少年とウマ娘たち - ススメミライヘ - 作:ヒビル未来派No.24
身体が右に、左に、そして上下に揺らされるような感覚に襲われる。電車ほどは激しくはないが、しかし車と比べると圧倒的に揺れている。
かたかた…とまるで木と何かがぶつかり合って擦り合っているような変な音が耳に入ってくる。
そしてさらに聞こえてくるのは、ピアノの綺麗な音。
そのピアノの音に釣られるように、俺はゆっくりと目を開ける。
最初に入ってきたのは、青。
真っ青な部屋の中央、テーブルを挟んで長鼻の老人が座っていて、その隣には青い修道服のようなものを来た少女の姿が分かる。
「再び、お目にかかりましたな」
長鼻の老人は杖に添えていた両手の右側の手をこっちに手向けながら、こう呟く。
「ようこそ我が『ビロードの部屋』へ」
「お主、久しぶりなのじゃ!」
「……なんだ神か」
「なんだとはなんじゃなんだとは!!!!」
少し記憶が曖昧だったが、だんだん蘇ってくる。
確か目の前のひょろっとした体格と長い鼻が特徴的で髪色が白髪になっているところから老人はクレンぺ…そして隣にい──た今俺の目の前で『おうおう、やるんかわれぇ!』的な態度を取っているのはサフィーだ。
「サフィー、客人に無礼を働くではない」
「だって馬鹿にされたんだもーん!!」
わーん! と泣くように叫ぶサフィー。しかしクレンぺの深い咳込みを聞いた瞬間、首元を掴まれた猫みたいに大人しくなる。
「……さて、今回呼んだのは他でもありません」
そう言うと、クレンぺはテーブルに手を翳し、それを横に払う。
するとどこからかタロットカードが出てきて、所定の位置に留まり、そして自然とめくられる。
そこには力のカード…それが逆位置になったカードがそのテーブルの上に鎮座していた。
「お主にまもなく、試練が来るのじゃ」
「……え?」
俺はサフィーが言った言葉に素っ頓狂な返事を返してしまった。
「待ってくれよ、試練ってもう終わったんじゃないのか?」
「ん? なにをほざいておるのじゃ?」
「いや、だって無力さはもうかなり痛感して────」
「アホか。あの程度で試練というなど、お主は幸せな愚者じゃの」
「こらサフィー、もっと言葉を改めなさい」
二人がとやかく言っている間も、俺の心臓は鳴りっぱなしであまり話が耳に入って来ない。
俺は夏、自分に何もないという無力さに気が付いた。だからかなりネガティブになっていたし、なんだったらあそこで絶つことも考えていた。
でも道や尊野の信念や、チーム・スピカのみんなで駆け抜けた夏合宿。そしてスズちゃんとの地元帰りで、その無力さは自覚しながらも、未来には進もうと決心したはず。
「試練というのは己の心の中にあるもの…しかし時には外からの力による試練。これもまた生きているうちはあり得ることなのです」
「要するにお主はもともと持っていた試練…いや、未練を超えただけ。試練はまだまだこれからあるのじゃ」
「────」
俺は深いため息を漏らしていた。あの時は短期間とはいえど、かなり辛い経験をした。だからもう二度とないように克服したはずなんだ。
なのに、試練は今から? あれ以上に苦しいことなんて、一体…なにが…。
『───────カに─障──!!』
「ぐっ…?! ぁぁあああああああ!!!???」
唐突に頭に響いてきた言葉、それを聞いた瞬間俺は頭と胸をぎゅっと手で抑え、その場に蹲り目を強く瞑った。
そして全身に巡ってきたのは────恐怖だ。
恐怖の感情が、今聞こえてきた言葉に対して、芽生えた。
息が乱れる。動悸が激しい。視界が点滅する。頭が痛い。そして何より、胸が張り裂けるように痛い。
そしてこの痛みを、俺は知っている。
…誰かの死。大切な人が離れていって、己の無力さとこの世の残酷さともっと一緒にいればよかった、いたかったという後悔──そう言った負の様々な感情が俺に心をめった刺しにし、そしてその冷たく暗いものがずっと見にまとわりつくような…あの感触。
母さんが目の前で亡くなった時と、同じだ。
「はぁ…!? はぁ…はぁ…」
「おぉ~帰ってきたな、ほれお茶じゃ」
サフィーがそう言うと、テーブルの上に青色の飲み物を出される。
「ハーブティーじゃ、安心せい。毒ではないのじゃ。レモンは入れるかの?」
「…じゃあ…もらう」
「承知したのじゃ」
そう言うとサフィーは、ひょいっとどこからかレモンの輪切りを取り出して、カップに入れる。
すると青かったハーブティーが少しずつレモンを軸に色が変わっていき、最終的に青かったハーブティーはあでやかな紫色に変わっていた。
「おぉ~変わりよった変わりよった」
「……初めてやったの?」
「だって我は酸っぱいのは嫌いじゃからな♪」
「そ、そうか…」
俺はサフィーの言葉を流しながら一口、そのハーブティーを飲む。
…なんともいえない、でも美味しく華やかに香るその味は舌と喉奥に残るような感じだった。
そう思った瞬間、視界が眩む…そして急に眠気がやってきた。
「どうやら時間のようですな…ではまた会う日まで、ごきげんよう」
────意識が、途切れた。
・ ・ ・
────ピピピ、ピピピ、ピピピ、ピピピピピピピピピピ。
耳元で劈く、高い高い電子音。その音は俺の脳をフルに動かすには十分だった。
俺は鬱陶しく思いながら、手をばたばた音のする方に動かす。しばらくすると止まる。
「……ふぅ…」
俺は一度ごろんと身体を捩って、天井を眺める。そしてそのまま流れるように寝返りを打って再び寝ようとするが…体を起こす。
「……そうだ、今日も行かないと…」
俺は布団から出て、その布団の上に乱雑に置いてあった。そこにはハンガーに掛かっている青いジャージがある。それに手を伸ばして、袖を通す。
最近は毎日着るようになったからか、扱いが逆にぞんざいになりつつある。
俺は部屋に、そして後生寮から出る。
「おぉ~谷崎くん、おはよぅ」
「未浪さん、おはようございます」
「今日も朝早いねぇ、また公園かい?」
「えぇ、だって幼なじみの頼み事ですから」
「いいねいいねぇ…青春って感じがするよ」
「あはは…」
「でもそんな毎日毎日走っててその幼なじみは大丈夫なのかい?」
「そこは自分も細心の注意を払っているので…」
「まぁ、気をつけて行っておいで」
「えぇ、行ってきます」
寮長である未浪さんに軽い挨拶を交わしてから、俺は駐輪場からロードバイクを持ち出してそれに乗って公園に急ぐ。
11月に入る一日前のこの朝の寒さは、息をする度に喉を冷やし、そして肺に突き刺さる。
だがそんなことよりも、俺の頭の中は「待たせていたらどうしよう」という不安しかなかった。
公園の入口に入った後、俺は少しだけ息を詰まらせてしまう。
何とか息をと整えようとしていると…。
「大丈夫、レオくん?」
そう、とても優しい声が横から聞こえてくる。
顔をそっちに向けてみると、そこには同じく学園の指定ジャージを着たスズカがいた。
「ごめん、スズちゃん…ちょっと、遅れた…」
「ううん、そんなに待ってないから大丈夫。ゆっくりでいいよ」
「……分かった」
スズカにそう言われた俺はゆっくりと深呼吸をし、気持ちを落ち着かせる。
スズカはそんな様子をただ見るわけではなく、俺の背中をさすってくれている。さす…さす…と布と手がすれる音が耳の中に鮮明に入ってくる。
「ありがとう、スズちゃん…なんとか落ち着いたよ」
「ならよかった。でも本当にごめんね、毎日のように付き合わせちゃって…」
「ううん、スズちゃんのためだもん。それだったら俺は、喜んで協力するよ。まぁ遅刻した人間が言えることではないけどね」
「ふふっ…でも、それで今日で終わりだから」
「…そうだよね、明日だもんね──秋の天皇賞」
「えぇ」
喫茶店でスズカに言われた頼み事、それは『天皇賞・秋まで、走り込みに付き合ってほしい』というものだった。
恐らく、スズカ自身にとっても、この天皇賞・秋は特別な理由がある。
なにせ、ここまで宝塚、いや2月から続くスズカの勝利の方程式。それが完全に証明される1800~2200mの中距離GⅠ…それが、天皇賞・秋なのだ。
「…………」
「んっ? どうしたの、スズちゃん?」
「ううん、なんでもないよ…行こうか、レオくん」
「あぁ、行こう」
スズちゃんは走り始め、そしてそれに続くように俺もロードバイクを漕ぐ。
普通、ウマ娘の走る速さは人間じゃ追い付けるものではない。だが走り込みなどのロングランだったら訳が変わる。ロードバイクや原付バイクなら、なんとか追い付けるレベルには速度は落ちるのだ。
……まぁ、そうは言っても80%くらいの力でずっと漕ぎ続けるみたいなものだけど。
それでも…スズカと並走するこの時間帯は、とても好きだ。
・ ・ ・
「「はっ…はっ…はっ…」」
その後数時間、いつもより長い時間。俺たちは走った。
いつもだったら練習がない+休日ならもっと走るが、明日は大切な天皇賞・秋。だから正午少しで切り上げて、あとはリフレッシュということにしたのだ。
「お疲れ、スズちゃん」
「うん、着いてきてありがとうレオくん。飲み物買ってくるね」
「あぁ、分か────」
──ピキリッ…。
ったと言い切る前に、スズカは自販機の方へ小走りに行く。
だけど、俺はそのスズカの後ろ姿を目で追わなかった。
…ならなぜこんな風に言うかだって? それは、俺は彼女の左脚…一瞬、本当に一瞬だった。
ぐらついたのだ。いつもしっかり地に足をつけている、その脚が。
それに、確かにこれも一瞬だけど聞こえた。何かが、ひび割れる音。
「(なんだ、今の音…それに、さっきのぐらつき…)」
嫌な、予感がする。
冷や汗が止まらない。呼吸が浅く、早くなる。
「……故障…」
俺は、今なんて言った?
自分自身で発した言葉に対して思う疑問ではないが、それでも俺は自分自身何を言ったのか分からなかった。
「レオくん?」
「っ…!? す、スズちゃんか…」
「どうしたの? そんなに顔を真っ青にして、それに汗だく…」
「いや、なんでもないよ…うん…」
「そう? 無理はしないでね」
「あぁ…」
そう返事すると、スズちゃんは俺の隣に座って飲み物を渡してから、ミネラルウォーターをごくごくと飲んでいる。
俺は再び、スズカの足下を見る。
やっぱり、少し気付きにくいけど、少しだけ筋肉が震えている。
「ねぇ、スズちゃん」
「んっ…? なにレオくん?」
心配する俺に対して、曇りのない翡翠色の瞳をこっちに向けてくる。そんな表情を
「その左足、どうしたの?」
『あっ…いや、何でもない』
…え?
俺は確かに、スズカの左足を気にするような発言をした。
いや、でも俺が本当に言いたかったのは、そして頭の中で反響したのは…なんでもないという意味を含めた言い方だった。
「なんか最近、ちょっと脚に力が入らない時があるだけ…流石に走りすぎかしら?」
「いや…そんなことはないと思うけど…」
確かに最近は毎日走っているから、脚に疲れが溜まっているとは思う。
だけど、力が入らない? そんなことがあるのだろうか。
「ねぇスズちゃん…ちょっと脚見せてくれない?」
「えっ?」
「自分さ、マッサージの講義なぜだか取っているんだ」
「なぜだか?」
「なぜだか。でもまぁ今は楽しく学んではいるんだ…んでまぁ、ちょっとの違和感くらいかもしれないけど…一応、触診しようと思って」
「そこまでする必要も────」
多分、遠慮するような言葉を言おうとしたのだろうが、スズカは途中で唇を噛んでその言葉を遮って、顔を少し俯く。
そして、しばらくすると顔を上げた。そこには微かな笑みを浮かべていた。
「じゃあ、お願いしようかな」
「うん…じゃあ、ちょっとベッドでやりたいから…俺の部屋来れる?」
「えぇ…でもここでもよくない?」
そう言ってスズカは公園のベンチを指さすけど、俺はいやいや…と否定する。
「施術は確かに硬めなところが多いけど、流石にここだと人目がね…」
「私は気にしないけど…」
「俺が気にするの…」
そう言って俺は手を掴んで…愛車のハンドルを片手で持ち、公園を後にする。
・ ・ ・
「烏龍茶でいいかな?」
「えぇ、大丈夫よ」
後生寮に戻った後、俺はスズカを自分の部屋に通し冷蔵庫に入れていたパックの烏龍茶を開け、グラスに注ぐ。
こぽこぽと、少々不規則な液体を溢さないように手元を集中させて、零さないようにする。
注ぎ終わり、スズカの前に烏龍茶を置く。からんっと氷がグラスに当たる音が響く。
「ありがとう、レオくん」
「このくらいでお礼なんていらないよ」
ふふっと笑いながら、俺はその烏龍茶を一気に飲み干す。
サイクリングでまぁまぁ乾いていた喉が、一気に潤うような感覚がした。
飲み干し、コースターにグラスを置く。カランっと氷が転がる音が鳴った。
前を向き直ってみると、こくっ…んくっ…っと小さく音を出しながら、烏龍茶を飲んでいるスズカ。そんな当たり前の光景なのに、なぜだか目が離せない。
「んっ? レオくん。なにかついてる?」
「え? 別にそんなことないけど…」
「そ、そう…そんなに見つめているから、何かあるのかなって思ったの」
そう言われて、自分はようやく視線を外すことができた。
それと同時に、俺はとても無意識に、そして自然とスズカのことを見ていたんだと思うと、なんか恥ずかしくなる。
「そういえば、マッサージって言っていたよね。どんなこと習っているの?」
「ん~…普通に指圧によるマッサージやその他のマッサージ。あとウマ娘を中心に身体構造などを学んでいる感じかな。
「へぇ…結構本格的なのね。ちょっと興味あるかも」
「まぁわかっていないことも多いらしいけどね。んと、そろそろやろっか…」
「えぇ…ベッドに仰向けになればいいかしら…?」
「うん」
そう言ってから立ち上がり、俺はベッドの方に行くが、スズカはなぜだかそのまま座っていた。耳が少ししゅんとなっており、だが尻尾はぶんっ…ぶんっ…と一定のリズムで振られている。
「あの…レオくん。先にシャワー、いいかな…?」
「え? あぁいいけど…」
「着替え…ジャージとかあるかな…?」
「あぁうん、アンダーシャツも多分あるよ」
「うん、お願い…」
そう言うと、スズカはシャワー室の方に入っていった。
俺はシャワーする音を確認してから、ジャージなどを置いておく。
…そういえばマッサージする時はアロマを焚いておいた方がいいと授業の先生が言っていたことを俺は思い出す。
一回使って以降、特に分からなかったアロマオイルを加湿器の受け皿に数滴たらしてみる。
なんでもこれはウマ娘用のアロマオイルであり、嗅覚がとても敏感なウマ娘にストレスを与えないためにかなり薄めになっているらしい。
「……うん、ほんとちょっとしか分かんないな…」
この程度でウマ娘ではかなり香る方らしい。
出てくるまでもう少しかかりそうだと思い、俺は暖かい濡れタオルなどを用意する。
がちゃりっと音がしたのでそっちの方を見てみると、そこには自分のジャージを着て少し頬を紅潮しているスズカが立っていた。
「シャワー、ありがとう…」
「ううん、全然。ほら、こっち来てよ」
「あっ、その前に髪の毛を乾かさなきゃ…ドライヤーある?」
「あぁ、それならそこに…なんだったらやろうか?」
「え、いいの?」
「あぁ、そのくらいお安い御用だよ」
「……じゃあ、お願いしようかな」
俺はドライヤーを手に取り、スズカの髪を乾かす。
女性の髪の毛っていうのはあんまりここまでべったりと触ることはなかったけど、スズカの髪の毛はとても絹のように柔らかいと思った。
「あれ、なんかいい匂いがする…」
「あぁ、ウマ娘用のアロマオイルを焚いてみたんだけど、全然分からなくてね」
「これはラベンダーの匂いね。私も存在だけしか知らなかったかも」
なんて雑談をふつふつとしている間にも、スズカの髪の毛は完全に乾く。その柔らかく、とても艶のあり美しい髪の毛を見て、俺は少しばかりスズカの後ろ背をぼんやりと見た。
「ありがとう、レオくん」
「うん。じゃ、やろっか」
「えぇ」
そう言うとスズカはとても静かに俺のベッドに腰かけ、そして身体をうつ伏せにゆっくりと倒す。
ぶんっと尻尾が振られた後、ぺたんっと尻尾がベッドにくっつく。
「じゃあ、やって行こうか」
***
身体を自分から倒して、そのままうつ伏せになる。
…その瞬間私はなにか、『安心なナニカ』に包まれたような気分になります。
この部屋はラベンダーの香りが広がっていますが、その前の匂いが好きでした。
その前、つまり…この部屋に招かれた時です。
それが薄れていて少し残念で、そして正体がなんだろうというもやもやが少しありましたけど、でも分かりました。
これは、レオくんの匂いだったんだって。私の安心する匂いが、レオくんなんだってことに。
ふと、クラスメートから聞いたお話を思い出します。ウマ娘用のアロマオイルにはウマ娘の敏感な嗅覚に向けに作られているのと同時に、人間の匂いを薄める効果があるらしいです。
男性とウマ娘では身体能力が大きく違い、ウマ娘による傷害事件や拉致監禁などもあります。アロマオイルは、それの防止策の一つとも言われているそうです。
そしてその気持ちが、ちょっと分かったかもしれません。
本当に偶然ですけど、私は頭をレオくんが使っているであろう枕に頭を乗せました。
その瞬間に頭がくらっ…ってなるような感覚と同時に、幸せな気持ちが溢れてくるような…ちょっと不思議な気持ち。
少しずつ、安心して眠くなっていくような、理性がゆっくりと溶けていき、そして目の前の人しか考えられない。
……。
びくっとした感触が、左脚から感じました。
私は何事かと、顔だけを向けてみると、そこには私の脚を触ったまま──顔を青くしているレオくんでした。
「……どうしたの?」
「…い、いや…」
そう言った後、レオくんはまた私の脚をマッサージします。しかし、その手つきはさっきとは違う。とても繊細…割れ物を扱うような、優しい手触りでした。
さらに言ってしまえば、ただ優しいだけではなく。震えている。表情は、恐怖を含んでいました。
「……レオくん」
私はゆっくりと身体を起こし、レオくんと向い合せになる。そしてそのまま両腕を伸ばし、彼の背中に手を添えて、そして自分の方へと手繰り寄せる。
「っ!? す、スズちゃん!?」
とても自然と、私はそうしていました。考えるよりも先に、身体が動いていました。
でも、今のレオくんはなにかを怖がっている。再会してそろそろ8カ月くらいで期間が空いていたけど、昔からの幼なじみの勘が働いたのかもしれません。
「レオくんが今、何に怯えているかは分からない…でもね」
ぽんっ…ぽんっ…と、優しく頭を撫でる。
「私は、ここにいるよ…」
「……」
「花火の時も言ってたけど、レオくんは遠くを見過ぎ…今は、今を見て?」
「……うん」
その後も、私はレオくんの頭を撫で続け…そのまま解散となりました。
脚の違和感は────少しだけ、”忘れられたような”気がしました。
そして、11月の始まり。その初日の日曜日。
『東京レース場第11レース、1枠1番に入ります。1番人気のウマ娘、サイレンススズカ!!』
彼女が左手首に着けた翡翠のブレスレッドが──輝いた気がした。
・大変…本当に大変お久しぶりです。ヒビル未来派No.24です。いや、本当に申し訳ございません。
・何か月ぶりなんですかね…ほんと。そしてスズカ、誕生日おめでとう。
・正直なお話をすると、この先のお話を書くのがとても怖かったです。しかしようやく決心がついたと思います。(遅すぎる)
・次回、天皇賞秋前編────────の予定です。