少年とウマ娘たち - ススメミライヘ -   作:ヒビル未来派No.24

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 前回のあらすじ:玲音、空白の4年間の原因を知る。そしてマックイーンもそれを盗み聞きしていた……。

・UA44,000・45,000を突破しました。ありがとうございます。

・誤字報告ありがとうございます。消し忘れが最近多いです……。


キウイパフェ/話が始まった場所

 イタリアンレストランを出た後、俺はライスさんと別れてそのままトレーナー寮に帰ろうとする。

 

 時間としてはおやつの時間、今から帰ってコーヒーを淹れてのんびりと本を読みながら1日を過ごそう。

 

 それに明日はスペの弥生賞、早めに寝てちゃんと時間に間に合うようにしないとな。

 

 スペの仕上がりは素人の俺が見ても完璧に等しい。

 

 ただ弥生賞の舞台である中山レース場には最終コーナーを抜けた後の急傾斜な坂がある。

 

 一回自分だけで中山のレース場に行ってみたが(先生に頼まれて写真を撮っていた)……正直普通の人間だとかなりキツそうな傾斜だった。

 

 スペにとっても、あの傾斜は未体験だろう。

 

 坂路ダッシュをしているとはいえ、あの坂を一発本番で登り切ることが出来るだろうか。

 

 ……いや、スペは大丈夫だ。

 

 弥生賞にはもちろん、その先にある皐月賞に向けてもコンディションを整えてきている。

 

 だから皐月賞の前哨戦である弥生賞を取れば、もっと気分が乗るはずだ。

 

 ……次の瞬間、ドスッと衝撃が身体に走った。

 

「きゃっ!?」

 

「うわっ!?」

 

 明日のことを考えていて前をちゃんと見ていなかった……この衝撃は恐らく誰かとぶつかったんだろう。

 

 そのまま俺は腰から地面に着地する。

 

「あ゛い゛っ゛」

 

 結構痛くて変な声を出てしまうが、俺はすぐに立ってぶつかってしまった人に対し謝ろうとする……って、あれ?

 

 そこにいたのは見知った子だった。

 

「マックイーン?」

 

 なんでここにマックイーンがいるのか一瞬考えたが、そんなことよりもまずは謝罪しよう。

 

 親しき仲にも礼儀ありだ。

 

「ごめんマックイーン! 前の方全然見てなかった……どこか痛んでないか?」

 

「え、えぇ……大丈夫です」

 

 マックイーンは俺が差し出した手を掴みながら、ゆっくりとその場に立ち上がる。

 

 ……うん、どこか特別に痛んでいる様子もない。

 

 それにしてもドジを踏んだ。考え事で前が見えなくなっていてぶつかるとか……これが車だったらこの程度ではすまなかっただろう。

 

「……偶然ですわね玲音さん。今日はどこか出掛けておられたのですか?」

 

「あ〜うん……まぁ、そんな所。マックイーンは?」

 

「わたくしの行きつけのお店で今日から期間限定で食べられるキウイパフェを食べに来たのですわ」

 

 いつものように会話を交わす。

 

 だが俺の視線は彼女の顔ではなく、ウマ耳の方に向いていた。

 

 それはなぜか……それは左のウマ耳がぴょこぴょこ動いてたいたからだ。

 

 つまりマックイーンは今の会話のどこかで嘘をついた。

 

 そして考えなくても嘘をついたところは分かる。

 

 きっとマックイーンとここで会ったのは偶然ではないのだろう。

 

 それじゃあなぜわざわざそんな嘘をつく? そこが分からない。

 

 まぁマックイーンは恥ずかしがり屋だから遠くから俺を見つけて、正面から話すのは恥ずかしいから一芝居を打ったって感じかな。

 

 この前みたいにウマ耳が動いていることを指摘しても良かったが、今日はやめておこう。

 

「そうですわ玲音さん、もしお時間がよければ一緒に行きませんか?」

 

 確かにいつもだったら是非と答えていた。だが今の俺はお昼ご飯を食べてから30分くらいしか経っていないので、正直お腹の空き具合は微量な所だ。

 

 スイーツは別腹……なんて言葉があるが、あれが許せるのは一部の人間であり、俺はその一部の人間ではない。

 

「ごめん、今日はもうお腹いっぱいで……また今度ーー」

 

「今じゃいけませんか?」

 

「……えっ」

 

 マックイーンは真剣な顔をしてそう言った。

 

 なんでマックイーンはこんな顔をしているんだ?

 

 スイーツに誘っているだけなのに……なぜそんな真剣な顔になるんだろう。

 

 俺は彼女の顔を見ながら考えようとするが……その真剣な顔に負け、おやつを一緒に食べることになった。

 

   ・ ・ ・

 

「こ、これがキウイパフェ……」

 

「うわぁ、これはやばいよやばいよ」

 

 マックイーンの行きつけのお店に着き、マックイーンが楽しみにしていたキウイパフェが席に届く。

 

 そしてそのキウイパフェは……超特大サイズだった。

 

 なるほど……これは確かに真剣な顔になるわ。

 

 だってこんなに食べたら、圧倒的カロリー過多だ。

 

 だからマックイーンは一緒に食べてくれる人が欲しかった訳だ。

 

「ではいただきましょうか」

 

「そうだな」

 

 俺とマックイーンはお互い両手を合わせ、いただきますの挨拶をする。

 

 さてさてと俺はパフェで食べる時に使うあの細いスプーンで輪切りにされたキウイをうまくパフェから剥がして、落とさないように手を添えながら口元まで持っていく。

 

 そしてパクりとそれを食す。

 

 うん……酸味が効いてて美味しい。正直キウイの違いなんて実が黄色いか緑色かくらいしか分からないが……。

 

 ただこのパフェに使われているクリーム、これが意外と甘さ控えめになっており、キウイの酸味を殺さずに甘さが仄かに広がるという上手いバランスを作っている。

 

「美味しい……流石マックイーン行きつけのお店だな」

 

「気に入ってくださったならよかったですわ」

 

 そう言いながら食べる手は止めないマックイーン。

 

 そしてその表情は「まさにこれこそ至高……」と言わんばかりに少し恍惚としている。

 

 本当、マックイーンは甘いものが好きなんだなと再確認する。

 

「ど、どうしましたの? そんなにニヤニヤしながらこっちを見て……?」

 

「いや、マックイーンが幸せそうで自分も満たされていただけだよ」

 

「っ……そ、そうですか」

 

 そう言って少し頬が赤くなるマックイーンを見て、俺はやっちまったと軽く後悔する。

 

 別にあんな言い方をしなくても、もう少しマイルドでもよかったのにと。

 

 少し考えればめっちゃ恥ずかしいことを言っているのに、なぜ言う前にきづかないのだろうか。

 

 もう少し考えてから発言する癖をつけよう……。

 

 そう思いながらキウイパフェを食べる。

 

「……」

 

 ふと視線を感じて顔を上げてみると、今度はマックイーンが俺のパフェを食すところを見ていた。

 

 しかし俺みたいにニヤニヤするのではなく……どこか不安そうにウマ耳を前の方に垂らしてこっちをチラチラと見ていた。

 

「……なぁマックイーン」

 

「な、なんでしょう?」

 

「俺に何か隠していることはないーーー」

 

「ありません!」

 

 食い気味に否定するマックイーン。

 

 その時点でだいぶアレだが……もっと決定的になった部分がある。

 

 だから俺は自分自身の頭、頭頂部よりちょっと左のところを指でトントンと叩く。

 

 彼女は最初は分からなかったが、自分自身でその行動をすると……顔を青くした。

 

 ……自分自身の左のウマ耳を触りながら。

 

「さっきも動かしていたよ……偶然会ったって言ったけど、本当は偶然じゃないんだろ?」

 

「っ……」

 

「言ってマックイーン……本当のことを……」

 

「……分かりましたわ」

 

   ・ ・ ・

 

 マックイーンはちゃんと話してくれた。

 

 俺とライスさんが駅で会っているのを見たこと、そしてレストランで盗み聞きをしていたこと……。

 

 まさか……マックイーンに聞かれていたなんてな。

 

 でも別に驚いている訳でもないし、ましてやその事で怒っている訳でもない。

 

 問題は……その後だ。

 

「なんで嘘をついたんだ?」

 

「……」

 

「1回目はまだいい……でも2回目はなんでだ?」

 

「……」

 

 マックイーンはずっと俯き黙っていた。

 

 一応声音は責めているようには聞こえないようにしたつもりだったが……でもあまり意味はなかったらしい。この言い方だとどうしても人は考えないといけない。

 

 そしてその考えの答えは思ったより浅いところにあるが……一度冷静にならないとそれは深淵の闇にもなる。

 

 なら手法を変えるまでだ。

 

「……言い方を変える。マックイーンはそれを言って俺に怒られると思った?」

 

「……」

 

 マックイーンは俯いてたままだったが、小さく縦に首を振った。

 

「それは盗み聞きを怒られる……暗い話を聞いたから怒られると思った?」

 

「…………違い、ますわ」

 

 喋ってくれた……それと同時にマックイーンは涙を流し始める。

 

 堰き止めていた感情が……言葉を発した事により漏れ出して行く。

 

「わたくしは……気づけませんでした。玲音さんがそんなに苦しい過去に遭っていたことを……苦しんでいるあなたをわたくしは気づけなかった!」

 

「……」

 

 そう言い始め、ポツリポツリと泣き言を零すマックイーン。

 

 ただ……マックイーンの言っていることはほぼ支離滅裂だった。

 

 その泣き言一つ一つは確かに自分を責めているが……多分頭の中で出てきた言葉をそのまま口にしているから、話がまとまっていないのだろう。

 

 それでも自分自身を責める言葉は次々と出てくるのだから……居た堪れない気持ちになり、俺は席を立ち彼女の隣に移動する。

 

「玲音……さん?」

 

 俺はマックイーンのおでこ元に右手を持っていき、中指を親指に引っ掛けて力を溜め……一気に解放する。

 

 するとパチンッと軽快な音がお店の中に響く。

 

 お〜、我ながらすごいいいデコピンができた……。

 

「な、なんなのですのいきなり!?」

 

「あのな〜マックイーン、少し考えてみろ? もし今言ったことを俺に当て嵌めたらなぁ……俺はマックイーンの過去のことも知っていないといけないんだ」

 

「……」

 

「だが、俺はマックイーンの過去は何も知らない。俺が知っているのは野外活動で出会った時から今の間だけだ」

 

「今……ですか?」

 

「疑問符にするほど難しいことじゃないよ。俺とマックイーンの話が始まったのはあの野外活動と林間学校の時、その前の話なんて俺たちには関係ないんだよ」

 

「林間学校が始まり……」

 

 そう、俺は野外活動より前のマックイーンのことなんて知る由もない。

 

 でも野外活動の後のマックイーンなら、俺は知っている。

 

 そしてそれはマックイーンも同じなんだ。

 

 ……なんかこの前もこんな結論に達したような気もするが、今回は状況が違う。

 

「マックイーン、君は大人びているけどまだ中2だ。もっと物事は簡単に考えよ?」

 

「……そうですわね、もっと簡単に……」

 

 マックイーンはそう言うと、ポケットから何か折り畳まれた紙を出した。

 

 そしてそれを俺に差し出す。

 

「これは……?」

 

「来月に行われるわたくしのお誕生日会の招待状です……今後ともよろしくお願い致します玲音さん」

 

「えっ? あ、あぁ……」

 

 正直今の言葉でマックイーンの事が解決したのか全然分からない。

 

 だけどまぁ、ここまで笑顔になってくれたなら……解決したって事にしていいのかな。

 

   ***

 

 簡単に考える……あの人はそう言いました。

 

 そう、もっと簡単に考えれば良かった。

 

 目の前にいる人は……わたくしが好きな人だっていう事を……。

 

 そこにはメジロ家やお互いの過去は関係ない……わたくし個人の思いなのだから。

 

 そう思うと……心が軽くなった。

 

 だから今、わたくしは渡した。

 

 祝って欲しいから……大好きなあの人に祝って、笑って、その時は側にいて欲しいから。

 

 そしてわたくしはもうこの事で迷いませんわ……だってわたくしはその人が大好きだから……。

 

 ーーー1ヶ月後、メジロ家で行われたお誕生日会。そこには一日中幸福感で笑顔になっているわたくしと、それを見て微笑んでくれるあの人の姿がありました。

 

 

 

 

 

 




・現時点でですが、これで玲音の闇パートはほぼ終わりです。(暫くは明るめの話が多くなる予定)

・最近、SDキャラの可愛さに気付いた……くっそカワイイ!(わかルマーン風自問自答)

・次回はテイオー加入の”予定”です。
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