少年とウマ娘たち - ススメミライヘ -   作:ヒビル未来派No.24

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 前回のあらすじ:玲音、チーム・スピカに入る!


夕日の方へと駆けて行った風

 

 俺がチーム・スピカに入った次の日、俺は終業のチャイムを聞くとダッシュで教員室へ向かった。

 

 今日から本格的にチーム・スピカでトレーナーのノウハウを学ぶことができる。

 

 それにあんなに力強く『君を一人前のトレーナーにする』と言ってくれたんだ。心の中にウキウキとした感情が出てきても仕方ないだろう。

 

 ちなみに他の人たちはどのチームにしようか悩んでいるらしいが、俺はもうスピカに決まっていたので、寮に帰った後そのまま紙を書いて朝のホームルームの時に担任の先生に提出した。

 

 どうやらこの紙は早く出せば出すほど良いらしく、そうすることで学べる時間が増えるらしい。

 

 だから担任の先生は予想よりも早くてびっくりしていた。

 

「失礼します!」

 

 スピカに入った後、早速明日からよろしく頼むと言われた。

 

『放課後になったら俺のところに来い、入り口に教員の席を記した紙があるから場所は分かるはずだ』

 

 昨日先生(好きに呼んでいいと言われたので先生と呼ぶことにした)が言ってた通り、入り口には席を記した紙が貼ってあった。

 

 ……そういえば先生の名前、教えられていない。

 

 そう思って一瞬焦ったが、上の方に担当しているチーム名が書かれていたのですぐに場所は分かった。

 

 にしても先生の名字って『沖野』って言うんだ……。

 

 そんなことを考えながら、俺は窓際の先生の席に近づく。だがそこには先生の姿はなかった。

 

「あれ?」

 

 その代わり机上にあったのはホチキスで止められた数枚の紙。

 

 そして1ページ目(いや、目次? タイトル?)には『これに沿ってやるように!』と書かれていた。

 

 ……。

 

「えっ?」

 

   ・ ・ ・

 

「……と言うことで、トレーナーは失踪しました」

 

 いや待てよおい、昨日言っていたのは何だったんだ!?

 

 あんなにも情熱的に説得されたのに……放置ってどゆこと!? 説明プリーズ!!

 

 まぁ2ページ目に『これくらいは教えなくても大丈夫だろ? 腕の見せ所だぞ』と書かれていた。

 

 うん、確かに3ページ目からはこの3人のプロフィール、全体でやる練習など細かく書いてあった。

 

 それでもさ? 入ったばっかりの、しかも学生の俺に大切なウマ娘を任せるか、普通?

 

「あ〜またか〜」

 

「ここ最近よね〜」

 

「えっ、最近?」

 

「あぁ、この時間帯にはトレーナーはこねぇよ? あと数時間……場合によっては来ない時もあるしな」

 

 えぇ……ちょっとそれって、トレーナーとしてどうなの?

 

 練習の時に練習を見ないトレーナーなんて……この世にいたのか!?

 

「まっ、来なかった時にはこのゴルシ様が問答無用でラリアット食らわせるけどな」

 

 そう言ってゴールドシップは指をポキポキと音を鳴らす。

 

 そして近くにいたダイワスカーレットとウオッカはうんうんと頷く。

 

 可哀想……いやそれくらい妥当か?

 

「それよりも早く走りに行きましょうよ! オレ、今走りたくってうずうずしてるんです!」

 

「そうね。玲音さん、いない人を気にしても仕方ないですよ。早く走りに行きましょう?」

 

「……だな」

 

 まだ違うけど、俺はトレーナー。

 

 だったらウマ娘のことを考えて行動する方がいい。

 

「うっしやるか! 新人、何をやればいいんだ?」

 

「まずはウォーミングアップでグラウンドを走って、その後この紙に沿ってそれぞれ練習を言い渡します。今日一日、よろしくお願いします!」

 

   ・ ・ ・

 

 その後、俺は先生が用意していた紙に沿ってスピカの練習を指示したが、先生が練習場に現れることはなかった。

 

 それでも、俺はあのトレーナーがすごいということを身に染みた。

 

 この用意されていた紙、ウマ娘一人一人の特徴を把握している。

 

 しかも新人の俺でも分かりやすいように、詳細に指示が書かれている。

 

 正直言って……楽しかった。

 

 『俺……今トレーナーをしているんだ!』って、気分が高揚した。

 

 あの人について来て正解だったかもしれない……でも練習に来ないっていうのはどうなんだろうか。

 

「あの人……優秀なのか怠け者なのか……どっちなんだ?」

 

 そんなことを考えながら俺は学園の近くにある川沿いを歩いている。

 

 寮に帰った後、窓を開けてみると心地良い風が入って来て、綺麗な夕日が自分の瞳に映ったので外に出たくなったのだ。

 

 実際外に出てみると心地がよく、自然と足が動いていた。

 

 トレセン学園がある場所は都会ではあるが、ここはそんなに人がいない。

 

 聞こえるのは風によって木々の擦れる音と近くで流れている川のせせらぎ。

 

 そして見えるのは沈みかけている夕日と綺麗な夕焼けと頭上には輝き始めている1等星・2等星の星々。

 

 ……そういえば、幼い頃に見た夕焼けはとても綺麗だったなぁ。

 

 隣にはあの子がいて……あの子、元気にしているかな。

 

 もうずっと会っていない……顔や声も、もうほぼ霞みがかっているけど……あの約束だけはーー。

 

 そう考えた瞬間、後ろから風が俺を追い越した。

 

 でも、それは自然の風ではなかった。

 

 とてつもない速さで……何かが俺の横を駆け抜けていった際に起きた風だった。

 

 そして一瞬、その一瞬だけ……世界がスローモーションになった。

 

 そこで分かったのは……走って揺れている明るめの栗毛の長い髪。

 

 それしか分からなかった。

 

 世界はすぐに元の時の流れに戻って、その風は一瞬にして俺の元から去っていった。さっきまで俺が見ていた夕陽の方へ向かって……。

 

「……」

 

 俺はその風が見えなくなるまで、ずっとその後ろ姿を目で追いかけていた。

 

 

 

 

 




・ウオッカとダスカは後輩、ちゃんと敬語で喋ってくれそう。

・ゴルシはゲームだと???。一体何歳なんだ。

・というかウマ娘の学年設定が難しいんじゃ(´;Д;`)
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