オリ主は貴様を許さない
オリ主は貴様を逃さない
言ってみたかっただけです
元ネタではキッチリ「潰されて」ますので是非見てね!
→鉄血42話
中野たちのマンション
最近はあまり足を運ぶことも少なくなってたので来るのはけっこう久しぶり
二乃に借りたカードキーで部屋まで来た
チャイムを鳴らす
分かってはいたが反応はない
鍵を開け部屋内へ
リビングには居ない
となると
「五月
下川だけど」
二階の個室前でノックと共に声をかける
やはり反応はない
けど…
「入るな」
そっとドアを開けて室内へ
五月はいた
机に向かい幽鬼のようにペンを走らせ続けている
背中しか見えないというのにその姿があまりにも痛々しい
「五月…」
「下川君…
こんなこと意味ないというのに…
私は何をしているのでしょう…」
か細い声に言葉が詰まる
何を言われたのかなんて知らないが
「あんなのが言ってたことなんて気にするな」
「いいえ
そうじゃないんです」
震える声で五月は続ける
「お母さんも言っていたんです」
『五月
あなたは私のようには絶対にならないでください』
「それなのに諦められない
未だにお母さんを目指してしまっている
そう願う私は間違っているのでしょうか?」
大粒の涙
この子の苦しみはこの子の原点、母親のようになりたいと目指していたのに、その母親が間違っていたという言葉
多分、表面化してなかっただけで、成果に繋がらなかったのもそれが原因か
それでも
「そんなの俺にはわからない」
「ーーっ!」
息を呑む五月
この子を本当の意味で救ってやれるのは多分母親だけ
その人が本当に遺したかった思いなんて絶対にわからない
だがそれでも
「自分みたいになるななんて言ったんなら、少なくともお前のお母さんは自分で自分が間違ってたって思ってたんだろ」
「けど俺は
その人が遺したお前たちを見てきた」
「あ…」
何度も何度も俺はこいつらに、この子に救われてきた
真っ直ぐに歩く姿を見てきた
それはきっと
「お前は絶対に間違えてなんかない
お前がお前自身を間違いだったなんて否定したとしても
俺はお前が間違ってないって信じる」
いつかこの子に言われた言葉を返す
五月はまだ顔を上げない
「本当にそうなんでしょうか」
「私はお母さんになりたいだけ
以前、ある人にそう言われたことがあります」
呪いのように
ただ影を追っているだけ
確かにそれだったら歪なだけだろう
だけど
「憧れの母親なんだろ
なら絶対に忘れる必要なんてない」
「忘れたくても忘れられないんなら
それは忘れちゃいけないことだ」
「お前が見てきたお母さんの姿は本当に間違いだったと思うか?」
五月が顔を上げる
まだ涙を溜めた目のままで
「お母さんは私の理想の姿です
強くて
凛々しくて
優しくて…」
「私は…」
「お母さんのような先生になりたい!
私は私の意志で母を目指します!」
きっと新しい一歩を踏み出した
なら俺は
「勉強」
「あいつほどじゃないがそこそこ教えられると思うけど」
気まぐれでも、場を取り繕うためでもなく
今度は俺の意思でそう告げる
その言葉に五月は涙を拭い
「はい!お願いしますね」
そう言って笑ってくれた
思えばはじまりはこの言葉から
きっと何度迷っても、間違えたとしても
ここからまた始めるんだ
「その前に
やらなければいけないことがあります」
「私
あの人に会いにいきます」
学園祭は最終日の午後に差し掛かるがまだまだ喧騒は続いてる
そこから少し離れた屋外の休憩スペースに座る禿頭髭面の男
「こんにちは無堂先生
五月です」
「やぁ」
そこに声をかける一人の女生徒
男、無堂は立ち上がり振り返る
「まさか五月ちゃんの方から来てくれるとは
僕の言葉に耳を傾けてくれるようになった…
ということでいいかな」
話し方は平坦で表情も変わった様子はない
たが、離れて見ているというのに俺の方は感情が荒立ってしょうがない
「おい」
「……分かってる」
隣に立つ風太郎の静止に我に帰る
ここにくる前に五月に言われた言葉
『下川君
今回は手を出さないでほしいんです
この問題は私たち家族で片をつけます』
あの子の覚悟に水を刺すようなことだけは死んでもやっちゃいけない
「もう一度聞かせてください
学校の先生になりたいという夢が間違っているのだとしたら
私はどうしたらいいのですか?」
「五月ちゃんが五月ちゃんらしくあってほしい
その手助けがしたいんだ
君は今もお母さんの幻影に取り憑かれている」
「学校の先生でなければなんでもいいんだよ
お母さんと同じ間違った道を歩まないでくれ」
もっともらしいことを言ってるようだが軽薄に聞こえる
隣の風太郎には詳しく聞こえてないようでこっちの怒りだけ増大してくのにソワソワしてる
「なぜ急に私の前に現れたのですか?」
「離れていた時もずっと気にしていたさ
罪の意識に苦しみながらね」
「それがどうだい
まさかこうして父親らしいことをしてやれる日が来るとはね」
「この血が引き合わせてくれたんだ
愛する娘への挽回のチャンスを…」
「ガハハ!
父親だって?
笑わせんな!」
突然の乱入者に無堂の表情が変わる
「うーっす
先生ご無沙汰」
「つっても用があるのはうちらじゃないんだけど」
親父さんと、誰だ?
メガネをかけたショートカットの女性
いや、一度だけ
母さんの葬儀の時に来ていた人だな
そして、もう一人
「無堂先生
お元気そうで」
中野先生の姿もある
いつもの無表情ではあるが
「そうか…
君にも謝るきっかけができてよかった
中野君には苦労かけたからね」
「思い返せば君は人一倍零奈を慕ってた覚えがある
すまなかった」
どこまでも薄っぺらな謝罪
中野先生はそれに何を感じたのか
「いえ
あなたには感謝してます」
「あなたの無責任な行いが僕と娘たちを引き合わせてくれた」
淡々とそう述べる
「どうだろう
こと責任に関しては君も果たせていないように見える」
「だから五月ちゃん自らここに来た
頼りない君でなく僕の所にね」
「五月君が…ここに…?」
まぁ
予想できた結果か
「ああ、心中察するよ
親失格の烙印を押されたようなものだ
よければ僕が教えてあげようか
本当の父親のあり方を…」
「何を言ってるのですか」
中野先生は無堂と彼女の前に割り込み
「よく見てください
ここに五月君はいない」
そう告げる
彼女、五月の髪どめを付けただけの三玖もようやく少し緊張を解いたようだ
そして
「私はこちらです」
柱の影からは本物の五月
一花たち他の姉妹も揃っている
「……なんのつもりだい?」
「騙してしまいすみません
でもこうなることはわかっていました」
無堂はそれでも何が起こってるかわからない様子で
「それがどうした
ただ間違えただけで…」
「愛があれば私たちを見分けられる
母の言葉です」
五月の言葉にようやく自分の失態を察したのか
無堂の顔色が変わる
「また彼女の話か!
いい加減にしろ!
そんないい加減な妄言!
いつまで信じているんだ!」
「今すぐ忘れなさい!
お母さんだってそう言うはずだよ!
思い出してごらん
お母さんがなんて言ってたか!」
取り繕う余裕のなくなった無堂の言葉
五月はそれを聞いても
「お母さんが後悔を口にしていたことは覚えています」
「そうだ、君のお母さんは間違った!
君はそうなるな!」
「私はそうは思いません」
真っ向から立ち向かった
「君がどう思おうが関係ない
零奈自身が言ってたなら
「ええ関係ありません」
「たとえ本当にお母さんが自分の人生を否定しても私はそれを否定します
いいですよね
私はお母さんじゃないのですから」
「ちゃんと見てきましたから
全てをなげうって尽くしてくれた母の姿を
あんなに優しい人の人生が間違ってたはずがありません」
それが全てだ
五月が、あの子たちみんなが見てきた物が今の彼女たちを形作ってる
それがここまで尊いものである以上、絶対に間違いであるはずがない
「子供が知ったような口を…」
「あなたこそ知ったような口振りで話すのですね」
中野先生が無堂の前に立つ
「恩師に憧れて教師となった彼女の想いが
裏切られ見捨てられ傷ついていたのは事実」
「しかしそこで逃げ出したあなたが知っているのもそこまでだ」
「その後の彼女が子供たちにどれほど希望を見出したのかをあなたは知らない」
「あなたに彼女を語る資格はない」
見たことないほど力強く言葉を放つ中野先生
「五月君
僕もまだ何かを言える資格を持ち合わせていないが…」
「君が君の信じた方へ進むことを望む
きっとお母さんも同じ想いだろう」
「…はい」
中野先生の言葉に浮かんだ涙を五月は拭う
「無堂先生
最後まであなたからお母さんへの謝罪の言葉はありませんでしたね」
「私はあなたを許さない
罪滅ぼしの駒にはなりません
あなたがお母さんから解放される日は来ないでしょう」
五月の言葉に無堂は苦々しげに顔を歪め
「……っ
僕がせっかく…
「見苦しいぜ
おっさん」
親父さんに一刀両断され舌打ち混じりに踵を返す
そのまま姿は見えなくなった
「行くか」
「あ?
どこにだよ?
つか、お前はあいつらのところに行かなくていいのかよ?」
風太郎の肩を叩き俺も歩き出す
損な役回りをさせて悪かったな
「まだ学園祭の仕事は残ってんだろ?
手伝ってやるから、最後までやりきれよ」
俺たちの屋台も追い込みかけてるだろうしな
さて、少し寄り道したがもう少しだけ頑張りますか
「五月といい、お前といい
馬鹿不器用め」
呆れたように呟いた風太郎も俺に続く
まあ、多分俺と一緒でどこか安心した顔になってるだろ
「…………なぁ
俺ここまでしてもらうほど重症?」
「当たり前です!
大人しくしていてください」
ベンチに座る俺の隣には五月
少し緩みかけた手の包帯をわざわざ巻き直してくれてる
あの後、残りの仕事を片付けようと意気込んだところに五月がやってきた
そしたら風太郎の方は「こいつ任せた」とだけ言いさっさと去ってしまう
もしかしてわざわざ五月呼んだのか?
で、俺も仕事がなんて行こうとしたら
「怪我人は大人しくしていてください!」
と、強引に手を引かれベンチへ
…うん
君が掴んだその手がまさに怪我した手なのでかなり痛い
どうにか顔に出さないよう堪えたけど
で、色々力入れることがあったせいか手の包帯が緩んでるのに気づき、直してくれてるわけで
自分でやると言っても聞いてくれない
「……ごめんなさい
下川君が大変だった時に
私は自分のことで精一杯で」
「……大変だったのはお前の方だろうに」
本当にこの子は…
「頑張ったな」
「ーーありがとうございます
はい、出来ました!」
礼を言うのは俺のはずだが
きっちりと巻き直された包帯
これなら普通に動いても大丈夫そうだ
「本当にありがとうございました」
「お母さんがいなくなってから
その寂しさを埋めるためにお母さんに成り代わろうとしていました」
「いつの間にか自分とお母さんの境界線が曖昧になってしまい、自分の夢までも自信が持てなくなってしまいました」
「私
お母さんを忘れなくていいんですね」
朗らかに笑う五月に安心する
ここ数日の今にも壊れてしまいそうだった子が強くなったもんだ
「私が自信を持てたのはあなたのおかげです」
「買い被りすぎ
お前が自分で見つけた答えだよ」
五月はそんな俺の言葉に少し困った顔になった後
「私はお母さんじゃない
こんな簡単なことに気が付けたのはあなたがいたから」
「私の理想の教師像はお母さんです
けどね」
「君だって私の理想なんだよ
それだけ聞いてほしかったの」
そう言って笑う
相変わらず、真っ直ぐ気持ちを告げてくるやつだ
それに
「ははっ」
「な、なんで笑うんです…
笑うの!?」
なんでって
「その喋り方の方がいいんじゃないって思ってさ」
多分こっちの方が、さっき言ってた母親に成り代わろうとする前の五月なんだろうか
照れ臭くなるようなことを言ってくれたのでこちらも少しお返しさせてもらおう
「ーーっ!?」
「〜〜〜!」
反応を見るために顔を上げたら眼前に五月の顔
額にかかってくる髪がくすぐったいし、押し付けられた唇が甘ったるく感じるわけで
「い、五月…!
おまっ…
「いいいい今のは、その!
お礼とか、お詫びとかでその…!」
「わ、私!
そろそろみんなのところに戻りますね!
下川君はゆっくり休んでいてください!」
トマトみたいに顔を赤くした五月は早口でそう告げて立ち去っていく
取り残された俺の方も多分負けないくらい顔は赤い
「馬鹿不器用め…」
風太郎みたいに悪態をついてみたがこの熱は引いてくれないらしい
何で原作で五月だけキスシーンが無いんですか!?
兎にも角にもここまで来ました
本当の本当に次が最終章です
オリ主の尊敬する歴史上の偉人は大久保利通