5Sぷらす2 【本編完結】   作:しろすけ

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ところがどっこい生きてるわー!!(挨拶)

原作通りとはいえ修学旅行の終わり方があれは少しアレかなと思い後日的な話プラスあの子のターン


一学期終盤〜夏休み
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「私は…どうすればいいんでしょうか」

 

昼下がりのリビングに五月の戸惑った声

修学旅行も終わり期末試験まではまだ少しあるが、五月の希望でこうしていっしょに課題を進めてたわけだが

やはりこの間の件、四葉のことが気になるのは同じだったようだ

 

四葉から聞かされた過去

姉妹が見た目から性格まで同じだった頃から今みたいにそれぞれ個性を獲得し始めた時の話

部外者の俺が聞いていてもあの子の葛藤や思いに対してくるものがあったので、身内の五月からしたらそれも一際だろう

 

あいつのあの献身は姉妹や風太郎への負い目だったわけか

俺としても四葉がこのままでいていいとは思わないが

 

「今の俺たちに出来ることはあんまなさそうかな」

「そんな…」

 

五月の気持ちもわかる

わかるんだが

 

「正直俺は四葉の気持ちもわかるんだよ」

 

四葉は純粋に家族を助けたいって思いが根底にある以上いっしょにするのは少し違うかもしれないが

五月の方も思い当たる節があるのか黙り込んでしまう

自己を顧みないってことでこの間の修学旅行でひと騒ぎ起こしてしまったからな

 

「結局、四葉自身が気づくしかないんだと思う」

 

冷たい言い方かもしれないが遅かれ早かれ四葉がぶつかる問題だ

答えを出すのは最後には自分自身になるんだろうが、それでも

 

「間違えそうになったら俺たちが正してやればいいだろ?」

 

四葉には家族や風太郎がいる

俺も出来ることは少なくても力にはなりたい

だから信じて見守ろう、と告げてみれば

 

「ーーふふっ」

 

なんだよ

そんなにおかしいこと言ったか?

まあ、臭いセリフだったかもしれないが

 

「いえ

 下川君も変わろうとしてきてるのですねって」

 

ん?

 

「今まででしたらそんな風にあなた自身がどうしたいかなんて言わなかったと思いますよ?」

 

……そうかもな

少し前なら姉妹のコイツら、もしくは風太郎に丸投げしてたかもしれん

なるべく思ったことは口にしようと意識してはいるが、改めて指摘されると自意識過剰みたいで少し恥ずかしい

 

「そ、そういえば

 修学旅行の時に風太郎に何か仕掛けようとしてたのは四葉のことを思い出してもらうためだったんだよな?」

 

少し強引だが話題を変えよう

今まで意識してなかったが、五月は結構ストレートに思ったことを伝えてくる

そんな風な接し方が慣れないというか、気恥ずかしいというか

 

「え?

 ええ、結局色々と考えることもあり不発に終わってしまったんですが」

 

良かった

少し不思議そうな顔だが話題を変えることに関しては乗ってくれたようだ

 

「そうか…

 てっきり五月まで風太郎のこと意識しだしたんじゃないかと思ったよ」

 

安心したのか我ながら珍しく軽口まで出た

まあ、いつもの通り「あり得ません」の一言で一蹴だろうけど

 

「〜〜〜〜!」

 

あれぇ!?

何でか頬を膨らませて睨まれてる

な、何だ?

何をミスった!?

 

「あ、あのー五月

 なんか怒ってる?」

「……いえ別に

 さ、早く課題を終わらせますよ」

 

いやいや怒ってるじゃん

今まで見たことないくらい無表情がかえって怒り具合を伝えてくるというか

これは…かなりマズイ気がするな

 

 

「ということがあったんだがどうすべきだと思う?」

「爆死しろコラ」

 

手厳しい

目の前で何故かげんなりした様子の前田がそう吐き捨ててコーラのグラスを傾ける

 

あの後いつもと違い最低限の会話だけで勉強会は終了した

その翌日からも五月の態度があからさまによそよそしい

今まで割と好意的に接してくれてた子にここまで冷たくされると流石にキツいので打開策を相談したかったわけで

放課後に前田を引っ捕まえてファミレスへ

ザックリと事情を説明したらあの返しである

 

「下川から相談とか珍しいと思ったら、惚気かよ」

「別に俺と五月はそういうのじゃ…」

「また変なトラブル起きるからそれは止めろコラ」

 

あ、ハイ

しかしそれこそ自意識過剰な気がして、なるべく考えないようにしてたことではあるんだが

 

「五月は友達だと思ってくれてるもんだと…」

「いや、あの子の方がむしろ一花さんよりわかりやすいと思うんだが」

 

そう…なんだよなぁ

指摘されて思い返せば五月の態度であったり視線であったりは風太郎に対する三玖たちのそれとよく似ていたわけで

つまりまた修学旅行の時と同じことをやらかしてしまったのか

 

「つーかそれだったら上杉に相談すりゃいいじゃねえか

 あいつも似たような状況みたいだし」

「恋愛クソ雑魚ナメクジのあいつに何を相談しろと?」

「こんな見事なブーメラン発言初めてだわ」

 

バッサリ切り捨てられた

 

「あと最近松井といい感じの前田なら何かしらいい案があるのかと」

「はーっ!?

 今俺のことはいいだろうがコラー!」

 

公共の場だから少し声量抑えような

 

「……とにかくだ

 五月さんが怒った理由はもうわかってんだろ?

 口に出して言えやコラ」

「…………五月は俺のこと、す…好きなのに冗談でも風太郎のことを好きなのかって言ったから」

 

改めて口に出すとマジで恥ずかしいぞ

 

「で、一花さんとのこともだけどお前はどうしたいんだよ?」

「……まだ答えは出てねえけどいずれは出す」

「そうかよ」

 

舌打ち混じりで吐き捨ててコーラを飲み干す前田

 

「何とも思ってないわけじゃないんならそれを伝えりゃいいじゃねえか」

 

そりゃそうなんだけど

どう切り出したらいいのか分からんくて困ってるわけで

 

「とにかく謝れ

 まずはそっからだろうが」

 

やっぱそれしかないよなぁ

しかしどう切り出すべきか…

どうにか五月と話す機会を作れればいいんだが

 

 

「あ…」

「…………おう」

 

あっさりと実現した

翌日の放課後

今日は全員で勉強会の予定のはずだったので、図書館に来たわけなんだが

 

「他の姉妹と風太郎は?」

「なぜかみんな急用が入ったらしく」

 

教室を揃って出たはずだったが

何やら作為的なものを感じるな

しかしこれは好都合か

この状況ならなんとか話ができるはず

 

「なあ」

「あの」

 

んん??

声をかけようとしたら被った

 

「あー…

 どうした?五月」

「い、いえ

 下川君の方こそどうぞ」

「いや、五月からでいい」

「いえ、下川君こそ」

 

これは埒があかなくなるやつでは?

 

「で、では

 私の方からいいでしょうか?」

 

どうしたもんかと思ったら五月の方からそんなふうに言ってくる

正直助かるのでどうぞと先を促す

はたして何を言われるのか

これで、顔も見たくないから今日は中止にしましょうとか言われたら泣く自信があるぞ

 

五月はコホンと咳払いで前置きをして

 

「たまにはお茶でもしませんか?」

 

何で顔を赤くして言ったのだった

 

 

「ここはですね

 以前来たことがあるんですがコーヒーがすごく美味しくて」

 

「他にもこのティラミスもオススメです

 甘いものが苦手と聞きましたけど、これなら美味しく食べられると思いますよ」

 

こんなマシンガントークの五月初めて見た

やたら食レポが上手いな

そういうブログとかレビュアーとかやったら流行りそうだ

 

「あ、あの…

 もしかして迷惑でした?」

 

面食らってしまって黙り込んでいたのが不機嫌そうに見えたのか

一転して不安げな表情になる五月

 

「いや、むしろこっちが怒らせてたのかと思ったからちょっとビックリしてる」

「そ、それについてはですね…」

 

またアタフタと

コロコロと表情が変わって忙しい子だな

 

「その…怒っていたのは確かにそうなんですが

 やっぱり下川君とお話ができないのは寂しくて…」

 

む…

致命的に嫌われたとかじゃなかったのはよかったがこう来たか

だが

 

「な、なんで笑うんですか!?」

 

おっと思わず

 

「いや

 同じこと考えてたんだなって」

「え?あ…そ、そうなんですね」

 

口に出してみたら思いの外腹に落ちる感覚

一花のこともそうだけどやっぱりこの子のことも大切に思ってるのは確かみたいで

当の五月は顔を赤くして俯いてしまったが

 

「……あの

 下川君は一花のことをどう思ってるんですか?」

 

唐突にそんなことを聞いてきた

 

「き、急にどうした?」

 

流石に平静を装えなくて声が裏返った

 

「一花、修学旅行の時からすごくご機嫌なんです」

 

お、おう…

 

「でも二乃たちが下川君とどうなったかを聞いた時にはお付き合いはしていないと」

 

まあ、事実そういう関係にはなってはいない

なってはいないが

 

「いや一花も仕事とかでいいことがあったかもだし」

「一花があんなにご機嫌になるのも落ち込むのも下川君とのことに決まってるんです」

 

断言!?

なんか修学旅行の時に二乃も同じことを言ってた気がする

 

五月の表情は真剣そのもので

少し前なら姉妹の誰かと俺や風太郎との恋愛を牽制していると捉えていたんだろうが

ことここに至ってそんな風にとぼけることもできん

かといって『俺のこと好きなの?』とか絶対に聞けんし

 

「……一応、回答は保留中」

 

我ながら煮え切らん返し方

五月の方もそれを聞いて怪訝な顔

 

「あいつのことは大事だと思ってるけど

 俺自身それがどういう感情なのか整理できてないんだよ」

 

口には出さないが目の前にいる五月の存在も大きい

もしどちらかを選ばないと行かない時が来たとして、俺は答えを出せるのか

 

「正直に言うと

 今みたいにみんなでワイワイやってるのが一番楽しいと思ってる」

 

「けどまあ

 五月も一花も、他の姉妹や風太郎だって変わろうとしてる以上そういうわけにもいかないんだろうな」

 

五月の質問の答えになってるかはわからないが今の心情を正直に話す

五つ子たちや風太郎が変わっていくことは俺にとっても喜ばしいことのはずだ

だが、一方で取り残されたような気がして焦りを感じてる

なんとも情けないな

 

五月はそれをどう捉えたのか、少しだけ間を置いた後

 

「私は下川君に出会えて変わろうと思えました」

 

ん?

 

「まだなりたい自分には程遠いですが、きっかけをくれた下川君には本当に感謝してるんです」

 

……大袈裟だろ

きっと五月も他のみんなも、俺が何かしなくたっていずれ変わっていけたはずだ

 

「ですから」

 

「今度は私が下川君のお手伝いをします」

 

真っ直ぐこちらを見据えて五月は言い放つ

 

「私たちには

 私にはあなたが必要です」

 

恥ずかしいことをサラッと言ってくれる…

思わず目を逸らすが耳の先まで熱いので指摘されたら誤魔化す自信はない

わざわざ言い直してるあたり、友達としてなんてこともないだろうし

 

「つか、なんでこんな話になったんだっけ?」

「何ででしたっけ?

 でもいいじゃないですか

 思った形とは違いましたが、伝えたいことは伝えられたので」

 

スッキリした顔でコーヒーを口に運ぶ五月

まあ、そっちがそれでいいならいいけどさ

 

「下川君」

 

ん?

 

「後悔のない選択をしてくださいね」

 

「それと

 その選択肢に私が入ってると嬉しいです」

 

かすかに頬を染めてそんなことを言う

それはずるいだろ…

一花といいこいつといい、物好きが過ぎないか?

少し前は似たような状況の風太郎を傍観してるだけだったはずなのにここまで急展開になるとは

 

高校生活も残り10ヶ月

色々な厄介事は避けられないかなこれは

 




というわけで五月ちゃんも正式に参戦!
四葉の心配はどうした?とかいうツッコミは無しでおなしゃす
更新頻度はもう少し頑張れたらなぁ…

オリ主は帰宅部で委員会にも入っていない割に相変わらず雑用を手伝っているのでたまに学級長と間違えられてます

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