悪を殲ぼす金剛の棘   作:ぶびっぐ

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 やっぱり私は、台詞のバランスを考えるよりもつらつらと文章を組み立てる方が好きです。
 それと暫くRiseやってると思うので、投稿期間が空いてしまうかもしれません。許して下さい、何でもしませんが。


観察:霧と雲、時々狼

 紅雷(こうらい) 白龍(はくたつ)氏が営む、特殊児童保育施設。通称、龍ノ巣(りゅうのす)

 

 職員は龍の巣の卒業生が志願して務めており、また巣立った卒業生の中にはプロヒーローとして活躍する者も多い。

 

 施設に暮らす子供達は皆何らかの事情により、親からの育児を放棄ではなく“断念”されている為、外部の者が言う“問題児”が大多数を占めている。

 

 何故、育児の放棄ではなく断念なのか。それは彼等の“個性”が深く関わってくる。

 

 改めて説明しよう。個性とは、全人口の約八割の人間が持つ特異な能力の総称である。

 人の数だけ異なった個性があると言われるほど個性の種類は多岐に渡るが、それらは大きく分けて四つに分類される。

 

 壱:個性保持者の意思に応じて、様々な種類の効果を発揮する“発動型”

 弐:胎児の頃から姿形が標準とは異なり、基本的に優れた身体機能を持つ“異形型”

 参:発動型と似ているが、明確に自身の身体の一部を変化させる“変形型”

 肆:そして、それらの特徴が複数型合わさった“複合型”

 

 これらが個性と呼ばれる能力の広義的な定義である。

 

 そんな多種多様な個性がある中、施設に暮らす子供達は総じて“複合型”の個性を持っており、その多くは突然変異(ミューテーション)による産物である。中にはその外見的特徴が原因で、産まれる際に母体の産道に深い傷を負わせてしまう事例もある。

 そうして龍ノ巣へと送られてきた子供達は、施設長の白龍氏によって、彼等の“個性”に名を与えられる。もちろん肉親との縁など()うに()っている為、下の名前だけでなく名字も貰う。

 

 そして子供達の持つ個性の概要は、強大な力を持つ“モンスター”をその身に宿している、といった風に一貫している。

 卓越した身体能力を伏せ持ちながら、火や雷、水や氷などの自然界に存在する現象や物質を用い、更には他の個性では類を見ないほどの特異な身体器官や体組織を発達させた彼等は、子供だと言い切るにはあまりにも危うい存在だと言える。

 

 特に、“龍”と名の付く個性や力を持つ子供は、他の子供達とは比較にならないほどの力を持っている傾向があり、ひとたび個性の制御を誤れば、辺りは壊滅的な被害を被る事となる。

 

 現在、龍ノ巣には八名の子供と施設長を除いた四名の職員が暮らしており、彼等の名前と個性は下記の通りである。

 

 金猿(こがねざる) 昂獅(こうじ) 18歳(男児)

 個性:金獅子(きんじし)

 荒ぶる雷獣の力と姿を宿している。

 モンスターの外見的特徴:ゴリラの上半身にライオンの下半身、左右に伸びる鈍い金色の大きな角が生えたヒヒの頭部を持つ黒い獣のような姿をしている。

 概要:圧倒的な剛力と俊敏性、気光エネルギーと呼ばれる未知の力などによる攻撃は苛烈の一言に尽きる。他の子供達の個性と比べると宿すモンスターの体躯はやや控えめだが、年長者であり個性の扱いに関して施設で暮らす子供達の中では最も洗練されている。また本人の性格もあり、一度怒ると一部の職員以外手が付けられなくなる。

 

 轟牙(ごうが) 虎丸(とらまる) 17歳(男児)

 個性:轟竜(ごうりゅう)

 絶対強者と称される竜の力と姿を宿している。

 モンスターの外見的特徴:飛行には向かない翼を持つ前脚と大きな体躯の、地上に特化した虎柄のような模様をした四足歩行をとる竜の姿をしている。

 概要:体力の続く限り繰り出される強靭な(あぎと)と爪を使った猛攻は、単純ながらも凌ぐことは難しい。彼の持つ咬合力や筋力などの高い身体能力は、(ワイバーン)の名を冠するに相応しいと言える。名の通り轟くような大声を張り上げ、外敵の聴覚を一時的に麻痺させることもできる。

 

 群青(ぐんじょう) 砕己(さいき) 15歳(男児)

 個性:砕竜(さいりゅう)

 爆ぜる黒曜石の権化たる竜の力と姿を宿している。

 モンスターの外見的特徴:群青色の外殻に身を包み、敵を殴り砕く事に特化した前脚や頭殻を緑色に染め、鎚矛(メイス)のような形状の尾部を持つ獣脚恐竜のような姿をしている。

 概要:鉱物質の硬い外殻と、それを利用した殴打は正に必砕(ひっさい)の拳。また、特殊な粘菌を共生させており、頭部の特徴的な外殻や腕部が緑色に染まっているのはその為。粘菌は強い衝撃を受けると即座に子実体を作り、まるで火薬の爆発のような爆破を起こす。

 

 黒衣(くろぎぬ) 龍成(たつなり) 14歳(男児)

 個性:黒蝕竜(こくしょくりゅう)

 命を蝕む黒き竜の力と姿を宿している。

 モンスターの外見的特徴:紫の混じる漆黒の甲殻と鱗、外套(がいとう)のような不気味な翼膜(よくまく)を纏う、“龍”に近しい形体を持つ竜の姿をしている。

 概要:現時点で特筆すべき点は外見に対する強烈な印象と、前脚よりも強靭に発達した背中の翼脚(よくきゃく)のみ。身体を動かすこともあまり得意ではないようで、普段は本を読んで静かに暮らしている。その為か、他の野性的な子供達と比べ理知的な言葉遣いが見受けられる。

 

 稲椎(いなずち) 久巳(ひさみ) 6歳(女児)

 個性:電竜(でんりゅう)

 電の反逆者たる竜の力と姿を宿している。

 モンスターの外見的特徴:飛行に適した翼の翼膜には昆虫の翅に見られる翅脈(しみゃく)のような模様があり、尾部の先端にはクワガタムシの顎に似た(はさみ)を持つ、虫と竜が混在したような姿をしている。体色は緑色。

 概要:翼や尾部、頭殻には発電器官があり、そこから生み出される電気の威力は凄まじい。しかし本人がまだ幼いこともあってか、その真価は発揮できていない様子。因みに彼女が作る緑色の電気は家庭用家電の電力には向いていない。

 

 黒創(こくそう) 滅理(めつり) 4歳(女児)

 個性:滅尽龍(めつじんりゅう)

 古を喰らう龍の力と姿を宿している。

 モンスターの外見的特徴:頭部に反り返った大角を持ち、全身の至る所から棘を生やした悪魔のような龍の姿をしている。

 概要:発達した四肢や翼、尻尾による肉弾戦が得意。半身を覆う棘には段階があり、驚異的な再生力と回復速度により破壊されようと変化を繰り返す。変化した棘は時に身体を護る鎧となり、高い殺傷力を持つ飛び道具となる等多くの特性を持つ。しかし身体の小ささ故か、本来の強みであるその棘があまり発達しておらず、他の子供達と比べると少し見劣りしてしまう。

 

 鬼惨(きしん) 爪助(そうすけ) 2歳(男児)

 個性:惨爪竜(ざんそうりゅう)

 修羅が如き貪食を秘める竜の力と姿を宿している。

 モンスターの外見的特徴:全身が筋張った赤い筋肉のような鱗で覆われ、四肢に持つ爪を上段に4本、下段に6本隠し(そな)えた狼のような竜の姿をしている。

 概要:まだまだ幼い為詳細は不明。

 

 飛道(ひどう) 銀子(ぎんこ) 2歳(女児)

 個性:爆鱗竜(ばくりんりゅう)

 火種を振りまく気高き竜の力と姿を宿している。

 モンスターの外見的特徴:身体の下部に爆鱗と呼ばれる爆発性の鱗のようなものを大量に携え、大きな体躯とそれを持ち上げるほど発達した銀翼を持つ竜の姿をしている。

 概要:鬼惨 爪助と同じく幼い為詳細は不明。

 

 また、職員となった卒業生の名前と個性も同記しておく。

 

 灼山(あきやま) 熔介(ようすけ) 92歳(男性)

 個性:熔山龍(ようざんりゅう)

 火山の化身たる龍の力と姿を宿している。

 モンスターの外見的特徴:一つの活火山と見紛うほどの巨体と、マグマ状の老廃物を排熱器官から降り注がせる火山島のような龍の姿をしている。

 概要:普段は温厚だが一度外敵を認識すれば、その圧倒的な巨体と熱量で骨すら残さず対象を排除する。また、個性を本気で発動した際における規格外の巨体は山をも削り、安々と地形を変動させる。しかし、かなりのご高齢である為か滅多に個性を見せなくなった。

 

 凍嶺(いてみね) 麗貴(れいき) 36歳(女性)

 個性:冰龍(ひょうりゅう)

 万物を凍てつかせる龍の力と姿を宿している。

 モンスターの外見的特徴:純白の鱗に剣状の尾部を持ち、冠のような角を称えた龍の姿をしている。

 概要:過冷却水と呼ばれる、凝固することなく液体のまま超低温を維持する冷水を外敵や大気に吹きつけ、氷像や氷塊を創り出す。また、氷を纏うことで防御を高めたり、武器を生成し外敵を近付けさせずに串刺しにすることもできる。黒衣 龍成や黒創 滅理と同じく四肢に加え翼を持つが、骨格の姿勢は全く異なっている。

 

 砦城(さいじょう) (きずき) 25歳(女性)

 個性:閣蟷螂(かくとうろう)

 虚城の魂たる金色の蟷螂(かまきり)の力と姿を宿している。

 モンスターの外見的特徴:金色に染まった全身の甲殻と、鮮やかな色彩の花びらのような部位を脚に持った蟷螂の姿をしている。

 概要:黄金に輝く糸を手繰り寄せ、様々な人工物を巧みに利用して攻撃を繰り出す。また、人工物を寄せ集めて造られた巨大な蠢く城を糸で操ることも可能。人工物の扱いに長けているという性質上、現代社会では無類の強さを誇る。

 

 雨司(あまじ) 溟人(めいと) 23歳(男性)

 個性:溟龍(めいりゅう)

 溟海を司る龍の力と姿を宿している。

 モンスターの外見的特徴:変色する外皮と外側が溟海の如く黒い巨大な翼膜の翼を持ち、顎から4本のヒゲを生やした、凍嶺 麗貴と類似した姿勢の龍の姿をしている。

 概要:体内で蓄えた多量の水を砲弾のように放ったり、場に設置し自身の独壇場にすることで外敵の足場を奪う。また、体内の発電器官から作られた稲妻をそのまま攻撃に転用でき、設置した水場を利用して水蒸気爆発を起こすことも可能。因みに施設の電力を賄っているのは彼である。

 

 職員の中でも最年長の灼山氏が“92歳”という高齢である為、施設長の紅雷氏はかなり年を召された老婆だと思われる方もいるだろう。

 しかし、実際の紅雷氏は見目麗しい白亜の麗人といった風貌をしており、その性格も外見に似つかわしい穏やかだが感情の起伏が強いといった、全く年を感じさせない雰囲気がある。

 

 紅雷(こうらい) 白龍(はくたつ) (女性)

 年齢:少なく見積もっても150歳

 身長:172cm

 体重:秘匿されている

 個性:不明

 

 彼女に関しては身長と凡その年齢、食べ物の嗜好など限定的な情報しか明確に判明していない。加えて彼女の持つであろう個性については全くの未知であり、異常な肉体年齢の若さとも関係しているのか否か、大変気になるところだ。

 

 今後も私は龍ノ巣の観察を続け、何かしら問題が発生すれば即座に報告する。

 

 以上、公安直属、龍ノ巣新任観察員兼卒業生、霞隠(かすみがくれ) (みずち)より。

 情報提供:特殊児童保育施設 施設長 紅雷 白龍

 

 

 

 補遺:19日が滅理ちゃんの誕生日だったので、携帯電話を贈りました。施設で暮らす幼い子達はみんな可愛かったです。

 

 


 

 今日は9月21日。一昨日の誕生日会の翌日、面識は無いが卒業生であり姉の(みずち)から贈られた連絡用機械の扱いが分からなかった私は、施設で働いている先生であり蛟の実弟の溟人(めいと)を頼ることにした。

 

「溟人。この機械の使い方を教えて欲しいのだが」

 

「ん、それって蛟姉(みずちねえ)さんから貰ったスマホ? そういう機械類は(きずき)さんに頼った方がいいと思うけど…」

 

 溟人は私の背丈に合わせて背を丸め、男にしては華奢な腕を組んだ姿勢で、私が手に持っている機械を見つめて言う。

 

「築は買い出しに出掛けている。姉や兄達は学校に行っているし、麗貴(れいき)は白龍先生と共にある事情(・・・・)で遠方に出払っている為、今はいない。だから頼める者が溟人しかいないのだ」

 

 今施設に居るのは私と溟人、弟妹の二人と彼等の面倒を見ている熔介の計五人だけだ。

 

「あー、そういえばそんな事言ってたっけ……熔介(ようすけ)さんはあの子達の相手で忙しいだろうし、僕しかいないのかぁ…」

 

 私は機械に触れるのを明白(あからさま)に避ける溟人の様子を見て、何かしら事情があるのだろうかと勘繰った。

 

「何か問題があるのか?」

 

「ええとね、さっきまで施設の電力補充で個性使ってたから、静電気を帯びちゃってて暫くの間は電子機器に触れないんだ」

 

 そういえば溟人は、この施設の灯りや細々とした設備を稼働させている一要因だったな。

 

 雷の力を動力源とした様々な機械は現代社会を形成する上で重要なものだと白龍先生に教わったが、一部の電子機器は案外脆く微量な雷に弱いようで、私の持つスマホと呼ばれる端末もそこに該当する。

 

 …これは完全に私情だが、人間の密集する都市部に私が苦手とする雷があちらこちらに点在しているというのはあまり喜ばしくない。

 今でこそ雷の性質を知っている為致し方の無いことだと割り切れるが、遥か過去の私にとって雷とは、極力関わらぬよう避けて然るべき力なのだ。

 また、私の弱点である具現化した龍の力も一部雷の力と似通った性質を持っている。

 現代ではそれに加え、雷を生み出す際には多大な燃料を必要とするらしく、燃料の過剰消費によって一部の生態系を壊滅するまで汚染し続けるような惨事も過去に起きたことがあるそうだ。

 

 その点で言えば溟人は、生物的な変換機構を介して動力たる雷を生み出せるのだから、素直に素晴らしいと思う。

 

「ごめんね、折角頼ってくれたのに……」

 

 垂れた目つきにハの字の眉を添えた溟人は自傷げに言うが、別に今すぐ使えなくともいいのだから問題はない。それに、溟人が謝らなければならぬことは無い。私が都合を汲まず迫ったというだけで、言わばこれは単なる私の身勝手なのだから。

 

「何を言う。この場所は溟人が居るからこそ成り立っているといっても……少し過言ではあるが、溟人はここを支える柱の一つなのだ。そう謙遜することはないと思うぞ」

 

「その励ましはなんだかズレてる気がするけど、まぁその、ありがとね」

 

「──ぉーい、溟人と滅理や。爪助(そうすけ)を見とらんか?」

 

 廊下で話し込んでいた私と溟人に、廊下の向こうから熔介がやって来て唐突な質問をした。

 

「いえ、5分ほど滅理とここに居ましたが見ていません。何かあったのですか?」

 

「それがの、銀子(ぎんこ)が爪助の菓子を勝手に食べちまったもんで。怒った爪助が銀子に飛びかかったんじゃが、呆気なくやられちまって。拗ねたのかどっかに行きおったんじゃよ」

 

 なるほど。爪助は施設に住む兄弟姉妹の中でも一際足の速い子だ。年老いた肉体の熔介ならば、見失ってしまうのは当然と言える。

 

「熔介さん、爪助は個性を使用していましたか?」

 

「おぉ、発動したまま跳んでったのぅ。して、それがどうかしたのか?」

 

「この“導蟲(しるべむし)”を使って足跡を辿ります。流石に施設外周の壁は越えていないでしょうが、探す手間を短縮できるので。ただでさえここの敷地は広大ですから、かくれんぼの子役が遊び終わっても見つけてもらえないなんて可哀想ですし」

 

 しるべむし…? 何だそれは、初めて見聞きしたぞ。

 溟人の口振りと、彼の腰に着けた小物入れ(ポーチ)から取り出されたランタンのような形をした虫籠を見て考えるに、人(もしくは動物)が残した足跡などを追跡する…導蟲と呼ばれる昆虫の一種なのだろうか?

 

「ほぉ…最近はそんなもんもあるのかぃ。便利になったねぇ」

 

「いえ、導蟲自体は40年前からありますが…念の為説明しますよ?」

 

 意外と古い導蟲とやらの歴史に驚きつつも、爪助の捜索をする為に必要だという導蟲への対象の匂いの刷り込みをまじまじと眺めながら、溟人の言葉に耳を傾ける。

 溟人の説明によると導蟲とは、捜索する対象の匂いを虫に覚えさせ、光を放つ虫の群れに導かれるがままに対象を探すことができるといった虫の名称のようで、何らかの原因により行方の分からなくなった施設の子供を捜索する際に用いられるらしい。

 

 そうして説明が終わり、予め所持していたという匂袋(においぶくろ)によって匂いを覚えた導蟲達の群れが、廊下に一筋の隊列を形作った。

 

「熔介さんは銀子を叱っておいて下さい。僕はこのまま爪助を探すので、発見し次第連絡します」

 

「あい、分かった。ちょいときつくしてやるかの。これっぽちも反省しておらんかったし」

 

 熔介の言葉に対し、はは…と溟人は苦笑を漏らした。如何せん銀子は腕っぷしが強い為に、こういったことはよく起きるのだ。

 

「滅理はどうする? 多分付いてきてもすることないと思うけど」

 

「弟の身を案じない姉はいないだろう。無論付いていくつもりだ」

 

 家族を第一に考え行動するのは当然だ。それに、導蟲とやらもどういったものなのか非常に気になるからな。

 

 微笑まし気に私を見る溟人と熔介を疑問に思いながらも、私と溟人は爪助とのかくれんぼの火蓋を切った。

 

 


 

 鬱蒼とした木々が集まり、まるで訪れる者をその暗闇へと誘う樹海。

 その最奥にて、薙がれた切株に腰掛ける黒い影があった。

 

「…ほう。俺にこの小娘の手引きをして欲しいと」

 

「そそ。私はそういうの苦手だし、それに忙しいからあんまり構ってあげられないんだ」

 

 唸るような渋く低い声に、場に似つかわしくないどこか気の抜けた返答が帰ってくる。

 

「他にも頼める者は居ただろう。猪突猛進の単細胞双葉(ふたバ)バアなんか、嬉々として承諾すると思うが」

 

「それを承知の上で、だよ。私はあの子に逞しく育ってほしいからね」

 

 隠し切れぬ我が子への期待を零し、白き龍は仄かに微笑む。葉の合間から降る木漏れ日が、その美しさを一段と映えさせていた。

 

「…俺に手綱を握らせる以上、一切の容赦は無いぞ」

 

「うん。頼りにしてるよ」

 

 警告ともとれる諫めの言葉は、的を得ないどこかずれた肯定と冀望(きぼう)言霊(ことだま)によって退けられた。

 

「はぁぁ……分かった。その頼み、引き受けよう」

 

「ありがとね、銀たろー(・・・・)

 

 諦観を帯びる深い溜め息を吐いた男は、その重たい腰を持ち上げる。

 明日から忙しくなりそうだ、なんて軽い言葉で流すには、あまりにも危ない要件だと言えるだろう。

 指導を頼まれた娘が持つ個性の名である“滅尽龍”は、彼が幼い頃に嫌というほど言い聞かせられた、古に仇をなす龍の名である。

 そんな危険な存在をこの手で育て、鍛え上げろというのだから、人使いが荒い所の話ではないだろう。

 

 こんなに危ない橋を渡るのは何十年ぶりだろうか。冰の龍の背に乗った“母親”の後ろ姿と太陽を重ね、日食を眺めながら黒風(くろかぜ) 銀狼太(ぎんろうた)はそう独り言ちた。




 ま~た新キャラ登場だよ…これもうわかんねえなあ
 今後書く予定があるか分からないので、霞隠(かすみがくれ) (みずち)こと“オオナズチ”の方は個性の概要をここで載せておきます。

 個性:霞龍(かすみりゅう)
 深い森の姿なき幻影たる龍の力と姿を宿している。
 モンスターの外見的特徴:紫色の外皮に小さめの翼、尾部に内側へ巻かれた(ふさ)の形をした蝸牛管(かぎゅうかん)を持ち、カメレオンのような顔に一本の角を生やした龍の姿をしている。
 概要:他の龍と名の持つ個性と比べるとその身体能力や攻撃性はやや控えめだが、最も特筆すべきは高度な擬態能力である。体内の発電器官から作られた電気を使って表皮の色彩を自在に変え、同時に発生させる濃霧とそれに含まれた五感を鈍らせる霧状の毒によって、あたかも透明になってしまったかのように思わせることができる。また、多種多様な効果を持つ毒を扱い、外敵を手玉に取り翻弄して戦う。
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