーキ君が見分けつかないからやめよっか」

 

それも一瞬で、特に変わった様子もなく笑う一花

気のせいだったか?

 

「あれ?

 追いついたみたいだぞ」

 

ふと前を見れば一花の妹四人に風太郎の姿もある

四葉の声がめちゃくちゃ通るのでこの距離でも盛り上がってるのがわかる

 

「こうして見てると二乃ってマジなんだな」

 

さっきまでの俺と同じく参考書を手にしてる風太郎とやたら距離の近い二乃

それに割り込む三玖

またも始まる睨み合い

 

「三玖も最初の時と随分印象変わったというか」

 

初めて会った時には絶対零度の視線の前で正座させられたりしたしな

 

「五月は…また何か食べてるな」

 

相変わらずな様子に思わず頬が緩んでるのが自分でもわかる

離れたここからでも幸せそうな様子がわかるあたりあの子は本当にわかりやすい

 

「せっかくだしお前の変装のわけでも話してみる?」

 

最近からかわれることが多くなってるのでこの機会に少し仕返しでもしてやろうか

 

「待って」

 

手を掴まれ止められた

さすがに怒ったか?と振り返ってみれば

 

「ねぇ

 このまま二人でサボっちゃおうよ」

 

なんて事を言うのであった

 

「いきなり何?」

「あ…えっと…」

 

突然何を言い出すんだコイツは

怒らせた訳ではないみたいだが

 

「ほ、ほら!

 だいぶ根詰めてるみたいだし息抜きでも」

「そりゃあ、全国模試でそれなり取らないといけないからな」

 

気を使ってくれてるのかもしれんがなんかズレてる

その辺の事情は妹たちから聞いてるはずだが

一花はそのまま俯いてしまう

なんというか意気消沈してるように見えるが

 

さて、どうしたもんか

やたら力んでいるというか、空回り気味というか

気を使ってくれてるのはなんとなくわかるが

しゃあねぇか…

 

「午前中だけな」

「え?」

 

呆けた顔でこちらを見上げる一花

 

「だから午前中だけ

 昼からは授業出るぞ」

「えっと…いいの?」

 

お前から言い出したんでしょーが

 

「なんだよ

 だったら学校行くぞ?」

「あー!嘘嘘!

 行こう行こう!」

 

掴まれっぱなしだった手を引かれ学校の逆方向へ

なんのつもりかは知らんが、こんな突飛なこと言い出すなんてコイツもコイツで何やら悩みでもあんのかね?

 

 

「で

 どっか行きたいとこでもあんの?」

「えっと…どうしよっか?」

 

おい、言い出しっぺ

いつもの意趣返しの如くジト目で睨む

勢いで行動してテンパるのは相変わらずのようで

 

「とりあえずカフェでも行く?」

「え?あ、うん」

 

お互いさっき飲んだばっかだがとりあえずどっか座って考えようってことで

 

「それにしても意外だったなー」

「何が?」

「ユーキ君がこういうことに乗ってくれるの」

 

自分でもそう思うよまったく

カフェでコーヒーを啜りつつこれからどうするか考え中

元バイト先のカフェに来たが店長さんは理由も聞かずに目立ちにくい席に案内してくれた

こっちの都合で辞めてしまったのに嫌な顔一つ見せないでいてくれるのはありがたいが申し訳なくもある

閑話休題

 

「お前、最近忙しそうだから

 そっちのケアも家庭教師の一環ってことで」

 

我ながら苦しい理由づけ…

まあ、嘘ではないのだが

 

「ところで、何やりたいかは思い付いた?」

「……ゲ、ゲーセンとか」

 

学校サボってゲーセン…

悪ぶってるやつのテンプレとか考えてしまう俺の感性は古いのだろうか

 

 

「ん〜〜!

 遊んだねー」

「……楽しめたんなら何よりだよ」

 

スッキリとした表情の一花と、対照的にゲンナリしてる俺

わざわざ隣町のゲーセンまで来て気の向くままに遊んだ訳なんだが

 

「また挑戦したくなったらいつでも言ってね

 相手になってあげるから」

 

ふふん、と胸を張って言う一花

施設内のゲームを色々と、シューティングやらレースやらやったわけなんだが見事に全敗…

占いですら負けるってどういうこと?

 

「パソコンは一本指打法のくせに…」

「ユーキ君てばけっこう負けず嫌いだよね」

 

分かっとるわ

その上この手のゲーム類はとことん下手くそという救いの無さ

息抜きのはずが凹まされるとはこれいかに

 

「さて、お昼はどうしよっか?

 お姉さんが落ち込んだユーキ君に奢ってあげよう」

 

元気は取り戻してくれたがわかりやすく調子に乗ってるなコイツ

 

「ご馳走してくれんならありがたいけど

 学校戻りながらな」

 

そろそろ学校向かわないと午後の授業に間に合わん

余裕持って切り上げるつもりが白熱してしまった

 

「えぇー!

 せっかくだし昼からも遊ぼうよ」

 

ここまで調子乗るのはさすがに想定外だわ

いや、やめ時見誤った俺の責任でもあるのか

 

「はいはい

 また模試が終わったらな」

 

そう告げてやれば

 

「……何だよ?」

「いや、その…」

 

何故かキョトンとした顔の一花

そんなに変なこと言ったか?

 

「また、いいの?」

「ああ、そういうこと

 別にこれくらいなら構わないよ」

 

模試さえ終わってしまえば次の試験まで余裕はある訳なので

仕事の合間の息抜きくらい付き合うさ

さすがに学校サボってまでってのは勘弁だが

 

「そっかそっか

 そこまで言うならお姉さんがまた遊んであげよう」

 

はいはいありがとうございます

お前から遊びに行こうって言ってきたはずだが、そこに突っ込む気力すら湧かん

 

 

昼飯をさくっと終わらせて学校へ

一花はまだ遊びたかったとまだブツブツ言ってたが模試もあるということで黙らせた

そもそもその模試であの武田に勝たなければ、下手すれば金輪際コイツらに近づくこともできなくなる訳なので

 

「私抜きで話が進んでたのも少し気にしてたんだけど…」

「はいはい、悪かったよ」

「?

 ユーキ君?」

「トイレ」

 

いつもの通り教室目前で一花と別れる

ただでさえ遅刻の上、一花と一緒になんてのはまた要らぬ誤解を生むだけだろ

また顔でも洗ってくるか

 

 

「一花さん、朝のニュース見たよ!」

「女優ってマジー!?」

「びっくりした!」

「同じクラスにこんなスターがいるなんて!」

 

ん??

授業までそう時間も無いからそれほど間をおかずに教室まで来てみれば何やら騒がしい

先に教室に入った一花がクラスメイトに囲まれていた

 

「何の騒ぎ?」

「あ、ユーキ」

 

お陰であまり目立たずに教室に入れた

で、隣の席の三玖が言うには昨日の試写会があった映画が朝のニュースで取り上げられていたらしい

なので、朝からこの話題で持ちきりだったらしい

遅刻してきたのも仕事のためって思われてるみたいだ

 

「で?あんたはなんでこんな時間になったのよ?」

 

前の席から二乃も訪ねてくる

 

「……バイト」

「…あっそ

 そういうことにしといてあげるわ」

 

嘘は言ってない

家庭教師のバイトの一環だということにしておこう

……我ながら苦しい言い訳か

二乃はどこか察してるみたいだが三玖はわかってない様子

これ以上の追求はないみたいだから助かるが…

一花の方を見る

困惑しつつもいつもの通り無難に受け答えしてるようだ

 

「しかし…

 大したやつだよな、一花」

 

もうずいぶん前、花火大会で女優業について打ち明けられた時から真剣なのは分かってたが

あれから一歩一歩着実に夢に向かって進んでいたんだ

目の前のことにいっぱいいっぱいの俺からしたら眩しく見える

……って

 

「なんだよその顔」

 

二乃と三玖が何やら呆れ顔でこちらを見ている

 

「あんた…

 そういうのは面と向かって言ってあげなさいよ」

 

二乃の言葉に三玖もうんうんと同意

 

「前に一回言ったらやめろって言われたんだけど」

「照れ隠しよそれ

 どうせ内心舞い上がってるから」

 

あいつがそんな単純かねぇ

だいたい

 

「あんだけみんなから凄いって言われてるなら十分だろ」

 

今更俺一人の褒め言葉なんて大した価値ないと思うが

 

「そんなことないよ

 一花、きっと喜ぶ」

 

そうなのかねー

まあ、機会さえあればそりゃ言うけどさ

どうにもアイツの前だとつい憎まれ口が出てしまう

出会った頃ほど険悪ではなくなったはずだが、なんだってアイツ相手だとこうなのやら…

 

 

んで、放課後

午後から授業出てる俺からしたらあっという間だったんだが

一花の方は休み時間のたびに人集りを作っていた

ので、話しかけるタイミングが無かったわけで

いや、改まって唐突に褒める必要があるわけではないんだが

二乃たちとの会話からどうも意識してしまう

放課後はまた図書館で勉強会だが、こっちは職員室呼び出されたので先にそっち行かんといかん

長引いたら勉強会も無理なのであっさり終わってくれることを祈ったが

 

「失礼しました〜」

 

案の定というか、けっこうな時間がかかってしまった

時間的にはまだ下校時間まではあるし、多分みんな図書館にいると思うが

 

「あれっ

 どっち行った?」

「一花ちゃーん」

 

クラスの女子たちがキョロキョロしながら廊下を小走り

放課後も映画のこととかで話を聞こうとしたとこを逃げられたってとこかな?

 

「?

 一花?」

「えっ」

 

廊下の先、さっきの女子たちが走ってきた方の壁際に立っている影

 

「わ、分かるの?」

 

不思議そうにしてるそいつの姿は顔が半分隠れるほどの前髪にヘッドホン

パッと見なら確かに三玖にしか見えんが

 

「……勘で言っただけだったんだがな」

 

何でかコイツが一花に見えた

当たっていたようで何よりだったが

 

「まだみんな図書館いるだろうし、行こうぜ」

「うん」

 

妙に気恥ずかしくなったので足速に一花の横を通り抜ける

手早くウィッグとヘッドホンを外した一花はすぐに追いついてくる

何故か肩が当たりそうなほど近くを歩いてるんだが指摘すると意識してるみたいなので平静を装う

 

「〜♪」

 

顔は見ないようにしてるが鼻唄混じりの一花はご機嫌そう

気づけばこんなにコイツと過ごす時間が長い日なんて今までそうなかったな

姉妹や風太郎ともいっしょなんて時ならいくらでもあったが

 

『一花、きっと喜ぶ』

 

不意に昼間の三玖の言葉を思い出す

しかし今既にご機嫌そうだしこれ以上調子乗せるのもなんか癪だ

そもそも唐突に女優業のこと話すような空気でもない

……って

 

「うわっ!びっくりした

 急にどうしたの?」

「……模試に向けて気合い入れ直しただけ」

 

何でか一花のことばっか考えていた頭を強制的にリセット

自分で自分の頬を張ったわけだが思ったより大きい音が鳴った

 

「あんまり張り詰め過ぎると疲れちゃうよ?

 気楽に行こー」

 

人の気も知らないで能天気な事を…

ご機嫌そうな一花と対照的に、こっちは何故か落ち着かない

今は試験勉強に集中する事でそれから目を背けたかった

 

自分で自分の感情に気づくのにもう少し時間がかかるなんて事をこの時の俺は知る由もなかった




ありません!!(迫真)

というわけでヤンデレる一花はこの物語では発生しんかったんや
ヘタレる一花は独自解釈なので原作一花好きな方はごめんなさい

オリ主の好きな映画はゴリゴリのガンアクション
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