少年とウマ娘たち - ススメミライヘ - 作:ヒビル未来派No.24
・UA29,000・30,000を突破しました。ありがとうございます。
・今回最後のメインウマ娘が出ますが、正直言って年齢的設定がガバガバです。予めご了承ください。(主人公より一つ年上だと思ってください)
昔々……と言ってもほんの少し前、ーーが小学校2年生だった時、レクリエーションが開かれたことがあった。
その内容は入学したばかりの1年生と遊ぶーー本当の目的は学校への不安をなくす事なんだろうけどーーというものだった。
でもーーは馴染めなかった。
元々人見知りというのもあったけど……担当したクラスが自分たちのクラスより人数が少なかったの。
だから数人1年生と触れ合えないという事態になってしまった。
でもそんな子は仲のいい子の近くに行って、2人や3人で1年生の子と遊んでいた。
このクラスに仲のいい子はあんまりいなかったから、教壇に座っていた。
そんな時だった……彼が隣に来たのは……。
「きみ、1人なの?」
「えっ? えっ?」
明らかに1年生の子だと思うけど、でもその子はまるで同年代の子と喋るように気さくなに話してきた。
……もしかして背が小さいから同年代だと勘違いされている?
「ぼくはれおん、きみは〜……ーー?」
「あっうん……ーーです……」
左胸に貼ってあるガムテープで出来た名札(と言ってもガムテープに名前が書いてあるだけ)を見て、ーーの名前を呼ぶ
「なんでーーはみんなと話さないの?」
「それは……ーーはじゃまだから、みんなとちがうから」
「ウマむすめだから?」
「っ……うん」
その時、ーーは周りを見てみた。
そう……自分たちのクラスでウマ娘なのはーーだけ、他のウマ娘はみんな他のクラス。
そしてこの1年生のクラスにもウマ娘の子はいない。
ウマ娘はこの学校にも大勢いるはずなのに……ーーのクラスだけはーーしかウマ娘がいない。
別にイジメとか仲間はずれにされているって訳じゃないけど……でも、どこか壁があるような感じはする。
「じゃあぼくとお話ししようよ! 同じ学級なんだし!」
「えっ……あの……えっと〜……」
一応、上級生なんだけど……そう言いたかったけど、目の前に男の子の顔があまりにもキラキラしていたので言い返せなかった。
彼は最近こっちに引っ越してきたらしく、全然この町を知らないらしい。
「だから、仲よくしてくれるとうれしい!」
「……うん、いいよ。ーーがれおんくんのさいしょの友だちになってあげるね」
「だから、くらいかおをしないでーーちゃん」
「えっ?」
「ぼく、お兄ちゃんだから、だからーーちゃんもぼくをお兄ちゃんだと思っていいよ!」
「えっ? ……えっ??」
この日なぜだか分からないけど、ーーに年下の兄(?)ができた。
そんな彼はその後も……。
「いっしょにあそぼ!」
「なに読んでるの?」
「へ〜、そんなことがあったんだ〜」
というように本当の同級生のように接してくれた。
……2年生や3年生になれば上級生だって分かるような気もするけど、彼は気にならなかったのかな。(多分分かってたんだろうけど、そのまま兄宣言を貫いてた感じなのかな)
でも一個下とは思えないくらいしっかりしていて、なんだかちょっと大人びている弟ができたみたいで、ーーもちょっと楽しかった。
・ ・ ・
ーーが4年生、彼が3年生の時、二分の一成人式というのがあった。
成人は20歳、その折り返し地点・そして昔の日本なら10歳は立派な大人というジンクスがあったというところから開かれるこの式。
その中でクラスの代表の1人が同級生・保護者の前で「これからの自分」を語るというプログラムがあって、ーーは生まれながらの”不運”でその代表に選ばれてしまった。
……その事を彼に話した。(ここでも彼は気づかなかった)
「いいじゃん! どんな事を書くの?」
「えっと……それはまだ、決まってなくて……」
いや違う、決まってはいた。
昔からずっと見ていた絵本……その本に出てくる魔法使いみたいに、自分の力で誰かを幸せにする事。
でも……それを子どもが言うのは、どうなんだろうか。
「……あるよね?」
「えっ、な、何が?」
「夢やなりたい自分」
彼はまるで、なんでもお見通しと言うように……そう言った。
そして彼の瞳はーーの瞳の奥を見ていて、本当に見透かされているような気持ちになる。
「そんなの……ないよ」
それでもーーはしらばっくれる。彼が当てずっぽうで言った可能性もあると信じて……でも、
「聞かせて、ーーちゃんがなりたい。本当の自分を……」
「っ……」
ーーは……話した。
自分は……絵本で読んだ魔法使いみたいに、自分の力で誰かを幸せにできる人になりたい。
ーーは……目を瞑りながら、彼の顔を見ないようにしてそう言った。
なんでそうしたか……だって、怖かったから。
一番親しい……彼の失望した顔や嘲笑っているところは見たくなかったから。
「……」
でも、彼は何も言わなかった。
ーーは目を瞑っているせいで彼がどんな顔をしているのかも分からない。
だけど目の前にいる……風に乗って彼の吐息が聞こえる。
しばらくの無言の沈黙……それを破ったのはザッザッと砂が何かに擦れる音。
その音は前の方からこっちに近づいてくる。
そしてある程度近づくとその音は消え……その直後に優しくかつ温かい何かがーーの身体を締めた。
同時に頭を撫でられた。
「……玲音くん?」
ーーは目の前の彼を見るために目を開ける。
……目と鼻の先に彼の顔があった。
そしてその顔は……微笑んでいた。
「いいと思うよ、ぼくは……」
「……そうなのかな?」
「うん、ーーちゃんに合ってるよ!」
「で、でもなんでーーの頭を撫でるの?」
「うれしかったんだ。ーーちゃんが隠さずに本心を言ってくれた……そのことに……」
「……」
ーーは彼にしばらくの間ずーっと頭を撫でられた。
元々西に傾いていた太陽が地平線上から姿を消して、空が青暗くなり始めた頃に彼のーーを撫でる手は止まった。
「発表まで何日なの?」
「多分2週間くらいかな……ねぇ玲音くん。しばらく会うのはやめない?」
「……なんで?」
今思えば、なんでこんな提案をしたのか分からない。
「発表終わったら、玲音くんにも聞いてほしい。ーーの夢を……ここで」
「……うん、分かった。それならいいよ。あっでも学校で会った時の挨拶くらいいいよね?」
「そ、それはもちろんいいよ!」
「よーし、ならはい!」
そう言うと彼はーーに向かって小指を差し出す。
「……っ? なに?」
「指切りげんまんしよ」
「……なんで?」
「大事な約束事にはこれが1番! スズちゃんとも一回してるんだ〜」
スズちゃんと言う名前は彼の話の中で時々出てくる幼なじみだったはず。
つまり、彼にとって指切りという行為はすごく大切なことが詰まっているんだろう。
そう思ったーーは自分の指を彼の指に絡める。
ーーーー指切りげんまん、嘘ついたら針千本飲ます!
ーーーー指切った!
・ ・ ・
その後ーーはみんなの前で発表するために、そして彼に聞かせるために原稿を書いた。
先生に一度見てもらうと、とてもクオリティーが高いと褒めてくれた。
そのはず、ーーにはこのお話を聞かせたい人がいるから、その人に褒めて喜んでもらいたいから……魂を捧げるつもりで書いたのだから。
それでも表現など文字のミスなどを先生に指摘してもらいながら、どんどん原稿を良くしていく。
廊下で彼と会うたびに、早く聞かせたい……そんな気持ちになる。
そして二分の一成人式当日……いつもはクラスの発表でも少し自信を無くしてしまうーーだけど、この日だけは何故だか自信に溢れていた。
発表も噛むことなく、変に声が裏返ることも無く……拍手が体育館全体に響いた。
遠くに見えるお父さんとお母さんも泣いているのが分かる。
(やった……これなら玲音くんに聞かせても!)
家に帰った後、ーーはすぐに彼が待っているであろう公園にダッシュで向かった。
公園について、いつも座っているベンチで彼を待つ。
一応彼の前で噛まないように原稿もしっかり読んで復習しておく。
これを言い終わった後に頭を撫でてもらう……そう考えるとしっぽの自制が効かなくなる。
まだかな……まだかなと……ずっと待ってた。
ーーーーでも、彼は来なかった。
***
あの日からの記憶はどこへ行ったのだろう。
俺はそう時々考える時がある。
俺は小1の時は北海道、そして小4の時に東京にいた。
その理由は単純、叔父さんが東京に戻りたいと言ったから。
元々取材のために北海道に在住していた叔父さんだったが、冬の不便さに耐えれなくなって東京に戻ると言ったのだ。
それは覚えている。
夏と冬の長期休暇にスズちゃんに会いに行った。
それも覚えている。
……じゃあ、俺は小1から小4の間、何をやっていた?
学校で学んだことは覚えているが、俺はその間にどんな行事をこなして、どんな友達を作って、どんな学校生活を送っていたのか。
それが分からない。
俺には空白の4年間があるのだ。
どんなに思い出したくても思い出せない。思い出せないのが当たり前なんだろう。
さらにもっと不思議なのが、水滴の落ちる音を聞くと……なぜか心が苦しくなり、嫌な汗が流れ、鳥肌が立つようになっていた。
俺の小1から小4の間の思い出の記憶はどこへ消えたのか。
……まぁ、いい。過去を振り返りすぎるのは自分の悪い癖みたいなものだ。
多分、嫌なことがあったんだろう。
だったら忘れるに限る。
そしていつもその考えに行き着き、俺はまた今日を始める。
・朝はお米よりパン派のあの子。
・ブアメード。
・次回は玲音とーーが再会する予定。