少年とウマ娘たち - ススメミライヘ - 作:ヒビル未来派No.24
fragment /○○られて始まる俺のトレーナー生活
夢を見ることがある。
それはとてもとても日常的な夢。
その夢の中で出てくる少年はアニメや可愛いキャラが好きな普通の高校生で……何気ない日常を送っていた。
でもそんな時、少年はあるゲームを見つけた。
最初はバカにしていたが、やる度にどんどんハマっていき、そのゲームは少年の日常になるレベルになった。
少年は元から創作心があり、自作の小説をとある賞に出すくらいはしていた。
だからこのゲームからさらなる妄想を広める。
そして少年は書き始める。
賞に出す小説とは別に……二次創作の作品を……。
輝かしい未来へ進む主人公と少女たち。
物語は始まる……!
そこでいつも夢は終わる。だからその少年が死んだのか、又は人生を全うしたのかは俺には分からない。
でもその少年は最後まで「次は平凡じゃない世界に生まれたいな」と口癖のように言っていた。
***
日本ウマ娘トレーニングセンター学園。
それは憧れの舞台に立つために、全国からウマ娘たちが座学を学びつつレースに出るためのノウハウを学ぶために設立された中高一貫校である。
ここでは毎日、様々なウマ娘たちが切磋琢磨時に励まし合い、時にぶつかり合いながら成長している。
特にトレセン学園の名を広めた皇帝『シンボリルドルフ』と怪物『マルゼンスキー』の功績はこれからも続くことだろう。
さて、与太話は終わりだ。
トレセン学園は皇帝シンボリルドルフが爆誕する年より前から、ある学科を作ることを発表していた。
それがトレーナー学科。
確かにウマ娘たちは早い……だがレースに出るためにはトレーナーの存在は必要不可欠になる。
さらにウマ娘たちが活躍したことにより『ウマ娘を支えたい!』という人がわんさか出始めたのだ。
しかしそれを学べるところはごく一部であり、仮に入学したとしても実践レベルの教養がついていなかったりとあまりにも微妙だった。
さらにそんな事態に拍車をかけたのが、ある事件。
そこまで知識を持っていなかったトレーナーが、ウマ娘にオーバーワークをさせてしまい、そのウマ娘を故障させてしまった。
これによりトレーナーの圧倒的知識量の無さはいづれ、多くのウマ娘たちに悪影響を与える。
そう考えたトレセン学園は一人前のトレーナーを育てることに目的を置いたトレーナー学科の設置を決めた。
トレーニングセンターは中高一貫なのに対し、トレーナー学科は高校しかない。
トレーナー学科で学べることは、ウマ娘に関すること以外にもレース出場のノウハウやダンスレッスン、さらに心理学にも近いようなことを学ぶ。
そして俺、谷崎玲音もそんな一人前のトレーナーになるため、ここトレセン学園に足を踏み入れた。
……なのに、なのにだ。
俺は今絶賛、誘拐されているのだ。
SHRが終わり、担任の先生から見習いでお世話になるチームを決めるため、なるべく早く見学しておくようにと言われてグラウンドに訪れてみた。
グラウンドには多くの人だかりができており、その理由はチーム・リギルの練習を見学するためだろう。
リギルはトレセン学園で1番力をつけていると言われているチームで、シンボリルドルフやマルゼンスキー、さらにはナリタブライアンやヒシアマゾン、タイキシャトルなど数多くの有名なウマ娘を育て上げて来たチームだ。
チームトレーナーの東条ハナさんもレースの指導はもちろん、その後のウィニングライブのダンスのレッスンも日本一と言ってもいいくらい指導レベルが高い。
「やっぱリギルかなぁ……レベル高いし、学べることも多くありそうだ」
そう考えながら寮に帰ろうとすると、前を見ていなかったからか誰かにぶつかってしまった。
「すみません、少し考え……ご……と……」
俺の思考はそこで止まってしまった。いや、誰もこんな状況見れば固まるに決まってる。そうに決まってる。
だって目の前にいたのは……黒いサングラスを掛けてマスクをつけている謎の人(いや、ウマ娘か?)だったのだから。
そして両端にも同じ格好をした謎の人がいたのだ。
そうしてポカーンとしていると目の前の謎の人物が声を上げた。
「スカーレット、ウオッカ、やっておしまいなさい!」
そう目の前の人物が声を上げると両端にいた2人がこっちににじり寄る。
そしてその1人はなにやら袋みたいなものを持っていて……やばい、これ逃げないと!
そう考えた瞬間、俺は体育でやったサッカーのようにサイドステップで3人衆を交わし、そのまま寮の方へ全速力で走る!
「ちょっと! 逃げるんじゃないわよ!!」
だがウマ娘、さらに3人もいるとなると逃げ切るのは絶望的に無理なことだった。
「あぐっ!?」
結局俺の方がバテて地面に倒れてしまい、そのまま流れるように袋の中に入れられてしまった。
「心配すんなって、別に取って食おうって訳じゃねぇから」
そしてえっほえっほという掛け声共に、俺は担ぎ込まれる。
俺……これからどうなるの?
そんなことを考えてるとガチャと何やら扉が開く音がしたと思ったらすとっと降ろされた。
誰かが袋に手をかけて、そして勢いよく袋を取る。
視界が開けて、その眩しさに目が少し眩む。
そして徐々に目が慣れてくる……そして目の前にいたのはさっき俺を拉致った3人衆だった。
というか、やっぱりウマ娘だったのか。
「「「チーム・スピカへようこそ!!」」」
こうして俺のトレーナーへの第一歩は拉致から始まったのだ。
……いやどうしたらそうなるんだよ。