修学旅行二日目
今日は団体行動で清水寺
前日の失態をなんとか挽回したいところではあるが
「ごめん逃げられたわ…」
初っ端から盛大に躓いてしまった
意図せずとはいえ、一花を傷つけてしまった以上どんな形になろうと謝らないとと思ったんだが
いや、違うか
理由もハッキリ理解してないとこで謝るのもなんか違うだろう
下手すれば言い訳だが勘違いを訂正したいわけで
俺が妹たちにお願いするところまで読まれていたのか自由行動になった途端姿を消してしまったらしい
「みんなで探そうよ!」
「いや、待ってくれ」
四葉がいつもの通り率先して動こうとしてくれるのはありがたい
だが
「あとは俺が探す
いや、探させてくれ」
こんなことお願いできる立場でないのは重々承知だ
それでも、これ以上こいつらに迷惑をかけられないし、吐いた言葉の落とし前は自分でつけたい
「じゃあ、お言葉に甘えさせてもらうわ」
「え!?上杉さん!?」
「いいからお前らも行くぞ」
風太郎の方は俺の決意を察してくれたようでみんなを連れていってくれるようだ
渋々といった様子で離れていく中野たち
「何か行動起こすつもりなら今のうちにしておきな」
「っ!」
その間際に五月に耳打ち
昨日はあんなことがあったから特に行動を起こしたようには見えなかったが、こいつはこいつで何か考えがあるのだろう
目についてしまったら邪魔をしかねないのでできれば、俺の目が届かないところでと思ったわけで
「下川君…」
後ろから五月の不安気な声が聞こえてきたが今は応えない
一花のことが今は最優先なのは変わらないが五月が何をする気なのかも気になってしまう
我ながらどっちつかずの半端野郎で辟易するが反省は後だな
とにかく駆けずり回って探す
何を話すかは見つけてからだ
俺の中野一花の第一印象は関わるとめんどくさそうだった
「あれ?行っちゃうの?」
初対面の風太郎相手に突然始まる質問攻め
風太郎が無視してもお構いなしに楽し気な様子を見ての直感だったわけだが
「君
同じクラスだよね?
名前は確か…下田くん!」
「…………ドーモ下田デス」
思えばあれが初めての会話か
さっきの直感が正しかったとこの直後痛感する羽目になる
「よし!
じゃあ君はちょっとこっち来ようか」
「「は!?」」
強引に引っ張っていかれ五つ子と初対面
幼馴染のこれからの受難を嘆いていたがこの時から巻き込まれるのは確定していたのかもしれない
「せっかく同級生の女の子の部屋に来たのに
それでいいの?」
巻き込まれに巻き込まれて一花の部屋でそんな態度に腹が立って早速やらかしてしまったわけで
それからは気まずくなって疎遠になるもんかと思ったがそんなこともなく
「へ、へー…いきなり手握るなんて意外と大胆だねー」
休日の花火大会まで出会うとは思わなかった
そうして偶然にもあいつが抱えているものを知り
「これでオーディション落ちたら…みんなに合わす顔がないよ」
柄にもなく余計なお世話を焼いてしまった
効果があったのかはわからんが俺なりに言葉は選んで送り出したわけだが
「うん」
「よろしくね、共犯者さん」
思えばこの時からか
一花の表情から気に食わない作り笑いが減ったのは
それから
「今夜は二人だけのキャンプファイヤーだよ」
林間学校も
「これで障害は無くなったね」
突然マンションを飛び出した時も
「一人になんてしないよ」
突き放そうとした時でさえ
気づけばそばに居てくれるのが当たり前になっていて
穏やかすぎる日常がいつまでも続いてほしいと願っていた
だがそれは、変わるためにもがいていたアイツと向き合えてなかったんじゃないのか
風太郎も中野たちもそんな事ないって反論してくるんだろうが、やっぱ俺にはそばに居る資格なんてないのかもしれない
ただそれでも
「見つけた」
「ーっ!ユーキ君…」
今度は逃げずに向き合わないとな
目的の一花は案の定一人でいた
涙や弱みを見せたがらないやつだから人気のないところだろうとは思ったが予想以上に時間がかかってしまった
一花は一瞬驚いた顔になるもすぐに顔を逸らし駆け出そうとするが
「……放して」
「まだ何も言ってないだろうが」
腕を掴んで一花を留める
こっちを向く気もないようだ
「……一花
昨日のこと」
「聞きたくない!」
俺の言葉を遮るその声は泣き出しそうで
「ユーキ君は…優しいから」
俯いた一花が消え入りそうな声で言う
「きっと二乃たちに言われて探しに来てくれたんだよね」
自分に言い聞かせるように言うその言葉に何も返せない
「君はみんなに優しいのに」
「私だけ特別だなんて勘違いして…」
「舞いあがっちゃって…」
「バカみたい」
わかった気でいて一花のことを何もわかってなかったと痛感する
それでも
「一花
聞いてくれ」
言わないといけないことがある
こいつの望む答えじゃないかもしれないけどそれでもだ
「昨日のアレは、俺がお前をって意味じゃないんだ」
もしかしたら昨夜のうちに二乃あたりから聞いてるかもしれないがまずは勘違いだってことは言っておきたい
だが、それもこいつの気持ちを勝手に決めつけてしまってたわけで
一花は答えない
この言葉が届いているのかも分からないが
「……わからないんだ」
一言で言ってしまえばこれだけで
結局、内心を晒さないとコイツらに向き合えねえ
今更かもだが
「人を好きになるのも
人に好かれるのも」
俺にそんな資格なんてないから
そう頭をよぎったがそれは飲み込む
言えばきっとこいつに余計な気を遣わせる気がした
一花は相変わらずこっちを向いてくれそうにない
合わせる顔がないのは俺も同じだが
「それでも」
「お前らの…お前のことは大切だと思ってる」
「ーっ!でもそれは」
「だけど」
振り返り俺の言葉に割って入ろうとした一花の顔を正面から見る
泣き腫らした目に内心怯むが言葉は止めない
「ちゃんと答えは出す」
もしかしたらそれはコイツをもっと傷つけるものかもしれない
それでも答えを出さない限りこいつも俺も前には進めない
「だから、少しだけ待っててくれないか」
聞き様によってはこれは問題の先送りな気がしないでもないが
どうせ上手く誤魔化して機嫌を取るなんて真似俺にできるわけない
一花はその言葉に目を丸くし
「ユーキ君ってさ」
さて、半端野郎と罵倒されるか呆れられるか…
「馬鹿真面目だよね」
「…………はい?」
いや、それはどういう返しなんだ
思わぬ返しだったので思考がまとまらん
一花の方は表情はいつも通りに見えるし声色にさっきまでの危うさは感じられないが
「適当に誤魔化さずにそういうこと言ってくることとかさ」
「む」
「軽はずみに謝ってこないのも理由がわからないうちは意味がないとか考えてない?」
「ぐ」
しっかりと内心読まれていたか
「だいたい、私はハッキリと伝えたつもりはなかったはずだけどなー」
「はい?」
いや、だってお前それは
これまでの話の流れとか二乃たちの言葉とかで
いくら俺でもつまりそういうことって察したわけだったはずだが
あれ?俺盛大に勘違いしてた?
「ふふっ」
…………やられた
混乱してた心中はしっかり悟られてたようで一花は笑いを堪え切れてない様子
いつもの調子に戻ってくれるのはありがたいがこっちは血が顔に集まってくるのがわかるわけで
「お前な…」
「あはは
いーじゃん
勘違いとはいえ傷ついたは傷ついたんだし
これくらいはさ」
ぐうの音も出ねえよ…
我ながら複雑な顔をしてるのはわかるので今度は俺が目を逸らす
「あーあ
よりによって妹たちやクラスの人の前で泣かされちゃったなー」
「ぐ」
「せっかくの修学旅行なのに残念だなー」
「……埋め合わせはする」
さっき言われたばかりなのにもう平謝りしてこの場を収めたくなったがそこは堪えた
ここまで来たら謝るより態度と行動で示すべきかと勝手に判断
しばらくは一花に頭が上がらない気がして少し滅入る…
「埋め合わせか…
じゃあ、こっち向いて」
早速かよ
抵抗できる立場にないので素直に顔を向ける
「目、瞑って」
なんだ?
一発はたかれるものかと思ったがまさかもっとキツいのくる?
なんて身構えてたら
「っっっっ!?」
肩に手を置かれたと思ったら唇に一瞬だけ熱と柔らかい感触
思わず目を見開いたら目前には一花の顔で
「おまっ!何を!」
咄嗟に後ずさって口を抑える
一花の顔も耳まで真っ赤ってことはつまり
「そういうことだから」
イタズラが成功したように笑って一花は歩き去っていく
その方向は人だかりの方なので多分ほどなく学校の奴らと合流出来るだろう
俺はというと一瞬だったあの感覚がやけに鮮明で
顔から火が出るんじゃないかってくらい熱い
結局、突然の雨に頭が冷やされるまでその場でフリーズしてしまっていた
これなら殴られた方がまだマシだった…
少なくともこれで一花も修学旅行をまともに楽しんでくれると信じたい
俺はまともに顔を合わせられる気がしないが…
NG①
「ん?今何でm「言わせねえよ!」
短いですが二日目突破
五等分の花嫁記念日(微遅刻)になんてもん投稿してんでしょうね
強制的に立場を分からせられたオリ主の受難は続く(爆死しろ)
オリ主の初キスは幼い頃らいはに奪われてます
その時の勇也と風太郎の反応はお察しください