少年とウマ娘たち - ススメミライヘ - 作:ヒビル未来派No.24
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トレーナーを目指す者同士/トレーナーができること
トレセン学園トレーナー学科は、名前こそはトレーナーになるために専門的な事を学ぶ場所のように聞こえるが……実際は少し違う。
トレーナー学科と言っても、高校卒業の資格は取るために高校レベルの教育は行われる。(それも普通の高校よりもスピーディーに授業が行われるため、なかなか付いていくのが難しい)
そこにトレーナーになるための技術がほんの少しだけ教えられるだけだ。
それも実践的というよりかはデータや歴史に関する授業が多い……理由としてはウマ娘はまだ分かっていないことの方が多いためだ。
例を挙げるなら、人間は鍛えれば筋肉がつくのに対し、ウマ娘はぷにぷにと筋肉が柔らかくなるとか。ウマ娘は文字通りなぜ女の子しか生まれてこないのかとか……とにかく様々だ。
だからこの前も思った事だが、お世話になるチーム選びは大切になってくる。
それは所属するチームによって、得られるものは変わってくるからだ。
少しずつだが着々と周りのクラスメートたちもチーム選びが決まってきている。
普通だったらこの時期に志望書を提出して、その後定員が割れるなら入団試験をしてお世話になるチームが決まる。
その時期が大体4月の終わり……だから今の時期にチームの練習に入れている俺はある意味特別な存在だと言える。
「んで、谷崎はどこに志望したんだよ? リギル? アスケラ?」
話しかけてきたのは偶々隣同士になったクラスメートの
短髪の茶髪、いわゆるギャルゲーの友人枠でいそうな感じの容姿だ。
あっ、ちなみに俺自身はギャルゲーをお父さんがやってたところを見てただけでやったことはない。
「俺はもう決まってるから」
「えっマジで!? どこどこ?」
「えーっと、スピカってところ」
「スピカ〜? ……そんなチームいたかな?」
尊野はチーム一覧表を取り出す……でもまぁ、見つからないだろう。
確か詳しくは知らないけど、指導できるチームになるにはある程度の実績と年月、そしてウマ娘が何人以上かいないといけないらしい。
だからスピカは当てはまってない……ほんと特別だな、俺。
「まっ、俺はアスケラを希望したぜ」
「へ〜尊野くんはアスケラなんだ……ワタシはやっぱリギルかな」
そう横から横やりを入れてきたのは俺の後ろの席のクラスメートの道だ。
肩よりも長く伸ばした紺色の髪、体型もスラーっとしていてモデルと言われても、多分多くの人が信じるんじゃないだろうか。
「でもよリギルって倍率高いんだろ、大丈夫かよ?」
「そこはまぁ……その場で分かることかな。それよりも谷崎くんはスピカに入ったの?」
「あぁ、まぁ……」
「よくあんな看板を作ったチームに入ったね」
「……看板?」
道が話してくれたが、なんかウマ娘の寮に向かう途中にウマ娘3人がダートコースに生き埋めにされている看板があるらしい……多分ゴールドシップが悪ふざけで提案したんだろう。
そしてスカーレットとウオッカ……災難だっただろうな。
心の中で合掌をしておく。
「でもまぁ……入って良かったと思ってるよ」
「そっか。ワタシも早くチームに入りたいな〜……」
「俺も俺も! ぜってぇアスケラに入るぜ!」
「2人とも、頑張れ」
そんな一人前のトレーナーを目指す者同士の何気無い日常会話だった。
・ ・ ・
そして放課後になり、俺はスピカの練習にいつものように参加、そして初めて最初から先生が練習に参加していた。
そしてそれにも理由があり……。
「1週間後いきなりデビューレースですか!?」
チームのみんながターフで軽いウォーミングアップで走りこんでいる時に、俺は先生から衝撃的な事実を告げられた。
その内容は入ってきたばっかりのスペシャルウィークのデビューレースを約1週間後に行うというものだった。
いや……1週間後って……えぇ……。
「お前スペじゃないだろ、あいつとほぼ同じリアクションだぞ?」
「いやだって、彼女はこの学園に転入してきてまだ日が浅いですよ?」
「別に出るのが早いからってダメって訳ではないだろ」
「そうですけど……」
そんないきなり走って大丈夫なのかな……しかも調整は1週間って……。
スペシャルウィーク、今どんな気持ちなんだろう。
「なぁ玲音、お前に一つ訊く。ウマ娘が走るために俺たちトレーナーができる事は何だと思う?」
「……」
俺は考えてみる。
トレーナーにできること……それはやっぱり目標のレースに向けて、そのための練習メニューを考えること。
そう先生に言ったが……返事としては……。
「ダメだな」
「えっ」
必死に考えたことはスパッと切られてしまった。
練習メニュー以外に……何かあるか?
「俺たちにできる事……それはコンディションを整えてやることだ」
「同じ意味じゃ?」
「違うな、お前が言ったのは一方的に与えるだけだ。対してコンディションは状態、条件、そして体調を整える事を言うんだ」
「……」
「もちろんお前が言ったことは状態を整える事の一つだが、それ以外にも気の迷いや悩み、些細な違和感や怪我をケアし、レースに集中させることもトレーナーがやることだ」
なるほど……要するにウマ娘と親身になれってことだろうか。
昨日聞いたがスペシャルウィークはスズカの走りに憧れているらしい。
だったら今のスペシャルウィークはレースの迷いより、デビューへの期待の方がでかいのだろうか。
少しでもスズカに近づく……そのためにレースする……それが条件を満たすこと。
そして体調が良くなければ、そのレース云々関係なくなるってことなのかな。
「体調は調子以外にも、体調管理……特に減量に関することには注意するんだ。トレーナーに黙って減量するやつも多いからな」
「なるほど……」
確かに減量でダイエットして、それで栄養失調を引き起こしてしまったら、それはそれで本末転倒だよな。
逆も然り。アスリートにプレッシャーでご飯を食べすぎる人がいるが、そうなると本来のパフォーマンスを発揮できなくなってしまうよな。
うん……先生が言っている事を俺はちゃんと理解できてる。
「腑に落ちたって顔だな……じゃあお前に問題だ。今、俺たちがスペシャルウィークにできることは何だ?」
「……」
俺たちが……できること。
俺は不意にスペシャルウィークの方を見てみる。
その顔に……不安などない。ただ目の前のことを一生懸命にやろうとしている。
だったらできることは……。
「スペシャルウィークにレースへの不安を与えないこと……ですか?」
そう言うと今度も先生は間髪なく言葉を言った。
でも表情はさっきの期待違いだったという表情ではなかった。
「正解だ……!」
俺は内心でめっちゃガッツポーズをする。
いや、ガッツポーズじゃ済まない。もう全国模試で一位を取ったくらいに大声で「いよっしゃああああぁぁ!!」と叫ぶ。
……まぁ、取ったことないけどな。
「そんなお前にお使いだ」
「もともとさせる予定でしたよね?」
「ゴルシのロッカーの上に置いてある物を取って来てくれ」
「……分かりました。どんなやつですか?」
「あ〜底の浅い箱っぽいやつだ。色は赤っぽいやつな」
「分かりました」
そう答えて、俺はトラックから離れて部室の方へと駆け足で向かった。
・我、ウマ娘のガチャ運が無さすぎて枕で泣きたい侍。
・尊野と道の出番はちょくちょ来ます。(多くはないけど)
・次回は明日投稿する予定です。