少年とウマ娘たち - ススメミライヘ -   作:ヒビル未来派No.24

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 前回のあらすじ:スズカはマチカネフクキタルに、玲音はマックイーンに相談をする。

・UA89,000・90,000を突破しました。ありがとうございます!



特異点/込められている思い

 店の奥に入ると、そこにはフクキタル……そしてよく隣にいるメイショウドトウさんがいた。

 

 メイショウドトウさんは少し引っ込み思案な子であり、フクキタルの占いの助手をよくしている。

 

 なんでも「自分を変えたい」と未来が上向きになるきっかけの一つとして、この占いの助手をしていると言っていた。

 

「こ、こんにちわサイレンススズカさん……」

 

「こんにちわメイショウドトウさん」

 

「さあさあそちらへ座ってください!」

 

 フクキタルに言われたので、私は近くにあったイスに腰を掛ける。

 

「さて、本日はどのようなお悩みをお持ちですか?」

 

 フクキタルはよく占いで使っているガラス玉(本人は水晶玉と言っているけど)を布で拭きながら自分に問いかけてくる。

 

 ……でも別にこんな占いじゃなくてもいいのよね。個人的には少し相談に乗ってくれれば良かったし。

 

 だけどフクキタルはこの形でしか相談してくれない……そこが彼女のアイデンティティーなんでしょうけど。

 

「実は……小学校の頃に別れた幼なじみと再会できたの」

 

「お〜! それは良かったですね!」

 

「あ、あの……それってこの学園でですか? それとも学園外ででしょうか?」

 

「この学園でです」

 

 メイショウドトウさんがこういう細かいところを掘り下げてくるのがいつもの流れ。そしてそれをフクキタルにも聞かせる。

 

 恐らく、この細かい状況説明が占いでは濃く影響するんだと思う。

 

「それで、今まで祝えなかった数年分のお誕生日プレゼントを贈りたいんだけど……どんなものにすればいいのか分からないの」

 

「ほうほう……つまり恋愛相談ってことですね!」

 

「違うからね?」

 

「つ、つまり……その幼なじみさんにあげるプレゼントがどんなものがいいか占って欲しいってことですね……」

 

「え、えぇ……」

 

 本当はただ相談してもらいたいだけなんだけど……まぁいいかな。

 

 ただメイショウドトウさんは少し考えるような仕草をしている。そして少しするとおずおずと手を上げながらこっちに視線を送ってきた。

 

「あ、あの……それでしたらいっその事、その幼なじみさんと選べばいいんじゃないでしょうか……?」

 

「どういう意味ですか?」

 

「お出かけして、反応を見たりお話ししながら相手が欲しそうな物を買うんです……ど、ドラマとかでやってるのを見てます」

 

 なるほど……そういう方法もあるのね。

 

 私は自然にサプライズ志向の方に思考を働かせていたけど、確かにそういうのもありなのかもしれない。それにその方法だったら、レオくんとお出かけもできる。私にとってもかなり好条件。

 

「ではでは、そこら辺も含めて占ってみましょう……行きますよ〜!」

 

 フクキタルはガラス玉に両手をかざし、「むむむ〜っ!」と手先に力を入れる。

 

 その様子を私とメイショウドトウさんは見守る。

 

 そして次の瞬間、ガラス玉が急に光出し、天から声が聞こえてきた……ということもなく、突然フクキタルが背筋をピンッと立て「舞い降りてきました!」と大声を上げた。彼女が信じている神様・シラオキ様からのお告げが舞い降りたのだろう。

 

「まずメイショウドトウさんが言っていた「幼なじみさんと出かける」という方法ですが……これはあまり良くないみたいです」

 

「それはまたどうして?」

 

「実はその幼なじみさん、今日に誕生日プレゼントを決めるみたいです」

 

 そう……なんだ。もしかしてレオくんも私の誕生日覚えてくれてたのかな……。

 

 もちろんこれは占いという曖昧な根拠ではある。それでも少し嬉しい気持ちになる。

 

「そして渡した方が良さそうなプレゼントですが……それはズバリ、ブレスレットです!」

 

「ぶ、ブレスレット?」

 

 なんかすごく意外な物をおすすめされた……高校生でブレスレットが誕生日プレゼントってどうなんだろう?

 

 なぜブレスレットがいいのか、私は尋ねてみる。するとフクキタルは教えてくれた。

 

「幼なじみさんは体に身に付ける物をスズカさんにあげるそうです。ですから似たような物を贈ることで、幼なじみさんとの繋がりをさらに深くすることができます!」

 

「……なるほど」

 

 フクキタルが言ってくれた言葉はとても興味深い物だった。

 

 繋がりが深くなる……つまり置いて行かれることがなくなる。

 

 私とレオくんには交わし合った約束がある、だから繋がりは以前よりも強固な物になっているはず。

 

 それでも、私はもっと確かな物にしたい……もう離れたくないから。

 

「でも、私そういう装飾品には疎くて……」

 

 一言にブレスレットと言っても、この世の中には様々なブレスレットがある。

 

 お母さんが高級レストランに行く時に綺麗なブレスレットを身に付けているのは見たことはある。

 

 だけどお母さん以外の人が身に付けているところはあまり見たことがない。

 

 と言うよりも……男性の人ってブレスレットってするものなのかしら?

 

「それでしたら誕生石を使ったブレスレットをオススメします!」

 

「……誕生石?」

 

 誕生石って言うと確か、1月はこの鉱石をあげるといい……みたいな感じで店前のポップによく書かれているものだったはず。

 

 あれってなんかルーツとかあるのかな……。

 

 なんて考えているとメイショウドトウさんが少し厚めの本(ノート?)を持って、あるページを開いて、話し始める。

 

「誕生石のルーツは旧約聖書でユダヤ人の高僧が、宝石があしらわれた胸当てを着けていたという記述があったからと言われています。それにちなんでヨーロッパでは1300年前から『12種類の石を保有して、月替わりで相応しい石を身に着ける』という文化が広がったんです」

 

「へぇ……結構奥深いルーツなんですね」

 

「はい……しかし12種類の石を全て保有するのは普通の人にはほぼ無理です。そこで『自分の生まれた月に当てはまる石を身に着ければ、幸運が訪れる』と考えるようになり、現在の誕生石が誕生しました」

 

「誕生石だけにですね!!」

 

「「……」」

 

「……こほん、メイショウドトウさんが話してくれたように誕生石は月によって種類が変わります。誕生日がある月に対応したものを身に着けることによって厄災から守ってくれたり、幸運を招くと言われています!」

 

「厄災から守り……幸運を……」

 

 その言葉を聞いた瞬間に「これしかない」と直感が告げた。

 

 今まで祝えなかった数年分の思い……そしてこれから続いて行く私とレオくんの物語が簡単に終わらないように……。

 

「……ありがとうフクキタル、いい参考になったわ」

 

「いえいえ〜お安い御用ですよ! あっスズカさん、一つ聞きたいんですけど、その幼なじみさんの誕生月はいつですか?」

 

「4月だけど……」

 

「で、でしたら誕生石は、ダイヤとキュービックジルコニア、そして水晶ですね」

 

「3つもあるんですね……どれがいいのかな……」

 

「その中で選ぶんでしたら、水晶をオススメします! 水晶は全てを浄化し潜在能力を引き出し、魔除けの石で災いを断ち運気上昇へ導くなど、あらゆる力が宿る石なんですよ!」

 

 なるほど……トレーナーを目指しているレオくんにとって、これでもかと言うくらいベストな効果だ。

 

「だ、ダイヤでもいいんですけど、ダイヤはーーーーーーですから、むやみに上げない方が良いと思います……」

 

 メイショウドトウさんのダイヤの説明を聞いたその時……私は少し頰を赤らめてしまった。

 

 ……だけど、同時にーーー。

 

「……」

 

「あと、スズカさん。もう一つ占ったことがあるんですが……言ってもいいですか?」

 

「……もしかして、例の?」

 

「はい」

 

 例のと言うのは数ヶ月前、年が明けた三学期にやってくれたフクキタルの初占いで言われたこと。

 

 元々やってもらうつもりは無かったけど、クラスのみんな全員フクキタルの占いを受けていて「スズカさんもやってもらいなよ!」みたいに周りの人たちがグイグイと占いを勧めてきたので仕方なく受けた。

 

 そして言われたことは……今年の私の運勢は凶だということ。レース人生を左右する災難が待ち構えていると言われた。

 

 でもそれだったら大凶では? と思ったけど、多分そこはレオくんと再会できた幸運があるからだと考えている。

 

「もう一回占ってみたんですけど……ちょっと困ったことがありまして」

 

「困ったこと?」

 

「この前スズカさんを占った時は破滅への道筋しかありませんでした。ですけど今は……何本も道ができていて、未来が予測できないんです」

 

「……未来が、予測できない?」

 

 フクキタルの占いはよく当たると学園の生徒……そして常連の人たちからも言われている。それこそ、彼女に占えないものは”あんまり”ないと言われるくらいには。

 

 そんなフクキタルが……私の未来を予測できない?

 

「多くて6つ……少なくともこの前より2つは増えています。そして前まで見えていたその先の未来に霧が掛かって見えなくなってしまっています」

 

「霧が……」

 

 その言葉を私はこう捉えました……私の未来はとても不安定なものなんだと。

 

 先が見えない道を歩くほど怖いものはない……一寸先は闇か、それとも光か、はたまた穴か、階段か、それかも分からない。

 

「そしてその霧と多数の道の出現……その理由は再会したスズカさんの幼なじみさんにあると考えられます」

 

「レオくんが……理由?」

 

「これは本人を占ってみないと分かりません……ですが一つ言えることは、幼なじみさんは特異点(シンギュラリティ)の可能性が高いということです」

 

   ***

 

「誕生日石の……ぶ、ブレスレット!?」

 

「そうです……あふぁ(あら)ほふぉファンフェーキふほふおいひいへふは(このパンケーキすごく美味しいですわ)

 

 俺はあの後、マックイーンを必死に説得し、駅前のすごく値段の高いパンケーキ屋さんの一番高いパンケーキを食べてもらいながら、俺は相談に乗ってもらっている。

 

 そして単刀直入に何が良いかと訊いてみたが……その答えが誕生石のブレスレットなのだ。

 

 いや……えっ? 誕生石の装飾品って関係が近い人間……つまり恋人同士の人たちが渡し合うものなのでは?

 

 俺とスズカは別にそんな関係でもない……どっちかと言うと家族に近い存在だ。だから流石にそれは誕生日プレゼントとしてどうなんだ?

 

「んくっ……別に良いではありませんか。玲音さんは今まで祝えなかった分の誕生日プレゼントを用意したいのですよね?」

 

「あ、あぁ……」

 

「でしたらそれくらい重くても大丈夫でしょう」

 

 重いって自分自身で言っちゃったよこのお嬢様……あっ、またマックイーンの耳が威嚇モードになった。そしてあの鋭い目つきは「今度お嬢様と心の中で言いましたら、メジロ家直伝のドラゴンスープレックスを決めますわよ?」と言っているものだ。同時に漂ってくる殺気で鳥肌が立ってきた……。

 

 それにしても、誕生石のブレスレットか……。

 

 やっぱり一人の一般男子高生が、一人の女子高生に贈るプレゼントとしては少しハードルが高いような……というか貰ってもスズカは困惑しそうだな。

 

 さらに言ってしまえば自分は女性の装飾品どころか、自分が着る服もとりあえずウマクロの安いやつを買うくらいファッションやアクセサリーなどに無関心な自分が、スズカに合うブレスレットなんて選べるのか……。

 

 ……ここはマックイーンに聞きながら選ぶか。

 

「あの、マックイーンよかったら今からーー」

 

「すみません……午後からドーベルたちと会う約束をしているんです」

 

「あ〜そっか、分かった」

 

「本当にすみません……」

 

 ドーベルたちと言うのは、恐らく同じメジロ家のウマ娘であるメジロドーベルとメジロライアンのことだろう。よくマックイーンと一緒に居るのを見かける。

 

 それに一応メジロ家に何度か訪問しているので、何度かは会ったことはある。ドーベルは男嫌い、自分でも2mしか近づけないが、マンガの話では結構打ち解け合う。ライアンは筋肉大好き、会った瞬間に筋トレをめっちゃ勧めてくるが、その筋肉はとても美しい。

 

 ……マックイーンの協力を直接得られないのは残念だけど、でも相談に乗ってくれたのはとても有難いことだった。

 

「ありがとうマックイーン……ちゃんと悩んでみるよ」

 

「いえいえ、でもその方がスズカさんも喜んでくれると思いますよ。幸運を祈りますわ」

 

   ・ ・ ・

 

 マックイーンとお店の前で別れた後、俺は近くの装飾品店に足を踏み入れた。

 

 正直、普通の高校生が入るのはどこか妨げられるような雰囲気があったが、意外とすんなりと入れた。

 

 そして色々とショーケースを見ているが……マジで種類が多い……。

 

 こんなに種類が多いとは……想定外だった。そしてお値段もバカ高いものから学生にとってありがたい値段もあったりと様々だ。

 

 一応、1万円と数千円を昔から貯金していたからお金には多少の余裕はある……だがだからこそ、選択肢が多くなってしまう。

 

 どうしようかと悩んでいると、店員さんがこっちの様子を見て近寄ってきた。

 

「何かお探しですか?」

 

「あっ、えっと……その……た、誕生石のブレスレットを探していまして……その……」

 

 やばい初めての場所ということもあるのか、めっちゃコミュ障を発動してしまっている。動きもどこかぎこちない。

 

「誕生石でしたらあちらのコーナーにありますよ」

 

「えっ?」

 

 店員さんの後をついて行ってみると、そこには堂々と『誕生石アクセサリーコーナー』と書かれたポップがあるショーケースがあった。

 

 灯台下暗し……いや、ただ単に見えていなかっただけか。

 

「ありがとうございます」

 

「いえ、何か気になった事がありましたらお気軽にお申しください」

 

 そう言うと店員さんは元のポジションに戻った。

 

 さて……ポップを見てみると、どうやらこのショーケースには4月と5月の誕生石アクセサリーがあるらしい。

 

 5月の誕生石は何なのか見てみると、どうやらエメラルドと翡翠らしい。

 

 翡翠っていうとあれだよな、確か縄文時代から祭祀品の勾玉を作るために使われている鉱石のはずだ。実際勾玉は昔の人にとっては厄除けのお守りであり、嫌なものから守ってくれる。

 

 ウマ娘は怪我のするリスクが高い……だったらそういう意味を含めた物をプレゼントするのは悪くないな。

 

(そう言えばエメラルドってなんか意味を持ってたりとかしてるのかな?)

 

 そう思い、俺はエメラルドの項目を見てみる。

 

 なになに〜? 『生命と再生・叡智を象徴するといわれおり、ダイヤモンドと並ぶ世界四大宝石のひとつで、エジプトの女王クレオパトラも愛したとされています。変わらぬ愛を願う時のお守りにおすすめです。意味は恋愛・結婚』

 

(あ……愛!? 結婚!?)

 

 やベぇこれ……下手な知識を身に付けてエメラルドを買っていたらめっちゃ恥ずかしいやつだったじゃないか!

 

 いやでも確かに結婚指輪でエメラルドの指輪をはめている人とかみたことあるな……危ない危ない、もしスズカにエメラルドのアクセサリーを渡していたらとんでもなく気持ち悪いやつになっていた。

 

 とりあえずそれが回避できただけでもヨシッとしよう……。

 

 えっとそしてお値段としてはこれもまた様々だな……某海外アニメのネコみたいに目玉が飛び出るくらいの値段のやつもあれば、自分が買えるギリギリの値段のやつもある……というか一万円以上は当たり前だった。

 

 とりあえず自分で買えるものはこの一万円レベルの本翡翠を使ったブレスレットだけなので、これを買おう。

 

(あっ、自分の誕生月である4月はどんな石があるんだろ?)

 

 そう思い隣に置いてある4月の誕生石のポップを見てみる。

 

 ん〜と、4月の誕生石はクオーツにダイヤモンド、そして名前がなんか長えやつ。

 

 へ〜、ダイアーさん……じゃなくて、ダイヤが4月の誕生石なんだ。

 

 えっと……『不屈の精神や勝利・正義の象徴とされています。また、15 世紀にオーストリアのマクシミリアン1世が婚約者に贈って以来、永遠の愛の代名詞になっています。意味は恋愛・結婚』

 

 んまぁそうだよな、結婚指輪といえばダイヤ、ダイヤと言えば4部……じゃなくて結婚指輪だもんな。

 

 ただ不屈の精神や勝利、そして正義の象徴って言うのは知らなかったな……まぁでも誰かにダイヤをもらうことなんてないと思うが……。

 

「……よし、じゃあ買いますか!」

 

   ***

 

 あの人は……気付いてくれるでしょうか。

 

 今年わたくしが用意したソフトシリコン製のカラーオーダーイヤホン。その右耳のイヤホンにはすごく小さなジュエリーがさりげなく埋められている。

 

 そのジュエリーの種類は……ダイヤモンド。

 

「どうしたのマックイーン、急に頬を赤らめて?」

 

「いえ、なんでもありませんわドーベル」

 

「風邪引いた? 具合が悪かったらすぐに言ってね?」

 

「大丈夫ですわライアン、心配してくれてありがとうございます」

 

 

 




・お父さんのデータでライス育成しました……なんか他の子よりボリュームがあってお兄さまになれました。

・次回は……そうだな〜、スペと付き添いの子のプレゼント探しの回の”予定”にしますかね。
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