こんなアホな話とか含めて活動報告でリクエストとか調子に乗って募集してます
今日の授業も直に終わる
授業を受けてる奴らもみんなソワソワ
これが放課後の部活やら友達との約束やらを楽しみにしているソワソワなら微笑ましいが、こちらとしてはコイツらが楽しみにしているものが分かりきっているのでゲンナリ
あと、教室の反対側からのプレッシャーが膨らんでいくので嫌な汗が止まらない
そしてチャイム
今日は最後の授業の先生が担任だったためそのままSHR
そして
「ーーーこんなところか
じゃあ今日はここまで」
「起立!礼!」
学級長、武田の号令
今や俺にとってそれは開戦のゴングである
「優希!
今日こそ…って!あぁ!」
待ってましたとばかりに詰め寄ってくる一花の横をすり抜ける
最近になって学んだ対処法
ギリギリまで引きつけてから動けば咄嗟の反応が間に合わないらしい
「中野!今日こそ頼んだぞ!」
「お前に食券三日分賭けてんだからな!」
毎回人の生死で遊んでんじゃねえよ!
あと賭けるんならもっとがっつり賭けろや!
「お、中野弟
今日も大変だな」
「中野が走ってるってことはもうそんな時間か」
いや、あんたら教師がそれでいいのか!?
あと、勝手に時計がわりにすんなや!
色々ツッコミたいが今は止まるわけにはいかない
時間をかけて他のクラスの姉たち、特に身体能力お化けと化した四葉と、何故か俺に対してだけ普段から三倍のスペックを発揮する五月が参戦したら生存確率が激減する
幸い今日は他のクラスはまだ終わってなかったみたいで、一花以外の姉妹に遭遇することなく昇降口へ
よし
今日は何とか生きのこ…
直感に従い足を止めた
なるべく気配を殺し生徒玄関を覗き込んでみれば
「………」
「じゃ、じゃあ二乃
私ら先帰ってるね」
文字通りの仁王立ち
姉たちの中でも一際長い髪に蝶のような二つリボン
五人の姉のうちの上から二番目、二乃
周りの友達が引き攣った顔になってるぞいいのか?
まずい
二乃はまずい
一年半ぶりに姉たちと再会したあの日を思い出す
あの日もこうしてなんだかんだ逃げようとしたがあえなく捕獲
かつての自宅、高層マンションの最上階
姉たち五人が勢揃いだったわけだが、二乃のやつは顔を見ると同時に容赦なく引っ叩いてきた
あまりの容赦なさに他の姉妹総出で止められる羽目になり、めでたく俺には二乃に逆らえないというトラウマが刻まれたのだった
しかし、なんて絶妙な場所に陣取ってやがる
気づかれずに玄関を出ることはもちろん、下駄箱から靴を回収するのにも見つからずには無理だろう
どうする…モタモタしてたらヤベェハンター④⑤が放たれる
せめて靴だけでも確保したいところだが
「あ!
優希いた!何やってるの?」
oh…Jesus
既に手遅れだったか
廊下の端にはうさ耳リボン
この距離でもニコニコと楽しそうに笑ってるのがわかる
正直一番対応に困ってる姉
一年半前に家を出る寸前派手に喧嘩した
他の姉妹の目にないところで当時の四葉の態度を改めさせようとしたんだが
結局、取っ組み合いになるまではいかなかったが結構なキツ目の言葉を言い合ったわけで
それっきり疎遠なまま俺は家を出た
で、再会してみればあの喧嘩なんてなかったみたいに底抜けに明るい笑顔
もともと頼まれたことを断らないやつではあったが、再会してからはどうも姉妹含めた他人への献身がすぎるので戸惑っている
ってまずい!
四葉の声が俺にも聞こえたってことは当然二乃にも聞こえたってわけで
「へぇ
こそこそとそんなところに隠れていたわけね」
ぎゃあああ!
前門の虎、後門の狼って正にこのこと言うんだね!
無理は承知で唯一の退路である元の廊下を駆け戻る
しかしこっちの身体的事情もあり四葉に追いつかれるのは時間の問題
どうすれば…!
……って風太郎?
廊下の先
分岐路のところに幼馴染が立っている
その顔には深ーい同情が浮かんでるあたりこっちの事情は察してくれてるようだ
「ん」
そして分岐の一方を指差す
オッケー察した
四葉が来たら俺は逆方向に行ったと誤魔化してくれるわけだな
持つべきものは姉の家庭教師役の幼馴染だな!
サンキューと短く告げ指をさした方へ曲がる
やったぜこれで…
「ユーキ
捕まえた」
胸に軽い衝撃と共に飛び込んでくる人影
腹当たり、人影の首にはゴツメのヘッドホンがかかっているみたいな感触
謀ったな風太郎おおおぉぉぉぉ!!
「すまん
生徒の望みは可能な限り叶えてやるのが家庭教師の責務でな」
「フータロー違う
そこは『君はいい友人だったが』って返すところ」
やかましいわ!
あと、風太郎よく見たらポケットから食券がはみ出てるじゃねえか!
昼飯のためだけに俺を売ったな!?
「違う
これは厳正で公正な取引」
「そうだぞ」
うぇーいとローテンションのままハイタッチする風太郎と三番目の姉、三玖
体力とか押しが弱いやつではあるがこんな策で来るとは…
ん?ハイタッチしてる?
拘束解けてんじゃん
今のうちに逃げるしかねぇ!
「あ」
「馬鹿か!」
三玖の惚けた声と風太郎の鋭いツッコミを背に再びダッシュ
想定外の運動量にそろそろ左脚が悲鳴上げてるがここが意地の見せ所!
「ま、待って!ユーキ!」
ははは!待てと言われて待つ奴がいるか
いくら今の俺でも三玖の足からなら余裕で逃げ切れる
今度こそ完全に俺の勝
「あうっ」
どしゃっと滑るような音
振り返れば転んだのであろううずくまる三玖
…………いやいやこれは好都合と見るべき
さっさと身を隠して
「…うっ
ひっく…」
……あぁ、くそ
「体力ないくせに無茶するからだ」
駆け寄り体を起こしてやる
あーあー、タイツも破れてるし
怪我らしい怪我は無いな?
「うん
ごめんね」
顔を伏せてそう言ってまたも胸にダイブしてくる
ヘッドホンの感触が痛いからやめてほしいんだが
「えへへ
今度こそ捕まえた」
毒気を抜かれるってのはこういうことか
さて、他四人の姉との会話を今日はどう誤魔化そうか…
これがここ最近の旭高校の放課後の日常
なお、大穴の三玖にオッズした者の歓喜と大多数の外した者の悲鳴が一際大きかったことを追記しておく
チキチキ中野姉弟学校脱出ゲーム
厳正なレギュレーションのもと中野弟の尊厳と体力を犠牲に日夜巨万の富が動く(食券)
胴元は2年2組の水澤と谷田部