5Sぷらす2 【本編完結】   作:しろすけ

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終わりが見えてきたのでたたみに行ってます
完結まであと数話お付き合いください


七通りの道
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学園祭も無事?終わり、学校の方、というか三年生は受験モードへ本格的に切り替わっていく

家庭教師のバイトの方も再開するし気合い入れ直さんとな

 

「あ

 おはようユーキ」

「おはようございます!下川さん」

 

珍しく中野たちと登校中に遭遇

いや、一花の方は二学期が始まってから休学してるから姿は見えないわけだが

 

「ん

 おはよ」

 

平静を装って返すけどこの場にいるもう一人

五月の姿に内心冷や汗

昨日あんなことがあったわけなので当然意識してしまう

いや、お互い「また明日」で別れた以上いつも通りに戻るようにしないと

 

「い、五月もおはよう」

「お、おはようございます下川君」

 

二人揃って声が裏返った

三玖はため息をついてるし、四葉はでっかいハテナを浮かべている

 

「と、ところで二乃のやつは?

 珍しく一緒じゃないんだな」

 

話題を変えねえと

仕事の一花は最近珍しくないが、二乃まで別に登校なんてそうそう無かったはず

……ってあれ?

今度は四葉が微妙な表情に

 

「四葉?」

「え、あ…

 な、何でもありませんよ!

 私、学級長の仕事思い出しちゃったんで先に行きますね!」

 

言うや否やあっという間に走り去っていく

何かあったって言ってるようなもんじゃねえか

これはもしかしなくても風太郎との関係なんだろう

相変わらず、なぜかあの子の地雷を踏むことが多いのは勘弁してほしい…

 

 

授業の方は受験モードではあるが特に問題なく進む

眠そうにしてる中野たちをこっそり起こすのに苦労させられるのはいつものことだが

で、昼休み

いつもの通り風太郎と連れ立って食堂へ

 

「焼き肉定食

 焼き肉抜きで」

「……焼き肉定食、焼き肉大盛りで」

 

最近になってアップデートされた昼食の風景

相変わらずの珍妙な節約メニューを頼む風太郎とおかずを大盛りで頼むようにしてる俺

三年に上がってからまともな飯を食わないと多方面から世話を焼かれるのでいい加減パンの耳だけってのは控えるようにした

家庭教師に正式に雇われてからは中野先生からも少し叱られたし

 

「ほれ」

「おう」

 

そして、これもいつもの光景になりつつある

大盛りで増量された焼き肉を風太郎のライスの上へ

最初は施しは受けん!なんてよく分からん意地を張ろうとした風太郎だが、親父さんやらいはへ普段の昼飯の状態バラすぞと半ば脅して押し付けている

なんだかんだ昼食時に少し機嫌が良くなってる気がするので、本人も言うほど嫌がってはないみたいだが

 

「……ここは毎日俺がツレと座ってる席なんだが」

「……早い者勝ちです

 隣の席に移ってください」

 

なんだこれ?俺一年前にタイムスリップした?

 

いつもの席、食堂のはじのテーブルにトレーを置けば横から同時にやってくるこれまた馴染みのある姿

まさかの五月と鉢合わせ

いや、言ってる言葉ほど二人に険悪さはないし、結局やれやれと言わんばかりに別の席に座ってるわけなんだが

 

「あ、五月」

「四葉

 何でお前までここに…」

「う、上杉さん!」

 

今度は四葉まで

 

「あー…

 ここちょっと寒いですね…

 でももっと北の方は雪みたいですよ

 では…」

 

なんだ?

五月や風太郎と飯食うのになんか抵抗でもあるのか?

いや、もしかして俺がいるせいか?

 

「今日は大盛況ね

 どこも空いてないわ」

 

って二乃まで

……もしかして四葉の方は二乃と

 

 

「暖房弱いのか冷えるわね

 でも雪が降ってるところよりマシかしら」

「今日はやけにその情報を耳にするな」

「ちょっと!

 隣の席の会話聞いてんじゃないわよ」

 

結局

二人掛けのテーブル席三つに座る俺、風太郎、二乃、四葉、五月の五人

別に聞き耳立ててるわけじゃないけどこれだけ席が近けりゃしゃあないでしょうに…

 

「ーーで、話したいことってのはなんなのかしら?」

 

二乃の言葉に四葉の表情がより強張る

内容に察しがついたのは風太郎と五月も同じだったみたいで空気がぎこちなくなってくる

 

「み、皆さん

 進路の近況報告しませんか?」

 

五月…なんともらしい話題の変え方ではあるが少し無理矢理じゃないか?

 

「私は自分に見合った志望校を視野に入れて先生たちと相談しています

 もちろんずっと志望していた学校も諦めず挑戦するつもりです」

 

そうか

色々悩んでたけど道が定まりつつあるみたいで何よりだ

 

「二乃は

「今そんなこと話す気分じゃないわ」

 

こっちは取り付く島もなし

多分だけど、四葉の感じから揉めてるんだろうことはなんとなくわかるが

 

「俺は大学に予定通り行くつもりだ

 試験もまず落ちないだろう」

「わぁ…」

「一度は言ってみたい台詞です」

 

風太郎の方はいつもみたいに勝ち誇るかと思ったら言い方に思うところがあったのか微妙な表情

流石にここで嫌味ったらしい言い方で空気を悪くするのは忍びなく思ってるらしい

 

「実は…」

 

ん?

流れ的に俺も言うべきかと思ったが次に口を開いたのは四葉

 

「私も先生から聞かされたばっかなんだけど…

 色んな部活に参加して大会に記録を残してたのを見てくれた人がいたみたいで…」

 

「とある体育系の大学から声をかけてもらってるみたいなんだ」

 

いつぞや職員室で聞こえてきたあれやっぱマジだったんだな

 

「推薦かよ

 すげーじゃねーか」

「ええ

 体育大学も四葉にぴったりです!」

 

これには風太郎と五月もいい意味で驚きだったみたいだ

 

「あ、でも条件があって…

 最低限の学力は必須だと…」

「…そうですか…」

「が、がんばれよ…」

 

君ら少しは態度に出ないように努力しようよ…

まあ、言いたくないが四葉のテストは相変わらずではあるが

 

「いいわね

 あんたは恵まれてて」

 

「何もしなくても向こうから来てくれるなんて

 気楽だわ」

 

それが何に対してなのかなんとなく分かる

が、流石に少し言い過ぎだ

 

「二乃

 その言い方はねえだろ」

「下川さん…」

 

大学の方もそうだが多分これは暗に風太郎との関係についても含ませてるんだろう

どこまで事情を知ってるか分からんが四葉がどれだけ…

 

「……何よ」

 

二乃の表情に言葉が詰まった

キツめに叱ってやろうと思ったが、どうにもそんな顔してるやつにかける言葉がないというか

 

「……もういいわよ

 先戻ってるから」

 

結局そうこうしてるうちに席を立つ二乃

いかん…迂闊だった

かえって空気悪くしてしまった

 

「四葉…

 二乃はああ言ってるが…」

「上杉さんすみません」

 

「私行かなきゃ!」

 

言うや否やあっという間に走り去っていく四葉

風太郎の方も一瞬呆気に取られたが、思うところがあったのかその後を追って食堂を出て行った

 

で、残されたのは俺と五月

少し前ならなんてことないが今は少し気まずいというか、こっちとしては罪悪感が強いというか

 

「あー…すまん

 ちょっと軽率だった」

「いえ

 こちらこそ二乃がごめんなさい」

 

お互い何に対して謝ってるんだか

 

「私は」

「ん?」

「聞いていただいた通り先生への夢は諦めませんから」

 

そうか

それはなんとも

 

「五月らしくていいと思う」

「ありがとうございます

 下川君もやりたいようにやってみてはどうですか?」

 

そう言って笑う五月

どうにも見透かされてるらしい

 

「ありがと

 ちょっと行ってくる」

「はい

 二乃と四葉のこと頼みますね」

 

五月の声を背に俺も食堂を出る

自己満足の身勝手なのは承知の上だが、それでもあいつらがあんな風にぎこちないのは見たくない

何ができるかは二の次だがまずは二乃と四葉の話を聞こう

 

 

しかし

やはりというか素直に教室には戻ってなかったな

さて、いったいどこに

 

「優希!」

 

っと、風太郎か

その様子だとお前も四葉見失ったか

どうしたもんか

 

「って、何してんの?」

「いや、こっちの部屋から物音が」

 

そう言って風太郎が入ったのは空き教室

使われてない部屋なのでカーテンも閉め切っていて室内は薄暗い

 

「さすがにこんな所にいるわけないでしょ」

「確かに物音がしたんだよ…」

 

つか、いくら薄暗くてもよっぽど身を屈めん限りすぐ見つけれる

それでいないんだからここには

 

「うおっ!?」

「は?」

 

唐突だが

風太郎は俺より身長が高い

大体5センチくらいなのでぱっと見で違いは明らかだろう

 

そんな俺より高い身長のやつが何故か飛び上がって俺の方へ倒れ込んでくる

 

あー…そういやこいつの顔こんな近くで見たのっていつぶりだったかなー

 

腐っても大の男である風太郎を咄嗟に受け止められるはずもなくそのままの勢いで床に倒れ込む

 

 

「もがもがが…!」

 

あ ぶ ね えぇぇ!

 

咄嗟に差し込んだ左手が間に合った

学祭の時の火傷は当然治ってるわけないから、風太郎の顔面を受け止めた掌はめちゃくちゃ痛い

ついでに自分の顔面に裏拳を叩き込む形になったので鼻も痛い

が、最悪の事態は免れたから安いもんだろう

いくら学祭からそういうことが立て続けにあったとはいえよりによってこいつとなんてごめん被りたい…

 

風太郎ももっと三玖とかとこういうことは起こせよ!

 

「ここ空いてるじゃない」

 

は?

 

「ここなら誰かに聞かれる心配ないわ」

 

いくらなんでも聞き間違えようのないこの声

机の影から声の方を覗けば

 

「ほら

 言いたいことがあるなら言いなさいよ」

 

「四葉」

 

探し人の二人が空き教室の反対側に陣取っていた

おい…これはけっこうマズいシチュエーションなんじゃないか?

 

「落ち着け優希」

 

お、おう

お前が意外と冷静で助かる

 

「ふぅ…

 それにしても冷えるな」

 

「知ってるか?」

 

「寒いところでは雪降ってるらしいぜ」

 

顔色ひとつ変えずに動揺すんのやめてください…

 

 

「あんたのことがずっと疎ましかった

 それまで私たちはずっと仲良くやってきたっていうのに

 一人で何も言わず突っ走って」

 

「私たち五つ子の輪を乱し始めたのは四葉

 あんたよ」

 

机の影に隠れた俺たちからは二乃の表情はわからない

が、声色は今まで聞いたことないほど冷たい

 

「自分勝手でごめん

 昨日だって二乃のこと考えず押し付けるばかりで…」

 

「だけど今も考えてることは同じ」

 

「私の願いは

 私と上杉さんのお付き合いを認めてもらうこと」

 

四葉が言ってたっていうやらなくちゃいけないことってのはこれか

律儀というかなんというか

 

「……呆れた

 まだそんな甘いこと言ってるのね

 なんで私が認め…」

 

っておい…風太郎…

そろそろと壁際に移動してたと思ったら教室のドアに手をかけていた

当然音もなく開けるなんて難しいのでドアが音を立て

 

「チュー」

 

「なんだネズミか」

「ネズミがいるのね」

 

誤魔化し方ぁ!

四葉はもしかしたらだが二乃は気づくぞこれ!

 

「危ねぇ…

 やっぱドア開けんのは厳しいか…

 どうする

 身動き取れねぇぞ…」

 

ドアに手かける前に気付け

つか、音がなくてもドア開いたらこっちだけ明るくなって即バレるわ!

 

「一理あるな…

 このまま大人しくしておくしかないのか…」

 

気は進まんがそれしかないだろ

大人しく机の影で膝を抱える

 

「もうお昼休み終わっちゃうわ

 帰りましょ」

 

「待って!」

 

「今更なんなの?

 私なんて無視して勝手に付き合えばいいじゃない!」

 

「……これは…

 私と上杉さんだけの話じゃないと思ってるんだ」

 

「二乃と上杉さんのこれまでの関係を…

 三玖と上杉さんがこれまで過ごしてきた日々を無視なんて私にはできない」

 

聞こえてくる四葉の声に迷いはない

 

「私なりの覚悟を持って伝えに来たんだ

 私の願いは上杉さんとの関係を認めてもらうこと」

 

「だからそれは…っ」

 

「ただそれは今じゃなくていい」

「!」

 

「数ヶ月、数年

 どれだけ時間がかかるかわからないけど…

 私が上杉さんをどれだけ好きなのか

 この想いの強さを」

 

「見ててほしい

 きっと負けてないから」

 

これが四葉なりの答えか

だがそれは…

 

「……そうね

 たとえあんたに謝られたり説得されたとしても

 私は納得できないでしょうね」

 

「それをわかった上で

 あんたは茨の道を進むつもりなのね」

 

そういうことだろうな

正直しんどい道だと思う

それでも

 

「私は上杉さんを好きなのと同じくらい姉妹の皆が好きだから」

「全く…馬鹿ね」

 

「チュー」

「動揺すんのは分かるが少し落ち着け」

「し、してねーよ

 え?して見える?」

 

ええとっても

薄暗いが顔赤いのくらいわかるぞ

 

「…だけど四葉らしいわ」

 

「五つ子の枷から解き放たれて突き進んでいくあんたの背中が気に入らなくて」

 

「羨ましかったわ」

 

「あんたはまだ私を競い合う相手として見てくれるのかしら」

 

「勿論だよ

 私たちはずっとお互いを意識しながら生きていくんだ」

 

「時には仲間

 時には敵…

 そんな…」

 

「ライバル…よね」

 

あぁ、そうか

俺の願いは

俺がいつのまにか願ってたことは…

 

「三玖とは話した?」

「うん」

「なんて言ってたの?」

 

「怒ってるって…」

「ふふ

 口下手なんだから」

 

聞こえる二乃の声からは随分と棘がなくなったように聞こえる

 

「昨日のことがなければ大人しく祝ってあげようと思ってたのに…

 あんたがそのつもりなら私も言うわ」

 

「往生際が悪いのかもしれないけど私のフー君への気持ちは収まる気がしないの」

 

「ここで勝負は終わってない

 少し後ろであんたたちの行く末を見ててあげる」

 

「ほんの少しでも隙なんて見せたら

 私が彼を奪ってやるんだから!」

 

「ーーうん」

 

なんとも二乃らしい

これがあいつなりの二人へのエールなんだろうな

 

「そろそろいいかしらね」

「?」

 

「ネズミの二人出てきなさい」

「えっ」

 

そりゃバレるよな

 

「気づいてたのか…」

「そりゃそうでしょうよ…」

 

むしろ下手なネズミの鳴き真似なんてするからだろうが

 

「えっ

 上杉さんたちいつから…

 もしかしてずっと聞いて…」

「すまん」

 

四葉の方はマジで気づいてなかったんかい

みるみる顔が赤くなっていく

 

「に、二乃〜!」

「あら

 てっきり知ってて言ってるのかと思ってたわ」

 

すっかりいつもの調子のようで

結果的に心配してたことが勝手に解決したのは喜ばしいことではあるんだが

 

「聞いてたわよねフー君」

 

「そういうことだから

 努々油断しないようにね」

 

「ああ

 肝に銘じておくよ」

 

女って怖え…

これはまぁ

 

「お前も厄介な姉妹に手出したよな」

「手出したとか言うな

 つか、お前にだけは言われたくねぇ」

 

はいはい

こっちはお前ほど苛烈な状況じゃねえから

……ないよね?

 

「推薦のこと…

 つい言い返しちゃったけど…」

「だけど本当のことだから」

「自信持ちなさい

 あんたがやってきた成果でしょ」

「二乃…」

 

世話焼きなお姉ちゃんは変わらないか

なんにせよこれで問題は解決か

 

ってことは

 

「……なんだよ?」

「いや別に」

 

まぁ、面と向かって、しかもこんなタイミングで言うことでもないか

そのうちってことにしておこう

 

風太郎

おめでとう




危うくタグから微妙なが消えるところだったぜ…
なお、竹林の動画は五月と二乃にばっちり送られています

オリ主の冬服のダッフルコートは父親のお下がり
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