5Sぷらす2 【本編完結】   作:しろすけ

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気付いたらオリ主が一花を雑に扱ってる
何故だ?


中間テスト編


「や、おっはー」

「げ」

 

いつも通りの通学路

早朝のバイトが押したとはいえまだまだ遅刻までは余裕のある時間帯

どこでも見るようなコーヒーチェーン店の前でクラスメイト、中野一花に遭遇した

 

「いきなりそれはないんじゃない

 共犯者さん」

「……お前、その呼び方気に入ったのかよ」

 

あの時の俺は正気じゃなかった気がするのでそれはもう忘れてほしい…

 

「ところで何かコメントはない?」

 

……まあ、言わんとすることはなんとなくわかる

 

「はいはい

 冬服もよくお似合いですね」

「なんかテキトーだなぁ

 女の子が普段と違う格好したらちゃんと褒めなきゃ」

 

毎日のように着る制服のどこを褒めろというのか…

んで、俺の隣を歩き出す一花

 

「何?わざわざ一緒に登校するために待ってたの?」

「ん?そうだけど」

 

当然のように返された

 

「お前、また変な噂たてられるぞ」

 

ただでさえこの間食堂で風太郎と四葉がやらかしてくれたおかげで俺のソッチ方面の噂は相変わらずよろしくない

俺は今更だが転校してきてそう間もない一花にそんな悪評ついてはなんか申し訳ないと思ったんだが

 

「大丈夫大丈夫

 そういうの気にしないタイプだから」

 

さいですか…

あっけらかんと笑う一花に心配して損した気分になる

もう好きにしてください

 

「昨日、あの後みんなに私の仕事のこと打ち明けたんだ」

 

む?せっかくだからあの後のことを聞こうと思ったが向こうから教えてくれたか

 

「みんなビックリしてたなー」

「そうか」

「でもスッキリした!」

 

………なんと言うか、ずいぶんと笑顔から裏表が無くなったような気がする

 

「風太郎の方は反対しそうだけどな」

「あはは、かもしれないね

 でも大丈夫

 留年しない程度には勉強頑張るから」

 

そりゃ助かる

風太郎の心労が軽減されれば俺も巻き込まれる率が減るだろうしな

 

「勉強会してるんでしょ

 放課後また連絡するから、はい」

 

そう言って一花がスマホを差し出してくる

 

「……くれるの?」

「本気で言ってる?

 メアド交換しよってこと!」

 

…………そういや言う機会なかったな

連絡取れなくて困るなんてのは昨日みたいな条件じゃなきゃまずないし

これからの一花の反応が容易に想像できるから内心うんざりしながら答える

 

「持ってない」

「…………へ?」

 

予想通りすぎる反応ありがとう

学校じゃそんな話する友達なんて今までいなかったが、バイト先の人から聞かれることなんていくらでもあったわけでその反応は見飽きてる

 

「スマホも携帯も持ってねぇよ」

「い、今時!?」

 

 

 

「アドレス交換!大賛成です!」

 

放課後の図書館恒例となりつつある勉強会

ふと、朝の会話の内容から一花が風太郎とのアドレス交換を提案し、それを聞いた四葉の反応がこれだ

ちなみに今日の参加者は一花、三玖、四葉で五月は何故か不参加…

結局参加人数が変わってない…

 

「その前にこれ終わらせちゃいますね」

「……一応聞くが何やってんだ?」

「千羽鶴です!友達の友達が入院したらしくて!」

「勉強しろー!!」

 

それは知らない人だろ…

お人好しは相変わらずらしい

そんでなんだかんだ半分やってやる風太郎

……なんでさらに半分俺の前にも折り紙置くの?

 

「お前のノルマだ」

「いや勉強見るのは百歩譲ってありとしてこれ手伝う義理ないだろ」

「そう言いながらもやってあげるんだね…」

 

一花が苦笑いで言う

俺たちからしたら憎まれ口叩きながらフォローし合うなんて日常茶飯事だからな

最近俺が割を食ってる気がしないでもないが…

 

「で、アドレスどころか連絡先まるで知らないってのは仕事的にはまずいだろ」

「それはそうなんだが…」

 

昨日のゴタゴタの時、風太郎の携帯を借りることになったが登録されているのは親父さん、らいは、そんで俺の家電のみ

 

「家庭教師の連絡なら一人わかれば十分だろ

 さっき一花に無理やり登録させられたし」

 

風太郎がそう言った途端着信音

どうやらメールのようだが内容を見て風太郎の顔色が変わる

ついでにそれを見て一花も何やら企み顔…

 

「みんなのメアド知りたいなー」

 

言葉と顔が合ってねぇ

大方弱みにつけ込んで全員分のアドレスゲットしないとばら撒くぞってとこだろうな

 

「協力してあげる」

「わーいやったぜー」

 

三玖の方は相変わらず無表情で何考えてるか分かりづらいが協力的みたいでよかったな

 

「ユーキにだけは言われたくない」

 

ナチュラルに思考読むのやめてくれませんかねぇ…

 

「ユーキ君て無表情のくせに割と考えてることわかりやすいよね〜」

 

マジで?

風太郎の方もうんうんと納得顔…

いや、マジで?

 

「これでよし

 五月と二乃は今度でいいだろ」

 

そうこうしてたら風太郎の方はアドレスの登録を終えたらしい

なんだか一気に華やかになるなあいつの電話帳

 

「その二人ならさっき見ましたよ

 今のうちに聞きに行きましょう!」

「なんでお前も行くんだよ!

 ってか四葉!お前のアドレスは…!」

「早くしないと帰っちゃいますよ!」

「やっぱ勉強する気ないだろ!」

 

コントのようなやりとりをしながら風太郎と四葉は図書館を出ていく

で、この場には俺、一花、三玖が取り残されるわけで

 

「よかったね」

「うん」

 

一花がウィンクと共に言えば三玖もずいぶんと柔らかな表情で頷く

これはつまりそういうことなんだろーなー

気付いたら幼馴染に春の予感である

あいつの性格からしたらここからの道のりは険しそうだが…

 

「ところで、ユーキ君は今日バイトはいいの?」

 

突然話の矛先が俺に変わる

まあ、普段の俺の行動見てれば当然の疑問か

 

「テスト近いからな

 シフト減らしてもらってんの」

 

だというのにやっているのは何故か見知らぬ他人のための千羽鶴作りである…

なんだかんだで結局風太郎と四葉の残していった分まで終わらせてしまったところで不毛な時間を過ごしたことに気付き悲しくなってくる

 

「ふーん

 なんか意外

 成績いいのはクラスの子から聞いたけどこんな前から対策するんだ」

 

いや、こいつは何を言っているんだ…

 

「お前…もう二週間切ってんだぞ?

 赤点取ったくらいで留年とか退学なんて無いとはいえ流石にのんびりし過ぎだろ」

「あはは

 まあ、なんとかなるって」

 

どこから来るんだこの根拠のない楽観は…

呆れながら自分の課題を取り出しペンを走らせていく

 

「ユーキ」

 

珍しく三玖から声をかけられる

 

「ここわからない」

 

と、課題の一部をペンで指しながら差し出してくる

いやなんでナチュラルに俺教える流れになってんの?

マジで風太郎、俺がいない時の勉強会で俺も勉強見ることすり込んでんの?

 

「……どこまで解けてる?」

「この公式を使うことはなんとなくわかる」

 

とは言え、出会ってすぐに勉強させようとする風太郎から逃げ回っていたこの子がやる気になってくれた以上邪険にする訳にはいかんので

風太郎曰く五人の中で一番頭がいいと聞いてはいたが実際飲み込みは早いみたいだ

多少のヒントで見事に問題をクリアして他の問題に取り組み始めた

 

「じとー」

「……何だよ

 てかまた口で言っちゃうかそれ」

 

一花がジト目で睨んでくる

なんかこのやりとり昨日もした気がするんだが…

 

「五月ちゃんだけじゃなくて三玖にまで優しいんだなーって」

「……はいはい

 今日の小テストが散々だった中野さんはどこがわからないですか?」

「やっぱり私の扱い雑すぎない?

 あとなんで私の点数知ってるの…」

 

いや、カマかけただけなんだがマジなのかよ…

 

「ふふ」

 

不意に笑い声が聞こえてくれば、三玖がくすくすと笑っていた

真面目にやってるとこ邪魔してすまんね

 

「ううん、一花もユーキも楽しそうだなって」

 

楽しい?こいつとのやりとりが?

いやいやいや

 

「ないない」

「ないない」

 

…………被った

なんか恥ずい

一花の方はニヤニヤして、や〜、気が合うね〜なんてこちらの顔を覗き込んでくる

少なくともこいつは楽しんでるじゃねぇか…

何が楽しいかはわからんが

結局風太郎と四葉が戻るまでこんなやり取りを繰り返していたので一花の方は課題全然進んでないのでは…

案の定風太郎に叱られて少しは溜飲が下がったぜ

ざまー

 

 

 

秋の朝日が柔らかく降り注ぐリビング

清潔感のある家具と最上階ならではの静けさ

何とも言えない優雅な気分になれる

たまにはこんな雰囲気の中で朝のひと時を過ごすのも悪くない

 

「ギャアーーー!」

 

…………現実逃避は止めよう

早朝のバイトを終え早めの登校をしているところで風太郎に捕まり、俺としては初対面以来の中野姉妹のマンションへ

なんでも、昨日の放課後アドレスをメモするために二乃に渡した生徒手帳を取り返しに行くんだとか

いやマジで俺ついて行く必要無いよな?

んで、三玖に部屋まで入れてもらった風太郎は迷わず二乃の寝室へ突撃

連れてきた以上せめて起きるまでは待とうって忠告くらいは聞いてほしかった…

 

「信じられない!

 こんな朝から乙女の部屋に無断で入るなんて!」

 

正座させられる風太郎を見下ろし、当然のように怒り心頭の二乃

 

「私が許可した」

「あんたになんの権利があんのよ!」

 

色んな意味でキレッキレの返しである

 

「……俺は止めようとしたから足崩して良い?」

「止められなかったら意味ないでしょうが!」

 

解せぬ…

当然のように俺も風太郎の横で正座である

 

「またこの男は来てるのですか…

 あ、下川くんおはようございます」

「おはよう中野

 朝早くからすまんね」

 

あくび混じりで降りてきた五月と挨拶を交わす

 

「おはようございます

 朝ごはん食べていきますかー?」

 

四葉から非常に有難い申し出をもらったが、既に朝食はすませていたのでやんわりと断る

というか、君たち前回ここで俺けっこうやらかした気がするけど警戒心無さすぎない?大丈夫?

 

「俺が悪かった

 一刻も早く生徒手帳を返してほしかっただけなんだ」

 

背に猛省の文字が見えそうな謝り方

 

「やけに素直ね…

 何かこれに隠してるんじゃないの?」

 

流石にここまで下手に出てたらそりゃ勘ぐられるよ…

 

「くっ…!

 ………い、いいのか?そんな態度とって?こっちには優希がいるんだぞ?」

「ぐっ…!卑怯よ」

 

いや、ここでそんな小物全開な態度とんなや

もしかしたらこれ狙って俺連れてきた?

二乃の反応からそこそこ効果的なのが少し腹立つ

 

「二乃、昨日言ってたものここに置いておくね」

 

いつの間にか居間へ降りてきていた一花が二乃へ声をかけながら何かをテーブルの上に置く

そういやこいつらの中で一花だけが空けてたな…

 

「一人でできる?」

「で、できるって言ってるでしょ馬鹿にしないで」

 

一花と二乃がそんなやりとりをしている隙に風太郎は生徒手帳へ手を伸ばすが

 

「え?」

 

手が届く寸前に二乃が生徒手帳を頭上へ持ち上げ

 

「……返してほしかったら付いて来なさい」

 

そのまま風太郎共々自室へ引っ込んでしまった

……いやこれ俺どーしたら良いの?

 

「はい」

 

途方に暮れていたところ一花が横からカップを差し出してくる

匂いからするとコーヒーっぽい

 

「インスタントだけど」

「……どーも」

 

前回のあれもあって一瞬警戒したがさすがに今薬を盛る理由もないだろうと思い直し素直に受け取る

 

「ユーキ君も人が良いというか、付き合いがいいというか

 なんだかんだ言いながらフータロー君の手伝いしてあげるんだね」

「我ながらあいつに甘いのは自覚してる…」

 

こっちの事情の関係であいつの親父さんに頭が上がらないって理由もあるが、結局ガキの頃から変わらない付き合い方ができるのが心地良いのだ

まさかこんな妙なことに巻き込まれるなんて思ってもみなかったが…

 

「それにしても彼は何故生徒手帳のためにここまで」

 

五月のごもっともな質問

気付けばさっきまでパジャマ姿だった他の姉妹たちも身支度を終えたようだ

 

「本当に何か見られたくないものを隠してるのかな?

 好きな人の写真とか!」

「……好きな人」

 

普段あれだけアホな子判定を喰らっているのに何故こんなところだけ鋭いの四葉さん?

三玖の方は好きな人という言葉に何やら不満気

 

「ところで中野次女は何で急にピアス?」

 

これ以上風太郎の生徒手帳の中身に関しての話題が続くのはまずいと思い会話の方向転換を試みる

さっき二乃は一花から渡されたもの、ピアッサーを持って部屋に引っ込んだ

大方一人で開けるのが怖いから生徒手帳を返す条件として風太郎に手伝わせてるってとこだろう

我ながら自然な感じで切り出せたのでファインプレイだと思う

 

「あー、前から興味はあったみたいだよ?」

 

一花が自分の右耳を触りながら言う

そのまま三玖たちもどう?姉妹でお揃いつけようよなんて女子トークが始まる

狙い通り話題は逸らすことができたようでよかった

 

「………アンタ、いい加減足崩したら?」

 

気付いたら二乃が居間に降りてきていた

うん、誰も特に突っ込んでくれなかったからなんとなく正座したまんまだった

 

「フータローと何してたの?」

「なんでもいいでしょー」

 

あの風太郎に何かやらかす度胸は無いので安心していいぞ三玖

 

「一花、これ返すわ」

「もういいの?」

「よく考えたら焦る必要は無かったわ

 おあずけね」

 

ピアッサーを一花に返しながら二乃が言う

花嫁衣装を着るまでにあけられればいいわと続けたので、直前でビビったのか今回は見送りにしたようだ

 

「この写真見て見て」

「あ、五人の写真だ」

 

二乃は何故かアルバムを持ってきていたようで一花たちもそれを覗き込んでいる

どうでもいいけど、時間はあるとはいえ二乃はパジャマのままなのはいいのか?

 

「みんなかわいいねー」

「これいつのだっけ?」

「六年生」

 

もらったコーヒーも飲み終えたので立ち上がりカップをキッチンへ持っていく

インスタントとは言ってたがそこもお金持ちクオリティのものだったのか美味かったのでそこに関しては得した気分だ

 

「京都ってことは修学旅行の時だよ」

「懐かし〜」

「私たちも随分雰囲気が変わりましたね」

 

奇遇だな

こいつらも小六の修学旅行は京都だったんだ

なんて何となくそのアルバムを見て

 

「お、アンタはちゃんと興味あんのね

 って、何よ?固まっちゃって」

 

自分でもわかるくらい間抜けな表情で固まってしまった

 

「下川さんのそんな顔初めて見ました!」

「想像以上の可愛さに見惚れちゃった?」

「ま、まぁ…そんなとこ」

 

四葉と一花にはそう返したがさすがに動揺してるとこは隠せない

 

唐突だが、俺は人の顔と名前を覚えるのは割と得意で記憶力もいい方だと思う

ただし、当然だが昔会った人がどういう成長をするかなんて予想できない

加えて直接会った訳でなく一度写真で見たことがあるだけならなおさらである

 

何が言いたいのかと言うと、俺はそのアルバムの女の子を見たことがある

幼馴染が肌身離さず持ち歩いており、おそらく今回のお宅訪問の発端となった写真でだ

もちろんその写真はアルバムのような同じ顔が五つ並んでいた訳ではない

だが、まず間違いなく風太郎が変わるきっかけとなり、今も持ち歩いている写真に写っている女の子はこの五人の中の誰かだ

しかも、俺はそれが誰かなんとなくわかってしまった上に、無自覚にその子の地雷を踏んでしまっている…

風太郎、お前の恋路は多分家庭教師のバイトより険しいぞ…

これからの心労を思うと記憶力の良さを呪いたくなった…




この物語の風太郎はオリ主を上杉家の備品かなんかとして扱ってます

オリ主はコーヒー派
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