少年とウマ娘たち - ススメミライヘ -   作:ヒビル未来派No.24

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 前回のあらすじ:みんなでスペのダイエットに付き合う事に、レオテイ・発狂。

・UA71,000・72,000を突破しました。ありがとうございます!

・独自解釈のタグを入れることにしました。(勝負服の魂の残滓とかは、ウマ娘の公式の文を自分自身で想像して、独自に解釈しているものだからです)



ダイエット! 1日目・2日目

 次の日、昨日宣言した通り、チーム・スピカ全員によるスペのダイエット計画が始まった。

 

 ちなみに先生はこの週は地方への出張が入っていて、トレセン学園から離れる事になった。

 

 だからチームで行う練習(先生が用意してくれた紙を元にだが)と2日に一回の義務報告を任された。

 

   ・ ・ ・(1日目)

 

「……どうした?」

 

「いえ、何でもありません……」

 

 そうは言っているが今日のスペはどことなく元気がない。

 

 なんか小さくなっているというか、悲しみに満ちているというか、絶望しているかのような……なんか分かりにくい表情をしていた。

 

 今日は先生に渡された練習をやろうと思っていたのに、どうしてこうなっている?

 

「今日の担当は……スカーレット、スペに何をしたんだ?」

 

「特に特別なことはやっていませんよ、ただ欲を封じただけです」

 

「……欲?」

 

 何でも聞いてみると、今日の朝突然スペの部屋に訪問してきたスカーレットは、早速自己流のダイエット方法を実施したという。

 

 その方法は封じ込めダイエット。

 

 スペは食べるのが好きだ。その中でもにんじんはスペにとって……いや、全国のウマ娘にとって大好物の一つである。

 

 そのにんじんをダイエットの間は封じる。そして目標を達成した時それは解禁する。

 

 こうする事で目標が達成した後の幸福を求めて体が動き、体重を減らしていくのだという。

 

 確かにいい方法ではありそうだ……だが……。

 

「あのさ、それってリバウンドのこと考えてる?」

 

「リバウンド……ですか?」

 

 ダイエットの時に食欲を封じて、終わった後に解放する。それは別に悪い事ではないが、でも解放した瞬間というのは禁じる前よりも欲望が高まっている状態であることが多い。

 

 つまり簡単に言えば……”前よりも食べる量が増えてしまう”ということだ。

 

 そしてそれによってまたダイエットを始めて、封じて、また解放して……。

 

「こうなると結果、無限ループにハマると思うんだが……」

 

「あっ……」

 

 スカーレットは意表を突かれたような表情をしている。

 

 それはそうだろう。何せスカーレットは完璧を求めている性格があり、その完璧だと思っていた方法に実は決定的な穴があった事を指摘されたのだから。

 

「確かに……そこまでは考えていませんでした」

 

「まあ俺自身ダイエットにそこまで詳しい訳じゃないから、何とも言えないけど……」

 

 そう言いながら、俺は横目で元気がなさそうに体操をしているスペを見る。

 

 なんかもう体の軸がよれよれである。

 

「はぁ……にんじん……はぁ〜……」

 

「す、スペちゃん。本当に大丈夫?」

 

「にんじんです……はぁ〜……」

 

「あの状態のスペを、今後も見られるか?」

 

「それは……そうですね」

 

 それにまぁ、にんじん1本くらいだったら流石にすぐ太りはしないだろ。

 

 という事で、1日にんじん一本は許し、その代わり食べるものは低糖質のものに変えるようにした。

 

 寮の栄養士さんに相談してみたが、結構あっさりと要求を承諾してくれた。

 

   ・ ・ ・(2日目)

 

 今日はウオッカがスペのダイエットを手伝う日だ。

 

 今日は体育館でやりたいとの事だったので、学園から使用許可願いを出して、体育館の鍵をもらった。

 

 いつもならここは雨でトラックが走れない時に走り込みを行ったり、大人数によるウイニング・ライブの練習の時に使われる。

 

 そこを自分とスペ、そしてウオッカのたった3人で独占できるんだから、何だか罪悪感と愉悦感が浮かんでくる。

 

「失礼しま〜す……」

 

 っと、先にやって来たのはスペのようだ。

 

 ここまで広い場所にほぼ誰もいない状態だと「ここで本当にあってるのかな?」と遠慮がちになってしまうのは人の本能的に仕方ないものがあるだろう。

 

「よっ、スペ」

 

「あっ、玲音さん……ここで合ってますよね?」

 

「あぁ、合っていると思うけど」

 

 しかしそこにはウオッカの姿はなかった。

 

 まぁ待ち合わせの時間まで後10分もあるから、大して気にする事ではないが……。

 

「そう言えばスペ、低糖質メニューはどんな感じだ?」

 

「すごく美味しくて、『これ本当に食べて太らないのかな』って思ってしまうくらいです」

 

「そうか……ならよさそうだね」

 

「はい!」

 

 そうスペが返事をした瞬間、体育館の扉がガラガラと音を立てながら開く。

 

 そしてそこに立っていたのは……竹刀の弦を肩に乗せながら片手で勢いよく扉を開けたウオッカだった。

 

 ……なぜに竹刀?

 

「すみません! 少し遅れました!」

 

「いや、約束の時間は過ぎてないよ」

 

「いえいえ、こう言うのは後輩が先に来るべきものですから! あっ、玲音先輩場所の貸し出しありがとうござます!」

 

「お安い御用だよ」

 

 そうは言って平然を装うが……やっぱり気になってしまう。

 

 その竹刀は一体何なのだろうと。

 

 そしてそれは隣にいたスペも同じことを思っていたらしく。スペは恐る恐るとウオッカが持っている竹刀指差し、声を出す。

 

「ウオ、ウオッカちゃん? その竹刀は一体……?」

 

「やっぱダイエットをするなら、素直に運動するのが一番です」

 

「そ、そうだね……竹刀って事は剣道かなにかーーー」

 

「スペ先輩! オレ、心を鬼にします!!」

 

 そう言った瞬間、ウオッカの雰囲気が変わったように思えた。

 

 なんかスイッチが入ったような……そんな幻聴も聞こえた。

 

 ウオッカはバシンッと勢いよく竹刀を振り下ろす。

 

 その音によってスペはビビってしまい、体勢を崩してしまう。

 

「さあ、地獄の筋トレ行くぞ!」

 

「えぇ〜!?」

 

 いつもはスペに対しては敬語を使っているウオッカが、スペに対してここまでキツめの言葉使いを使うなんて……それほどウオッカは本気って事なんだろう。

 

 メニューとしては結構普通の筋トレだった。

 

 腹筋、背筋、腕立て、腿上げを各100回ずつをほぼノンストップで行うというものだった。

 

 これくらいならまだ中学校の卓球で無理矢理やらされてたから、自分からしたらかなり普通の筋トレだが、あまり本格的に筋トレをやった事がないスペにとってはかなりキツイものなんだろう。

 

 1セット終わった時点でかなり汗だくになっている。

 

「はぁ……はぁ……」

 

「どうしたどうした! そんなものか!!」

 

「ま、まだまだ!!」

 

「ようし、もう一回腹筋100回から! あと9セット!!」

 

「ええええぇぇ!?」

「それはやりすぎだ!」

 

 4種類を100回してそれを10セットって……それ計4000回じゃねえか。

 

 流石にそれは筋トレに慣れていないスペからしたらオーバーワークだ。

 

 流石に10セットはやりすぎだから、3セットに、かつ休憩は多めに調整した。

 

 ウオッカは「少ないですよ!」と言ってきたが、実際やってみると2セットの腕立てからスペは見るからにスピードを落としていた。

 

 ウオッカ……なんかの熱血マンガに影響されたのかな。

 

「あっ、玲音先輩もそろそろですよ?」

 

「……そろそろってなnーーー」

 

 何が? と言おうとした瞬間、バンッ! と大きな音を立てて体育館の扉が開かれる。

 

 その音はウオッカが開けるよりも……そしてさっき叩いていた竹刀よりも大きな音だったので、俺とスペはビクッと体を跳ねた。

 

 そして何事かと入り口の方に体を向ける。

 

 そこにいたのは……柔道着らしい白い服を着た凄くがたいのいい漢がいた。

 

 そのがたいのよさは、幾度ともなく死闘を繰り広げ、そして生き残ってきた強者のモノだと思ってしまった。

 

 マジでキック一つで何トンか出るんじゃないかな。

 

 俺は少し近づくのが怖かったが、それでもあの人がなぜここに用があるか聞かないといけないだろう。

 

 だって一応この時間貸し出しを希望していたのは俺らだけである。

 

 それにトレーナーバッジを付けていないし、そもそもあんな人学校に居たっけ……。

 

 そして扉の前で仁王立ちしている男に近づいて行く度に、俺の中に恐怖心が出てきた。

 

 だってなんかオーラ見えるんだもん……鳥肌がめっちゃ立ってて、この人には近づくなと俺の本能が警鐘を鳴らしている。

 

「あ、あの〜、もしかして体育館を使いますか? で、でしたらもう少し優しく開け閉めをーーー」

 

 次の瞬間、男は凄まじい速さで自分の服の襟首を掴み取った。

 

 ……そして、

 

「は あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!」

 

 独特な掛け声と共に、俺は宙を舞った。

 

 そして次の瞬間、腰と背中に強い衝撃が走る。幸い、サッカーで散々転んで受け身は自然に取れる体になったから、最小限の衝撃で済んだと考える。

 

 しかし、油断する暇もなかった。

 

 俺を背負い投げした漢は、そのまま倒れている俺の左腕の脇の下に手を通し、襟元の右の方を掴み、空いた手を首に回し襟元の左の方を握られ……そして引っ張られる。

 

「おりゃあ!」

 

「っ! かはっ……」

 

 自分は必死に締め技を解こうとジタバタとするが、漢の手はまるで接着剤で着いたかのように離れない。

 

(や、やばい……意識……が……)

 

 目の前が暗くなる……その瞬間に漢の絞める力が弱まり、解放感が体全体を包む。

 

 漢は俺の目の前に仁王立ちをして、見下している。

 

「若者よ、真剣に取り組んでいるものがあるか、命がけで打ち込んでいるものがあるか……! ウマ娘プリティーダービー! 指が折れるまで、指が折れるまで!!」

 

 そう言って、漢は体育館から去って行った。

 

 そのまま体育館の床に仰向けに倒れながら、放心状態になり……こう呟く。

 

「何だったんだよ、今の……」

 

「あれは伝説のトレーナー、トレナ三四郎ですよ! たまたま会ったんでお願いしたんですよ」

 

「訳わかんねぇよ……」

 

   ・ ・ ・

 

「……以上が昨日と今日あった出来事です」

 

 あの謎の漢の襲撃があった後の夜。

 

 俺は自室で義務報告をしている。

 

「そうか、スペの食事は低糖質にしたのか」

 

「はい、寮の栄養士さんと調理師さんに相談したら快く承諾してくれました」

 

「何つーか……結構お前って行動力あるんだな」

 

「……スペにはダービー、勝って欲しいですから」

 

 俺は素直な気持ちを先生に言う。

 

 トレーナーはコンディションを整えてあげるのがお仕事、なら俺は俺が最大限できることをする。

 

 ……まぁ、栄養士さんと調理師さんが優しかったっていう偶然もあるけど。

 

「そう言えば先生、トレナ三四郎って知ってますか?」

 

「トレナ三四郎……確か非番の先生だな」

 

「普段はいないってことですか?」

 

「あぁ、時々ウマ娘の教官をやっているな」

 

「……マジすか」

 

 あんな突然投げ技を投げてきて、絞め技を掛けてくる人が教官……当たってしまったウマ娘は身体を壊すんじゃないか?

 

 ……なんて思ったが、あの人の功績はすごいらしく、数々の重賞、GⅠを勝ち取り、優駿を何人も世に送った伝説のトレーナーだという。

 

 いや、すごさは分かったんだけどさ……それでも背負い投げと絞め技は勘弁していただきたい。

 

「そういや、明日も明後日もやるんだよな? ダイエット」

 

「えぇ、明日はテイオー、次にゴルシですね」

 

「そうか、まぁやり過ぎないようにちゃんと見とけよ」

 

「えぇ……では」

 

「おう、また明後日な」

 

 プツッと電話が切れる。

 

 電話が切れた携帯を机の上に置いてあくびと体を伸ばす。

 

 まだ少し腰の辺りがズキズキとしているが、これくらいなら大丈夫だろう。

 

「……自分も考えてみるかな」

 

 チームのみんながスペの為にあれこれ考えているんだ。

 

 俺も少しは考えてみよう……そう思って俺は携帯のロックを解除し、ネットを開いた。

 

 

 




・せがた三四郎ネタ伝わるのかな……シロは幼稚園の時よくやってました。

・100回筋トレは吹奏楽でやってて、いつもキボウノハナを咲かせてましたw

・次回はテイオー・ゴルシのダイエット計画の話の”予定”です。
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