一花→怖い
二乃→怖い
三玖→怖い
四葉→怖い
五月→怖い
恐怖の魔王かな?
タクシーなんて生まれて初めて乗ったな
車内の雰囲気はギッスギスだがな
言うまでもないが発生源は俺
乗り込んでから行き先、風太郎の住所を伝えて以来こちらは一言も口を開いてない
五月は何か言いたげに助手席からちらちらと視線を送って来るが時折睨み返すだけですぐに顔を引っ込める
一瞬だけ見える表情はバツが悪いようなので一応罪悪感くらいは感じてくれてるようで何よりだ
と、そろそろ風太郎ん家に着くな
「おら、起きろ
家着くぞ」
「ふがっ!?」
軽く揺すっただけで起きてくれて助かったよ
「優希?ここは?
……てか家庭教師は!?」
「一泡ふかされたな…よっぽどお勉強が嫌いな連中みたいだ」
わざとらしくそこそこな声量で話す
助手席からの気まずそうな気配はより強くなったが知ったことじゃない
「てかこれタクシーか!?
お前いつの間にこんな贅沢を!?」
「その辺話すのがめんどくさいんだが…」
「何でだよ!?1番重要なとこだろうが!」
いつも通りのやりとりに内心ホッとする
こんだけ騒げるなら体は問題ないみたいだ
俺と違ってこいつには何かあれば悲しむ家族がいるわけで
「運賃4800円になります」
「え!?金!?高っ!」
風太郎の家、『うえすぎ』の看板が掲げられた店舗兼住宅の前
当然俺たちにそんな金を払う余裕があるわけはないんだが…
「カードで」
「五月!」
そこでようやく五月の存在に気付く風太郎
宣言通りここまでのタクシー代を支払ってもらい風太郎と共に外に出る
「さて、風太郎も大したことなさそーだし
また月曜に」
「お、おう…バイトあったのに悪いな」
「まったくな
そう思ってんならもうちょい早めに解放してほしかったわ」
「ぐ…すまん…」
全力で突っ込むのはいいけどかなり高確率で巻き込まれるのは勘弁だなー
そんなやりとりの後歩き出そうとするが
「あの!下川くん!」
少し遅れてタクシーから降りた五月の声
「あの、二乃がしたこと…本当に」
いやいやこの期に及んで何言い出そうとしてんのこいつは
「謝る相手なら俺じゃないでしょ?」
「っ!?………」
どう考えても今回一番の被害者は隣にいる幼馴染で
ついでに言えば俺への謝罪はタクシーの中で何回か聞いてる
応えなかったけど
当の幼馴染は俺が明確に敵意を向けてる事に困惑してる
五月はわずかばかり気まずげな顔をしたのち
「上杉くん」
風太郎へ向き合い深々と頭を下げた
「すみませんでした
私の姉妹がしたことについて謝ります」
本来ならことを起こした二乃から直接謝罪があるのが筋だが
まあ、当事者でない俺がこれ以上立ち入るのもおかしな話だし口は挟まない
「お、おう…
いまいち何があったかまだ理解できてないが
明日からちゃんと家庭教師を受けてくれるならそれで」
「っ!?……それは…」
そっちに協力するかは別問題、それはそれこれはこれってやつですかね
俺もよく使うわ便利だよね
「あ、やっぱお兄ちゃんに優希くん」
「!!らいは!」
「ん
こんばんは、らいは」
家の前の様子を見にきたであろう女の子
頭のてっぺんのリボンで髪を束ねてあるのが特徴の風太郎の妹、らいはだ
「その人ってもしかして」
「な、なんでもない人だ
帰るぞ!」
「嘘!あの人が生徒さんでしょ」
突然の乱入に五月はキョトン顔である
「よかったらウチでご飯食べて来ませんか?」
「え!?」
まさかのお誘いに当惑した様子の五月
兄貴の方は社交性とテストの点数が反比例してるのに対してこの子の人懐っこさはバランスを補って余りあるほどだ
「それは…ほら!な!?
このお姉さんも忙しいから!」
「嫌…ですか…?」
目に涙を浮かべた視線を五月に向けるらいは
これを狙ってやってないんなら恐ろしい才能だ…
結局五月はその涙に勝てるわけもなくすこしだけお邪魔させていただきますと白旗宣言
「優希くんも!」
「悪いけどこれからバイト」
これ以上はマジで遅刻だし余裕ない中で俺の分まで食事を用意させるのは流石に気が引ける
「えー?またー」
「また今度な
バイト代入ったらまたいつものとこ行こう」
「むー…絶対だよー」
少しだけ不満気な顔になったが最後は頑張って!と手を振ってくるらいはに小さく手を振り返す
その後ろでは困惑する風太郎
(たのむ!らいはたちがいるとはいえ絶対に間がもたん)
(無理、そもそも俺だって同級生の女子と楽しく話すスキルはない)
アイコンタクト一瞬の後今度こそ上杉家の前から立ち去る
こいつの事情はこれで否応なしに五月に知られることになるだろうがこれで事態が好転すればいいんだが…
風太郎の性格上境遇に同情されてってのは嫌がるだろうからそれは望み薄か
稼げるバイトってのは魅力的だが勉強に関しては先日五月の課題を見た時に適性がないと悟ってるので手助けはできん
また愚痴を聞くくらいはしてやるかね…
「はぁ…ギリギリセーフ」
校門をくぐったところで後ろから聞き慣れた声
風太郎が汗だくで駆け込んで来ていた
遅刻寸前だと言うのに手には参考書があるあたり苦労してんなやっぱり
あれから、中野の五つ子姉妹とのファーストコンタクトから3日が経っていた
風太郎の方はその翌日からめげずに家庭教師しに行ったみたいだがその時の結果といい自分の勉強との両立は思ったよりしんどいらしい
昨日の昼と放課後に愚痴を聞いてやったが言わなくていいことまで話してくれたしな…
「おはよ
両立は思ったよりキツそうだな」
「お、おう優希、おはよう
お前までこんな時間なんて珍しいな」
「朝のバイトが押してね」
おかげで朝食を確保する時間がなかったから昼に食うはずのパンを食わざるを得なかった
今日は昼抜きだな…
そんな俺たちの後ろから今度はエンジン音
見れば黒塗りの見るからに高級そうな車が学校のロータリーに停まるところだった
リムジンとか初めて見たわセレブかよ
………乗ってるやつ、というかやつらが誰かだいたい想像ついた
「かっけー
100万円はするだろうな」
「文字どおり桁が違うからそれ…」
初めて見るらしい外国の車に珍しく興味津々な風太郎
あんま不用意に外車に近づくなよ
こないだバイト先で外車に傷付けたの付けてないだので怖いお兄さん方とトラブルがあったばっかだから昼間っからおかわりなんて勘弁してくれ
というか降りてくるやつらが想像どおりならめんどくさくなりそうだからさっさと退散したいんだが
「あ、フータローにユーキ」
「おはようございます」
「な、なんですか
ジロジロと不躾な」
車のドアが開きおりてくるのは同じ顔五つ
俺からしたら3日振りとなる中野家の五つ子たち
想像どおりの展開にまたため息が溢れた
「うげ…アンタまでいんのか」
「や、やあ
ユーキくんもおはよー」
敵意を隠そうともしない二乃に平静を装おうとしてるが俺がいることに困惑してるように見える一花
わかっちゃいたけど特にこの2人からのヘイトはすごいな
関係修繕なんてするつもりもないが
「お前ら一昨日はよくも逃げて…!
ああっ!また!」
思い出したかのように声をあげる風太郎に一目散に逃げ出す五人
聞いてはいたけどどんだけ勉強嫌なんだ
風太郎と足して2で割ればちょうど良くなるんじゃ…
「よく見ろ!俺は手ぶらだ害はない!!」
参考書を放り出し安全安心をアピールする風太郎
「騙されねーぞ」
「参考書とか隠してない?」
「油断させて勉強させてくるかも」
俺ほどでなさそうだけど風太郎もすっかり警戒されてる
どんだけ勉強嫌なんだ(2回目)
「それで…その、五月…うちのことだが…」
「全部妹さんのためですよね
口外はしません」
五月の方はあの後のお呼ばれでだいたい風太郎の事情は察したようだ
しかし
「私たちの力不足は認めましょう」
五月は風太郎をキッと見据え
「ですが、自分の問題は自分で解決します」
力強く言い放った
「勉強は一人でもできる」
「そうそう
要するに余計なお世話ってこと」
三玖と二乃もそれに続く
「………五人で100点なのにどこからそんな自信が」
おっとつい
口を挟むつもりがなかったんだが思わず…
失言した俺とテストの点数をばらした風太郎へのジトっとした視線が…
風太郎…俺相手になんでも話してくれるのはいいけど生徒の個人情報は守ろうな
「い、いや!
テストは終わった後の復習が重要なんだ!
出来なかったところは次出来るようになればいい!」
おお
風太郎が先生っぽいことを
結果的にいいこと言うことのアシストになったわけだからさっきの失言については目を瞑ってほしい
「当然復習はしたよな!」
しかしその言葉に固まる五人
そうだよなぁ食事の暇すら惜しんで勉強してる風太郎からしたら当然だよな
ただしこいつらがそんな勤勉なやつらなら卒業なんてイージーな条件での高額バイトなんてそもそも発生しないわけで
「……問一
厳島の戦いで毛利元就が破った武将の名前を答えよ」
まさか顔で例のテストの問題を出す風太郎
しかし
「〜〜〜〜!」
無言で顔を赤くしてプルプル震える五月
他の姉妹も風太郎が視線をやるとそっぽを向く
すまん…やっぱテストの件は禁句だったわ
「この三日間でわかったことがある
この五人は極度の勉強嫌いだ
そして、俺のことも嫌いっぽい」
「そうか
ただ、今距離を取られてるのは多分俺のせいじゃないか?」
五人仲良さげに話しながら歩いている様子を後ろから眺めながら歩く目つきの悪い男子が二人
「一人ずつ信頼関係を築くところから始めるしかないのか…
俺の最も苦手な分野だ」
何かのノートを覗きながら苦々しげに呟く風太郎
「人付き合いの仕方も勉強の一環だろ?」
「ぐっ…こういうのは優希の方が得意だろ?
バイトで学んだ女性の機嫌を良くする話術を今こそ」
「人を悪徳ホストみたいに言うのやめてくんない?」
だいたい何度も言ったはずだが俺だって同級生の女子と楽しくトークするスキルはない
あと、そんな怪しげなバイトをした覚えもない
「……なあ、優希これ見てくれ」
ふと、何かに気づいた風太郎が手に持つノートを見せてくる
「さっきから何見てんの?」
「これは一昨日のテストのあいつらの回答なんだが…」
いやだからそういうのを第三者に見せるなと…
「見た以上はお前も協力してくれるだろうと」
「わかっちゃいたけどお前サイテーだな」
「今はそんなことどうでもいいだろ?
それよりここ、三玖の回答だ」
どうでもよくねぇ
ナチュラルに俺まで巻き込もうとすんなや
しかし見せられてしまった以上今更引き返せないわけで…
「……さっきの問題正解してるな」
「そうなんだ
なんでさっき答えなかったんだ」
「よ、よう三玖」
昼休みの食堂
既に昼食であろうサンドイッチと飲み物をお盆に乗せた三玖へ風太郎が声をかける
どうでもいいけどナチュラルに名前呼び捨てってやっぱすげーよ風太郎は
あのテストの回答について単純な疑問半分、取っ掛かりのきっかけに期待半分で三玖との会話を試みることにしたらしい
「350円のサンドイッチに…
なんだその飲み物…」
「抹茶ソーダ」
えぇ…
この不思議飲み物シリーズに挑戦するやつがいるのか
「逆に味が気になる!」
「いじわるするフータローとユーキには飲ませてあげない」
いやいらんし
風太郎も三玖が何を考えてるかわからないのか困惑してるようだ
「一つ聞いていいか?
今朝の問題の件なんだが」
風太郎のその問いかけに三玖が口を開きかけたその時
「上杉さん!下川さん!
お昼一緒に食べませんか!」
「うおっ!」
突然乱入してきた四葉の元気な声に遮られた
三日前のアレがあってよく俺にも声かけてきたなこいつは
後ろには一花もいるがそっちは俺の姿を見た途端一瞬表情を曇らせたがすぐに余裕ありげな笑顔にもどる
大した演技派だ
「なんだ四葉か
お前はいつも突然なんだよ」
「あはは
朝は逃げちゃってすみません〜」
そのまま四葉は何故か笑いながら英語の課題、しかも全部間違ってたものを見せてくる
どうでもいいけど風太郎が三玖への質問の続きを聞こうとするたびに割り込んでんのはわざとなのか?
とも思ったがあの能天気そうな笑顔は何も考えてなさそーだ
「ごめんねー、邪魔しちゃって」
見かねた一花が四葉を風太郎の前から遠ざける
「一花も見てもらおうよ」
「うーん、パスかな
私たちほら、バカだし
ね?」
こいつは…
できないなりに努力しようとしてる五月が近くにいてなんでこんな発想になるのやら
「それにさ、高校生活勉強だけってどうなの?
もっと青春をエンジョイしようよ
恋とか!」
あっ……
「恋?
アレは学業から最もかけ離れた愚かな行為だ
したいやつはすればいい
…だがそいつの人生のピークは学生時代となるだろう」
風太郎…それはモテないやつの僻み全開に聞こえるから外で言うのはやめようなって言ったよな…
「この拗らせ方手遅れだわ…!」
お?初めて気があったな一花
「あはは…
恋愛したくても相手がいないんですけどね」
頭をかきながら苦笑いの四葉
「三玖はどう?好きな男子とかできた?」
「えっ」
ん?突然話を振られた三玖は今までの無表情からわずかばかり動揺したような顔を見せたが
「い、いないよ!」
目を逸らして去ってしまった
「?急にどうしたんだ…」
「あの表情、姉妹の私には分かります
三玖は恋をしています」
四葉のその言葉に風太郎の顔に焦りが浮かんだように見える
どーせ勉強の妨げになる恋愛はまずいとかまたズレたこと考えてんだろーな…
「下川さんはどうなんですか?」
あん?
「聞きましたよ!なんでも歳上の彼女さんがおられるとか」
「あ!それ私も聞いたよ
隣街で大学生のお姉さんだとか」
………今度の噂はそっち方面かー
というか一花さん、その手の話題への好奇心は俺への敵対心を上回るの?
「彼女さん以外には目も呉れない!
下川さんは一途な恋愛上級者だったわけですね!」
四葉さん大声で宣伝されると噂が信憑性とともに拡散してしまうからマジでやめて
目の前できゃーとはしゃぐ四葉と一花に眩暈がしてくる
「……優希、一応聞くが」
「……いつも通り事実無根だよ」
同情混じりの風太郎の声にため息と共に返してやる
「え!違うんですか!?」
素っ頓狂な四葉の声
「一花の部屋であんな事をしたのはてっきり慣れてるからかと」
「四葉ーーーっ!?」
えー……
この子何言ってくれてるのー……
一花が慌てて四葉の口を塞ぐがもう遅い
元気な通る声でよりにもよって絶妙に何かしでかした風に発せられた情報は昼休みの学食で瞬く間に拡散する
やれ、あの下川が美人転校生の部屋に押し入ったとか
やれ、二股どころか五つ子全員に手を出した六股だとか
やれ、お嬢様学校出身の彼女らには財産目的で近づいたとか
既に噂は尾びれ背びれどころか足まで生やしてタップダンスを踊り狂っている
年頃の学生って噂話好きだよねー
ようやく自分の発言のまずさに気づいた四葉はあわあわと慌て、一花は顔を真っ赤にして俯いてしまう
おい、一花
その反応だとマジで何かやらかしたみたいになるから勘弁して
「ち、違いますよね!?変なことは何も起こってませんよね!?」
四葉、今更それは無意味だしなんなら何かあったの誤魔化そうとしてるように聞こえるから…
「そ、そうだぜ!
起こすために布団を剥がすなんて俺だってやられたことあるし!」
……………トドメはまさかの味方からの誤射である
一瞬静まり返ったのち再び広がるざわめき
その中に、やっぱりあの二人…だの、両方いけるクチかよ…と言ったものが追加された
「…………風太郎」
「…………ハイ」
「腹だけで勘弁しといてやる」
「お手柔らかに頼む…」
本気で殴ったらDI◯にやられた花◯院みたいになるから流石に手加減はしてくれるよ優しいね
オリ主の学校での噂の一部(恋愛がらみ)
・歳上の彼女がいるらしい
・彼女に貢ぐためにバイトをしている
・大学生のポニーテールが似合う長身の女性
(バイト先の先輩というオチ、本編登場予定なし)
・お嬢様の美少女転校生たちに財産目的で近づき既に手篭めにしている New!
・いつも一緒にいる学年一位の彼ともやっぱり出来ていた New!
三玖ファンの方々申し訳ありませんこの話でフラグを立てなければ三玖ルートへの道筋はありません
ひとまず書きたいように書く予定ですが誰ルートかは一応決めています
作者は三玖で原作にハマった口なのでいずれそちらの分岐も書きます
追加:書きました!!https://syosetu.org/novel/263109/