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「あ
なんか音楽聞こえるな」
「確か後夜祭中に学生バンドのアンコールライブがあったはずだよ」
「この声
俺たちのクラスの浅野じゃねーか?」
後夜祭の喧騒が遠くに聞こえる中、風太郎、前田、武田の会話
「浅野といや聞いたか?
この学祭中に他のクラスの子と付き合いだしたらしいぜ」
「へー」
「ははは
モテそうだもんね彼」
相変わらずそういう噂にめざとい前田
興味がなさそうな風太郎
実際モテるから嫌味にしか聞こえない武田
「僕の扱いだけ酷くないかい?」
冗談だ
つか相変わらず口に出してないことにツッコんでくるのやめてほしい
「……悪かったな」
「あ?」
「いや…
最終日結局屋台手伝えなくて」
あんだけ息巻いといて肝心な時に怪我して離脱なんてして
更に言うと色々考えることもあってここで座ってたらこいつらがやってきて屋台の方が終わったと告げられた
「別に気にすることは…」
「そうだな
お前が抜けた穴は結構デカかったぜ」
「おい、上杉」
フォローしようとしてくれたのだろう武田を遮る風太郎
それを諌める前田
だがまあ
「三玖に感謝しとけよ
お前が抜けた後、屋台二つとも仕切って
しかも、男子と女子の対立まで解消させた」
「え?」
予想を飛び越した言葉に間抜けな声が出た
表情の方もおそらく同じくだろう
いや、屋台の方はなんだかんだみんなよく動いてくれてたし何とかなるだろうとは思ったよ
だが、あの対立まで何とかしてしまうとは
「俺の方もな
修復は不可能って勝手に線引いちまってた
けどあいつは諦めなかった
あいつがあんな大声出せるなんて思わなかったぜ」
そう言って笑う風太郎
あれだけ自分に自信の無かった子がか
それは確かに感慨深いな
「あとお前
実行委員の仕事とか四葉の仕事まで片付けてたろ」
おっとバレたか
風太郎だけでなく前田と武田まで呆れ顔
「二日目から仕事が減っておかしいと思ったんだ
妙な気回しやがって」
まあ、風太郎の仕事まで減ったのは正直想定外だったわけだが
四葉の方がキャパオーバーになるのが目に見えてたからそれを防ぎたかっただけで
「それでほれ」
なんだよ?
携帯見せてくるなんて珍しいな
写真か
「……はは」
屋台の前で撮ったのか
四葉を中心に見たことある顔がたくさん
みんな同じように満面の笑顔
そうか
これが見れただけでも報酬としては十二分だ
「もしかしたらあれもお前だったのか?」
「……どれだよ」
「あぁ
放送部の人が中野さんたちのお父さんを見つけてきた」
変なところで勘を働かすなよ
あれは別にあいつらのためってわけじゃなくて個人的に気になってたから偶然見つけただけで
「だったらわざわざ上杉や中野さんに伝えさせる必要ないだろが」
「誰から頼まれたかを伏せてまでね」
なんか、暗躍してたのを暴露されたみたいで居心地が悪くなってきたんだが
風太郎はこっちが苦い顔してんの見て笑ってんじゃねぇよ
「あーあー
明日からまたいつもの日常に戻っちまうわけか」
前田が言って空を仰ぐ
いつの間にか空はだいぶ暗い
もうすぐ冬だしな
「僕は授業をまた受けられることにワクワクしてるよ」
「同じく」
「お前らやっぱおかしーわ」
武田と風太郎の優等生コンビにゲンナリする前田
正反対に思えるコイツらも随分仲良くなったもんだ
「ただ…そうだな…
終わっちまう寂しさはあるな」
風太郎の方もそう言って空を仰ぐ
「僕的には十分楽しめたけどね
上杉君は違うのかい?」
「まあ、どっかの誰かさんのおかげで思ったよりは楽しめたが」
そりゃ何より
つか、後夜祭はまだ続いてるし屋台にでも行ってこればいいのに
「屋台か…
そうだな
腹減ってるし行くか
ずっと食ってねぇし、行けずじまいの店があったんだ」
「それが終わったら俺は…
会う約束をしてる奴ならいる」
風太郎の声には迷いがないように聞こえた
「なるほどね」
「あの姉妹のことなら授賞式で見かけたな
一花さんもいたから五人勢ぞろいだったぞ」
「へぇ、前田君
よくあの一瞬で一花さんだとわかったね」
確かに少し意外だな
「おかしな話だが…
前から一花さんだけはなんとなくわかるんだ」
お、おう…
そうか、そういうことか
「……眉間に皺寄ってるぞ」
「……寄ってない」
「上杉君は当然見分けられるんだろ?」
「え?
そう言われると自信ないな…
で、できると思う…
やったことないが…」
そこは自信持って答えてくれよ
「最初は今以上に戸惑ったな
ただでさえ人の顔を覚えるのは得意じゃない
その上あいつらその利点をフル活用してきやがる
何度騙されたことか…」
「最後まで困った奴らだ」
言ってる割に風太郎の顔は穏やか
随分と角が丸くなってくれたみたいで安心したよ
「下川の方はどうなんだよ?」
あ?俺?
「よっぽどの変装されなかったら大体わかるかな?」
まぁ、我ながら特技の域ではあるが身につけた経緯はあんま前向きなもんじゃない
ガキが舐められずに大人の中で働くために相手をよく見る必要があったってだけ
今思えば他人ばかりを気にして生きてきた気がする
そんな弱い自分に気付けたのはきっと
「ふと気になったんだけど…
一体彼女たちの誰から見分けられるようになったんだい?」
「……………よし、屋台行くか」
「ははは待ちたまえ
今の間はなんだい?」
おっと?
風太郎にしては珍しく答えたくねえことか
つか、もしかして武田
お前、中野姉妹を見分ける家族相伝のあれを知ってたりする?
「おい武田
どういうことだ?」
「どういうことか上杉君に聞こうじゃないか」
「どうでもねーって!」
「水臭いじゃないか上杉君
僕らの仲に秘密は無粋!」
「う、うっせー
黙秘黙秘!」
まさか風太郎のこんな反応が見れる日が来るとは思わなかったな
「で、上杉が誰好きなのかお前は知ってたりするのか?」
「候補はだな…」
「優希!てめぇ!」
冗談だ
だいたいお前の本心は珍しく俺でもわからん
「そういう君の方は決心はついたのかい?」
「よし屋台だな
二日間の手伝いでたまった無料券を使う時が来た」
さーて何食べるかなー
えーい離せ!お前ら!
風太郎もさっき黙秘とか言ってたろ協力しろ!
(逃すかお前も道連れだ)
(なんか久しぶりだな!このノリ!)
「ほら二人とも
白状して楽になるといい」
お前なんかキャラ違くないか?
学生の本分は学業とか、受験シーズンにそんな余裕があるのかとかそいういこと言うタイプだろ?
「学生の本分は学業
それ以外は不要だと信じて生きてきた」
ん?風太郎?
「だが…
それ以外を捨てる必要なんてなかったんだ」
「勉強も友情も
仕事も娯楽も恋愛も
あいつらは常に全力投球だった」
「凝り固まった俺にそれを教えてくれたのはあいつらだ」
そうか
それをこいつに気づかせることが俺にはできなかった
「きっと昔のままの俺なら
今この瞬間も一人だったかもな」
……お互い様だろと言われた気がした
俺は風太郎を変えることができなかった
風太郎も俺を変えることはできなかった
あいつらに会えなければ俺は…
「見てられなかったからな特にお前は」
「うん
そんな君が普通のことに悩めるようになるなんてね」
なんだかんだで前田と武田にまで心配かけてたか
「ほらさっさと屋台行こうぜ」
「照れてるな」
「あぁ、あれは照れてる」
「間違いなく照れてるね」
うるせーわ
そこは黙って流せよ
「あ〜休憩所マジ助かる〜」
「楽しかったねー
もう歩けないよ…」
「ってかここ初日は無かったような…」
「そうだっけ…?」
入れ替わりに来る女子の会話
それを聞いて風太郎の方は何を感じたのか
わずかばかりかもしれないが達成感と充実感を感じれればそれで
「コラ
一人で先行くなよ」
「無料券って何があるんだ?」
「クラスの人から聞いたオススメなら…」
追いついてくる三人
なんてことない会話
最後の最後だけではあるが
この祭りを楽しむとしようか
『これにて旭高校学園祭、後夜祭
全てのスケジュールを終了とします』
約束の時間
選択する時
みんなに笑っていてほしかった
みんなの願いが叶って欲しかった
だけどそんな都合のいいだけの未来なんてない
この選択で確実に悲しむやつがいる
それでも
ドアの前に立つ
この向こうにあいつはいる
震えるほど怖い
今までの関係が変わることも本音を曝け出すことも
だがそれでも
自分で選ぶんだ
ドアに手をかける
「待たせたな」
自分で選ぶんだ
武田は少しキャラ改変
変わっていくオリ主を見て悪いものではないと感じました
オリ主の知らないところでサプライズ打ち上げが計画されているらしい
主な計画者は前田と松井