少年とウマ娘たち - ススメミライヘ - 作:ヒビル未来派No.24
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※アニメではスペの祝勝会は弥生賞の後に行ってますが、こっちでは次の日にします。予めご了承ください。
次の日、中山レース場にて……スペのGⅡ弥生賞がスタートした。
ゲートが開いたのと同時に先頭に立ち、そのまま逃げ切ろうとするセイウンスカイをスペが追う形となった。
第4コーナーを抜けた時点でスペの順位は3着につけている。
そしてやってきた……中山レース場名物、ラスト200mにある心臓破りの坂。
実際スペの前に2人先にこの坂を登ったが、その1人は完全に意気消沈、1着のセイウンスカイも明らかに登り慣れていない。
そんな坂をスペも登り始める。
明らかに苦しそうな顔を浮かべたが、それでも必死に登るスペは1人を抜かして坂を登りきり最後の直線に入る。
そしてそんなスペの背中を押そうと、チーム・スピカのみんなは大声で「登れ登れ登れ登れ!!」と鼓舞する。
坂では差が縮まらず先にセイウンスカイが直線に入っていたが、先の坂で一杯(バテて失速する事)になっている。
それに対し、スペは足をためていた。
そのためていた力を……この直線で解き放つ。
「後ろから猛烈な勢いで追い込んでくるスペシャルウィーク!」
後ろから迫るスペ……懸命に逃げようとするセイウンスカイ……どちらが勝つのか、観客やチームのみんなは固唾を吞みながら2人のウマ娘の勝負の行く末を見守る。
そしてラスト数十メートルのところで……スペがセイウンスカイをかわした!
それに気付きセイウンスカイも負けじと腕を振るが、坂で燃え尽きた脚は思ったより前に行かない。
「スペシャルウィーク……ゴールイン!!」
スペは1着でゴール板を通過した……その瞬間、歓声が湧き上がる中山レース場……スペシャルウィークは重賞を初めて勝利したのだった。
スズカと俺以外のみんなは、走り終わったスペに賞賛の言葉を贈るためにスペの方に駆け寄っていった。
「今夜は祝勝会だ!」
「いやいや待てゴルシ、そんなすぐには用意できねぇよ……明日、盛大に祝うからなスペ!」
「っ……! はい!!」
どうやら明日は祝勝会が行われるらしい……お腹は空かせておかないとな。
「……」
そういえばさっきからテイオーがかなり黙っているなあと思って、テイオーの方を見てみると……テイオーはレースに勝ったスペの方を見ていた。
そしてこれは……なんて言えばいいんだろう。新しいおもちゃを見つけた子どもみたいな……期待を含んだ目をしていた。
・ ・ ・
次の日のお昼……俺は教室の自分の席で購買で買ってきたサンドウィッチと、今日の朝淹れて持ってきた蜂蜜アイスコーヒーを食し飲んでいた。
ちなみに尊野はチーム・アスケラの集まり、道はチーム・リギルの面接で今日は2人とも居ないのだ。
でもまぁ問題ない。俺自身そんな多くの人と一緒にいたいと思う人間ではないから、こんな風に1人でも別に寂しくも何ともない。
それに……お昼1人で楽しむコーヒーというのも、悪くはない(渾身のイケボ)
さて、今日のコーヒーの淹れ具合はかなり上位の方に入るからな……口に多くコーヒー含んだ後、舌で転がすようにしてコーヒーの芳醇なアロマを最大限に楽しみーーー。
「やっほー! 玲音いるー?」
「ブウウゥゥーー!?」
教室の扉がいきなり開いたことにかなり驚いたが、それ以上にここにきた人物に驚き、さらにその人は俺の名前をノンストップで言ったのにとても驚き……俺は某ライダーWの左の人みたいにコーヒーを吹き出すのだった。
「えっはえへ……な、なんでテイオーがトレーナー学科の教室にいるんだ……」
「うわ、玲音汚いよ〜」
自分自身で吹き出したコーヒーをタオルで拭き取った後、俺はテイオーの近くに寄る。
「んで、本当にどうしたよ?」
「ちょっとね、付いてきて欲しい所があるんだ〜!」
そう言うとテイオーは俺の右手首をガシッと掴み、「しゅっぱーつ!」と言って、俺の手を引いて歩み始めた。
「ちょっと待って! どこに連れて行くつもりなんだ!?」
「それは、着いてからのお楽しみだよ♪」
「それこの前も言ってたことおおぉぉ!?」
俺の魂の叫びが廊下に反響するのだった。
そしてテイオーの華奢な手に俺の手首を掴まれながら、俺の後を付いて行く。
階段を一階分上がり……また少し歩くとテイオーは手を離してこっちを振り向く。
「ここだよ」
そう言われ、俺は目の前の部屋のプレートを見てみる。
そこには『生徒会室』と書かれていた。
「玲音にはね、見てもらいたいんだ……ボクの勇姿をね」
テイオーはそう言うと扉をノックし、こう言った。
「ーーー失礼しますっ!」
「……失礼します」
テイオーが入った後、俺も挨拶をし生徒会室に入り、両手でテイオーが開けた扉を閉める。
そこにいたのは……1人のウマ娘。
チーム・リギルに所属しており、クラシック3冠・有馬記念を2勝・天皇賞(春)・ジャパンカップ制覇の計7冠を達成し、皇帝と呼ばれるウマ娘……そしてテイオーの憧れでもあるシンボリルドルフだ。
そんな彼女はテイオーの訪れに少し驚いている。
「テイオーか……君が扉をノックするなんて珍しいな。それにそちらの方は?」
「おr……チーム・スピカで見習いトレーナーをやっています。谷崎玲音です」
「スピカの……なるほど、だいたい理解した。立ち話もなんだ、そちらのソファーに腰掛けて話をしようじゃないか」
シンボリルドルフにそう言われ、テイオーと俺はソファーに腰掛ける。
座ると「お茶を出そう」と言われたが、流石にそこまではと思い遠慮したが、遠慮はいらないと言われて俺とテイオーの前にお茶が出された。
そしてシンボリルドルフが俺たちの対面に位置する場所に座った。
「聞こうじゃないかテイオー、君はここに何しにきた?」
「ボクは……報告をしに来たんだ」
「ふむ……して、君はなぜここにいるんだい?」
その質問はテイオーにではなく、俺に向けて言われた言葉だった。
そして俺はどう返答しようか悩んでいた……だって、勇姿を見て欲しいと言われただけでテイオーの真意はまだ全然分かっていない。
だけど、あの時のテイオーの表情は……凛々しいものだった。
それだけ……テイオーは覚悟を決めているということだろう。
「彼女の勇姿を……覚悟した姿をこの目で見るためです」
「うむ……だが君は見習いトレーナーの立場。ならここにいるべきはチームのトレーナーではないか?」
確かにシンボリルドルフが言っていることは正しい。
だけど……そんなことは関係ない。俺は自分自身の素直な気持ちを言う事にした。
「見習いかそうではないか以前に、俺は彼女の走りに魅了されたファンの1人です。そしてそんな彼女から勇姿を見て欲しいと言われた……なら俺は彼女の勇姿を見守るだけです」
「……そうか」
シンボリルドルフは少し微笑むと自分自身で入れたお茶を一口飲む。
俺も釣られて……そしてテイオーも釣られてお茶を飲む。
「では改めて聞こうテイオー……君は何を報告しにきた?」
「……」
テイオーは一回深呼吸を入れ、シンボリルドルフの顔を真っ直ぐ見てこう言った。
「ボクは……スピカに入る事にしたよ」
「スピカに入る……リギルじゃなくていいのか?」
テイオーは力強く頷いてから、言葉を続けた。
「いろいろ考えたんだけど……ボクはやっぱり楽しい方が好きだから。それに……ボクは会長と闘いたい!」
「……」
少々脚色していると思うが、俺から見たその光景は……かの皇帝にテイオーが宣戦布告したかのように見えた。
しかしテイオーは自信に満ちた顔をしており……皇帝もどこか安心しているような顔をしていた。
しかしすぐに威厳のある顔に戻るシンボリルドルフは言葉を口にした。
「楽しいだけじゃやっていけない……叶えるべき目標があるならば……次に続く言葉、分かるだろテイオーなら」
「っ……はい!」
「強くなったら共に走ろう……約束だ、忘れるなよ」
「はい……!」
その時のシンボリルドルフの顔は……どこか慈愛に満ちた顔をしていた。
まるで親離れしていく子どもを喜んで応援する親みたいだ。
「さて、私は君に……一つ頼まなくてはならないな」
「……」
「
「……はい!」
「まあ玲音は見習いトレーナーだけどね〜」
「うるさいぞテイオー……見習いでも俺はチームの一員だ。夢を手伝うことくらいできるわ」
「にしし! そうだね!!」
そう言うとテイオーはひょいっとソファーから立ち上がる。
俺も生徒会室に立て掛けられている時計を見て、そろそろ時間だと思い立ち上がる。
「そろそろ行きます……仲間の祝勝会があるので」
「ボクもそれに出るから、じゃあね会長!」
俺とテイオーは生徒会室を後にした。
そしてその後開かれた祝勝会で、テイオーはスピカの加入を宣言。
何も知らない先生は飲んでいた飲み物を吹いていたが……テイオーの決意を受け入れてくれた。
こうして……チーム・スピカにトウカイテイオーが入ったのだった。
・推しウマの寝息ASMRを見つけて、わい歓喜。
・新人賞の小説も順調×2
・次回はチーム・スピカの練習風景かお花見をする”予定”です