少年とウマ娘たち - ススメミライヘ -   作:ヒビル未来派No.24

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 前回のあらすじ:玲音、昔の自分の姿をライスシャワーのアルバムで見る。

・今回は軽い残酷描写付きです。予めご了承ください。



空白の4年間 暗

『〇〇市児童誘拐事件〜精神異常者が実行した狂気の実験〜』

 

 20XX年1月XX日、北海道〇〇市で児童の誘拐事件が発生した。それにより1人の男子児童の命が奪われようとされていた。

 

 この誘拐事件の犯人である粟宮柚須流はR大学に通っていた大学2年生だった。

 

 粟宮は周りから精神異常者と言われており『嬉々として虫や小動物などを殺し、それを楽しむ』『周りの人を下等といつも罵り、怪しい実験を行う』など常識が抜けていたと粟宮の同級生はインタビューで答えた。

 

 さらに大学でも問題を起こしており、夏頃に行っていた実験により同大学に通っている男女数人を精神疾患になるまで追い詰めた。

 

 その出来事がきっかけになり、粟宮は退学処分を受けた。事件が起きる1年前の出来事である。

 

 粟宮はその後フリーターとして働くが、ある日を境に部屋に引きこもってしまう。

 

 警察の取り調べで分かったことだが、その際粟宮は様々な人体実験に関する本や記事を読み漁っていた。

 

 そして粟宮の興味を特に引いてたと思われる実験の本もそこにあった。

 

 粟宮の机の上には被験者の拉致の方法の模索や実験の仕方などが記されたノートも見つかっている。

 

  ……

 

 粟宮は12時頃に自宅を出ると、監禁場所として用意した使われていない山小屋に生活品や実験で使う器具を置いた後、〇〇市の適当な公園に訪れ、一人でいるひ弱そうな人間……小学生などがいるかチェックしていた。

 

 そうして4つめの公園に訪れた際、一人でいる小学生を発見し拉致。

 

 被害者は〇〇市内の小学校に在学している小学3年生の男子児童。

 

 粟宮は男子児童を山小屋に設置していた手錠付きベッドに横たわらせ、実験を始めた。

 

 その実験は1883年のオランダで行われた『ブアメードの血』を模倣した非人道的な実験だった。

 

 手順としては以下の順である。

 

・被験者に目隠しをし、被験者の指にメスを当てて親指を少し切ったと報告。

 

・水を一滴一滴部屋に落とし、被験者に嘘の出血量を報告。

 

・これを致死量になるまで報告を続ける。

 

  ***

 

 その後も、粟宮という男が行った実験の全容が書かれていた。

 

 実験はそのまま続き、間も無く致死量に到達……そんな時に警察官が山小屋に押し入り粟宮を現行犯逮捕。男子児童は病院へと搬送された。

 

 ……読んだ限りではそんな感じだろう。

 

 そして俺は……嫌な汗が流れていた。

 

 俺はまさかと思い、ライスさんに質問することにした。

 

「ライスさん」

 

「……」

 

「この男子児童って……俺のことですか」

 

「……(こくり)」

 

 ライスさんは真剣な顔で静かに首を縦に振る。

 

 そして……全部は思い出せなかったが、一つだけ噛み合ったことがある。

 

 それは……自分が水滴の音が苦手なこと。

 

 これはこの実験によって死にそうだったということを、心の奥でまだ残っていたということなんだろう。

 

 ……はっきり言って思った以上だった。

 

 自分はどれだけ大きな事件に巻き込まれていたんだ。

 

「……ありがとうライスさん。こんなに資料を用意してくれて……」

 

「どう……だった?」

 

「はっきり言ってリアリティーがないというか……なんかよく分かりません。でも……心の奥がざわついているような、そんな感覚がありますね」

 

「……そうなんだ」

 

 まだはっきりと分かったことではない。

 

 だけれど自分の空白の4年間に関する大切な出来事をライスさんは教えてくれた。

 

 それに関しては……ライスさんに感謝しないといけない。

 

「本当にありがとうライスさん。これで少しだけ……空白の4年間のことが分かりました」

 

「うん……玲音くんの役に立てたなら、ライスも嬉しいよ」

 

「まだ完璧には思い出せていないけど……ライスさんさえ良ければ、また仲良くして欲しいです」

 

「もちろんだよ、玲音くん……!」

 

 そう言って少し微笑むライスさん。

 

 ……やっぱり、彼女の笑顔を見る度に言葉にし難い感情が心の深くに現れる。

 

 この感情が何なのか分かる日はいつか来るのだろうか。

 

「それじゃ、そろそろ出ましょうか。今日は奢りますよ」

 

「い、いいよ! 自分の分は自分で払うから!」

 

「いえいえ、今日のお礼として奢らせてください!」

 

   ***

 

「……」

 

 玲音さんはライスさんと呼ばれている人と一緒にこのレストランを後にした。

 

 わたくしはあの後、あの人の後を追ってこのお店に入った。

 

 そうしてウマ娘の聴力を使って、あの人とライスさんの話を盗み聞きしていた。

 

 最初はあのライスさんという人とはそういう関係なのか探るためだったが……そのお話はほとんど聞けなかった。

 

 だけどその代わり、以前からずっと話してくれていた空白の4年間に関する話が聞けた。

 

 そしてあの人は……想像以上に重い過去を持っていた。

 

 わたくしは……これからどう接すればいいのでしょう。

 

 ここまで重い話を聞いて、あの人の前でいつもと変わらずに話せるか……正直不安で仕方ない。

 

 わたくしはポケットの中に折り畳んで入れていた紙を一度取り出して広げる。

 

 それは……来月に行われるわたくしのお誕生日会の招待状代わりとなる直筆の手紙。

 

 あの人と次2人っきりになったら渡そうと、常日頃から持ち歩いている。

 

 しかし……今のわたくしに、これをあの人に渡す資格はあるのでしょうか。

 

「……玲音さん」

 

 またあの人の名前が自然と口出してしまう。

 

 ……落ち着なさいメジロマックイーン、貴女は弱音を吐いたらダメ。

 

 態度も見せてはダメ、マイナスな思考を考えるな……前を見るのです。

 

 いつかあの人の隣に立つためにも……弱気になってはダメ。

 

 ……この手紙は今すぐに渡すべきと、わたくしは考えた。

 

 なぜそんな考えに思い至ったのかは分かりません。ですがそう考えた頃にはわたくしの足はお店の出口に向かっていた。

 

 

 




・天皇賞・春、見てて楽しかった。

・アプリ、中々B+の壁が超えれない……。

・次回はマックイーン回の”予定”。
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