バンビーズを育て上げた者   作:主義

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親と子

「あたしが言っても聞かないのよ!」

 

 

「ルイは大人しくしてた方がいいんじゃね」

 

 

「仕方ねぇじゃん。どうしても出たいって聞かねぇし」

 

 

 

 

 

そんな会話を繰り広げているのは…聖文字『E』バンビエッタ・バスターバイン、聖文字『G』リルトット・ランパード、聖文字『T』キャンディス・キャットニップ。バンビーズのメンバー三人。そんな三人が話しているのは…彼女らの育て親のこと。

 

 

その育て親は少し離れたところで空を見上げてじっとしている。二十代後輩のような顔立ちで普通にTシャツを着ていて、現世に居たとしても何もおかしくないような感じだ。

 

 

 

そして三人はその育て親ことルイに近付いていく。それに気付いたのか、ルイも視線を彼女たちに移す。

 

「ねぇ…ルイ」

 

 

「どうしたの?」

 

まるで緊張感を感じないような顔でルイは問いかける。

 

 

「あたしの側から絶対に離れないで。最悪でもあたしたちの目の届くところにいて」

 

「まあ、ルイがどうしてもって言うなら仕方ないな。俺が守るか」

 

「ぜってぇに傷つけさせないし。そんなことをした奴は八つ裂きにして殺す」

 

ルイへの想いが強くて、それが言葉からも感じられる。

 

 

「僕ってそんなに心配されてるの?」

 

 

「ああ、ルイは目を離すとどこに行くかわからねぇし、勝手に戦闘して怪我されるのが一番困るからな」

 

キャンディスの言葉からは『ルイ』という男への想いが隠されてる。普段は仲間の怪我のことなんて気にも留めない彼女がルイが怪我をすることに対してはかなり心配しているのだ。それだけでもキャンディスのルイへの気持ちの強さが現れている。

 

 

「皆が僕をどう見ているのか分からないけど、僕はキミたちよりも年上だよ。さすがに戦いになったとしてもどうにかできるよ」

 

ルイはバンビーズの育ての親であるためにもちろん、年上でそれなりに戦闘経験も豊富。見た目は二十代後半のようで黒髪。端から見れば兄妹だと思われてもおかしくない。だが、本当の年齢はもっと上だ。

 

 

「だめだぞ。俺たちはルイに怪我させないのが使命だからな」

 

 

「で、でも…」

 

 

「ルイは大人しくしていればいいの!!」

 

 

「はい…すいません」

 

二十代後半ぐらいの見た目の男が正座させられているという光景は少しシュールだ。そしてその前に立っているのは見た目だけであれば自分よりも若い女性だというのが特に。

 

 

 

そしてそんな渦中のルイは辺りを見回して疑問に思ったのか、首を傾げる。

 

「そう言えば…ミニーニャとジゼルはどうしたの?」

 

 

「…あいつらはちっと…野暮用で」

 

 

「そうなんだ。久しぶりに皆に会えると思ったんだけど…」

 

ちょっとルイが悲しそうな顔をしていた。ルイという男にとって『バンビーズ』という五人は愛娘のようなものなのだろう。

 

「あ、あいつらのことはいいじゃん。あたしがいるんだからさ。どんな時でも、あたしはルイの側に居るよ」

 

 

「うん、ありがとね。バンビエッタ」

 

バンビエッタ・バスターバインが気をゆるむ表情を見せることはない。それはそんなことをしたら他の奴になめられるかもしれないから。だが、そんなバンビエッタもこの時ばかりはどうしても顔が緩んでしまう。

 

 

「おい、なんでお前だけなんだよ。俺もいる」

 

 

「ありがとう、リルトット」

 

リルトット・ラインパードは顔を俯かせる。だが、それは失望とかの感情じゃなくて喜びという感情。嬉しくてそれが顔に出てしまって、その顔をルイに見せるのはみっともないと思っているが故の行動なのだ。

 

 

「あたしだってルイの側に居るぞ」

 

 

「優しいね、キャンディス」

 

キャンディス・キャットニップはとても乱暴。スタイルはとてもいいが、どうしても性格に難がある。そんな彼女もルイの前では普通の娘。子供が親に褒められると嬉しいように、キャンディスも嬉しいのだ。

 

 

キャンディスはとても無邪気な笑顔をルイに向けていた。

 

「やっぱりキミたちは優しいね。キミたちを育てられたことは僕の人生の中で唯一の成功だよ」

 

ちょっと悲しそうな目をしながらもルイは話した。

 

 

 

「はぁ…なに言ってんの?」

 

「やっぱりルイはなにも分かってねぇな」

 

「そうだぜ。あたしらは」

 

三人はルイとの距離を詰めて触れられるぐらいの距離まで近づく。そして別に息を合わせるわけでもないのに同タイミングでルイに抱き着く。

 

 

「ど、どうしたの?」

 

 

「あ、あたしの方が幸せだって言ってんの!あんたに育ててもらえれて…。それのお陰であたしは生きられて、どんな時でも笑顔で包み込んでくれたからこそ今のあたしがあるんだよ!!だから、そんな悲しそうな顔をしないでよ」

 

バンビエッタにとってルイはかけがえのない存在。何者にも代わりを務めることはできなくて、唯一無二。

バンビエッタがここまで自分の気持ちをしっかりと打ち明けるのはめったにない。それはルイに対してであっても。もちろん、ルイは大切な存在だが近すぎるが故に正直な気持ちを打ち明ける機会も少ないのだ。

 

 

「俺はルイのお陰で初めて…『優しさ』を知れたんだ。どんな些細なことで褒めてくれて、ダメなことを叱ってくれるような奴。そんな奴はいなかった。だから、ルイには生きてもらわないと困るし、俺が俺でいるために必要なんだ」

 

リルトットにとって『ルイ』は自分を構成する要素そのもの。リルトットという滅却師を存在させる上でルイという男は必要なのだ。逆に言えば、ルイがいなくなったらリルトットという存在は壊れるかもしれない。

 

 

「普段は言わねぇが…『ありがとな』。あたしが生きているのはルイのお陰だ。あたしのような奴でも見捨てずに話してくれたし、ルイはずっと抱きしめてくれた。それがあたしにとって嬉しかった。あたしの全てを受け入れてくれた感じがしてな。気の所為かもしれねぇけどよ。だから、あたしはルイの力になる。こんなあたしだけどよ、初めて誰かのために生きたいと思えたんだよ」

 

キャンディスにとってルイは理解者なのだ。自分を認めてくれて、ここに存在する理由を与えてくれた人。ルイに対しての想いは他の四人にも負けておらず、自分を犠牲にしたとしてもルイを生かすという想いの強さが湧き出ている。

 

 

「大丈夫だよ。皆を心配させるようなことになっちゃってごめんね」

 

 

「ほんと?」

 

 

「うん、さすがにキミたちにそんな顔はさせたくないんだ」

 

するとルイは一人ずつの頭を短い時間ではあるものの、軽く撫でる。

 

 

「やっぱりキミたちは優しい、強い子に育ってくれて嬉しいよ」

 

だが、そんな会話が繰り広げられている間もそこら中で戦闘音が聞こえてきてはいたのだった。

 

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