少年とウマ娘たち - ススメミライヘ -   作:ヒビル未来派No.24

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 前回のあらすじ:花見の開始! ゴルシ、マックイーンを抱きしめる。

・UA53,000・54,000を突破しました。ありとうございます。



チーム・スピカでお花見に行こう(後編)

「うっしゃー! 宴じゃ酒をを持ってこーい!!」

 

「お前はまだ未成年だろうが!!」

 

 こうして始まったチーム・スピカのみんなとマックイーンのお花見会。

 

 執事さんからはまだ連絡がなかったので、俺はこの日のために用意してきたコーヒーをみんなに振る舞う。

 

 ちなみに今回振る舞っているのは蜂蜜アイスコーヒーではない。

 

 かっこよく言えばコールドブリュー……平たく言えば水出しコーヒーだ。

 

 水出しコーヒー……それはお湯で2〜3分掛けてドリップする普通のコーヒーとは違い、水からドリップし何時間も掛けて抽出する方法で作ったコーヒーのことだ。

 

 普通のアイスコーヒーは温かいコーヒーを氷で急速に冷やすため苦味などは普通のコーヒーと変わらないが、水出しコーヒーではゆっくりじっくりエキスを抽出するため、コーヒーの苦みや渋みの成分であるカフェインやタンニンが溶け出しにくくクリアでまろやかな味になりやすい。

 

 だからコーヒーが苦手な人でも飲める……缶コーヒーで慣れている人が飲むと「これがブラックコーヒー!? 苦さが足りん!!」となるとは思うが……。

 

「あっ、美味しい!」

 

「はちみつじゃないのは残念だけど、これも美味しいからいいや!」

 

「やはり玲音さんの淹れるコーヒーは美味しいですね……」

 

 1ヶ月前くらいに蜂蜜アイスコーヒーを振る舞った時と同じように、今回のコールドブリューコーヒーも評判はよかった。

 

 まぁ水出しは蜂蜜コーヒーとは違い、グアテマラの豆をストレートで使って基本放置するだけだからそこまで作るのが難しいって訳じゃないから、蜂蜜アイスコーヒーよりは嬉しさは半減だけど……でもみんなが美味しそうに飲んでくれてるんでOKです。

 

 その後はコーヒーを飲みながら談笑をした。

 

 最初はなぜトレセン学園に入ったとか、これからの目標など少し肩苦しいことを喋っていたが……話す内に打ち解けあったのか、最近やっているドラマの話や美味しかったケーキ屋、個人の趣味など楽しい話が多くなっていた。

 

 そんな頃に胸ポケットに入れている携帯が震えた。

 

 画面には1通のメールが受信されていると表示されており、そのメールの差出人は執事さんからだった。

 

 メールを見てみると長々と色々書かれていたが、簡潔に言えば「お供が用意できたので取りに来てください」とのことだった。

 

「お供が出来たらしいんで、ちょっと取ってきますね」

 

「あっ、わたくしも行きますわよ」

 

「いやいいって、マックイーンはみんなと談笑してて……」

 

「んじゃあ俺がついて行くか?」

 

「助かります先生……お願いします」

 

 俺と先生はシートから立ち上がり、メジロ家の人たちが用意してくれた花見のお供を取りに行った。

 

   ***

 

 レオくんとトレーナーさんがお供を取りに行っている間、私たちは談笑を楽しんでいた。

 

 とは言っても私はそこまでドラマとか見る方じゃないから聞く方が多かったけど……それでもスペちゃんや他の子が笑っているところを見ていると、私も釣られて笑ってしまう。

 

 そしてふと思ってしまう……あのままリギルに居続けていたらどうなっていたんだろうって。

 

 走るのが全てだと思っていた……だからトレーナーさんの言う通りに走っていた。

 

 速くなったという自覚はあった……だけど少しずつ、走ることを楽しめなくなった。

 

 どんなに走っても追いつけない背中、レースに入着しても欲しいのは1着のみ。まるで何かに縛り付けられながら暗いところを走っている……そんな感覚だった。

 

 でも今のトレーナーさんに会ってから……全てが変わった。

 

 大逃げをすることで誰も前がいない景色が見られた。自由に走られるという快感があった。そして……走ることが楽しいと再び思えるようになった。

 

 そしてもう一つ……それはレオくんと再会できたこと。それによって今まで囚われ続けた過去を振り払えたこと。

 

 学園は同じだからいつかは会っていたと思う。

 

 だけど同じチームだったからこそ……あの約束はできていたのかもしれない。

 

『もう黙って君を置いて行ったりもしない!!』

 

 その言葉は……私に力を与えてくれる。

 

 どんなに辛いことがあっても、苦しいことがあったとしても……大切な人が見守ってくれるという安心感。

 

 それが自分の自由をさらに広げた。

 

 だから……こう思う。

 

「このチームに入って……よかった」

 

「スズカさん? なんか言いましたか?」

 

「……なんでもないわ、スペちゃん」

 

 危ない……ついうっかり声に出ていたらしい。

 

 私は冷静を装いながら、少しコーヒーを飲んで心を落ち着かせる。

 

「そう言えばスズカ、ずっと聞きたかったんだけどさ、なんでスズカは玲音のことを『レオくん』って呼ぶの?」

 

「あっ、それアタシも気になってました」

 

「オレもです……確か玲音先輩も『スズ』って呼んでますよね?」

 

「えっと……産まれた頃から幼なじみだから?」

 

「産まれた頃から……なのですか?」

 

「え、えぇ……小4の時から少しまで疎遠だったけど……」

 

「んてことは……新人の面白い昔話とかもあるのか?」

 

「あるにはある……けど」

 

「なにそれ面白そー! ねぇねぇ話してよスズカ!」

 

「ウソでしょ……」

 

 ごめん、レオくん。

 

 そう心の中で思いながら……私はレオくんの過去のことを話し始める。

 

 本当にごめんね、レオくん。

 

   ***

 

「何だよ……結構重いじゃねぇかぁ……へへっ……」

 

「れ、玲音? お前顔真っ赤だけど大丈夫か?」

 

 執事さんが持ってきてくれたお弁当……その量は凄まじいものだった。

 

 自分初めて見たよ……重箱が何段にも重なっているの……。

 

「シェフの皆様が張り切り過ぎてしまいまして……」と執事さんは言っていたけど、限度があるだろこれは……。

 

 しかも執事さんは賞味期限が切れそう(まだ3日もあるのに)だったからという理由で、花見用のジュースも用意してくれていた。

 

 だから先生はジュースの方を持ち、オレは重箱の方を持つが……まじで重い。

 

 だが言い出しっぺの俺がキツイ方をやるのは必然ってもんだ。

 

「俺は……チーム・スピカの……谷崎玲音ですよ……こんくらいどうってことないですぜ……」

 

「いや……キツイならーーー」

 

「いいから行きますよ! みんなが……待ってるんです。それにミ〇、やっと分かったんだ……」

 

「いや誰だよ……」

 

 自分自身でボケながらも、俺は全身全霊の力で重箱を運ぶ。

 

 正直言ってガチでキツイ……これ何キロあるんだろう。

 

 でもそんなことは関係ねぇ。

 

 俺は止まらねえ……進み続けた先に……彼女たちの笑顔が待っているんだから……。

 

(だからよ……止まるんじゃねえぞ! 俺の足ぃ!!)

 

 そうずっと自分を鼓舞して、桜の庭まで重箱を運んだ。

 

 もう少しだ……もう少しでゴールできる……。

 

「れ、レオくん……大丈夫?」

 

 前方からスズカが近づいているのが分かる……自分の顔を見て少し心配になったのだろう。

 

 いやでもここまで運んだのだ。自分自身で運びたい。

 

 そう思い声を出そうとしたが、全然声が出ない。

 

 そうしてスズカが持ってくれる……その瞬間、さっきまでめっちゃ重たかった重箱が紙切れになったかのように軽くなった。

 

「えっ……」

 

「これみんなのところに運べばいいかな?」

 

「う……うん」

 

 そう言うとスズカは俺が持ってきた重箱を軽々と持ってみんなのところに向かった。

 

 ……。

 

「……」

 

 ◯カ……やっと分かったんだ。

 

 ウマ娘は普通の人とは身体スペックが違う。だから普通に最初から頼めば良かったんだ。

 

 そして……俺がここまで持ってきた意味はあったのだろうか。

 

「あっ、レオくん……ありがとう、こんな重い物をここまで運んでくれて……」

 

「……」

 

 スズカは振り返った後にそう言い……そして今度こそみんなのところに向かった。

 

 俺は……桜をバックに微笑んでいた彼女の笑顔が脳裏から離れなかった。

 

   ・ ・ ・

 

 お供が着いた後、花見はさらに盛り上がった。

 

 というかウマ娘ってやっぱりすごい……あんなにあったおかずがどんどん減って行くんだから。

 

 特に一番食べていたスペなんか、お腹がなんかすごく膨れて出っ張っていてもまだおかずを食べている……あの小さな体のどこにあの量のおかずが入っているんだ?

 

 それにスズカやマックイーン、他のみんなも俺や先生よりは多く食べている。

 

 あと……時々ゴールドシップが俺の方を見てニヤニヤしていたんだけど……何か付いていたのだろうか? そう思って自分自身の姿を見てみるが……特に変わったところはない。

 

 そしてなぜだかスズカが申し訳なさそうにこっちを見ている……本当に何があったんだ?

 

 まぁそんなことはあったが……そのまままた談笑したり、ゴールドシップと先生の一発芸などで花見は過ぎて行き……太陽は西に傾き、空は茜色になりつつあった。

 

「じゃ、お前らの門限もあるし、今日はここでお開きだな」

 

「え〜! まだ居ようぜ〜!」

 

「ここは夜のライトアップはやっていないから、遅くまでいても意味ないぞ」

 

「あぁそうなんだ……んじゃ帰るぞトレーナー」

 

「はいよ……って、帰りも送るのか!?」

 

「当たり前だろ〜今日金持ってねえし」

 

「は〜……分かった。今日だけな」

 

「うっし、んじゃあお前ら、また明後日な!」

 

 そう言って、ゴールドシップとトレーナーは駐車場の方に歩いて行った。

 

 一応念のため残ったメンバーでごみがないかを確認する。

 

「じゃあ、俺たちも帰るか」

 

『はい!』

 

 俺たちは来た道を引き返すようにして駅に向かう。

 

 ちなみに行きは俺とスズカが先導する感じだったが、今は中学生組が先導している……いや、楽しかったから足が弾んでいるって感じかな。

 

 実際今日楽しかったことをみんなで話している……そんな楽しそうなみんなを見ていると、なんかこっちもほわほわした気分になる。

 

「今日は楽しかったね」

 

「……あぁ」

 

 隣にいたスズカの問いに俺は答える。

 

 今日はとても楽しかった……まぁ今回は色んな偶然が重なったからこそ、素晴らしい花見になったんだと思う。

 

 だからもうここまで豪華で楽しい花見はないかもしれない。

 

 ……でもこう思ってしまう。

 

「来年もやりたいな……花見……」

 

「やれるよ……春は、来年も来るんだから……」

 

「うん……そうだね」

 

 今年よりは劣るかもしれないが、来年もこのメンバーでわいわいと楽しく花見がしたい……そう思ったのだった。

 

 

 




・ガチャが爆死ン爆死ン爆死ーン!(やっぱ辛えわ……)

・次回は勝負服のお話をする”予定”です。
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