少年とウマ娘たち - ススメミライヘ - 作:ヒビル未来派No.24
・UA17000・18000、お気に入り300件突破しました。誠にありがとうございます。
・”予定”なので変更もあります。(前編と後編に分けます)
・馬はバと表示します。(点が二つの馬も実装してくれ(泣))
あの驚きの1週間調整宣言から5日が経過した。
スペシャルウィークはデビューレースに向けて日々練習に明け暮れていた。
スズカから聞いたが、練習の後は必ずと言っていいほどベッドにダイブするらしい。
俺もサッカーや卓球をやっていた時はそうなったので、今のスペシャルウィークがどれだけ本気で練習に取り組んでるのかが伝わってくる。
実際、最初はぎこちなかった走りが少しずつ綺麗になっている気がする。
そして……今日の朝刊でスペシャルウィークが走るレースの出バ表が公表された。
「連下二つ……か」
「おっお前も見たのか今日の朝刊」
今日も俺はチーム練習に参加している。
その際、今日見ていた朝刊の数値と今のスペシャルウィークの走りを見て独り言を漏らした。
ただ先生には聞こえてしまってたらしい。
「思ったより期待されてないんですね……あんなに頑張っているのに」
「そりゃ転入したばかりでデータが少ないからな……不満なのか?」
不満……そう言われればそうかもしれない。
スペシャルウィークは頑張っている。一週間という少ない期間で驚くくらい成長している。
新米にもなっていない自分だが……彼女には素質、才能があると思っている。
それこそ彼女が言っていた『日本一のウマ娘になる』というのも、不可能とは言えないだろう。
「まっ、気にすんな……それにその連下すら貰えないウマ娘もいる。それはお前も見ただろ」
「……はい」
「この
「はい」
そう話していると、トラックを回っていたみんなが戻ってきた。
俺は用意していたスポーツドリンクとタオルをみんなに配る。
「はいスズ」
「うん、いつもありがとうレオくん」
「今俺にできるのはこれくらいだからな」
俺は確かにトレーナーとしての知識を少しずつだが付けてきてはいる。それは自分でも自覚している。
だがチームでやっていることはトレーナー業というよりはマネージャー業だ。
でも別に苦ではない。これでもみんなを支えているということだから。
それにこういう下積みの経験がいつかトレーナー人生で活かせると俺は思っている。
「よ〜しお前らストレッチが終わったら部室に集まれ!」
・ ・ ・
「えー、ここからスタートしてぐるっと回ってここがゴールだ」
スペシャルウィークのデビューレースの会場である阪神レース場の見取り図をホワイトボードに書き、レースの大まかな流れを先生はスペシャルウィークに教える。
「あっはい」
「んで、スペ先輩の作戦は?」
ウオッカの言葉に対し、スカーレットは逃げ、ゴールドシップは追い込みを提案する。
しかし先生は静かに首を振った。
「いや、作戦は……なし!!」
「「はぁ?」」
そう不満な声をあげた後、ウオッカは先生の首を絞める……いわゆるチョークスリーパーを決めている。
……でもちょっと待てよ、トレーナーがこんな大切な時に意味のないことを言うだろうか。
もしかして……。
「無いのが作戦?」
俺が思いついた言葉を、スズカが話してくれた。
「そうそれ……だはぁ……!」
スズカが言った言葉に肯定の返事した後、ウオッカはチョークスリーパーを解いた。
「無いのが作戦って……どう言うことですかトレーナー?」
「それは……玲音、答えられるか?」
「そこで俺に振るんですか!? ……えーっと」
考えろ谷崎玲音、さっきはスズカと同じ答えに至ったんだ。ならもう少し考えればその意図が分かるはず。
……そう言えば、トレーナーはどんな練習をスペシャルウィークにさせて来た?
ハードルを使った腿上げダッシュに走り込み、スクワットなどのフィジカル練習。
併走に……あれ、そう言えば先生が出していた練習ってかなりバランスが取られている。
つまり、トレーナーは……。
「スペシャルウィークの好きなように走らせる……ってことですか?」
そう、先生は脚質特性に合わせたトレーニングをしていない。
逃げ、先行、差し、追い込み……ウマ娘にはそれぞれにあった脚質がある。
だから普通チームのトレーナーはそのウマ娘にあったトレーニングを作る。
だが先生がやっていたのはスタミナやスピードなどの身体能力を上げる練習しかしなかった。
それは……スペシャルウィークの走りを縛らないために……そうしたのだ。
っというのが、俺の考えた先生の意図だ。
「そうだ。スペシャルウィーク、駆け引きしようなんて思うな……好きなように走れ」
「好きなように……」
「前方だろうが後方だろうがどこでもいい……自分が、ここだ! っていう気持ちのいいタイミングでスパートをかけて、先頭のウマ娘を抜け!」
確かに言っていることは分かる……でも、それはスペシャルウィークからしたら、かなり無責任なことを言っているようにも聞こえるだろう。
そのせいか、少しだけスペシャルウィークの顔が曇った。
「っ……ここだって分かるかな……」
「まぁ、それは経験もあるし、生まれ持ったセンスもあるし……やってみないことには……な?」
「……」
・ ・ ・
「……」
俺は寮に戻った後もスペシャルウィークのことを考えていた。
もうすぐレースなのに……あんなに暗く曇った顔でいいのだろうか。
「っ……あ〜、気になって眠れない……」
そう言う俺の手には携帯があった。
その画面に映っているのはある場所の電話番号……栗東寮の固定電話の電話番号が入力されている。
そして俺の親指は何度も何度も、通話ボタンを押そうか押さないかと指を動かす。
正直今の時間から掛けると寮の人に迷惑だろう。でもスペシャルウィークのことも気になる。
……いや、大丈夫だろう。
だってスペシャルウィークのルームメイトはスズカなんだ……きっとスズカなら、スズちゃんならスペシャルウィークの悩みを晴らしてくれるはず。
そう思って俺は寝る準備を始めた。
・ ・ ・
そして数日後……ついにスペシャルウィークがデビューする日……俺は……Zzz……。
***
「遅いな玲音のやつ……朝に駅で集合って言ったろ……!」
「もう新幹線出ちゃいますよ!」
「ったく新人! 何やってるんだよ!!」
「どどど、どうしましょうスズカさん!」
「れ、レオく〜ん……」
レオくん、何で集合時間に来てないの〜。
「っ……仕方ない。俺たちは先に阪神に行くぞ。少し遅れてもパドックには間に合うだろ」
「ちょっとトレーナー、それはあまりにも無責任じゃ」
「1人のために全員を遅らせる訳にはいかない。行くぞ」
「ちょ、おいトレーナー待てって!」
トレーナーが改札を通っていったので、私たちはトレーナーを追って改札に入る。
レオくん……早く来てね、私は信じているから。
・やらかしてしまいましたな〜玲音(他人事&そうした張本人)
・移動はバスや車よりは、電車などの交通機関を使ってそう。(個人的解釈)
・次回は後編、玲音移動・スペのデビューレースです。