「俺さー、毎日のように姉貴に"愚弟"って言われてるじゃないですか?」
と、唐突にそう言われて。モモンガとウルベルトは首を傾げる。
「言われてますね」
「言われるに値する事ばっかりしてますもんね、ペロロンさん」
ペロロンチーノの言わんとする事が分からず、二人してそう答えれば、ペロロンチーノはピッと人差し指を立てて大真面目な顔で言い放った。
「"愚弟"だと全然エロくないのに、何で"愚息"って言うとエロ度アップするんでしょうね?」
「……」
「……」
突然のその言葉に、二人して呆気に取られている。
「だって、そうでしょう?愚かな弟はエロくないのに、愚かな息子ってだけでエロくなるって、何かのバグじゃないですかね!?」
そして。続けて言われたその言葉に、ウルベルトは無言でアイテムボックスからハリセンを取り出すと、渾身の力を込めてペロロンチーノの後頭部を殴りつけた。魔法を使わないだけ、かなり優しいと言える。
モモンガは、と言えば。骨なのに大きく溜息を吐いていた。器用なことに。
「痛っ!?って、何で俺突っ込まれてるんです!?二人ともそう思いません!?」
「思いませんよ、エロゲ脳のペロロンチーノさん。そもそも、"愚息"って一般用語ですからね?」
冷ややかな視線でペロロンチーノを見ながら、ウルベルトはそう言い放つ。両手でハリセンを玩びながら。その動きはまたアホな事を言ったら突っ込む、とでも言ってるかのようで。ペロロンチーノは思わず後頭部を押さえる。
「モ、モモンガさんはどうなんですっ!?愚息ってエロいですよね!?」
と、今度は突っ込みを入れなかったモモンガに縋るようにそう言うが。
「茶釜さーん。ペロロンチーノさんがまた変なことを言ってまーす!」
こちらはこちらで、大声でぶくぶく茶釜を呼んでいた。
「ちょ、待って!?姉貴に聞かれたら、俺マジで締められるから、呼ぶの止めてモモンガさんっ……!!」
必死にモモンガに縋り付いてそう言うペロロンチーノに、モモンガは気の毒そうな視線を向ける。骸骨なので表情自体は変わっていなかったけれど、眼窩の炎の大きさが普段とは違っている。
「……ペロロンチーノさん。ウルベルトさんの言うとおり、エロゲ脳過ぎでしょ。それじゃ、辞書でエロい単語にマーキングする子供と一緒ですよ?この間だって皆の前で似たような事言って茶釜さんに締められたのに、もう忘れたんですか?」
その言葉に、ペロロンチーノは一瞬硬直した。先日の恐怖を思い出して。
「えー……。だって、エロいんですもん。仕方なくないです??」
「だから、エロくないですよ、単語自体は。……文脈次第ではアレかもですが」
そうややペロロンチーノを擁護するかのようにモモンガがそう言うと、ペロロンチーノは途端にドヤ顔で胸を張る。そんなペロロンチーノに、再びウルベルトが突っ込みを入れた。無言でサクリと。
「酷いっ、ウルベルトさんっ!!モモンガさんだって認めてくれたのに、何でいきなり突っ込むんですかっ!!」
「そのドヤ顔がムカついたので、つい。……って言うか、マジでペロロンチーノさん、一般用語をエロいって思うのは色々弊害が出そうなんで、茶釜さんが矯正してくれる間に直した方がいいですよ?ギルド内でならまだ笑い話で済みますけど、余所でもポロッとそんな事言ったらアインズ・ウール・ゴウンが侮られますから。だからペロロンチーノさん、外交の場に出られないんですよ。何言い出すか解ったモンじゃないから……」
盛大に溜息を吐いてそう言うウルベルトだったが、ペロロンチーノは反論出来ない。それが事実であるが故に。
「うっ……!で、でも、いいんですよっ!!適材適所って言葉もあるでしょう!?俺、腹の探り合いとかしたくないですもんっ!!そーいうのは腹黒なウルベルトさんがやってればいいんですっ!!」
ペロロンチーノがそう叫んだ次の瞬間。全身が炎に包まれた。ウルベルトが魔法を使ったのだ。何の躊躇いも無く。
「……誰が腹黒なんです?嘘が吐けない悪魔のこの俺を腹黒?そういう言葉は嘘がお上手なタブラさんや軍師のぷにっと萌えさん辺りに言って欲しいですね」
……よっぽど、腹黒扱いが嫌だったようだ。まだ燃えているペロロンチーノだったが、モモンガが慌てて巻物を使って消火したお陰で無事である。HPはやや減ったようだが、レベル100なのでかすり傷に等しいくらいのダメージしか受けていない。
「え?悪魔なのに腹黒くないつもりだったんです?デミウルゴスだってあんなに腹に一物ありそうな……。あ。いちもつ、ってのもエロいですよね」
性懲りも無くそんな事を言い出したペロロンチーノに、ウルベルトは匙を投げる。
「それ、漢字が違いますので。あと、うちのデミウルゴスだって腹黒くは無いですよ。策士かもしれませんけど、俺同様嘘は吐けませんしね」
「……やっぱり、茶釜さん呼んだ方がいいですかね?」
二人の様子を見て、モモンガがそう言えば。二者それぞれ好き勝手なことを口にする。
「そうですね。その方が矯正は早く出来るでしょうし」
「いや、マジ止めて!?姉貴にバレたら洒落にならないからっ……!!」
必死なペロロンチーノを見て、モモンガはほんの少しだけ困ったように口を開く。
「じゃあ、もう思った事をすぐに口にしたりしませんか?」
「しませんっ!!しませんので、何卒……!!」
その場に土下座までしてそう言うペロロンチーノの必死さに二人ともドン引きだが、その気持ちも分からないでもないので、この話はこれで止めることにした。モモンガもウルベルトも、一瞬視線を交わして頷くと、モモンガがペロロンチーノに手を差し伸べて立ち上がらせる。
「約束ですよ?もし破ったら……装備品全部剥いだ上で、黒棺に丸一日閉じ込めますからね?」
サラリ、とえげつない罰を提案するモモンガに怯えつつも、ペロロンチーノは何度も首を縦に振っていたのだった……。
その後。結局黒棺から盛大な悲鳴が響き渡る事になったのだが……それはまた別の話だ。
END