しかし、1ヶ月後、陽菜とは離れることになる。
この春は、悲しい春となる。
そんな悲しい春に、マネージャーである俺が桜を咲かせようとする。
その点ご理解の上、読んで頂ければと思います。
今日は3月21日、陽菜の誕生日。
陽菜は今日も事務所に来ていた。
すごいな、誕生日なのに、事務所に来るなんて。
そして、用を済ませた陽菜がソファーに座っている。
「お疲れ様です!マネージャーさん!」
「陽菜、お疲れ様。何してるの?」
「私宛に届いた手紙を読んでいたんです」
「そっか。たくさん届いていたからね」
「テストがあったので、なかなか読む機会がなくて……」
「テストお疲れ様だったね」
「はい。テスト終わりにこういうお手紙もらうと、すごく嬉しいです」
陽菜は笑顔で手紙を読む。
外に目をやると、桜にも蕾ができていた。
ふと気付いたことを口にした。
「そういえばもうすぐ春だね」
「ふふっ、今年はどんな春になりますかね?」
「どうだろうなぁ……」
陽菜とそんな話をしながらも、実は心のどこかでは陽菜と離れることが決まっていて、悲しい気持ちがあった。
出会いには、必ず別れが来る。
それは確かにそうで、それは何度も経験している。
でも、今年の春はどこか違う気持ちを持っている。なんでだろう……ずっとモヤモヤしている。
そんなことを考えていると……
「マネージャーさん……?」
陽菜がきょとんとしていた。
「ああ、ごめん。すこし考えごとしてた……」
(陽菜を困らせちゃったのかな……)
外は日が西に傾いていて……
「あ!夕日ですよ!」
「夕日……」
その夕日を陽菜と一緒に見ていた。
陽菜は未来を見つめるような目をしていた。
その時、俺の気持ちがすこし吹っ切れた。
と同時に、陽菜がこんなことをつぶやいた。
「私……ずっとこれからも、マネージャーさんと夕日を見ていたいな……」
陽菜は寂しい顔をしながら呟いた。
今日は陽菜の誕生日なのに、すこし寂しい誕生日を過ごしてほしくない。
その思いが強かった。
「マネージャーさん……私……マネージャーさんと離れるのが……」
そう言いかけた時に、俺は陽菜のことを抱きしめた。
「え、ちょ、マネージャーさん!」
「俺も……陽菜とこのまま夕日を一緒に見ていたい……離れたくない……」
陽菜に今思っているありのままの思いを伝える。
その目からは涙が零れ落ちていた。
「私も……です……」
陽菜も一緒のことを思っていた。
陽菜からも目から涙が零れ落ちていた。
「陽菜……大好き……」
今思っているそのままの思いを静かに呟いた。
「はい……私もです……」
陽菜が優しく応える。
その目からは涙が止まらない。
「マネージャーさん……涙が……止まらない……」
陽菜はずっと泣きっぱなしだ。
その涙は嬉し涙へ変わっていた。
「陽菜……やっといえた……遅くなって……ごめん……」
陽菜と出会ったときからずっと思っていたことを口にできた。それでも、今まで言えなかった自分が悔しかった。でも、陽菜が優しく受けてくれたことが嬉しかった。
「マネージャーさん……私……嬉しいです……」
「うん……僕も嬉しい……」
陽菜が俺のことをぎゅっと抱きしめた。
それぞれの目から零れ落ちる涙は夕日に照らされて、輝いていた。
「陽菜……」
ゆっくりと俺が顔を近づけた。
「マネージャーさん……」
陽菜が優しくそれを受け止める。
夕日に照らされて、僕たちは唇を合わせた。
ゆっくりと時間が流れてほしい。
そう思いながら、静かに唇を離した。
「陽菜、お誕生日おめでとう」
そう言って一つの紙袋を陽菜に渡す。
その紙袋の中には一つの箱が入っていた。
「ありがとうございます、すごく嬉しいです!開けていいですか?」
「うん、もちろん」
陽菜はソファーに座って、箱を開けた。
そこには……
「わぁ……いいんですか?」
「うん」
箱の中には腕時計が入っていた。
銀をモチーフに、すこしピンクがかったブランド品。
陽菜の高校ではピアスやイヤリングを付けれないならと思って、時計を選んだわけ。
あまり派手なものは付けれないし、俺もあまり派手なものは好きじゃないからシンプルなものにした。
それともう一つ……
「袋……?」
小さな小物が入った袋が中に入っていた。
その中身は……
「わぁ……可愛い!」
亀のストラップが入っていた。
スマホに付けれるようなタイプのものを選んだのだ。
陽菜のスマホに何もストラップが付いてなかったから、それは寂しいかなと思って買ったんだ。
「うふふ、ありがとうございます。大切にします!」
「陽菜……ありがとう……」
陽菜の笑顔が弾けていた。
渡して良かったと改めて思う。
そんな時、舞花から電話が掛かってきて……
「ん?舞花どうしたの?」
「陽菜いますか?」
「ああ、いるけど……」
「今日の夜ご飯はすき焼きだから、早く帰ってきてって言ってください」
「うん、わかった。ありがとう」
って舞花には言われたけど、それは、サプライズにしよう。
その方が陽菜も嬉しいだろうしね。
だから舞花には「夜ご飯はサプライズということで」って文字を打った。
「さ、みんなも待ってるし、帰ろうか。寮までついていくよ」
「うふふ、ありがとうございます」
気づけば空も暗くなっていた。
舞花たちも待ってるし、暗い夜道を一人で歩かせるのはマネージャー、いや恋人としてどうかと思うからね。
2人で夜だからこそできるお話しをたくさんした。
これからのこと、今のこと、昔のこと……
どれも話しているだけで楽しかった。
「さ、着いたよ」
「ふふっ、ありがとうございます。マネージャーさん……」
陽菜は顔を近づける。
もう一度唇を合わせた。
照明に照らされて。
ゆっくりと唇を離して……
「マネージャーさん、また明日」
「うん、また明日」
陽菜を寮まで送った。
今日の夜は舞花たちがすき焼きを用意しているから、どんな反応をするのかな……すごく楽しみだ。
寮の近くには桜が咲き始めていた。
皆さん、こんにちは。おみです。
今日は陽菜の誕生日ですね!おめでとうございます!
推し以外の小説を書いたことがなかったので、どんな感じか迷いながら書きましたが、いかがでしたか?
感想などくださると嬉しいです!
「あの日、幸せの花が咲く」を読んでいただいた方はあることに気がついたでしょうか?
実はこの小説では、マネージャーの一人称が「僕」ではなく、「俺」になっていたんです!(もしそうなってなかったら僕のミスです)
僕個人は文章を書く際に一人称で「俺」を使うことはないので、すごく新鮮で、違和感がすごかったです(笑)
さてこの小説は1話のみです。
今まではマネージャー絡みの話が多いですし、今後も続いていきますが、もし時間があればチーム内のお話なんかも書いていきたいと思いますので、応援してくださると嬉しいです!
それでは次の小説もお楽しみに!