少年とウマ娘たち - ススメミライヘ - 作:ヒビル未来派No.24
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朝、私は寮の食堂でスペちゃんと朝食を取っています。私はパンを主食とした洋食プレート、スペちゃんはご飯を主食とした和食膳を選んでました。
そしていつものように二人でいただきますの挨拶をする。そうして私はパンをちぎり取って口に入れる……うん、美味しい。
このトレセン学園の全ての食堂には、栄養管理士と調理師がいる。だから私たちは食からもレースの管理を万全にされています。
それにこのパンだって北海道の小麦粉100%使用して、学園で発酵させ寮の窯で焼いているので味も抜群です。
「ん〜……はっ」
向かい側に立っているスペちゃんの瞳が時々閉じかけます……手にはご飯の入っているお椀とお箸を持っているので少し危なっかしいです。
その事を指摘するとスペちゃんは慌ててご飯を食べて、味噌汁を手に取ろうとしましたが、その際に指を味噌汁に入れてしまいました。
「熱っ!?」と大きな悲鳴を上げ、瞬時に指を引き上げます。
「だ、大丈夫スペちゃん?」
「へ、平気です……ふわぁ……」
眠そうなスペちゃんを心配しながら、私は紙ナフキンをスペちゃんに差し出す。スペちゃんは「ありがとうございます」と言って自分の指に付着した味噌汁を拭き取った。
……ここ最近、スペちゃんはいつもこんな感じです。
多分昨日も夜遅くまで自主練をしていたからその疲れだと思うけど、そんな生活をもう一週間半くらい続けている。
最近では学校から帰るとそのままベッドにダイブして、そのまま眠り落ちてしまいそうなところを私が起こすという日々が当たり前になっている。
なんでそんな必死になれるのか……昔の私だったらそう考えていた。でもここにいる私はスペちゃんがどういう思いでこの学園に来て、どれほど皐月賞で悔しい思いをして、そして次のダービーにどれだけ信念を燃やしているのか……私は知っている。
「っ? スズカさん、私に何かついてますか?」
「……えぇ、ちょっとじっとしてて」
自然とスペちゃんの方を見ていたらしいです。ちょうどスペちゃんの頰にご飯粒があってよかった。
「ありがとうございます、スズカさん」
「ご飯はゆっくり食べましょ?」
「はい!」
・ ・ ・
朝ご飯を寮の食堂で食べた後、私たちは自分たちの部屋に戻った。
スペちゃんは学園で出た宿題を今日中に片付ける予定らしいです。そんな中私は勉強机の上に置いてある卓上カレンダーを手に取る。
そして今日の日付に赤ペンでつけた丸……そしてその数日後に書いてある2つのバースデーケーキの絵を見て、改めて確認する。
このバースデーケーキたちは何を表しているか。それは自分の誕生日とレオくんの誕生日だ。
最後に祝ったのはだいぶ前だから、何年前の事かは分からない。
だけど一つだけ覚えている。レオくんの誕生日は自分の誕生日の1日前だってことを。
だから子どもの頃は、二日間お互いの家で誕生日パーティーを開催していた。
……懐かしいなぁ。レオくんの家がイタリアン料理、うちはアメリカン料理を出していた。そしてお互いプレゼント交換していた。
ただしレオくんのお母さんが亡くなって、レオくんが親戚の叔父さんに引き取られ、町から離れてしまった後は5月の初めの一回だけの開催になってしまった。
ある日お母さんが「ーーさんのイタリアン料理を食べないと4月が終わった気がしないわね」と言っていたが、まさにその通りだと当時の自分は思っていた。
でも小学校4年の頃からレオくんが来なくなり……うちの家族だけで行われる誕生日パーティーになってしまった。その時の誕生日パーティーは……正直記憶に深く残っていない。
そして成長していくにつれ、パーティーも催さなくなり、レオくんとの思い出が消えていくような錯覚も起こしていた。
だからこそ少し昔から決めていたのだ……もし奇跡的に再会できたら、今まであげれなかった分の誕生日プレゼントをあげようって。
そしてその機会が……この年にやってきた。
……だけど、どんなものをあげればいいのだろうか。昔とは違い、レオくんは大人に近くなっている。だから好きなものとかも変わっていると思う。
もちろん、ここ数日どうしようか悩んだ……だけど中々答えは出ませんでした。
だけど一昨日、私の知人が悩んでいる自分を見て、相談に乗ってくれると言ってくれたのんです。
そしてその相談日が今日という事だ。
「……よし」
私は外出の準備を始める。服が擦れる音が耳に入ったのか、スペちゃんの片方のウマ耳がこちらを向いている。そして間も無く体もこちらに向けてきた。
「スズカさん、どこか出かけるんですか?」
「えぇ、ちょっと近くの公園に……」
「あの、迷惑じゃなかったら私も一緒に行ってもいいですか?」
いつもの感じだったら私が「大丈夫よ」と言ってスペちゃんもついて来る事の方が多い……だけど、今日は相談をしてもらうために公園に行くのだ。
だから今日は一人で行かないといけない……。
「今日は友達と約束しているの……ごめんね」
「あっいえ、大丈夫ですよ! 気をつけて行って来てください!」
そう元気よく言うスペちゃんだったけど、耳は少しだけ正直らしく耳がほんの少し垂れ下がっていた。
そして視線も落とした……だからこそ気付いたのだろう。自分が持っているカレンダーに書かれた絵を。
「あの、スズカさん。30日と1日に誕生日ケーキみたいなものが描いてありますけど……もしかしてスズカさんのお誕生日ですか?」
「えぇ、そうよ?」
「わ〜! 私、プレゼント用意しますね!」
「ありがとう、スペちゃん。でも無理はしないでね」
スペちゃんは私にどんなものをくれるんだろう……大好物のニンジンとかかな?
「あ、でもどっちがスズカさんのお誕生日なんですか?」
「5月1日の方よ」
「じゃあ……その前の日は誰の誕生日なんですか?」
「レオくんね」
「えっ、玲音さんも今週が誕生日なんですか!?」
スペちゃんはとても驚いていた……確かに知人二人の誕生日が近いっていうのは普通に驚くものなんでしょうね。
スペちゃんは椅子から立ち上がって、かばんを漁る。そして財布を取り出して自分のお金を確認する。そして明らかにずーんと表情が暗くなり、尻尾に元気がなくなった。
多分、そこまでお金がなかったのかしら。
「大丈夫よスペちゃん。スペちゃんにもらったってだけでレオくんは喜んでくれるわ」
「そ、そうですかね……」
っと、腕につけている腕時計で時間を確認すると、約束の時間が近づいていた。
ちなみにこの腕時計はお母さんとお父さんがトレセン学園の入学お祝いで買ってくれたものだ。緑色の文字盤に皮色のベルトとシンプルなデザインです。
「それじゃあ行って来るね、お昼頃には戻ると思うから」
「はい!」
そうして私は栗東寮を後にした。
・ ・ ・
休日ということもあってか、目的地である公園は少し賑やかだった。
広場では子どもたちが走り回ったり、家族とサッカーやバドミントンなどをしている。私も昔はこういうところで遊んでいたなあと、懐かしい気持ちに浸る。
そしてそんな広場の一角に……そのお店はあった。
そのお店は集会や体育大会で使いそうなテントに青い幕を張っている。そしてお店の入り口にある看板には「表はあっても占い」と書かれている。
事前に聞いた名前と一致していることを確認すると私は店の入り口を見てみる。店の入り口に垂れ幕はかかっておらず、人の気配もない。
というよりなんでここから中が全然見えないのだろう? もう一枚布を被せているのかな……。
そしてこれはどうやって入ればいいんだろう……そんな風に考えているとテントの中から人が現れる。
「お〜スズカさん! そろそろ来ると思っていました!」
「こんにちわフクキタル、客足はどう?」
「順調です、スズカさんの前にもう10人は占っていますから!」
マチカネフクキタル……私のクラスメートで最初に仲良くなった友達。まぁ自分から仲良くなった訳ではなくいきなり「あなたに邪気が漂っています!」といきなり言われ、その後事あるごとに占いを強要して来るから、正直めんどくさい子だと思っていた。
だけど走るのが怖くなってスランプになっていた時、何度も何度も相談に乗ってくれた……とても頼りになり、優しい友達だ。
「立ち話もなんですし、中へ入ってください。あっ、そこの立て札を裏返しといてくださいね」
「えぇ、分かったわ」
そう言うとフクキタルは店の奥に消えてった。私も立て札を「占い中です!」と書かれた面に向け、店の奥に入って行った。
***
「ーーさん……ーーさん!」
遠くから声が聞こえて来る……さっきまで感じていた揺れももう感じない。
ただ、肩をたった今ゆさゆさと揺らされているってことは分かる……って事は、誰か俺に触れている?
重たい瞼を……ゆっくりと持ち上げる。
「玲音さん、大丈夫ですか!?」
「……マックイーン?」
目の前にいたのはマックイーンだった。とても心配そうにこちらの瞳の奥を見ている。
というか周りを見てみると通行人数人の視線がこっちに向いていた。
「何度も大声で呼んだのに全然反応がなくて……どこか悪いところでもあるのですか?」
「……いや、大丈夫」
そういえばクレンペさんは言っていたな。あの部屋に訪れる時は夢を見ている状態になるって。んで外の俺は棒立ちになっているって。
何分くらい経ったのだろうか……携帯を取り出して、現在の時間を確認する。
12時15分……牛丼屋さんを出たのが10分で、恐らく3分も歩かずに意識が途絶えたから、だいたい2分くらい棒立ちしてたことになるのかな。
うん、それは嫌でも目立つわ……。
「ほっ……良かったですわ」
「ところでマックイーンはなんでここに?」
「わたくしは本の買い出しです……この方知っていますか?」
そう言ってマックイーンは右手に提げているビニール袋から何冊かを取り出す。
その全てに女性のキャラのイラストが描かれていた。どこか幻想的に感じる色彩、光彩であり、タイトルを見れば「最後にーー」や「閃光のーー」などシンプルな感動系の物やウマ娘を題材にした作品などがあった。
ちなみにマックイーンがオススメしてきている作者はウマ娘と一般人の恋愛モノを中心に書いており、今回は御令嬢ウマ娘と一般人の男性の恋物語らしい。
「……あれ、その大きめのものは?」
自分は袋にまだ入っている本(いや、これは雑誌か?)を指差す。
「今日発売された映画の総評雑誌『Scene』の最新刊です……あっ、あの、本当はもう少し先に言おうと思ってたのですが……来週、予定はありますか?」
「……いや、特にないけど」
「でしたら30日に行きませんか?」
「あぁ、いいよ」
「本当ですか!! ……(やりましたわ!)」
嬉しそうな顔をしてくれるマックイーン……5月1日はスズカの誕生日だから無理だが、自分の誕生日だったら空いているから大丈夫なはず。
そんな風に考えているとマックイーンは「ご機嫌よう」と言って、トレセン学園の方へ足を進めていた。
……その時、ビロードの部屋から現実世界に戻る前に聞こえたサフィーのセリフを思い出した。
『今お主が抱えている問題……周りの知人に相談するのじゃ』
「マックイーン! ちょっと待ってくれ!!」
俺は駆け足でマックイーンの近くに寄る。
マックイーンは声を聞き取ってくれたのか、その場で止まってこっちに振り返った。
「なんですか玲音さん?」
「……折り入って、頼みたい事があるんだ」
俺は強くガシッとマックイーンの肩を掴む。ビクッと体が小さく跳ねたのが手の感触で分かった。
「れ、玲音さん!? そ、そんないきなり……!」
「スズカにあげる誕生日プレゼントを一緒に考えて欲しいんだ!!」
「……」
おかしい、街中なはずなのに……めっちゃ周りが静かになった。
というか、気温がめっちゃ下がったような気がする。
そしてマックイーンは……キレていた。ウマ耳を後ろに向けて完全に威嚇状態である。
「ま……マックイーン? なんで怒ってるの?」
「知りませんわ! この朴念仁!!」
そう言って一歩一歩力強く踏み、寮に帰ろうとする不機嫌なマックイーンを俺は必死に説得(マックイーンの好きなスイーツを奢るという条件)したのだった……。
・宝塚はすごかったですねぇ……。クロノジェネシスまじでつおし。
・ウマネスト……なかなか面白い。
・次回は占い&買い出し回をする”予定”です。