少年とウマ娘たち - ススメミライヘ -   作:ヒビル未来派No.24

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 前回のあらすじ:なんか、色々ありました。(ざつぅ! だけど全部書くとエグイことになるので勘弁!!)

・UA179,000を突破しました。ありがとうございます!



心配はいらないよ。

 

『母さんが、倒れた』

 

 その言葉を聞いた瞬間、俺の血の気は引いた。

 

 視界がぐにゃりと歪み、呼吸が不規則になる。

 

 母さん……つまり、叔母さんが倒れたっていうことなのか。

 

 な、なんで…だって叔母さんは健康体そのもの。持病があるなんて聞いたこともないし、ましてや風邪を引いたところだって見たことがない。

 

 スピーカーで何か叔父さんが叫んでいるけど、何も入って来ない。

 

 だって今の俺の脳裏には──。

 

『おかーさん! おかーさん!! なんで! なんで!! ねぇ! ねぇ!!』

 

 動かなくなり、電子音が永遠に鳴り響く病室。

 

 そこには医者と小さな俺と、動かなくなった母さん。

 

 それに今の叔母さんの状況が重なる。

 

「叔父さん! 病院はどこ?!」

 

『あ、あぁ…○○病いn──』

 

 病院名が分かった後、俺は電話を切ってそのままタクシーを呼ぶ。

 

 しばらくするとタクシーが来て慌てて乗って、声を荒げながら病院名を伝える。

 

 その切羽詰まった声にタクシー運転手も驚いたのか、少し口を開けながらも「しっかりとシートベルトをお締めください」と言うと、法廷速度ギリギリで走って病院へと向かっていった。

 

 その間、俺は嫌な予感というものが頭の中に浮かび出ては振り払うというのを何度も何度も繰り返す。

 

 それでも胸が締め付けられる感覚はずーっと、続いた。

 

   ・ ・ ・

 

「ただの貧血よ」

 

「ひん……けつ?」

 

 病院に着いた後、一万円札をポンと出してそのまま飛び出るようにタクシーから出ていって、病院に駆け込む。

 

 叔母さんの名前を受付で言うと、すぐに病室を伝えられたのでダッシュをした。

 

 周りから「病院内は走らないように!」と言われるが、今の俺にそんな公共施設でのマナーを考える余裕はなかった。

 

『香菜葉さん!!』

 

 病室に着くと俺は勢いよく扉を開ける。

 

 そしてその先にいたのは──仲良く揃って俺の事を目を丸くして口をぽか~んと開けてい鞍安徹夫さんと患者服を着た妻、そして俺の叔母に当たる鞍安香菜葉さんだった。

 

 ──そして今に至る。

 

 俺の傍では正座をさせられている叔父さんが。

 

「あなた…ただの貧血なんだからそんなに大げさにしないの…」

 

「だ、だって急に倒れたから…」

 

「だからって玲音くんに誤解を招くような説明をしないの!」

 

「ハイ…スミマセン」

 

 そう言ってさらに肩身を狭くして小さくなる叔父さん。

 

 はぁっと叔母さんがため息を着くと、叔母さんはひょいとひょいと手招きをする。

 

 俺は椅子から立って叔母さんに近づく。

 

「ごめんね、玲音くん心配かけちゃって…」

 

「いえ…大丈夫です」

 

「……嫌な思い、させちゃったね」

 

「……」

 

 叔母さんは恐らく分かっているんだ。

自分がどんな気持ちでこの病院に来たのかを。

 

 自分が傍に寄ると叔母さんはさす…さすと俺の頭を撫でる。少しくすぐたかったくて目を閉じたけど、嫌な思いは一切しなかった。

 

 ふと目を開けると、真っ白でつやつやとした白毛の尻尾が、真っ白なベッドのシーツを撫でていた。

 

「私は大丈夫だけど、ちょっと検査しないといけないの…それでも三日くらいだけどね」

 

「うん…本当に大したことがなくて、よかった…」

 

「でもそこで小さくなっている人、一人になると何しでかすか分からないから…私が戻るまで近くにいてくれないかな?」

 

「……うん、分かった」

 

「いいのかい玲音くん? 学校もあるだろう?」

 

「大丈夫、ちょっと休んだくらいで進学できないとかにはならないよ」

 

「いやでも別に僕一人でも大丈夫──」

 

「「そう言って数年前に朽ち果ててたのは誰??」」

 

「……ハイ」

 

 叔父さんは確かにマンガを描くことに関してはとても高い技術力を持っている。

 

 だが、神様は叔父さんを作る時にマンガの実力しか入れなかったのだろうか。それ以外はからっきしダメなのである。

 

 高級車に乗ってるとはいえど基本法定速度の15キロ以下で運転し、家事はダメダメ。運動もはっきり言えばあんまりできない。50mをダッシュして半分くらいでペースを落とすくらいだ。

 

 そして叔父さんが缶詰めしている中、とある出来事で俺と叔母さんだけ一日出かけたのだが、そこにはぐちゃぐちゃになった家と倒れた叔父さんが……なんて、一種のホラーじみたこともあった。

 

「叔父さん一人ってシンプルにこっちも心配するから…」

 

「あはは…本音を言うと助かるよ…」

 

「じゃあ、よろしくね。玲音くん」

 

「えぇ、分かりました。香菜葉さん」

 

   ***

 

『──っと、いうことなんだ』

 

「そう、大変だったんだね」

 

『うん、でも心配することは何もないから』

 

「うん…」

 

 あのまま花火を見上げる時間を過ごしていると、私のスマートフォンに着信が来てました。

 

 取り出してみると『レオくん』と表示されていて。私はすぐに着信ボタンを押して電話に出ました。

 

 そしてレオくんの口から『叔母さんが倒れて家事をするから数日学園を休む』ということを教えられた。

 

「分かった、トレーナーさんにそのことを伝えておくね」

 

『助かるよ』

 

 その後は今日の出来事、つまりお互いがどんなことをしたのかみたいなことを世間話をしました。

 

 レオくんはクラス展示でディーラーをやっていたと教えてくれた。少し想像してみるけど、とても似合っていると思う。顔を出せばよかったな~っと少し後悔してしまいます。

 

 私はずーっとスぺちゃんと一緒にいて色んな展示物や食べ物飲み物を食べて過ごしたことを話した。

 

 レオくんはそれを聞いて『スぺらしいね』と電話越しに笑っていた。

 

『あ、そうだスズちゃん。一つ気になったんだけどさ』

 

「ん、なに?」

 

『LANEでなんか自分にメッセージを送っていた? 取り消しになっていたけど…』

 

「っ…」

 

 そう、私はあの後いつまで待っても既読にならなかったため、LANEで打ち込んだメッセージを送信取り消ししました。

 

 でもLANEのシステムとして、その取り消しのメッセージは残される仕様です。

 

「そ、れは…」

 

 私が何かを言おうとしていると……。

 

『あれ、なんか聞こえる…爆発?』

 

「え?」

 

 ウマ娘は電話の際は基本スピーカーです。だから周りの環境音なども拾います。

 

 だからこそ聞こえるのでしょう。近くで咲いている花火の音を。

 

「……今こっちはね、花火が打ち上がっているの」

 

『あぁ~、そういえば毎年打ち上がっていたっけ…ってことは今は外?』

 

「ううん、寮の自室。それでもとても綺麗に見えるんだよ」

 

『へぇ、なんかいいね』

 

「うん、とても綺麗」

 

『「……」』

 

 しばらく、沈黙が続く。

 

 その間、周りには花火が咲く音が響いている。

 

『「…行きたいなぁ」』

 

『「……え?」』

 

 あまりにも自然と発した言葉、その言葉は偶然なのか必然なのか重なりあった。

 

 しばらくの後、また沈黙が続く。

 

「(──今なら、言える。大丈夫、素直に言うだけ…)」

 

 私はマイクが拾わないくらいの小さな深呼吸をして、言葉を発する。

 

 少し、スマートフォンを持つ手に力が入った気がしました。

 

「ねぇ、レオ──」

 

『スズちゃん、10月のどこかにある花火大会に行かない?』

 

「……え?」

 

 スピーカーから発せられた言葉に、私は驚きを隠せません。

 

 確かに、私は似たようなことを言うつもりでした。でもそれは年内のことではなく一年後。つまり高三の時約束を交わそうと思っていました。もちろん時期尚早だと思っていたけど…。

 

「ら、来月?」

 

『うん、多分あるでしょ。花火大会』

 

「え、えっと…」

 

『まぁ、スズちゃんがよかったら…でいいんだけど…』

 

「……そう、だね。じゃあ毎日王冠が終わったら…いいかな」

 

『もちろん! こっちで計画は立てておくよ』

 

「うん、じゃあそろそろ切るね」

 

『うん、おやすみスズちゃん」

 

 そうして、レオくんからの電話は向こうから切られた。

 

 私はしばらく打ち上がる花火を見上げて、少し顔をを綻ばせ尻尾をぶんっと勢いよく振りました。

 

 

 

 

 




・L○NEのあの機能少し不安になりますよね…私だけ?

・大学でキャンプ(登山)しています。めっちゃハードスケジュール()

・次回の内容は未定です。お楽しみに。

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